辻廉太(ガールズ&パンツァー)

登録日:2019/09/15 Sun 18:12:00
更新日:2025/05/17 Sat 18:43:10
所要時間:約 3 分で読めます





「学園艦は維持費も運営費も掛かりますので、全体数を見直し、統廃合する事に決定しました」



辻廉太(つじ れんた)とは、『ガールズ&パンツァー』の登場人物である。
名前は劇場版に登場した署名や書籍媒体などで明らかになったもので、本編・劇場版におけるクレジットは一貫して「役人」。

CV:景浦大輔


【概要】

本作における文科省で「文部科学省学園艦教育局」に勤める役人。*1
七三分けの髪型に眼鏡というステレオタイプの役人的な風貌をしている。

近年目立った実績の無かったり、生徒数が減っている学園艦の統廃合を推し進めている。
西住みほが通う学校である「大洗女子学園」もその対象となり、その旨を角谷杏ら生徒会に伝えるも、
杏が「実績があればいい」との提案を受けその場は引き下がる。

その後、その実績を作るべく戦車道の全国大会に出場、見事に優勝を果たす。
これにより、廃校も撤回してくれたと思われた。


だが、劇場版にて……





以下、劇場版のネタバレ注意








「もう君達は生徒ではない」


冒頭、エキシビションマッチを終えた大洗女子一同の前に現れ、学校の廃校が正式に決定した旨を伝える。
杏達と交わした約束はあくまで口約束であり、正式な書類もないことから平然と約束を無下にし*2
「検討した結果やっぱり廃校」と非情な決定を下したのである。

その上、「大人しく従わなければ学園艦に住んでいる一般の人々の再就職先を斡旋しない」という脅しまでかけ、彼女達を学園艦から追い出してしまう。
同時に戦車は文科省が引き取る事になったが、大洗生徒会は引っ越し作業中に紛失した事にしてサンダース大付属高校に預け、
小学校での生活中に返還してもらう事で戦車道チームの手元に残す事に成功していた。
結果としてこの時点で戦車を回収できなかった事が彼の計画破綻の遠因となっている。

その後みほ達は転校先が決まるまで近くの廃校で過ごし、その間にも杏が直談判しにくるも全く相手にしなかったが、
ある日杏がコネを駆使して戦車道連盟の会長、自衛官の蝶野亜美、そしてみほの母である西住流家元の西住しほを味方につけて現れる。

この面子には流石の彼もたじろぎ、思わず「大洗はまぐれで優勝した」などと失言してしまい、
そこを突かれ、「じゃあどうすれば認めてくれるのか」という話になり、つい「大学の強化選手に勝てれば……」と口にしてしまう。
そこに目を付けた杏により、今度は正式な文書まで書かされて大学選抜チームとの試合の流れまで持っていかれてしまう。

だがそれで彼も黙っているわけではなく、確実に大洗女子を敗北に追い込むべく、
  • 試合のルールを最大30輌の殲滅戦にする*3という旨を開催ギリギリになって伝える。*4
  • 投入可否が協議中だったカール自走臼砲を試合直前に認可、大学選抜チームに編入させる*5
等と大洗側に圧倒的不利な状況を作り上げ完全に大洗を叩き潰せると確信したが、そこに待ったをかけた者たちがいた。

決勝戦で大洗と激闘を繰り広げた黒森峰女学園。

その大洗女子を2度も下した聖グロリアーナ女学園。

優勝経験もあり、大洗女子をギリギリまで追い詰めたプラウダ高校。

高校最大の戦車保有数を誇るサンダース学園高校。

ノリと勢いで突き進むアンツィオ高校

先ほどエキシビジョンで足を引っ張ってしまった汚名返上に燃える知波単学園

謎のダークホース、継続高校

以上の生徒達が大洗女子学園に一時転校してきて戦力を互角にまで増強される。
「試合に私物を持ち込む事を禁止するルールが無い」事を盾に私物の戦車を持ち込んだ挙句*6
試合直前になって飛び入り同然に参加して来た事に憤慨し、ルール違反ではないかと彼は当然抗議するも、
審判を務めた蝶野は「異議を唱えられるのは相手チームだけ」と相手にせず、
当の大学チーム隊長の島田愛里寿はすんなり受け入れてしまったため、試合が始まってしまう。
とはいえ、質量共に極めて高い水準にある大学選抜にカールの圧倒的破壊力が加わった事もあって大学選抜の勝利は疑っていなかった様で、
カールが火を噴いた頃には余裕を取り戻していた。

その後の展開は、皆が喚起に溢れる中、彼だけが落ち込んでいた……そういえば理解できるだろう。


最終章には第2話の時点で出番は無い。

同様に第3話でも出番はなかった。



【『ガールズ&パンツァー』の敵役として】

大洗女子学園を廃校させようとし、TV本編の大団円をぶち壊した様は生徒達や視聴者側からすれば紛れもない「敵」そのものではあるが、
それ以上に手段を選ばず、主人公達に実質的な難民生活まで強制し*7
挙句、本作品の骨子である『戦車道の試合』にまで露骨な介入をしたとあれは、典型的な「悪役」に見られても致し方ないであろう。
無論、無関係な中いきなり巻き込まれ弱い者いじめ染みた試合をさせられた大学選抜チームも被害者であることを忘れてはいけない。
劇中でも「大洗女子学園、裏切られる」という旨の見出しでニュース記事が登場しており、劇中世界でも世論は大洗女子に同情的な事がうかがえる。

だが、そんな横暴を働いた彼も、
  • 大洗女子生徒会……というか角谷杏の異常な行動力を読めなかったこと
  • 大学選抜チームにとっては勝利どころか試合をする事自体にメリットが一切無く*8、全体の士気があまり上がらなかったであろうこと*9
  • なにより、大洗女子チームの隊長が由緒ある戦車道流派家元の娘という、ある意味一番敵に回しちゃいけない人だったこと
これらの要素が重なり、野望は打ち砕かれることになるのだった。



【余談】

「劇場版」の小説版では、なんと杏との約束を守るために大洗女子学園廃校を再考するための会議を開催させている。
結局は「強豪高を叩き潰して優勝した大洗女子の存在そのものが許せない」上層部保守派、
「大洗女子を廃校にすることでわずか数カ月の訓練でまったくのド素人から黒森峰を破るまでに成長した*10大洗の優秀な戦車道選手を全国の学校に分散させ、全国規模で戦車道のレベルアップを図る」という目論見を抱いた上層部革新派が
「どちらも大洗を廃校にする」事までは利害も行動も一致する事から手を組んだ結果「むしろ計画廃棄前提で開いた廃校計画を再考する為の会議で満場一致で廃校が決定した挙句廃校時期が大幅に前倒しになる*11」と言うとんでもない事態が発生。
抵抗するも上層部全員に押し切られ、大洗女子学園廃校のために動かざるを得なかったことが語られた。
流石の文科省役人といえどこの暴挙は腹に据えかねたのか、苦虫を噛み潰したような顔になった。
コミカライズ版『劇場版 Variante』では以上の経緯を島田千代に直接説明しているが、千代からは大洗の学園艦に住まう人々の人生を大きく狂わせかねない文科省のやり口を痛烈に批判されている。
そもそも大洗女子学園戦車道チームメンバーの多くは戦車とは別に目標があり、
全国大会で大洗の廃校の危機が去ってもなお戦車道を続けているのは「今の仲間とプレーするのが楽しいから」という側面がある事がうかがえる。
例えばアヒルさんチームの目標はあくまでバレー部の復活であり、自動車部が戦車道を始めたのはP虎がレアな戦車である事に興味を示したため、
生徒会チームに至っては戦車道は学校存続のための手段として選んだに過ぎない。何れにせよどうしても戦車道でなければならない理由は無いのである。
大洗女子学園存続を反故にされた挙句現在の仲間とも離れ離れにされた彼女らが、各々が入学させられた先で必ずしも戦車道を始めるとは限らない
何なら死に物狂いで頑張った挙句、理不尽な横槍で全てが水泡に帰した経験がある戦車道に嫌気がさす可能性さえもある。
それこそアヒルさんチームは普通にその学校のバレー部に入るだろう。
優秀な戦車道メンバーを各地に分散させ全国的なレベルアップを図るという目論見は、
個人の心情を無視した上、誰もがが自分の思い描く通りに動く事が前提という画餅にしてもあまりにお粗末な計画と言わねばなるまい。


スピンオフ漫画『もっとらぶらぶ作戦です!』ではこの廃校騒動時に動向が不明だった大洗のならず者集団との激闘が描かれている。

CVを務めている景浦大輔氏は彼の事がお気に入りで、事あるごとに「大洗女子を廃校させる」と言っている。
大洗の町を気に入っているので勿論ファンサービスの一貫であるが、辻廉太のキャラ的にまだ諦めて無さそうなのがなんとも…。

知波単学園の西さんの前の隊長の名前は「辻つつじ」というらしい。
果たして関係はあるのだろうか。





追記、修正も考え方次第ですよ

この項目が面白かったなら……\ポチッと/

あまりに愚痴が目に余る状況となった場合、コメント欄は撤去されます。十分に気を付けたコメントを願います。

最終更新:2025年05月17日 18:43

*1 劇中の署名では「文部科学省学園艦局長」表記。恐らくは同じ部局の別称と思われるが、局長という事は恐らく日本の学園艦関連の総元締めも同然であり、実は相当なお偉いさんである事が窺える。その割に若い見た目のため、公式で「ヅラで若作りしている」などと弄られたことも。

*2 劇中で杏が指摘している通り、現実でも法律上「口約束」は正式な契約になり得る。やはり「大洗が優勝すれば廃校撤回」という正式な契約を交わさなかった事が役人に付け入る隙を与えたと言わねばならない。また劇中で確認できる限り、確かに役人は廃校撤回を確約してはいない。

*3 大洗女子は8輌。高校戦車道全国大会は最大20輌。また当初はフラッグ戦が想定されていた

*4 「国際大会ルールに従って」と理由を述べていたが、実は当の国際大会ルールでは「試合のルールは最低24時間前に両チームに通達する事」と定められている為朝開始の試合の前日の夕方に通達した時点で完全にルール違反だったりする

*5 大学選抜チームの項目に詳しいが、カールは「オープントップ車は投入できない」「1945年8月15日以降の技術・機材は基本的に使用禁止とする」という投入戦車に関する戦車道のルールに抵触し得る存在であり、この試合ではかなり強引な改造によって投入させている。試合直前に認可させた事と相俟って当然抗議が入ったが、役人は「考え方次第ですよ」と全く意に介さなかった。

*6 本編でもルール上禁止されてはいない無線傍受機を使用する、そしてそれに対抗して戦車に備え付けの無線機ではなく選手が個人的に持ち込んでいた携帯電話で通信した事について、双方共に審判から咎められた様子が無い事からもうかがえる。

*7 彼女らの中には家族ぐるみで学園艦で働いている者もいる

*8 大学選抜からすれば相手は質量共に圧倒的格下であり、勝った所で名誉を得られないどころか上述の通り弱い者いじめや陰謀の片棒を担いだという誹りは免れない。またこの理由から、練習試合としても戦車道の選手として得るものがあるかどうかも、「高校全国大会優勝チームではあるが、後述の背景があるみほ以外はこの1年間に素人からスタートした経験の浅い選手」が大前提のこの時点では強い疑問があったことも想像に難くない

*9 ギャグ4コマであるもっとらぶらぶ作戦です!の描写とは言え合コンで釣って戦わせたとしか思えない描写がある

*10 小説版では「まともに戦車を動かせるまでに通常ならば最低3年かかる」と言った設定が散見される

*11 当初は年度末である翌年3月末と言う話だったのがエキシビション直後の9月頭廃校予定となっている