SCP-3472-J

登録日:2019/12/17 Tue 19:18:04
更新日:2023/09/30 Sat 13:03:17
所要時間:約 6 分で読めます




父の苦悩と娘の願い

全ては砕けて闇の中に消えた


SCP-3472-Jはシェアード・ワールドSCP Foundationに登場するオブジェクトである。
項目名は「いつか、お前はを憎むようになるだろう。」
オブジェクトクラスはSafeで、末尾にJとある通りジョークオブジェクトなのだが…。

概要

SCP-3472-Jは容量が500mlのガラス製の薬瓶である。
瓶の中は粘性のある 青い半透明な液体 で満たされている。
瓶から 青い液体 を取り出しても1時間に5mlのペースで 自然に発生 し瓶が満たされるまで続く。
逆に 青い液体 以外の物質を瓶に入れようとしてもなぜか 入れることができない
SCP-3472-Jの異常な点はこれだけであり、収容プロトコルも金庫に入れとくだけ。
そうなると今度は中身である 青い液体 の方が気になるところだが
そちらについては別に説明する。

収容時の謎

アネッタ・マドックスという女性の自宅を財団が襲撃した際にSCP-3472-Jを押収した。
元の報告書でもそう書かれていた…というか それしか書かれていなかった ので
財団はSCP-3472-Jを手に入れる ために アネッタの家を強襲したのか、
それとも他に理由があってアネッタ宅を襲ったら副次的にSCP-3472-Jを発見して収容したのかはわからない。
アネッタは家を強襲された際に死んでいるが、これもなぜ死んだのかは書かれていない。
普通に考えれば財団の機動部隊に対しアネッタが反撃したのでやむを得ず殺したのかもしれないが
襲撃時の事故死や自殺、他のナニかに殺されたのかもしれない。
財団が殺したとしてもやむを得ず、ではなく何か 他の理由 によるものかもしれない。
推測に推測を重ねてもキリがないが、妄想する余地があるということだけ覚えておいてほしい。

ともかく襲撃の時点でアネッタは死んでしまった。
そのためSCP-3472-Jについて知っている者はこの世にいなくなった。
(財団としてはアネッタを尋問してSCP-3472-Jの情報を吐かせたかったらしい)
だが彼女の家にはその手掛かりになりそうなものが 2つ残されていた

うち1つはアネッタ自身が書き残したSCP-3472-Jの中の 青い液体 飲んだ記録 だった。

青い液体 の作用

人間があの 青い液体 を20mlほど飲むと昏倒して2〜5時間ほど昏睡状態となる。
その間に ある夢 を見るのだが、覚醒しても概ね夢の内容を覚えているらしい。
夢の内容自体はさまざまなのだが、夢の中の自分は ジャミソン・マドックスという男性 となることが共通している。
このジャミソン氏はアネッタの父親であり、彼女は 青い液体 を何度も飲んで
父親の視点となる夢 を見てその内容を毎回 日誌 に記録していたのだ。
いったいなぜ彼女はそんなことを繰り返していたのだろうか?

父から娘へ

もう1つアネッタの家から押収した手がかりがある。
父ジャミソンが娘のアネッタへ向けた 自筆の手紙 が発見されたのだ。
逆に言えば 青い液体 のことを記録した 日誌 と、彼女が持っていたこの 手紙 しかSCP-3472-Jの正体を知る手がかりはないのだが…。


+ ジャミソン・マドックスの手紙を読む
私の最愛の娘へ
いつか必ず、お前は私がやってしまったことのために私を憎むようになるだろう。
私は自分の卑怯さ、愚かさ、己の罪に彩られた忌まわしい猿のような考えだったことを認める。
私は自分のしたことを弁護するつもりはない。
だが、願わくば私がそれを為した理由をお前が理解してくれることを望む。
ジャミソン・マドックス



全ての謎を解くために

ジャミソンは過去にどんな忌まわしい行いをしたのだろうか。
そしてジャミソンは娘に何を伝えたかったのだろうか。
娘のアネッタは死ぬ前にその答えを知ることができたのだろうか。

それらを知る最後の手がかりは実際に 青い液体 を飲むしかなかった。
どのみち財団はオブジェクトを収容したら実験して性質を確認することに変わりはない。
責任者であるジェレミア・シメリアン博士はDクラスを使わず自ら 青い液体 を飲んで調べる決心をしたのだった。



取り返しのつかない悲劇が待っているとも知らずに




+ 実験結果を閲覧する
No #:001
参加者 ジェレミア・シメリアン博士
手法  シメリアン博士がSCP-3472-Jの内容物を20mL摂取し、
その後自身の得た経験を記録する。
結果  SCP-3472-Jの内容物の摂取を試みている間に、
シメリアン博士はSCP-3472-Jを掴み損ねて うっかりと床に落とした
SCP-3472-Jは衝撃によって粉々に割れ、そして 異常な特性を保持しなくなった

「司令部が私にDクラスへの異動を言い渡すまでの間、私は部屋の隅でふてくされていることにする。
用のある者はそちらまで。」 ―シメリアン博士



SCP-3472-J

いつか、お前は を憎むようになるだろう。


追記・修正は我が子に本心を伝えてからお願いします。






































背景の解説

綺麗に話が終わったところで補足の説明を2点。
このSCP-3472-JはJAMコン2019の応募作として書かれた記事である。
JAM(即興)の名の通り「テーマの発表から最長48時間以内にそのテーマの記事を書いて競う」というルールなので
このようなほぼ一発ネタのジョークオブジェクト記事として書いたと思われる。
この時のコンテストのテーマは「毛むくじゃらの犬」だった。
これは「くどくどと長い内容を語って、読み手にその内容に繋がるオチを想像させておいてあえてそれを 外して 終わらせる話」という意味がある。*1
このSCP-3472-Jもオブジェクトの背景である父娘のことを強調しておいてかわすというオチになっている。
このテーマで1位を取ったのはこのSCP記事だがネタバレになるので記事名を書かずにリンクだけ貼る。

もう一つの解説としてこのSCP-3472-Jは「カックハブ」に属している世界観の記事である。
カックハブについて簡単に説明すると
財団が そりゃあねーだろ というアホなミスをしたり、
ミスでなくても 頭どうかしてんじゃねーの? という決断をやってしまう奴ばかりな財団のハブである。
カックハブの他の著名なTaleを紹介すると、財団内の職員用託児施設から集めた 赤ん坊 で編成した
平均年齢1.5歳未満の機動部隊 に異常存在への対処をさせる「 財団児童部隊 」などがある。*2
今回やらかしたジェレミア・シメリアン博士はこのカックハブ以外の記事では概ね真面目に仕事をしており
別のジョーク記事で笑える死に方することはあったが、カックハブでなければ間抜けなミスをするようなキャラでは無い。
というかあれだけでDクラス落ちしてたらカックハブでの財団に職員はいなくなる。
そもそも床に落とした液体をかき集めれば25回は飲めるだろうからそれでなんとかしよう。

追記・修正は床にクッションを敷いてからお願いします。

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最終更新:2023年09月30日 13:03

*1 語源となる「毛むくじゃらの犬の話」は“自分の犬がものすごい毛むくじゃらで、いかにこいつが毛むくじゃらなのかを延々と語り続けて毛むくじゃら毛むくじゃらを連呼しつつ、最後に「お前の犬は言うほど毛むくじゃらじゃ無いな」と言われてしまう”というもの。

*2 作中でもそれに反対する職員がいるものの、赤ちゃんに機動部隊任務をさせることに不安や懸念を一切持たない人間だけが財団での決定権を持っている。