SCP-2455

登録日:2019/12/23 Mon 13:32:20
更新日:2025/07/10 Thu 00:41:48
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未来は の手の中


SCP-2455は怪奇創作サイトSCP Foundationに登場するオブジェクトで、
オブジェクトクラスはEuclid、項目名は「Possibilities girl」である。

皆さんは進学・就職・結婚などのさまざまな重大な選択をした際に
「もし他の選択をしていたらどうなっていただろうか」と考えたことはないだろうか?
財団世界では時間移動や未来予知は無いわけではないが、ホイホイと扱えるようなものでもない。
それに対して一風変わったアプローチをしてきたのがこのオブジェクトである。

概要

SCP-2455は21歳の白人女性で、自分のそばにSCP-2455-1に分類される人型実体が出現する。
だが彼女の意思で出現させられるわけではない上に出現条件もわかっていなかった。
それ以外には異常な性質はない。
この項目ではSCP-2455本体を括弧を付けた「彼女」、出現した方のSCP-2455-1はそのままSCP-2455-1で呼称する。

「彼女」のそばに現れたSCP-2455-1は概ね「彼女」とそっくりな外見だが
服装が異なり、何らかの組織の服装や所持品を保持していることが多い。
そしてSCP-2455-1は「彼女」本人とほぼ同一の知識や記憶に加えて
着ている服の 機関についての知識を正確に持っている

「彼女」は大学卒業後にどこに勤めるかを検討していたのだが
A社とB社の二社まで絞り込んだ時点でSCP-2455-1が2体出現した。
うち1体はA社の制服を、もう1体はB社の制服を着ており
2体とも自分の着ている服の企業についての労働条件や各種の知識を持っていて
両者とも「彼女」に自分たちの企業の情報を話しながら「自分と同じ企業に入れ」と必死で勧めたそうな。
その後紆余曲折あったのか財団に収容されたのだが…。

ところで、財団に収容された人型SCPは基本的に 解放されて自由の身になることはない
カインアイリスのように友好的なSCPが財団で働くことはあるが、もし外で自由に暮らしたいと言っても財団は許さないだろう。
財団に収容されるというのは 生活の保証をする代わりに死ぬまで監禁 であり
それでも自分から収容されたがって来る奴もいるが普通の感覚では嫌なものだろう。

だが「彼女」は財団が説得したとはいえ収容については協力的、というか無関心だったそうな。
初めて人生の重大な選択をする時点であんな出来事が起こったからだろうか。

収容してから

収容したら実験をするのが財団である。

実験No001
内容 「収容者用支給着の色を変えようか?」と持ちかける
結果 SCP-2455-1は出現しなかった
分析 些細な選択では出現しないようだ
夕飯選ぶだけで出てきたら面倒くさいもんね。
実験No002
内容 「君の収容場所を他のサイトに移そうか?」と持ちかける
結果 SCP-2455-1は出現しなかった
分析 どこに収容されようが彼女にとっては何も変わりないからだろうか

実験No003
内容 「財団の正規職員に(書類上で)ならないか?」と持ちかける
結果 SCP-2455-1は出現しなかった
分析 「彼女」は明確に悩んでいたが現れなかった
我々が本気で雇用する気がないことをSCP-2455-1は察知できるのだろうか? -ヴォージ博士

そもそもSCP-2455-1が現れたという主張は「彼女」の自己申告でしかなく
財団は実験を30回繰り返しても一度も確認できなかった。
「異常性が確認できないしSCP-2455の登録を外して記憶処理して解放すべきでは?」
という意見が研究員の中に出てきていた。

実験No034
内容 実験計画外の突発事象だった
本来は次の実験で何も起きなければ「彼女」を解放するつもりだった
結果 SCP-2455-1が カジュアルな私服 で出現した
カメラで見ていると財団職員に見つからないように隠れていたが発見されると消失した
分析 この結果でいくつかの情報が得られたが下にまとめる
この実験で判明したのは
  • 「彼女」の人生の重大な分岐点、しかも実際にそれが起きる可能性がある時にSCP-2455-1が出現する
  • だがその分岐は「彼女」に選択する余地がなくても良い
    • (解放するかどうかは財団内だけで議論しており彼女は関与どころか知ることもできなかった)
  • そして「その可能性」がある程度あればSCP-2455-1が出現するが、「出現=その未来が確定」ではなく「その可能性」があり得なくなると消失する

「彼女」を収容から解放しようか?という意見が強くなったために「自由になったSCP-2455-1」が出現した。
そして「自由なSCP-2455-1」は本物の彼女も自分と同じ立場にさせたかったが
財団にそれが知られた時点で「彼女」の解放をする理由がなくなってしまった。
皮肉なことだが「自由になったSCP-2455-1」が出現したことで財団が「彼女」を 自由にする未来は遠のいた のだ。

実験No036
内容 ████博士に「彼女」の研究を一任し、まずインタビューをさせた
結果 財団下位研究員の制服の SCP-2455-1が現れて彼女を無視して博士に話しかけた
SCP-2455-1は博士に[編集済]の例を引用して「彼女」を雇用するように説得した
分析 このSCP-2455-1は[編集済]の性質以外にもクリアランスレベル2が必要な財団職員の知識をいくつも持っていた

実はこの████博士、 人型SCPに感情移入しすぎる傾向があり 以前から上層部にマークされていた。
もちろんそんな人物を「彼女」の担当にさせたのは理由がある。
実験No003の時と違って████博士ならば「彼女」を 本気で 財団職員にしようとすると判断し
案の定「財団職員になったSCP-2455-1」が出現したのだった。

実験No041
内容 計画外の突発事象
彼女は他サイトに移動されていた
結果 SCP-2455-1が出現した
彼女と同じ収容者服を着ていたがSCP-███に感染していた
分析 SCP-2455-1は「彼女」を狙って感染させようとしたが警備員に終了させられた

SCP-███は人に感染して破滅的な効果をもたらすSCPで彼女が移された サイトに収容されていた
この実験の後に事故でSCP-███が収容違反したがこの実験スタッフからの警告で準備をしていたため
最小限の損害で収容を回復できた。

つまり近い将来、収容違反でSCP-███に感染する可能性ができたために「感染したSCP-2455-1」が現れたということ。
財団は「これをうまく使えば未来の収容違反や財団の危機を察知できるかも知れない」と
ちょっとイレギュラーな用法を検討しだしたのだった。

ここで少し時系列が戻る。
実験No036で「財団下位研究員のSCP-2455-1」が出現した直後である。
消えずに向こうから話を振ってきたSCP-2455-1は初めての例なのでそのままインタビューを試みた。
(というかこれを狙って████博士を付けたわけだが)

インタビュー対象:財団下位研究員の服を着たSCP-2455-1
インタビュアー: ████博士(この博士を外すとSCP-2455-1が消える恐れがある)
ちなみに「彼女」自身は別室にいる

████博士:君の名前を教えてくれるかな?
SCP-2455-1: ████████よ。
████博士:では、君のそばにいたあの少女の名は?
SCP-2455-1: あの娘も████████よ。
████博士:なら他のSCP-2455-1実体は…?
SCP-2455-1: あんたバカなの?
████博士:これは失礼。
フランクだなこの新米研究員。
SCP-2455-1: 私の 今の将来 は財団と共に生きるか、財団に閉じ込められて生きるかの運命しかないわ。私は…いいえ、████は閉じ込められるんじゃなくてパン屋になりたいのに…。
████博士:教えて欲しいのだが、君にとってSCP-2455はどういう関係なのかね?
SCP-2455-1: 彼女は私の出発点よ。私の反復の起点。
████博士:では、彼女 にとっての 君は?
SCP-2455-1: 私は彼女よ、 財団研究員の 彼女。
████博士:財団の人事記録に君の名前はないのだがね。
SCP-2455-1: もちろんそうよ。まだ起こっていないもの。
████博士:将来の可能性はあるのかね?
SCP-2455-1: 未来はそうなる可能性はあるわ…彼女のね。
████博士:では君はここに出現する前は何をしていたのかな?
SCP-2455-1: ここにいて、未来を待ってるだけよ!
████博士:うーん…インタビューはここまでにしよう。
SCP-2455-1: 待って、彼女を財団職員にはできないの!?

ニード・トゥ・ノゥ(情報はそれが必要な者にのみ与えよ)という原則があるが、
財団はその辺の組織よりはるかに厳しい。 知るだけでヤバい情報 もわんさかあるし。
今回は「収容中の人型SCP」でしかない彼女に「クリアランス2の下位研究員のSCP-2455-1」が現れて
「彼女」を自分と同じ未来にするために働きかけている。
もし実際に「彼女」が下位研究員になったら今度は博士、管理官、O5のSCP-2455-1が現れて
その時点の彼女に伝えるべき でない 情報を言ってしまう恐れが常にありうる。
そんなヤバい人間を財団の職員にできるはずがない。
皮肉なことだが「若手研究員のSCP-2455-1」が現れたことで彼女が 財団職員になる未来は閉じてしまった

████博士:今の君が財団職員なら、君の主張を通すためには必要な手続きがあるのはわかるだろう?君 たち のようなケースは尚更ね。
SCP-2455-1: でも…でも…無理よ!わからないの?私には…今の…未来が…ダメ…!
今まで出現したSCP-2455-1はみんな「彼女」を自分と同じ未来にしようとしていた。
破滅的な未来でしかない「SCP-███に感染したSCP-2455-1」すらも。
おそらく、彼女がその未来になる可能性が消えるとSCP-2455-1も消える(死ぬ)のだろう。
████博士: SCP-2455は今は落ち着いているが、彼女には他の可能性が…
SCP-2455-1: それは 私じゃないの 他の「私」 でしょう!?
████博士: SCP-2455-1、
SCP-2455-1:(ヒステリックに叫び続ける)
※監督官がインタビューの中断を命じたと同時にSCP-2455-1は消失した

収容プロトコル

  • 標準人型収容セルに収容しつつ画像解析機能カメラで常時監視する
  • SCP-2455-1が出現したら即座に関係スタッフに通知して以下の対応を取る
  • 出現したSCP-2455-1が財団関係者の知識を持っていたら即座に終了しつつSCP-2455は記憶処理
  • 何らかのオブジェクトの影響を受けていたSCP-2455-1が現れた場合は情報を収集して未来の危機に備える

以上である。読んで気がついたかも知れないが
このプロトコルでは「財団職員になったSCP-2455-1」
「将来何かの危機の被害を受けたSCP-2455-1」が現れた時の対処が書かれているが
それ以外の未来を歩んでいるSCP-2455-1が出現した場合について 想定対応すら書かれていない
つまりはそれは出現する可能性がゼロか無視できるほどに低いということであり
彼女の 明日 は…。


SCP-2455 - Possibilities girl(彼女の可能性“たち”)


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最終更新:2025年07月10日 00:41