SCP-4468

登録日:2020/01/09 Thu 05:42:05
更新日:2025/03/19 Wed 16:33:16
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ずっと、君の隣にいるよ。寂しい思いはさせないからね。


SCP-4468はシェアード・ワールドSCP Foundationに登場するオブジェクトである。
項目名は「Take-a-wish」、オブジェクトクラスはSafeで…


財団記録情報セキュリティ管理部より通達
この異常存在が最後に現れたのは1998年8月19日となります。
異常は今なお無力化(Neutralized)も解明(Explained)もされていないと思われますが
16年以上の沈黙を経ていることから不活性化したものと見なされます。
まもなくSCP-4468-ARCとしてファイリングされ、GoI-386研究チームの管理下となります。

…だそうだ。現状はSafeだが近いうちにNeutralizedになるのだろう。


概要および性質

SCP-4468はぬいぐるみである。多種多様なサイズと種類があるが
いずれも「願いをこめて(Make-a-Wish)」「抱っこして(HUG ME)」というタグが付いている。
ぬいぐるみのオブジェクトと聞いて嫌な予感を覚えたかもしれないが…。

メイクアウィッシュ財団が ある人物たち (SCP-4468-A)を訪れると、その後で突然SCP-4468が出現する。
そして出現したSCP-4468とSCP-4468-Aはリンクしていて、
SCP-4468を愛情をこめて撫でたり抱きしめたりすると、リンクしているSCP-4468-Aもその感覚を受ける。
SCP-4468自体の異常な特性はそれだけである。 突如出現する ことと、 撫でると感覚が伝わる ことの2点だけ。

出現例は複数あり、SCP-4468-(出現順)として番号を振っているが
確認できる分だけでも現在で100体以上ぬいぐるみ達が出現している。
SCP-4468-Aが死亡すると対応するSCP-4468も異常性が消失する。と言っていいのかわからんが
SCP記事を見慣れた諸兄であれば
「SCP-4468を抱きしめるとその感覚がSCP-4468-Aに伝わるなら、 殴ったり燃やしたり したらどうなる?」
と思うかもしれないがその手の実験は 行われていない のでわからない。

では出現時の状況の説明に入ろう。
メイクアウィッシュ財団がSCP-4468-Aの元を訪ねると約48時間以内に対象の住居のどこかにSCP-4468が出現する。
出現場所はぬいぐるみだけにSCP-4468-Aのおもちゃ箱か、ベットが多い。なお出現の瞬間を見た者はいない。
そしてSCP-4468が出現すると、SCP-4468-Aは 3週間以内に死ぬ
これが続いたことでさすがにメイクアウィッシュ財団の人もおかしいと気が付き始めた。
ん?なに?メイクアウィッシュ財団がどうかした?
もしかして メイクアウィッシュ財団 をご存じでない?

メイクアウィッシュ財団

Make-A-Wish Foundation(当記事では「メイクアウィッシュ財団」で統一する)とは
1980年にアメリカで誕生したNPOで
主に 難病と闘う子供の願いをかなえる という活動を行う ボランティア団体 である。
現在では日本を含めた各国に支部があり、今日も病に苦しむ子供のためにがんばっており
異常な物体を日夜せっせと収容している怪しい組織とは まったく関係がない

メイクアウィッシュ財団は我々が生きる世界に 実在する組織 だが、
SCP財団の存在する基底世界にもあるらしい。

ということでメイクアウィッシュ財団が病気の子供を励ましに行くと
その中の特に重病の子のところにSCP-4468が出現する。
そしてその子は 3週間後に死ぬ という寸法だ。

いくらメイクアウィッシュ財団は異常存在なんて知らないとはいえ
そんな怪現象が頻発したら不思議に思うしSCP財団の耳にも入るというものだ。

収容プロトコル

なぜSCP-4468が出現するのか?という原因については解明できていないが
出現したSCP-4468自体は危険性が低い上に、
性質上、SCP-4468は出現して 3週間で異常性の無いぬいぐるみに変わってしまう
なので収容プロトコルは
  • 出現する原因の調査は行うが、出現したSCP-4468自体に特殊な収容措置は行わない
  • 倫理委員会の指令 により、SCP-4468-Aへの影響を考えてSCP-4468の出現の妨害などを行わずSCP-4468-Aに与え様子を見る
  • 異常性の消失したSCP-4468は回収して、研究チーム内の 欲しい人にあげる
以上である。
複雑な気分になるが、この件は情報封鎖だけで処理できる上にSCP-4468が出現した子供は 遠からず死んでしまう ので
現状の対応で十分ということである。対処としてはSCP-4999に近いな。
さすがのSCP財団も病気で苦しんでいる子供の心の慰めになっているぬいぐるみを奪ったり
あえて傷つけるような実験はできなかったらしい。

インタビュー記録

子供の人権をないがしろにする実験は行わないとしても調査は必要だ。
SCP財団はメイクアウィッシュ財団と連携を取り、
SCP財団エージェント・ダマスクスを「メイクアウィッシュ財団所属の看護師」という設定にして
録音機を忍ばせてSCP-4468-Aにインタビューを試みたのだった。

日時:1988年5月12日
インタビュアー:エージェント・ダマスクス
インタビュー対象:SCP-4468-A-32の少年「マッキントッシュ・イヴァーセン」その母「アイリーン・イヴァーセン
※SCP-4468-A-32はSCP財団がインタビューを行えた初のSCP-4468-Aである。

ダマスクス : おはようマック、ミセス・イヴァーセン。今朝の気分はどうかしら?
マック少年 : ……。
マックの母 : ごめんなさいね。この子は新しいナースには人見知りをするんです。数時間前にグリーン先生へ「気分がよくなかった」と答えたんですけどねぇ…。
ダマスクス : そうだったの。私を怖がらなくていいのよ坊や?私はあなたの具合を見たいだけなの。ね?
マック少年 : …うん、いいよ。
(ダマスクスはA-32や医療機器の数値を確認しながら、脇に置いたSCP-4468に顔を向ける)
ダマスクス : 素敵なクマちゃんね。私が子供の頃に持っていたのにそっくり!
マック少年 : …本当に?
ダマスクス : ええ!彼の名前は「 騎士レジナルド・スクープス3世 」っていうのよ。
マック少年 : あははっ(笑った後に咳をしだす)
ダマスクス : これ言うとみんな笑うんだけど変な名前じゃないでしょ?かわいそうなレジナルド3世ね。
マック少年 : おもしろいね
ダマスクス : そうね。これ私が自分で考えた名前なのよ。
ダマスクス : (SCP-4468を見ながら)このクマちゃんはお母さんが?
マックの母 : いいえ、お医者様がプレゼントしてくれたのだと思ってました。私は買っていないし30分前にここに来たらそこにあったのよ。

マック少年 : ミスター・ベアが僕にくれたんだ。「 僕のことを思ってる人々 」からだって。
マックの母 : ミスター・ブライアン?
マック少年 : 違うよ、ベアさん。ミスターベアはすごくいい人でね、クマをくれる前にいろんな手品を見せてくれたんだ。
ダマスクス : その人は会ったことがある人なの?
マック少年 : ううん…。
マックの母 : わかったわマック、メイクアウィッシュ財団のお友達の一人なのね。
ダマスクス : かしこい坊や、君がいけないわけじゃないけどママに内緒でプレゼントをもらうのはよくないことよ。
ダマスクス : ミスターベアに再会したらちゃんとお礼を言いましょうね。彼がどんな姿だったか覚えてる?
マック少年 : えっとね…黒髪で、背がすごーく高かった。それで白と青のスーツを着ててね、顔はこんなだったよ(SCP-4468を掲げながら)
ダマスクス : クマさんのお顔は覚えたわ。それでベア氏は他にどんなことを君にしてくれたの?
マック少年 : (SCP-4668を抱きながら)いつも一緒にいてくれる最高の友達をくれたよ!
ダマスクス : 素敵!

(仕事の都合でやむを得ず母親は帰っていった)
ダマスクス : お母様お忙しいのかしらね。
マック少年 : ママはあまり来られないんだ。
ダマスクス : ごめんなさい変なこと言っちゃって…ねえ、いくつか質問してもいい?
マック少年 : いいよ。
ダマスクス : ミスター・ベアのことをもう少し教えてほしいな。
マック少年 : 面白い人だよ!耳の穴から風船を膨らませたりするの。
ダマスクス : 他に変わったところは?
マック少年 : うーん…ベアが来た時には周りに他の人がいっぱいいたんだ。でも彼が 指を鳴らしたらみんな寝ちゃった の。
ダマスクス : そのあとに何かしたの?
マック少年 : 「 僕の具合を良くしてくれる 」って言ったんだ。
ダマスクス : え!?…どうやってそうする気だったのかしら。

マック少年 : 目を閉じて手を出してって言った…でも誰にも言っちゃダメだって…。
ダマスクス : 私はあなたのナースで、友達でしょ?あなたの秘密を教えてくれても、他の人に言ったりしないわ。
マック少年 : 本当に?
ダマスクス : 約束するわ。
マック少年 : (顔を近づけてそっとささやきながら)ベアさんは「痛っ」って言った後に僕の手を握ってきたんだ。
マック少年 : その手は濡れてて…それから僕は急に 疲れちゃったんだ
ダマスクス : 疲れた!? …それでどうしたの?
マック少年 : ずっと動けなくて疲れちゃったの。その後にベアさんの手が光って…絆創膏を巻いたんだ。
ダマスクス : 怪我をしてたのね。
マック少年 : うん。ミスター・ベアはまた来てくれるかな?他の手品も見てみたいんだ。あの時は疲れちゃって他のことはわからなかったの。
ダマスクス : 彼を探してもっと手品を見せるように頼んでおくわね。
マック少年 : (弱弱しくうなずく)
ダマスクス : ミスター・ベアはあなたの「具合を良くする」と言ったのよね?
マック少年 : それで僕はすっかり疲れちゃったけど…でも代わりにこっちのクマが来てくれたよ。僕すごい幸せなんだ。
ダマスクス : マック…君はとっても良い子なのね。
マック少年 : お姉ちゃん、お願いがあるんだ。
ダマスクス : なあに?
マック少年 : このクマの名前、 レジー にしてもいい?
ダマスクス : もちろんよ。いい名前だわ。

このインタビューの 2週間後 にマックは 亡くなった
確かに当初からマックは余命宣告を受けていたが、診断によれば余命は 半年以上ある とみなされていた。
それが早まった原因は言うまでもないだろう。

補遺:ジャスティン・エバーウッド博士の受け取った手紙

1999年2月27日、SCP財団GoI-386調査チーム内のエバーウッド博士が
オフィスの財団内部向けメールボックスの中に見覚えのない手紙を発見した。
GoI-386調査チームはSCP-4468の情報を共有していなかったので当初は混乱したが
手紙の内容と追跡調査の結果、SCP-4468関連の手紙であることが判明した。

+ 手紙の内容を読む
淡黄色の封筒に大きな紫色と書かれた封蝋がされていた。

親愛なるSCP財団 様

C.M.ワンダーテインメントが急死し、彼の業務を引き継いだ件についてご連絡いたします。
それにともない前任者の手掛けていた「 願いを叶える遠隔抱っこ人形™ 」シリーズや
関連商品の販売を停止したことをお伝えする義務が当方にあると感じた次第でございます。
現在の「ワンダーテインメント博士」としましては原料に 子供の魂 を用いる商品開発に価値を感じておりません。
重篤な疾病に苦しむ子供となればなおのことです。
今後のメイクアウィッシュ財団様とのお取引は匿名による経済的支援に限ることを保証するとともに
ご迷惑をおかけした皆様方には深くお詫び申し上げます。

1999年2月24日
"とびっきりの願望の叶え手" H.L.ワンダーテインメント博士

いつものノリが一切ないガチの謝罪文じゃねえかこれ。

だがこの「前任者」は現在のワンタメ博士のスタンスに反していたようだが、
子供を苦しめる外道 と一言で断罪するのは難しい。
余命1年未満の子供の寿命をさらに削り取っていくのは確かに酷いのだが、
死の恐怖が迫る中で実の親すら満足に傍にいないマック少年のような子供に対しても
ずっと「その瞬間まで」子供の隣にいる分身を生み出していたのだから…。
ディスカッションによれば子供の近くにいれないマック母のような親に持たせて、会えなくても抱きしめてあげるという用法も想定しているらしい。


SCP-4468 Take-a-Wish(願いを得る)


追記・修正は子供の願いを叶えてからお願いします。


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最終更新:2025年03月19日 16:33