SCP-3293

登録日:2020/02/07 Fri 00:13:54
更新日:2024/04/05 Fri 22:35:42
所要時間:約 8 分で読めます





もう一度、ただいまを言いたくて。


SCP-3293とは、シェアード・ワールド「SCP Foundation」において登録されたオブジェクトの一つであった。
オブジェクトクラスは「Keter」を経ての「Neutralized」。



説明

SCP-3293はアメリカ合衆国オハイオ州コロンバスに在住していたクーパー・ウェルズ君その人であった。彼の異常な性質は、頭の中で想像した機械を科学的・物理的法則を無視して作り出すことができる というものであった。

実は彼、クラスII現実歪曲実体、即ち現実改変者であり、その辺にある適当なパーツでトースターやテレビ、果ては原子炉やテレポートマシンまで作成出来た。
但し、本人はこの異常性が特に珍しいことでもないように思っていたらしく、当初財団に確保されるまでは、クーパー君の家族も特に不審に思ってなかった。


そもそも、どうやってこのヤバい能力をもった少年を見つけたかというと、コロンバスの小郊外中央に位置するオハイオ州大学の施設に潜入していた財団エージェントから、

財団エージェント:なんかどっかの家の小屋から、ものすごく高い放射線が出てるんだけど誰か調査してくれ!!

と報告があったためであった。調べた結果、クーパー君の家の小屋だったらしく、中にはアルミニウムホイル赤いコーヒーカップで作成された、原子炉が発見された。クーパー君曰く『トースター』らしく、以前にマカロニ&チーズを作った痕跡が残っていた。放射線はここから放出されていたのだ。


ここまでで分かることは、
  • クーパー君はイメージした機械を既存の法則を無視して、その辺の適当な部品でどんなものでも作ることが出来るよ。
  • だけどまだ幼いから、それが危険なものだったとしてもよく分からずに使ってしまうよ。


そりゃ安全性の薄い原子炉なんかつくれる異常存在なんぞ、危険で仕方がない。ましてや幼いとはいえ彼は現実改変者である。すぐさま財団はクーパー君を確保し、サイト-81にてその能力の確認を行っていた。

ところがクーパー君はサイトを抜け出して、勝手に家に帰ってしまうことが度々あった。この際、その辺の部品でテレポートマシンを作って抜け出していたことが判明している。完全に収容違反である
しかし無理もない。幾らオブジェクトだとはいえ、彼はまだ幼い少年であった。両親の温もりを求めて家に帰りたいと思う気持ちを誰が否定出来ようか。

そこでクーパー君の両親に、倫理委員会の通達のもと、彼自身がとても稀な病によって隔離されていると伝え、一時的にEクラス職員として雇用し彼の側に居させるという方法をとった。勿論彼らには財団の情報やクラスの詳細などは伏せたままでであるが。
当初、この方法は効果を現しており、雇用から最初の3か月の間は、収容違反を未然に防ぐことに成功した。



収容違反、再び

ところが2018年2月14日にSCP-3293はまたしても収容違反を犯した。
どうやら、Eクラス職員として側にいた両親が彼を唆したらしく、急遽財団は二人を解雇し、クーパー君に纏わる全ての記憶を消去して全くの別人にしてしまった。

財団は冷酷だが、残酷ではない。彼らの仕出かしたことは紛れもない危険なことではあったものの、彼らもまた財団が守るべき人々の一員である。故に彼らの命は奪わず、出来うる限りの罰で済ませた。

その後クーパー君SCP-3293はテレポートマシンを作って両親に会いに行ったものの、二人は既に彼のことを忘れてしまっていた。当然である。財団が記憶処理をしてしまったのだから。放心していたところを財団職員に再確保された。

その後も何度か抜け出しては両親に会いに行ったものの、やはり二人はSCP-3293のことを思い出せず仕舞いであった。そして財団職員に確保されるという何時ものパターン。

これらの出来事から、SCP-3293の財団職員に対する対応が、非常に攻撃的となる。食事と睡眠以外では暴れたり、自分の能力で作った機械で職員に害を成すようになってしまったのだ。

よって特別収容プロトコルは以下のように改定された。


  • SCP-3293には娯楽を含めたセル内の物質が存在しない状態を保て。
  • 常に拘束しろ。
  • SCP-3293には衣類もその他の私物も禁止にする。
  • 食事は薬で沈静化させた後に拘束し、食事は栄養チューブで与えろ。この際、他の職員が同情したりしてSCP-3293を解放するようなことをしたり、SCP-3293が目覚めた瞬間、適当な部品でヤバいアノマリーを作らないよう迅速にやれ。

財団は冷酷だが、残酷では................。

無論、倫理委員会がこれを見逃す訳などなく、近い内に査定が入る予定であった。



補遺3293.4: 無力化

2018年8月17日、検査を行おうとした職員の隙を突いてSCP-3293が攻撃しその場から逃走を図った。この際、職員から奪った鍵のリングで「レーザーガン」を作成し、職員を失神させた。

この隙にSCP-3293は適当な部品で財団施設から逃亡するための機械を作成しようとしていたと思われる。収容セル内の監視カメラには、SCP-3293が頻りに「家に帰る」という言葉を繰り返している場面が録画されていた。

繰り返すが無理もないと言わざるを得ない。幾ら現実改変者だとしても、彼はまだ幼く複雑な仕組みを理解出来なかった。ましてや、彼はただ家に帰りたかっただけなのだった。


しかし何の因果か、予想もしないアクシデントが発生した。完成したデバイスに欠点があったのか定かではないが、過剰なアラーム音を鳴らし、SCP-3293の肉体を大きく変化させてしまい、不恰好な怪物へと変身させてしまったのである。

言語は不明瞭となり、肌は多くの部分が没落し、四肢は長く伸びて様々な箇所を破壊した。この時に、SCP-3293は自分でもパニックに陥っていたことが監視カメラで確認できた。そして最後に、追加の収容職員が扉に迫っている中で、SCP-3293を怪物へと変身させた機械が突然大爆発を引き起こし、SCP-3293自身と二人の職員が命を落とす結果となってしまったのであった。


こうしてSCP-3293はオブジェクトクラスがKeterからNeutralizedに再分類され、残った怪物と成り果てた死骸は、解剖の後に焼却処分された。



補遺3293.5: 

回収された異常デバイス以下は、SCP-3293が財団に収容されてから無力化されてしまった間に作成された。


  • 3293-A-1
説明:粗雑なトリウム原子炉に取り付けられた“イージーベイクオーブン”で、まず外側に複数の空のブリキ缶と懐中電灯、そして機能しないラップトップコンピュータで組み立てられている。
目的:SCP-3293のためにスナック菓子を発生させる目的で創られた“トースター”。

  • 3293-A-4
説明:空のマッチ箱にテープ止めされたプラスチック製の“曲がるストロー”。
目的:小型の携帯電話のように機能する。

  • 3293-A-6
説明:標準仕様の枕元用ランプの周囲に巻かれたコットン製の靴下一足。
目的:クッキーを物質化する。

  • 3293-A-9
説明:靴ひもで結ばれた3つの鉄製ベッドスプリングで、タオルに貼り付けられており頭に被ることが可能。
目的:テレポート用のデバイス。

  • 3293-A-14
説明:モップの柄の終端に取り付けられた標準仕様のスリッポン式サンダル。サンダルの終端は剃刀のように鋭利である。
目的:シャベルとして機能するデバイスであり、あらゆる物質を掘削することが可能であるように見受けられる。

  • 3293-A-21
説明:スタイロフォームのカップに結ばれたブラスチック製のスプーン。
目的:3293-A-4に似るも、SCP-3293の初期収容サイトにのみ電話を掛けることができる。

  • 3293-A-22
説明:詳細不明の破損した物体。
目的:この人工物は対象人物の記憶処理の影響を無力化するものと見られる。SCP-3293の無力化のおよそ5時間後に不活性化した。


彼は確かに強力な現実改変能力を持っていた。しかし彼はまだ幼い少年でもあった。
ただ家族が待つ暖かな、いつもの家に帰りたかっただけなのだ。

しかしその機会は永遠に失われた。他ならぬ財団に関わってしまったことで。

もしもの話、彼がこのまま自らの異常性を理解したまま大人になったとしたら、犯罪行為に走った可能性も否定出来ない。もしかしたら、異常性を更に悪用して財団の大きな障害へとなっていたのかもしれない。彼の中に予め怪物になる「素質」があったのかもしれない。

だが忘れてはならない。
先の危険性に気を取られるあまり、その幼い少年を実際に怪物へと追いやってしまったのが紛れもなく財団だということを。

財団の過ちは、確保・収容に拘りすぎて、保護を疎かにしていたことだ。



本当に彼は、家族の元に帰りたかっただけだったのだ。故に諦めることができなかった。
例えそれが、どこぞと知れぬ連中に



SCP-3293


お前は家に帰れない(You Can't Go Home)




と言われ、自由を奪われようとも。



なんでもできる天才は、なんでもできちゃう怪物なんだよ、坊や。



余談

元記事には収容前のSCP-3293の写真が添付されているが、これは原著者の一人であるDJカクタス氏の弟の写真とのこと。


確保・収容、そして「保護」を胸に刻み、追記・修正をお願いします。


SCP-3293 - You Can't Go Home
by Joreth, djkaktus
www.scp-wiki.net/scp-3293
ja.scp-wiki.net/scp-3293(翻訳)
この項目の内容は『 クリエイティブ・コモンズ 表示 - 継承3.0ライセンス 』に従います。
この項目が面白かったなら……\ポチッと/

+ タグ編集
  • タグ:
  • SCP
  • SCP Foundation
  • SCP-3293
  • 現実改変者
  • djkaktus
  • Keter→Neutralized
  • 胸糞注意
  • Joreth
  • オハイオ州
  • Neutralized
  • 子供
  • 現実改変
  • 故人
  • 財団やらかし案件
  • 確保、収容、保護
  • 確保・収容・保護

このサイトはreCAPTCHAによって保護されており、Googleの プライバシーポリシー利用規約 が適用されます。

最終更新:2024年04月05日 22:35