SCP-1177-JP

登録日:2020/06/27 Sat 00:57:12
更新日:2025/05/30 Fri 03:11:42
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やあ諸君。君たちは新しくSCP-1177-JPの研究員、それから収容スペシャリストとして任用された職員…ということで合っているかな?まあそう力まずに、楽に椅子に腰かけてくれ。

私はこのサイト-8119の管理官だ。これから君たちにSCP-1177-JPについての説明をしていくのだが、君たちはもうSCP財団についての基本的な知識は身につけたかい?もしあまり理解できていないようならこの先の説明を聞くのは難しいことだろう。1週間後に説明要旨を送るから、それまでじっくりと勉強してくれ。

…大丈夫そうだな?それでは、財団職員の諸君。歓迎しよう。このSCPオブジェクトの管理を任される身として、必要なことを説明しよう。

概要


SCP-1177-JPはSCP Foundation日本支部に収容されている怪異だ。…いや、厳密に言えば完全な収容はできていない。

オブジェクトクラスKeterだ。財団的にはお手上げ一歩手前の状態ってわけだ。それでも我々は最善を尽くす必要があるが。

このオブジェクトは4つの要素で構成されている。

まず、SCP-1177-JP-Aとそれに伴うSCP-1177-JP-αだ。

SCP-1177-JP-Aはインターネットの海に出現する文章だ。いつ出てくるかは予測できない。財団も二桁ほどしか収容できていない。それに誰が作り、誰が送信しているのかも不明だ。

手元のプリントに異常性のない、SCP-1177-JP-Aのコピーを用意した。
文面には
「第██表 ????年度X月X日 死因順位(第1~5位+第4131177位)別 性別死亡数・死亡率・[削除済](人口██万対)・構成割合█」
と書かれているのが分かるだろう。その下にはそれを表すグラフが記されている。内容はこれだけだ。

一応、1~5位までは正確な数値が表示されるのだが、そもそも、死因第4131177位などというものは存在しえない。死因をどれだけ細かく分けたとしても7桁に及ぶことなどありえない。*1それで、「????年度」はこいつが出現する翌年の年数が書かれる。*2

SCP-1177-JP-Aのオリジナルを完全に読んだ人間はSCP-1177-JP-αに指定され、後に説明するSCP-1177-JP-Bに影響されるようになる。逃れるには記憶処理が有効だ。もし事故が起きた場合には、応急処置として覚えておくように。さっきも言ったが、コピーペーストした物は異常性を発現しない。

SCP-1177-JP-Bはこいつによって起きる現実改変だ。日本支部の現実改変と言ったら、長野の大穴みたいなロクでもない奴や普通でありたかった木偶人形みたいな変わった奴ばかりだが、こいつは前者だ。

内容としてはまず、SCP-1177-JP-αの中から、文書で指定された人数がランダムに選ばれる。そして選ばれた人間は、記された期日までに、その死因で死ぬことになる。指定された死因(これをSCP-1177-JP-βと呼称する)の中には、現在(少なくとも現代社会において)認知されていない病気なんかもある。一度これが発生してしまったら、確実に指定された人数が死ぬ。妨害することはできない。

以前財団はSCP-1177-JP-αを全員確保し、記憶処理を施したが、結局別の人々が、指定された人数で、指定された死因で死んだ。原因は不明だ。

質の悪いことに、SCP-1177-JPは周りの人間を巻き込んで、死にはしないが被害をもたらしたり、別の現実改変を引き起こしたりする。

…さて、ここまでの事で質問はあるかい?大丈夫そうなら、次に進もう。

SCP-1177-JP-βの例


いくつか紹介しよう。詳細は報告書の方を読んでほしい。

事例1 SCP-1177-JP-β-2

死因・死亡者数: 過剰哄笑による急性呼吸疾患及び気管機能低下・13人

これは複数の掲示板で表示されたらしい。

笑いすぎて死んだ人は実際にいる*3が、独立した死因としては認められていない。発見される二か月前に財団フロントの病院が、バラエティ番組の視聴中に呼吸困難で死亡した男性がいるという事件をつかんでおり、このオブジェクトが関係していると結論付けられた。

事例2 SCP-1177-JP-β-7

死因・死亡者数: 痙攣性吸呼気障害レベル1・10人

くしゃみで頭蓋骨や頸椎が折れるという意味の分からない死因だが、これの所為で「くしゃみは偶に大けがを引き起こすヤバい現象である」という現実改変が起こり、くしゃみが原因で顎が外れたり、軽く骨を折った人がかなり発生してしまった。

事例3 SCP-1177-JP-β-13

死因・死亡者数: 癌(悪性新生物)・1人

え?ガンは普通の死因じゃないかって?…確かに、これで死んだ一人に関しては通常のガンと何の違いも見受けられなかった。
ただ、常に日本の死因において表彰台に乗り続けているガンが減少した結果、なんかよく分からない病気が多発して大惨事を引き起こした。まあ日本支部はこの事態を予測していたのですぐ対処された。
死因第4131177位という数字が、間接的に統計に影響を及ぼしてしまうことが判明した一件でもある。その効果範囲はいまだに不明だ。

実験


2002年八月、██博士は一人のDクラス職員を使った実験を行った。


うむ、まあその…なんだ、結局我々の妨害は意味をなさないということが分かったのだ。

特別収容プロトコル


それでは、君たちにこのオブジェクトをどうやって収容すればいいのか説明する。

24時間、交代でインターネットを監視するんだ。SCP-1177-JP-Aを見つけたらすぐに隔離して、こいつを見た人物を全員特定してくれ。そいつらには専用の部隊がクラスB記憶処理を施し、脳震盪に偽装する。見つけたオブジェクトはデータ隔離庫に厳重に保管してくれ。もし直視してしまったら、…いや、どう頑張っても避けられないんだが、50分以内にクラスB記憶処理を受けてくれ。

SCP-1177-JP-Bが発生したら、その被害規模を測定したうえで、SCP-1177-JP-βを調べてくれ。必要に応じて記憶処理や、カバーストーリーを用いても構わない。もし一定規模以上の現実改変が発生した場合は、私に連絡すること。 セキュリティクリアランス レベル4以上の職員10名以上が許可した際、緊急時用の「アヌラ・プロトコル」を発動するように。できれば、そんな事態にはなってほしくないがな…。

補遺


一つ忘れていたが、もう一つ、SCP-1177-JP-βが確認されている。

対象: SCP-1177-JP-β-██(仮称)

死因・死亡者数: 椰痲ヰ・██████人

人数は2桁万人、文字通り桁違いの現実改変が予想され、アヌラ・プロトコルの発動準備がなされた。しかし、結局当日は何も起こらず、「椰痲ヰ」なる死因で死亡した人物も確認されなかった。現在はこの事例に関して調査が進められている。

これで一通りの説明は終了だ。業務に何か変更があった場合はこちらから連絡する。それでは、ここまでお疲れ様。各自の部屋に一度戻るように。

ああ、それからそこの君。君は少しここに残って、追記・修正を手伝ってほしい。他の諸君は戻っていいぞ。
































もお みんな き た? てる



































まあ君なら、私がここに呼び止めた理由が何となくわかるだろう。君はアニヲタの財団職員だが、ここにとどまって、ただ単に追記・修正をしてほしいと、そう私が頼み込むわけがないだろう?

そうだ。その、「ガワ」としての君に言っているわけではない。「本体」としての君に言っているのだ。

多分、ここに送られてきたショックの所為で肝心なことは覚えていないと思う。何故ここに存在できるのか、何故私が君の正体を知っているのか、疑問に思うだろう。安心しろ。今から全て教えてやろう。一応念押ししておくが、私は君の仲間だ。

真相


SCP-1177-JPは、我々がここに存在できるように開発された兵器だ。我々のもともと住む次元は、滅亡寸前だったのは覚えているだろう?そこで、この地球に移住することにしたのだ。

それで、我々は当然この世界に適応できる「身体」というものを持っていない。だから擬態するための「殻」が必要だった。SCP-1177-JPとは、その開発機材を兼ねて作られたものだ。

SCP財団という存在は、我々にとって都合のいいものだった。すなわち、社会に知られないように、自然な形で我々の存在を秘匿してくれるのだ。

SCP-1177-JP-Aは人間のデータを収集するための装置だ。そもそも我々の技術では、最初は文書媒体の改変による現実改変を用いないとこの世界に干渉できなかった。その技術を応用して、SCP-1177-JP-βと呼ばれている現実改変を行いながら、間接的にあの媒体を見た人間のデータを解析していたのだ。人間を選んだのは、文書媒体を認識してくれるのは人間だけで、ほかの動物では当然ダメだったからだ。

D-9853を用いた実験を行ったときには、すでに人間に擬態するための「殻」の試作品が出来ていた。まあアレは不完全なものだったから、うまく出現できずに終わったがな…

人間のデータを効率よく回収しつつ、目立たないためには、あえて財団の目に留まる方法を選ぶのが最適だった。我々はなかなか、賢い種族だと思わないかね?現実改変で一気に滅ぼしてしまっては、この世界に出現する「殻」が手に入らないのでね。

哀れにも死んでしまったSCP-1177-JP-αに成り代わり、すでに何人かはこちらの世界に移住してきている。そのうちの一人が、私というわけだ。まあここの矛盾は財団の都合のいいように記憶処理でどうにでもなる。補遺の段階で、我々は「殻」を量産することに成功した。

そして我々は、一気に6桁人に及ぶ同族を出現させた。この殻には「椰痲ヰ(やまい)」という名前が授けられた。これの開発に携わった者たちのネーミングセンスを、私は褒めてやりたい。

今はまだ、我々はばれないように大人しく生活していなければならない。安心しろ。この部屋は外部との伝達を一切遮断してある。この地球が我々の種族にとって代わられるのも時間の問題だろう。

今はまだ、待て。そして、然るべき時には、今度は君が、我々の仲間に教えてやるのだ。

この「殻」を脱ぎ捨て、本当の姿で地球に存在できるようになるまで、少し辛抱してくれ。

…それでは、この記事の追記・修正に当たってくれ。




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最終更新:2025年05月30日 03:11

*1 ちなみに、WHOの公表している「疾病及び関連保健問題の国際統計分類」でも、制定されている死因は100種類ほどだ。

*2 2020年に発生したとしたら、「2021年度」と書かれるわけだ

*3 Wikipediaより:笑い死にhttps://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%AC%91%E3%81%84%E6%AD%BB%E3%81%AB