シャフリヤール(競走馬)

登録日:2025/07/25 Fri 06:26:10
更新日:2025/07/27 Sun 19:32:33NEW!
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シャフリヤール(Shahryar)は日本の元競走馬

目次

【データ】

誕生:2018年4月13日
父:ディープインパクト
母:ドバイマジェスティ
母父:Essence of Dubai
調教師:藤原英昭(栗東)
馬主:サンデーレーシング
生産者:ノーザンファーム
産地:安平町
主戦騎手:福永祐一(3歳まで)→クリスチャン・デムーロ(4歳以降)
獲得賞金:15億1845万9600円
通算成績:18戦4勝 [4-3-4-7]
主な勝鞍:21'日本ダービー(G1)、22'ドバイシーマクラシック(G1)、21'毎日杯
特記事項:22'ジャパンカップ(G1)2着、24'ドバイシーマクラシック2着、有馬記念(G1)2着

【概要】

2018年4月13日生まれの黒鹿毛の牡馬。
父は説明不要の“衝撃の英雄”ディープインパクト
母ドバイマジェスティもBCフィリー&メアスプリントを制するなど一線級の活躍馬であり、全兄に2017年の皐月賞馬アルアインがいる。
馬名はペルシャ語で『偉大な王』を意味するが、ファンからは捩って『大帝』と呼ばれている。
なお、ドバイマジェスティの子はこの兄弟を含めた大半がサンデーレーシング所有だが、軒並みアラビア語やペルシャ語を由来とした馬名が付けられている。

【現役時代】

王の旅路、その始まり

2020年10月25に京都競馬場の2歳新馬戦芝1800mでデビュー。
新馬戦を勝利するも次戦の共同通信杯ではエフフォーリアの3着に敗れる。
しかし続く毎日杯*1をレコードタイムで制し、満を持して挑んだ日本ダービーでは無敗の皐月賞馬エフフォーリアを馬群を割って内側から強襲、一完歩毎に差を縮めながらほぼ並んでゴール板を駆け抜けるという熾烈なレースを展開。結果、写真判定の末ハナ差で、しかもまたもレースレコードで勝利し、ディープインパクト産駒7頭目(そして最後)のダービー馬となった。そして鞍上の福永祐一騎手は歴代3人目となるダービー連覇ジョッキー*2となった。
夏は休養し、秋初戦の神戸新聞杯では1着のステラヴェローチェから大きく離された4着と敗北する。続くジャパンカップではレース序盤で内ラチに激突するという不利を受けながらも、前年の無敗の三冠馬コントレイルを始めとする古馬たち相手に互角以上に渡り合い、3着と健闘した。

世界に轟く大帝、そして苦難の道

2022年初戦となったドバイシーマクラシックではクリスチャン・デムーロ*3を鞍上に迎えると先行策でレースを進め、最終直線では前年のジャパンカップで後塵を拝したオーソリティをかわし、外から凄まじい末脚で猛追してくる前年のBCターフ馬ユビアーをクビ差で凌ぎ切って見事1着。ハーツクライジェンティルドンナに続き日本馬としては3頭目(GⅠ昇格前も含めるとステイゴールドが勝利しているため4頭目)のドバイシーマクラシック覇者となった。なお、日本ダービー馬として海外GⅠを勝利したのはシャフリヤールが初である。
しかし秋は秋天ではイクイノックスの5着・JCではヴェラアズールの2着に敗れ、翌年も前年覇者としてドバイシーマに出走するもイクイノックスがレコード勝ちするのを5着で見届けた。
その後はBCターフ目標の前哨戦として、かつて21年ダービーでハナ差で負かしたエフフォーリアの鞍上・横山武史騎手を新たに迎えて札幌記念に出走するも初の掲示板外となる11着の大敗、更にはレース後に喘鳴症を患っていたことが発覚し、一時期BCターフ遠征も危ぶまれていた。
ただ患ったのは喉頭蓋エントラップメント*4であり、幸い術後も良好だったことから予定通りBCターフ遠征を実施。
レースでは同じディープ産駒で英愛ダービー馬でもあるオーギュストロダンとダービー馬同士の夢の対決が実現。
道中は前寄り内ラチでレースを進め終盤鞍上が内ラチから持ち出して追い出しにかかったが、内ラチが開く瞬間を待って抜け出したオーギュストロダンを追うも3着に終わった。
しかし最後は鞍上の判断で明暗が分かれたようなもので、この馬の実力が衰えていないことを証明した結果でもあった。
この好走によって獲得賞金が10億を越え、21年世代では初めて10億越えも達成した。
次走は香港ヴァーズの予定だったが、現地入り後の馬体検査で不整脈の疑いがあったことから出走取り消しに。幸いにも大事に至らなかったことから急遽有馬記念の出走を決定。
レースではスタートから4番手でレースをすすめ、最終直線で3番手のプラダリアを捉えるが、逃げるタイトルホルダーと2番手のスターズオンアースは捉えられず、更に後方から追い込んできたドウデュースとジャスティンパレスに交わされてしまい5着*5。それでも、香港での出走取消から短時間で立て直した上で、GⅠホース以外に先着を許さなかったのだから、十分健闘したと言えるだろう。
なお着順こそ同期に負けたが加算賞金では僅かにタイトルホルダーを上回り21世代ではトップ、彼と共に10億越えを達成した。

6歳になった初戦には3年連続出走となるドバイシーマクラシックを選択、前年覇者不在ながらもオーギュストロダンやスターズオンアースとは2度目の対決。
しかしリバティアイランドなどの数々の有力馬に人気を奪われ8番人気、スタートは出遅れることなく前目でレースを進め、最後は1着馬レベルスロマンスに逃げられるも2着を確保しまだ実力が衰えていないこと証明した。
次走は、昨年喉鳴りでまともに走れなかった札幌記念。有馬記念でコンビを組んだ松山弘平騎手が再度手綱を取る予定だったが、騎乗停止になってしまったため、新たに武豊騎手とコンビを組むことに。
その後は、再び渡米して前年同様BCターフへの出走し3着好走。帰国後は有馬記念にて再びダービー馬複数頭による激突が繰り広げられることに。ファン投票では28位…だったが、よりによって枠順抽選会で大外16番を引いてしまった。後日、開き直ったのか藤原調教師はなんと逃げ宣言
ドウデュースが跛行による無念の取消となった本番では逃げこそ不発で中団後方になるものの、4コーナーからじわじわとまくり上げて叩き合いに持ち込み、最後はホープフルS勝ち牝馬レガレイラとの接戦の末ハナ差2着。前年のスターズオンアース同様、大外16番から連対に食らいついた*6
勝利は遠ざかったものの第一線で健闘し続け、ダービーだけでは終わらないダービー馬として力を見せたシャフリヤール。そんな彼は有馬記念を最後に引退。社台SSで種牡馬入りが決まった。
なおG1勝利数こそ2勝だったが2023年札幌記念を除き掲示板をキープし続け、6歳まで数々のG1で連帯・掲示板内に入線した結果、獲得賞金は15億1845万9600円と父を超え、牡馬産駒で一番稼ぎディープ産駒としてもジェンティルドンナに次ぐ2番手。
日本競馬史に残る活躍を見せた同世代の中でも1番の稼ぎ頭となり、ダービー馬としての威厳を保った。なお引退した翌年に同期のソウルラッシュがドバイターフ勝利で約12億稼いだため今後抜かれる可能性はある

【引退後】

引退後は種牡馬入り。
価格は250万円に設定され先に種牡馬入りし、毎年100頭以上と交配・産駒を増やしているクラシックを分け合ったライバル*7と競い合うことになる…はずだった。

初年は74頭の牝馬と交配していたのだが翌年7月の頭に、シャフリヤールは関係者と協議の末に初年度で種牡馬を引退することになってしまった。
74頭という頭数がそもそも初年度にしては少ないのだが、人気が見込めると断言できるほどではなく、引退が事前に決まっていなかったため良質な肌馬は既に予約が埋まっており、社台SSも肌馬を集められなかったという事情があったのを加味すれば理解できる程度である。
問題は、74頭の中から受胎したのが10頭足らずという壊滅的な受胎率*8だった。
どうやら生殖器の病気があったらしく、繁殖期後半には全くと言っていいほど受胎せず、検査の結果精子が殆ど動いていなかったとのこと。*9
公式発表前からSNSなどで牧場側からの「受胎率が良くないから他の種牡馬を勧められた」というの真偽不明の情報が出ていたが、それを裏付ける事実となった。

社台SSには他にも受胎率が良くないまま供用される種牡馬はいるものの、『元々の種付け総数が少ないが産駒の当たり率は高い』『日本ではマイナーな血統で競合相手が少ない』などの事情があり、彼の場合も改善のためにできる手立てはされたようだが
主流中の主流であるSS系・ディープ血統であり*10、特に社台SSにはライバルが多い
他ならぬ全兄アルアインがブリーダーズ・スタリオン・ステーションにおり、苦戦はしているものの重賞馬も輩出しており、まだ活動が見込まれる』
と、言い方は悪いが血統的にはかなり「代えが利く」部類の馬であり、改善が見込めないようなら残すことはできないというのは致し方ないところだろう。

確認できた受胎数もこれから流産や生後直死という可能性もあるため、貴重な産駒が無事生まれ、そして血を繋げられることを願うばかりである。*11
以降はノーザンホースパークにて功労馬として過ごす事になる予定である。

【余談】

シャフリヤールは長距離遠征する機会が多く、18戦中6戦が海外でのレース。
そのため飛行機による輸送を何度も経験しており、その総移動距離は概算で11万1490kmにもなるとか。


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最終更新:2025年07月27日 19:32

*1 ちなみにアルアインも毎日杯を制している。

*2 2020年コントレイルと本年のシャフリヤール。ちなみに1人目は武豊(1998年スペシャルウィーク、1999年アドマイヤベガ)、2人目は四位洋文(2007年ウオッカ、2008年ディープスカイ)。

*3 日本ですっかりお馴染みとなったイタリア出身の名手、ミルコ・デムーロ騎手の弟。2020年凱旋門賞をソットサスで、2023年凱旋門賞をエースインパクトで制するなど、現代の欧州競馬で活躍する名手の一人。

*4 喉頭蓋の根元にあるヒダが持ち上がってしまい、喉頭蓋を覆ってしまう症状のこと。喉頭片麻痺と異なり神経に問題があるわけではないので、持ち上がった分のヒダを切除すれば治療が可能。グランアレグリアやシーキングザパールも患っていたことがあるが、いずれも治療後に復帰し、GⅠを勝利している。

*5 これで2021年牡馬クラシックホース3頭は全員が有馬記念5着を経験したことになった(エフフォーリア2022年5着、シャフリヤール2023年5着、タイトルホルダー2021年5着)。

*6 また、これで2021年牡馬クラシックホース3頭は全員が有馬記念で馬券内を経験したことになった(エフフォーリア2021年1着、シャフリヤール2024年2着、タイトルホルダー2023年3着)。

*7 先に社台入りしていたエフフォーリアは父エピファネイアが現役ということもあり廉価需要で300万円、タイトルホルダーは生まれ故郷の岡田スタッドで亡き父ドゥラメンテの稀少な後継種牡馬として日高としては最高額の350万円に設定され、それぞれ種牡馬としては問題ない数値の種付け率・産駒数が生まれており同期達は種牡馬としても順調だった

*8 一般的な受胎率は6,7割。受胎率の低さで有名なポエティックフレアですら受胎率3割程。対してシャフリヤールは約1割で、まず耳にすることもないような数字である。

*9 https://www.sanspo.com/race/article/general/20250703-ECC3TJZ2MJMXTAJULF3YX7V4BM/

*10 ただし母系では差別化の余地があった。

*11 なお、もっと酷い例としては初年度種付頭数0というメジロアサマがいたが(現役中に投与された薬が原因とされる)、オーナーの北野豊吉があらゆる手を尽くしたことでかろうじて19頭の産駒を残し、その中から天皇賞馬メジロティターン、そしてその子供がメジロマックイーンとオーナーの執念が実を結んでいる