サッパン・スックーン

登録日:2020/07/08 Wed 20:23:40
更新日:2025/06/01 Sun 20:26:34
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サッパン・スックーン(Zapam-zucún)とは、南米のアルゼンチン並びにボリビアの地域に伝わる妖怪の伝承である。
邦訳されている資料では、2019年にロクリン社より刊行された『南米妖怪図鑑』(文:ホセ・サナルディ、画:セーサル・サナルディ)にてその詳細が掲載されている。

世界中に伝わる妖怪の伝承、その中には恐ろしいもの、剽軽なもの、神々しいものなど多種多様な妖怪達が語り継がれているが、
中には樺太アイヌのトイポクンオヤシなど、傍目から見たら衝撃的としか言いようがないビジュアルの妖怪も決して少なくない。
本項で紹介するサッパン・スックーンは、そんな妖怪変態世界史の中でも「南米の女傑」として世に送り出せる存在と言えるかもしれない。
ちなみに『南米妖怪図鑑』には彼女とも肩を並べうる逸材が数多く掲載されているので、妖怪というジャンルに興味のある方は一読お勧め。


概要

南米の農村に出現すると伝わる妖怪だが、まず語るべきはその外見だろう。
サッパン・スックーンの見た目は人間の女性と変わりなく、肌は小麦色だが、何故かその掌だけは雪のように白く、長い髪の毛と魅力的な大きな瞳を持つとされている。

……うん、本題に移ろう。

このサッパン・スックーン、上記の通り一見すると普通の女性のようだが、まず衣服の類は一切身に纏っていない。[[全裸>裸] ]である
それでいてものすごい巨乳、どころか凄まじい爆乳の持ち主であると伝えられている。
この豊満なバストを揺さ振りながら歩く際、揺れた胸が擦れ合って「サッパン……スックーン……」という音が鳴り響くため、それがそのまま妖怪の名前となった訳である。

サッパン・スックーンが人間の前に現れるのは、農村の母親達が畑仕事をしている時であり、
どこからともなく出現すると、仕事に忙しい母親達の邪魔にならないように子供達の遊び相手になってくれるそうだ。
また、時によっては自らの豊満なそれを使って、子供に母乳を飲ませる心優しい一面も持ち合わせているとされる。
なんてうらやま……けしからん!

ただし、人間がサッパン・スックーンと付き合っていく上で、必ず守らねばならない掟がある。
それは「『ビクーニャ』という動物を絶対狩猟で殺してはいけない」という事である。
もしこれを破ってしまうと、サッパン・スックーンはビクーニャを殺した者の子供を連れ去ってしまい、二度と返してくれない
例え故意でなくとも、いくら反省してもダメらしいので要注意である。

また、ある地域に伝わる別の伝承では、巨大なサッパン・スックーンが出現したという話もある。巨大娘属性まで完備しているとは……
この巨大サッパン・スックーンは、とある農村に出現するや否や、村の男達をその巨大なバストで何人も捕まえ、どこともなく連れ去ってしまったという。
ただ、この際連れ去られた男達は畑仕事をサボって勝手に休んでいた……早いが話、村に益をもたらさない怠け者達ばかりであるとも伝えられているそうだ。

上記の書以外の記述によると、イナゴマメの木の守護者ともされ、貧しい人々にその実を与えてくれるという。
やがて人間たちがパンや飲み物を作るのにイナゴマメを栽培するようになると、彼女に捧げる祭りが行われるようになった。
が、イナゴマメを切ったり傷つけたりすると、やはりその者の子供を連れ去ってしまうそうである。*1*2*3

そんな彼女だが、アルゼンチンのラ・リオハ州ではワインの銘柄や公共授乳施設の名前に使われるなど、広く親しまれているようだ。*4*5

考察

とまぁ、色々とビジュアルだけ想像すれば衝撃的とも言えるサッパン・スックーンであるが、
その本質は恐らく日本の「なまはげ」、北米インディアンの「ホピの白鬼」などと同じ、教育的な役割を担った善性の妖怪と言えるだろう。

サッパン・スックーンと付き合う上で決して殺してはいけないとされる「ビクーニャ」は南米に実在する動物。*6
インカ帝国時代にはビクーニャを殺すことなく体毛を刈るための伝統技法があったとされており、
要は「ビクーニャをむやみに殺してはいけない」というのは当時の南米の住民達の共通認識だったのだろう。
働かない怠け者を連れ去ってしまうというのも、日本のなまはげが悪い子供の脚の皮を剥ぐという伝承と同じ「戒め」と言える。

とはいえ、大抵の国の伝承でそういう教育的な役割の妖怪が、なまはげやホピの黒鬼などといった「怖い風貌の鬼」であるのに対し、
サッパン・スックーンはまるで男子の願望をそのまま絵にかいたような全裸の巨乳美女という点では、
ある意味南米地域という風土の特異性を感じるような、感じないような……



追記・修正は、ビクーニャに危害を加えないように気を付けてお願いします。

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最終更新:2025年06月01日 20:26