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AV-X0 零式

登録日:2020/11/28 (土) 15:07:04
更新日:2026/08/19 Wed 22:29:25
所要時間:約 5 分で読めます




AV-X0 零式とは、映画『機動警察パトレイバー the Movie』に登場するレイバーの一つである。

本稿ではパトレイバー他作品に登場する類似レイバーについても解説する。

概要

篠原重工がAV-98 イングラムの後継を目指して開発した次世代の警察用レイバーである。
実戦データを欲しがっていた篠原重工によって、イングラム以上に開発費をつぎ込まれた本機は警察用としていささかオーバースペックな機体として仕上がっているとされており、本編での暴れっぷりと合わせて最強のレイバーに推す声も多い。
映画本編中での名前の読みは「れいしき」だが、設定画やゲームでは「ゼロ式」と読まれることがある。また、「TYPE-ZERO」という別名を持っている。


基本データ

諸元
形式番号 AV-X0
全幅 4.51 m
全高 8.32 m
本体重量 6.12 t
全備重量 6.98 t
最大起重 3.02 t
最小回転半径 3.20 m
装甲材質 炭素繊維強化金属
炭素繊維強化プラスチック
動力源 超電導モーター
電力供給型内蔵バッテリー
装備 スタンティック
大型専用シールド
生産 篠原重工八王子工場
搭乗者 南雲しのぶ
香貫花・クランシー


スペック

イングラムの発展機で同様に警察での運用を前提に開発されているため、スラリとした人型のシルエットや白黒の外装など、全体のデザインはイングラムによく似ている。
ただしイングラムに比べると全体がより曲線的で、大きく左右に広がり先端が鉤状になった肩や尖り気味の爪先など、端々が刺々しいフォルムになっている。
特に頭部は細いライン状のセンサーカバーと額に丸いセンサーを備えるが、この前部上半分の外装部は展開機構を有し、展開時には赤い眼のような大型センサーを露出する少々不気味な姿になる。

当時のレイバー市場では篠原重工が社運を賭けて開発した次世代OSHyper Operating System(ハイパーオペレーティングシステム)(通称HOS(ホス))」が普及していたが、この零式は「最初からHOSの搭載を前提に機体も開発された初の機種」であり、その成果として各部の動作処理をより効率化し、優れた格闘性能を獲得。
腕のマニピュレーターの強度を強化すると共に指先を尖らせることで相手の装甲をそのまま指先で突き刺して貫く、空手を応用した「貫手」と呼ばれる技を使うことができるが、
これは先のイングラムでリボルバーカノンの出し入れに使用した伸縮式のアームを格闘用に改めることで、繊細に扱うべき筈だった手先部分をそのまま武器として使用することが可能になったものである。
それに加えて単純なパワーもイングラムを遥かに凌駕し、一体のレイバーを片手で楽々と持ち上げたり膝割で粉砕したりと高い起重力と負荷性能を持つ。
またソフト・ハードの両面が見直されたことで反応速度も大幅に向上し、掴みかかったイングラムを片手で軽々抱え上げ、左腕をもぎ取るという荒業を披露している。
劇中ではシールドしか装備していないが、上に書いた通りスタンスティックが専用装備として設定されており、TV版に登場するピースメーカーやプラモデルキット・リボルテックフィギュアなどには反映されている。


動向

劇場版本編

八王子工場で生産された後、三機がニューヨークに新設予定のレイバー部隊に納入され、それに続く形で特車二課第一小隊への配備が予定されていた。
しかし渡米していたシゲからの要請でHOSを含めた機体の徹底調査を行うことになり、配備予定の一機が洋上のメンテナンスドックである"方舟"に持ち込まれ最終調整及び各種試験を行っていた。
本編序盤ではこの試験を南雲が行っている場に篠原遊馬と泉野明が訪れるという形で機体も登場するが、野明からはそのデザインを「悪役面」とややネガティブに評価されている。
これに並行して第一小隊の機種転換訓練も行われ追加ロールアウトと納入も秒読みという段階だったが、HOS搭載の自衛隊レイバーが無人のまま暴走する事件が発生した為に、結局納入は先送りとなっていた。

その後劇中で触れられる機会も無かったが、終盤の方舟戦の最中、暴走レイバーたちを迎撃するため香貫花・クランシーが遊馬の反対を押しきって搭乗し起動。
太田功の2号機を支援し暴走レイバーを数体破壊するが、間もなく他のレイバー同様HOSに仕込まれたコンピューターウイルス*1によって暴走。香貫花は機体の停止させようとしたが、ウイルスが背面メモリー*2に残存しプログラムを修復しており、止める手立てがなくなってしまっていた。
その状態で2号機の頭部をもぎ取り薙ぎ倒しコントロールルームに押し入る*3が、直後方舟の倒壊に巻き込まれ瓦礫に呑まれてしまう。
しかし夜明け頃に片腕を失う半壊状態で瓦礫の中から現れ野明の1号機と決戦を交えた。
格闘戦で1号機を圧倒するもののワイヤーを絡められて身動きを封じられ、その隙にHOSのウイルスが残っている背面のメモリーを生身の野明がショットガンの連射で物理的に破壊。
結果、機体に残っていた全てのプログラムを失いようやく完全に機能停止した。


その後

この「方舟事件」を受けて先行配備が実施されていたニューヨーク市警では納入されていた3機を全面改修し、クラッシュバスターとして正式にロールアウト。
OSをHOSからLOSに改め、頭部の開閉型スキャナー機構を廃止してマニピュレーターは格闘戦よりも銃器の取り扱い易さを考慮したものになっている。
形式番号は「AV-02」とも表記されるが、2002年式である事を示す「AV-2」ヴァリアントとは別物。

テレビシリーズ

第39話にて、電話中の実山の前に「AV-X0」の文字が入った段ボール箱と、1/60スケール程度の零式らしい模型がゲスト出演している。テレビシリーズと劇場版1は違う世界線であるが、こちらでも試作が考案されたのだろうか?。

EZY

第2話にて第2小隊メンバーが日誌に書き始めた妄想リレー小説に登場。当初こそは劇場版1のような佇まいだったが、展開がエスカレートするうちに身長の倍くらいに伸びる抜き手レイバーを絡め取る赤い触手*4おなじみの怪力と膝で第2小隊を追い詰めるが、自意識に目覚めたイングラムの自己犠牲で海中に引きずり込まれ、倒された。
佐伯隊長「…ということがなくて良かったです」
台詞では「幻の試作機」と言われていたが、実際に作中でどのような立ち位置なのかは不明。


ゼロの系譜

零式の登場以降、TV版や漫画版で「0」の型式を受け継ぐ機体が登場しているので、そちらも振り返ってみる。

AVR-0

漫画版に登場。AVRの「R」は、リファレンス(標準型)の意。
ハード面でも全てにおいてイングラムを凌駕している上に衛星からの情報を得て自機および任意の相手の位置を常に把握することが可能な、サテライト・アプリケーブル・ドライバ、通称"SAD"に対応しており、
ロックした相手を機体のセンサーと衛星からのリンクによって常に捕捉し、目標に対して自動で攻撃や防御などのアクションを起こす事も可能になっている。
たとえ相手に背後から接近されたとしても、衛星が相手を捕捉しているため、奇襲に完璧に対応して回避や反撃を行えるという優れモノで、理論上はいかなる相手にも完璧な対応が可能。
交戦したTYPE-J9 グリフォンを駆るバドをして「後ろに目があるのか!?」と驚かせるほどの挙動もできる。

……のだが、問題はこれらの「衛星とリンクした挙動」が全自動で行われることで、パイロットも「自分が入力していない動きをレイバーが勝手にとる」ため、慣れていないと却って使いにくい。
さらに、登場時点ではSADそのものは機体ではなく外部の管制車が制御を行っているため、管制車が制御を停止すると機能が大幅に低下する上に、一々再起動をする必要があった。

これらの事情が重なり、泉野明が搭乗・使用した際にはその性能に振り回され、グリフォン相手に決め手に掛ける攻撃を繰り返した果てに、管制車を制圧されてSADが停止したところを破壊されてしまった。
いちおう性能とアプローチ自体はかなりのもので、特にコンピューターと衛星の全力を尽くした防御・回避運動はグリフォンの苛烈な攻撃を最後まで捌き切り、管制車が制圧されるまではほぼ無傷であったほどで、高性能ぶりは発揮しているのだが野明は終始戸惑っている*5
また、現地がガランとした地勢の特車二課周辺だったからこそ、自機の保全最優先でオーバーアクション気味に立ち回れたきらいも窺える。その少し前にイングラムを含む数機でグリフォンを取り逃したような混み入った現場であったなら(つまり「特車二課本来の実戦環境」でなら)どう立ち回れたのかは疑問符のつく所。

結局、いかに優れた道具でも、使い手とともに成長していなければ何ほどのこともないというのを証明する形になった。
機能停止した本機を強引に降ろされた野明は内海とバドの望みから、手足同然に慣れ親しんだイングラムに搭乗して結果的に「圧勝(後藤隊長の評)」しており、要はかませ犬のポジションにされてしまっている。

一応、元来はフォワード(本機)・バックアップ(管制車)・警察組織・メーカー共に連携した慣熟を十分経てから現場勤務に臨む前提であったろうから、その経過をすっ飛ばして搭乗者にさえ「謎の新型」同然で特車二課襲撃というテロ現場にいきなり放り込まれてしまった不運を酌量の余地はある。
だが、主人公本拠のピンチ、颯爽とした本機登場、そして活躍する…かと匂わせた所に本領発揮ならず無力化され、イングラムが”主役機”の沽券による真打ちぶりという流れは、いわばロボアニメの新型機お披露目のお約束をメタるための抜擢とも疑わざるを得ない。
まあ「乗りなれない機体の野明ですら倒しきれず盤外戦術による撃破に任せてしまった」バドの操縦技術の甘さや、グリフォン計画の建前の一つでもある「篠原重工のOS技術奪取」も対イングラム戦の魅力に負けて忘れていた節がある(少なくともAVR-0と太田のイングラム内のデータを引き抜くくらいは出来た可能性はあるが、そうした形跡が作中ではない)敵側の驕りも垣間見える顛末ではあるが…
複数の意味でのかませ犬・生贄として目を付けられてしまった挙句、すぐ連載完結で挽回不能という「制作側の都合」を背負わされすぎたポジションは憐れむべきでなかろうか。

デザインは一見零式に準じたものに見えるが、カラーリングは白と水色で、カメラ内部の構造や額のセンサー部分等の細部に異なっている部分が見える。
またグリフォンの黒幕・内海課長は「なにあれ? にせイングラムかにせグリフォンか……」とぼやいている。


AV-0 ピースメーカー

TV版、NEWOVAに登場。
エコノミー、スタンダードを経由したイングラムの後継機として完成され、パイソンと置き換える形で特車二課第一小隊に3機が配備された。
デザインは零式から全面的に変更されており、試験機の面影を残しつつもヒロイックさを強めた印象となっている。
機体の肩と背面には警視庁の英語略称である「M.P.D.」のロゴが入る*6

額のカメラアイなど、漫画版において類似のポジションを占めるAVS-98にやや似た印象も受ける。
攻撃オプションはイングラムと同規格のものを装備し、零式と同様に貫手が使用可能。大型シールドは零式とはデザインが異なる。
駆動系はイングラム系の発展型であるが、部品単位の互換性は確保されている。
そして最大の特徴は人間の神経を模した「ニューロン・ネットワーク・システム」を搭載したこと。
これはイングラムの持っていた学習データによる操縦の最適化から更に踏み込んで、蓄積したデータから各種処理を高速化したうえ機体の動作をある程度自動化し、動作速度の大幅なアップや操縦難度の緩和など恩恵を得られる代物。
実際に配備後は第一小隊のパイロットたちの訓練と実戦からの蓄積によって搭乗者が注意しなくても機体が自動的に周囲の障害物を避ける(接触前に停止、もしくは回避行動を入れる)ように学習。
結果、対レイバー戦における周辺建造物への二次被害などを抑制し、特車二課の評価をある程度回復。
この活躍もあって「ピースメーカー(=平和をつくる者)」という名が付けられた。

しかし、配備から二ヶ月ほど経ったとある出動の際、自機が吹き飛ばされシステムが背後にあった建物への衝突を避けようとするあまり踏ん張り過ぎて脚部を自壊して2号機は戦闘不能に。
更にこれを見た敵側がシステムの特性を見抜き相手機が建物を背にした戦法にでたことでロクな攻撃が出来なくなってしまい、直後に1号機はシステムの解除し応戦するも奮闘空しく撃破されてしまい、第一小隊は完敗を喫した。

ニューロン・ネットワークの恩恵は確かに大きかったものの、常に機体を張って多種多様なレイバー相手にイレギュラーな動作を求められる特車二課の活動内容にはそぐわない学習内容だったことは否めず*7、篠原重工・警察双方でパトレイバーの方向性を改めて問われる結果となった*8



立体物

バンダイ

1/60スケールのプラモデルと完成品のROBOT魂でリリース。
どちらもシールドが付属し、貫手は通常と差し替ることで再現ができる。
ちなみにROBOT魂は発売日に関東を台風が直撃するという原作再現(?)がなされた。

コトブキヤ

D-スタイルシリーズにラインナップ。暴走状態が頭部パーツの差し替えで再現可能となり、貫手状態も差し替えで再現される。また電磁警棒とシールドが同梱。

海洋堂

リボルテックで商品化されている。貫手用のハンドパーツとフェイスオープン用のパーツが付属。
可動の方式と範囲に癖があるため、ポーズをとるのが難しい。

グッドスマイルカンパニー

プラモデルのMODEROIDシリーズから1/60スケールで零式とピースメーカーの発売が予定されている。







追記・修正はHOSシステムの改修後にお願いします



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最終更新:2026年08月19日 22:29

*1 振る舞いから推してロジックボムかも知れない

*2 パターン学習用のSRAMという電池などのわずかな電力でも情報を保持し続ける特殊なRAM。ファミコンなどのカートリッジのセーブデータ用などによく使われた。

*3 この時既にシールドを持っておらず、太田の2号機との戦闘で喪失したと思われる。

*4 元ネタは劇場版1当時のピンナップと思われる

*5 機体を降ろされた際「上手く扱えなくてゴメン」と野明は内心で謝っており、コンセプトとポテンシャルは感じ取っていたのであろう。

*6 史実では2000年代以降パトカーに英語表記が入るようになったが、こちらは管轄に関わらず「POLICE」で統一されている。

*7 敵からは「警察らしいと言えば言えるが、勿体ない使い方をするもんだ」と嘲笑されてしまった

*8 学習内容に関してはシリーズ初期から第二小隊(主に太田)が出してきた被害や世間から評判、それらにお冠だった警察上層部の意向なども重なっているので、単純に第一小隊のミスと切り捨てるのは難しい部分もあった