SCP-5726

登録日:2021/02/24 Wed 04:48:30
更新日:2025/01/31 Fri 15:52:05
所要時間:約 20 分で読めます





少女が夢見たのは、戦わずにいられる平和な世界。
戦い続ける彼女では、矛盾に絶対気づけない。




SCP-5726とは、怪異創作コミュニティサイト「SCP Foundation」に登場するオブジェクトの一つである。
項目名は「Sparkling Magical Girl ♥ Darling Pink!!(きらめく魔法少女 ♥ ダーリンピンク!!)」
項目名からして日本のオブジェクトじゃないかって?いいえ、れっきとした本部のオブジェクトです。

まずは説明から。
このオブジェクトは「きらめく魔法少女 ♥ ダーリンピンク!!」というシリーズに登場するキャラクター「中村いちご」
を自称している、実際それと酷似した、知性を持ったヒト型アノマリーである。
「きらめく魔法少女 ♥ ダーリンピンク!!」というシリーズは、日本の7歳から12歳の児童を対象とした
グラフィックノベルシリーズ全500章、及びこれを原作としたアニメ全200話から成り「中村いちご」も主人公として登場する。
…全500章って多すぎない?
一体どんな内容なのか、伊藤研究員による概要を見ていこう。

"きらめく魔法少女 ♥ ダーリンピンク!!"は、「ダークネス」の魔の手から世界を守るため
魔法少女「ダーリンピンク」として正体を隠しつつ戦う14才の女子中学生「中村いちご」の物語です。
中村いちごはダークネスに憑依されてしまった学校のいじめっ子、不公平をする教師、不良集団などのさまざまな敵と戦います。
格闘により制圧したのち、中村いちごは敵をダークネスの憑依から解放し、愛の力で世界を救うため彼らと友達になります。

内容を見る限り若干プリキュアに近いような気もする。もちろんこのシリーズは現実には作られていないので勘違いしないように。

このオブジェクトの外見は若年期の女性と類似しているが、生物学的には一般的なヒトと大きく異なる。
このオブジェクト、臓器や血液、筋組織、中枢神経系を持っておらず、体組織は多数の肌色の肉状の層から成っていた。
この組織は外傷を追ってもすぐ修復される。
これにも関わらず当人は食物や水を必要とし、また痛覚があると主張し、人体の基本的な臓器の知識については把握している。

このオブジェクトが覚醒状態の時、一本の杖を召喚することが可能であり、これをSCP-5726-1と分類している。
これを用いて漫画調のハートの形をしたピンク色の誘爆性の放射を放つことができる。大きさも変えることが可能だ。
発射時には非常に大きな弾けるような音が鳴り、爆発時には光を放つ。
この泡状の実態群から引き起こされる爆発は、人体のあらゆる組織を融解させる、とても危険な代物である。

で、財団がどうやってこのオブジェクトの情報を掴んだかというと、飛騨高山で発生した一連の殺人事件がきっかけだった。
岐阜県警に潜伏していた機動部隊イオタ-10("ポリ公")の注意をひき、財団による調査の対象となった。
続く2018年8月9日、この少女が殺人事件を起こした直後に財団の機動部隊パイ-1("街の口達者")によって確保された。
財団が確保するにあたって、武力行使はされなかった。目撃者である12歳の男性にはクラスA記憶処理が施された。

2018年8月9日から同年10月30日にかけて、この少女は高度セキュリティヒト型実体収容セルに収容されていた。
収容されている分には大人しかったので、年齢相応の娯楽は提供されていた。
ただし、「きらめく魔法少女 ♥ ダーリンピンク!!」シリーズは除く。当たり前である。
この時のコミュニケーション担当は主に西川-ジョーンズ加奈子主任研究員であった。

以降はインタビューログや実験記録などだが、インタビューログは概要のみ載せることにする。

初期インタビューログ

インタビュー対象:SCP-5726
インタビュアー:西川-ジョーンズ加奈子主任研究員

このインタビューは日本語で行われた。
なお、番号呼びは彼女が否定的な反応を示したので、警戒心を解くために判明していた「いちご」という名前を呼ぶことにした。

インタビューの内容は以下の通り。
  • 彼女が言うには、小さい子供に対し強盗しようとする人たち(うち1人はナイフ所持)がいたので、見過ごすことができないと成敗した。
  • 彼女は財団の世界に来たばかりであり、前にも同じようなことがあったと話す。これは原作第212章において、いちごが自身の存在していないディストピア的世界に飛ばされた話のことを言っていると思われる。
  • 目的は自身もよくわかっていないが、自分の使命であろう「悪い人たちをきれいにする」を遂行しようとする。
  • 悪い人たちにプリティー・ピュアリティ・ハート・バブルを撃つと、その人たちに潜んでいたダークネスをやっつけられる、といちごが話す。
  • 自分の使命を遂行するためにこの施設から出ることを希望した。
 西川主任研究員は、犯罪歴のあるDクラス職員を監視付きで接触させることで実験兼時間稼ぎをすることにした。

SCP-5726監視映像003

参加者:SCP-5726; D-8972
監視者:ベネディクト・キム下級研究員

前記: 以下の映像はSCP-5726が初めてDクラス職員と監視下で接触した際のものです。
   D-8972はオーストラリアにおいて3件の窃盗及び妻に対する家庭内での虐待により有罪判決を受けていました。
   SCP-5726は監視を行う研究員により、D-8972の犯罪歴を知らされていました。
   D-8972はSCP-5726の母語である日本語を話さないことに留意してください。



SCP-5726: 愛と正義の名の下に命じる、止まりなさい!

D-8972: (英語) すまない嬢ちゃん、あんたが話してる、その、何語かわかんねえけど俺にはわかんねえ。

SCP-5726: 罪なき女性にあんなことをしたり、お金を払わずにお店からものを取っていくのはいけないことよ。

[D-8972は背を向け、キム下級研究員に気づいてもらうためガラス戸を叩く。]

D-8972: (英語) おい、一体これはなんなんだ? 人を間違ってんじゃねえか、この子供英語は話さねえぞ。

流石にDクラスは状況を読み込めなかったのか、キム研究員に尋ねようとする。

SCP-5726: さあ、こっちを見なさい— ああ、これはちょっと大変だわ。
     日本語を話さない人と戦ったことはないのに…でもたぶん大丈夫、きれいにすればきっと彼も元に戻るわ。

SCP-5726: (SCP-5726-1を掲げる) 行け! プリティー・ピンク・ピュアリティ・ハート!

[SCP-5726-1先端からハート形の爆発放射が音を立てて放たれ、D-8972へ飛んでいく。
音を聞いて振り向いたD-8972の顔に放射が当たり、D-8972の頭部が爆発する。
頭部のなくなった体が床に崩れ落ち、頸部断面から血液が噴き出す。]

彼女が人を殺す瞬間を財団は確かに目撃した。この結果に対し彼女は――――

SCP-5726: この人から噴き出してる、この…気味が悪いわ。たくさん出てる。ねえ、気分はどう?

[D-8972の死体は応答しない。SCP-5726は死体に接近し、足でつつく。
監視室ではキム研究員が気分が悪そうにしているのが見える。]

なんと何の罪悪感も嫌悪感も感じず、すでに物言わぬ死体となったDクラスに話しかけていた。

SCP-5726: よくわからないわ…まだ全部出きってないのかな? プリティー・ピンク・ピュアリティ・ハート!

[SCP-5726-1からさらに5回、D-8972の動かない死体に爆発放射が放たれ、
D-8972の死体は赤い粘性の液体と骨片の混合物へと変わっていく。
SCP-5726は爆発の影響を受けていない。SCP-5726は腰をかがめて指を液体につけ、口に運ぶ。]

SCP-5726: しょっぱい。この世界のダークネスは本当に変わってるわ。あの人も早く戻ってくるといいな。

勘のいい人なら説明文の時点で分かっただろうが、彼女は「血」という概念を知らないのである。
そして彼女は人を殺したことを全く自覚していない。
この実験を受けて再びインタビューが行われることとなった。

SCP-5726インタビューログ037

インタビュー対象:SCP-5726
インタビュアー:西川-ジョーンズ加奈子主任研究員; ベネディクト・キム下級研究員

インタビューの内容は以下の通り
  • いちごは「死」という概念を理解していない、どころかできない可能性すら考えられる。
  • 年の近い女の子がいないか尋ねられる。「難しい問題」と返したところ、「私のいた世界はもっとわかりやすかった」といちご本人が話す。
  • この財団の世界では「みんなをきれいにすること」が簡単すぎる、誰も反撃せず逃げていくだけ、と語る。
  • ダークネスが本当に体から出てくる様子を見るのは気分が良いと話す。おそらく「血」を「ダークネス」と勘違いしている模様。
  • 元居た世界でも強いダークネスはいなかったので、財団の世界でも何かを果たせているはずだと思うも、みんな戻ってこないことを不思議がる。
  • 「二度と戻ってこないと考えたことはあるか」と研究員が尋ねると「そんなことはあり得ない。必ず戻ってくる、そういう風になっている」といちごは話す。
  • 西川主任研究員を友達だと思っているらしく、「いちご」と呼んでくれるよう希望する。
  • 「浄化」された犠牲者が「戻ってきていない」ことを認識したが、それ以上の進展はなかった。

先の実験とこのインタビューを鑑み、キム下級研究員と西川主任研究員がメールであるやり取りを行った。

B.キムとK.西川-ジョーンズのEメール記録


From: BKim092@Scipnet (ベネディクト・キム下級研究員)
To: KNishigawaJones001@Scipnet (西川-ジョーンズ加奈子主任研究員)
Subject: SCP-5726の収容プロトコル
Date: 10/11/2018



西川-ジョーンズ主任研究員—

SCP-5726の倫理観が少々心配です。
SCP-5726の正義と悪の区別は非常に極端なものであり、善悪に対する幼児的な理解のみから来ているものだと言えます。
こういったことの複雑さを教えようとする数々の試みにもかかわらず理解ができていないという事実は懸念すべきものです。

もしいつかSCP-5726が我々を悪人と認めたらどうします? あなたはSCP-5726があの哀れなDクラスにしたことを見たでしょう。
無論彼は卑劣漢ではありますが、溶けてなくなってしまうほどのことはしていません。
私が恐れているのは、SCP-5726が財団にいればいるほど、SCP-5726が財団に歯向かう理由を見つけてしまう可能性は高まってしまうということです。
従って、SCP-5726の特別収容プロトコルの変更を進言したいと考える次第です。

SCP-5726特有の身体構造は最も安全な収容方法の決定を難しいものにしています。
具体的に申し上げれば、SCP-5726には循環系が存在しないために、長期にわたる鎮静は不可能です。
しかしながら試験の結果、SCP-5726はある種の「休眠状態」に入ることによって、外部からの補助なしに極低温環境で生存できることが判明しています。
したがって、冷凍保存はよい選択肢だと思います。お考えをお聞かせください。

尊敬を込めて

ベネディクト・キム下級研究員

財団も人類のためとはいえ、Dクラスを酷い目に遭わせていることには変わりない。
それに彼女が気づき、財団を敵とみなした場合、財団がどれほどの深刻なダメージを受けるかは未知数である。
彼女の身体構造が特殊である以上、彼女の冷凍保存が安全な収容の有効策だとキム下級研究員は話す。

しかし――――


From: KNishigawaJones001@Scipnet (西川-ジョーンズ加奈子主任研究員)
To: BKim092@Scipnet (ベネディクト・キム下級研究員)
Subject: Re: SCP-5726の収容プロトコル
Date: 10/11/2018

ベネディクト—

私はいちごにチャンスを与えることが悪いことだとは思いません。確かに彼女はDクラス職員には攻撃的なふるまいを見せますが、
彼女が自分のしていることを理解していないということは良いことであり、悪いことではありません。
彼女が今までに傷つけたのは彼女が「悪人」と認めた者だけです。そして彼女は我々が善人であると信じています。

彼女が普通の子供ではないことはわかっていますが、それでも彼女は子供です。
適切な教育を施せばその行動は改善できるかもしれません。彼女は間違いなく良くなりたいと願っています。
彼女は悪人ではありません。ただ混乱しているだけです。加えて、我々にも進歩はあります。遅くはありますが、進んではいます。

早まったことをする前に、もう少し彼女を観察しましょう。
冷凍保存の研究は進めていただいて結構ですが、私はその必要が確実に生じる前に最後の手段を行使することには賛同できません。

それでは。

加奈子

西川主任研究員は彼女の持つ可能性に賭けようとした。
彼女はこちらの世界がどうやって生きているか、なぜ死ぬのかが理解できないだけである。
でもそれも今後、教育することで矯正させることができるかもしれない。
西川主任研究員はそう思っていた。
しかし忘れてはならない、彼女はアノマリーである。財団にとってオブジェクトである。


From: BKim092@Scipnet (ベネディクト・キム下級研究員)
To: KNishigawaJones001@Scipnet (西川-ジョーンズ加奈子主任研究員)
Subject: SCP-5726の収容プロトコル
Date: 10/11/2018

西川-ジョーンズ主任研究員—

的外れなことを言っていたら申し訳ないのですが、SCP-5726に対し情を持ちすぎているのではないでしょうか。第三者に意見を求めた方が良いでしょうか?

尊敬を込めて

ベネディクト・キム下級研究員

キム下級研究員は西川主任研究員に対し、情を持ちすぎではないかと指摘した。

それに対し西川主任研究員は――――

From: KNishigawaJones001@Scipnet (西川-ジョーンズ加奈子主任研究員)
To: BKim092@Scipnet (ベネディクト・キム下級研究員)
Subject: Re: SCP-5726の収容プロトコル
Date: 10/11/2018

ベネディクト—

馬鹿げたことです。SCP-5726は小さな少女であり、財団の無菌冷凍環境は児童の発育によくありません。
ヒト型実体への対処に当たって少しばかりの人間らしさを持つことが財団に害をなしたことはないはずです。

では。

加奈子

西川主任研究員は意に介さない。
彼女がいつか理解してくれることを信じていた。


…しかし、そんな希望も打ち砕かれてしまった。
それも極めて悲劇的な形で。

インシデント5726-01(SCP-5726インタビューログ049)

インタビュー対象: SCP-5726
インタビュー者: 西川-ジョーンズ加奈子主任研究員; ベネディクト・キム下級研究員



西川-ジョーンズ研究員: (メモをシャッフルしている) とても良いです、SCP-5726。この進歩を喜ばしく思います。終わりも近— 痛っ!

[西川-ジョーンズが紙で指を切る。傷口から少量の血が見える。]

キム研究員: (英語) 大丈夫ですか?

西川-ジョーンズ研究員: (英語) ええ、大丈夫です。紙で切っただけです。

[SCP-5726は西川-ジョーンズを見つめている。顔が青ざめている。
SCP-5726は西川-ジョーンズの切った指に手を伸ばすが、触れる前に手を止める。]

SCP-5726: そんな。そんな。ありえないわ。

西川-ジョーンズ研究員: どうかされましたか?

[SCP-5726が立ち上がる。SCP-5726の手にSCP-5726-1が出現する。
機動部隊ロー-36("違反者のお気に入り")にSCP-5726-1の転移を報せる緊急ベルが遠方に聞こえる。
キム研究員は立ち上がりゆっくりと後ずさるが、SCP-5726は反応しない。
SCP-5726は未だ動いていない西川-ジョーンズを注視している。]

SCP-5726: あなたもだったの? ずっと— とっても優しくしてくれたのに? ここのダークネスは…本当に手ごわいわ。こんなところ、嫌。

西川-ジョーンズ研究員: (青ざめる) 止めて— SCP-5726— いちご、お願いです—

SCP-5726: 加奈子さん、大丈夫です。いま治して、私たちは本当の友達になれます。すぐ帰ってきてくださいね?

[西川-ジョーンズ研究員は向きを変え、ドアに向かって走る。]

SCP-5726: (SCP-5726-1を掲げる) プリティー・ピンク・ピュアリティ・ハート!

[ピンク色の爆発放射が、発射音とともにSCP-5726-1から放たれ、逃走中の西川-ジョーンズの背中に命中する。
爆発により西川-ジョーンズ研究員の肉体はほとんどが液化し、ドアフレームが損壊する。
血が面会室の壁、床、SCP-5726、室の反対側でうずくまっていると思われるベネディクト・キム研究員に降りかかる。しばらく動きはない。]

SCP-5726: キムさん、大丈夫ですか? 加奈子さんは悪いやつらに取りつかれていましたけど、でも—
     あっ、キムさん、来てください! 心配ありません、ダークネスはいなくなりました!

[日本語を話せないキム研究員は頭を上げ、SCP-5726と目を合わせる。コミュニケーションを取ろうとはしない。]

SCP-5726: どうしてそんな目で見るんですか? 加奈子さんは戻ってきます!

[機動部隊ロー-36("違反者のお気に入り")が到着し、収容室のドアをこじあける。SCP-5726は拘束されるが、抵抗はしない。]

SCP-5726: 加奈子さんはすぐに戻ってきます! みんないつも戻ってくるんです!

[ロー-36は室内に運び込まれていたケージ内にSCP-5726を連れていく。]

SCP-5726: キムさん…

[総括: SCP-5726はケージ内に入れられ、12時間にわたり応答しませんでした。]

西川主任研究員はうっかり紙で指を切ってしまった。そして血の出る様子を彼女に見られたのだ。
そして彼女は、「血をダークネスと勘違い」し、「西川主任研究員がダークネスに取りつかれている」と判断。
彼女は杖を召喚して魔法を行使し、あろうことか西川主任研究員を殺してしまったのだ。
そして彼女は「加奈子を殺してしまった」と自覚していなかった。
彼女が「どうしてそんな目で見るんですか?」というような表情をキム下級研究員がするのも無理はない。

このインシデントののち、目下の収容プロトコルの決定のため、倫理委員会及び収容資源委員会による緊急合同会議が行われた。
たしかに西川主任研究員の努力により、彼女を順調に成長させていたのだが、その西川主任研究員は死んでしまった。
財団は彼女の行動の予測ができないこと、何よりも何かのきっかけで彼女が攻撃を開始した場合の危険性から、
彼女を覚醒状態にしたまま置いておくことは、長期的に維持可能な解決策にはなりえないと判断した。


…財団は、彼女を氷漬けにし、眠らせることに決めたのだ。


補遺 5726.2: 現在の収容プロトコルへの変更

キム下級研究員が西川主任研究員の後を継ぎ、彼女に対し冷凍保存装置に自ら入るよう説得することを指示された。
以下はセキュリティログ5726-302からの抜粋である。


参加者: SCP-5726
監視者: ベネディクト・キム下級研究員
前記: ベネディクト・キム研究員は日本語を話せないので、意思疎通を円滑に行うために小型翻訳モジュールが支給されました。
SCP-5726には、事前に冷凍保存室をSCP-5726の力を増幅し、ダークネスを浄化する能力を向上させるために作られた新たな発明品であると説明しました。
以下の抜粋はSCP-5726が冷凍保存室に入室して23分34秒後からのものです。



<記録開始>

[SCP-5726は冷凍保存室に横たわっている。息が白くなっているのが見える。口と鼻の周りに霜が降りる。]

ベネディクト・キム下級研究員: 気分はどうですか?

SCP-5726: ここは寒いです。それに…狭いです。壁が迫ってきてるみたい。

ベネディクト・キム下級研究員: 狭いところは怖いですか?

SCP-5726: ううん、全然! 魔法少女に怖いものなんてありません。

ベネディクト・キム下級研究員: それは良かった。壁が迫ってきたりはしませんからね。でももし怖ければ、目を閉じてもいいですよ。そうすれば、壁も見えませんから。

[一瞬ためらったのち、SCP-5726は目を閉じる。]

SCP-5726: 怖くなんかありません。ただ…ちょっと目を休めてるだけです。

ベネディクト・キム下級研究員: もちろん。昨日は大変な一日でしたからね。これが終わるまで眠った方がいいでしょう。

SCP-5726: 目を閉じてる間にいなくなったりしないでくださいね? どこにも行かないでください…ここにいてください。

ベネディクト・キム下級研究員: あなたが必要とする限り、ここにいます。私は必要なことをなします。

[30秒の間、SCP-5726とキム研究員に会話はない。]

SCP-5726: キムさん…死ぬってどういうことなのか、分かった気がします。

ベネディクト・キム下級研究員: はい。

SCP-5726: 私が加奈子さんにしたことです。加奈子さんは戻ってこないんですよね?

ベネディクト・キム下級研究員: ええ。

SCP-5726: 人を死なせるのはダークネスのすることです。

[SCP-5726が震えているのが見える。]

ベネディクト・キム下級研究員: あなたがいたところではそうかもしれません。ここでは、誰もがいつかは死にます。

SCP-5726: ここのダークネスは手ごわいです…でも負けるわけにはいきません。これが終— 終わったら、ダ— ダークネスを倒しに行って、もう誰も死な— 死なないようにします。

ベネディクト・キム下級研究員: まずは休みましょう。

[50秒の間、SCP-5726とキム研究員に会話はない。]

SCP-5726: ここ、さ— 寒いです。

ベネディクト・キム下級研究員: ええ。

[58秒の間、SCP-5726とキム研究員に会話はない。]

SCP-5726: キ— キムさん?

ベネディクト・キム下級研究員: はい?

[15秒の間、SCP-5726は沈黙する。]

SCP-5726: ご— ごめんなさい、か、か…

[SCP-5726は応答しなくなる。]

ベネディクト・キム下級研究員: 今は休んでください、いちご。もう大丈夫ですよ。

<記録終了>

こうして彼女、中村いちごは冷凍保存によって収容されることとなった。


現在の収容プロトコルは、彼女を冷凍保存させておき、もし彼女が意識を取り戻した場合、機動部隊ロー-36("違反者のお気に入り")によって制圧される。
一方で杖の方にはGPS追跡機器を取り付け、サイト-19内の保管庫にビデオ監視されたうえで保管される。
前述したとおり、覚醒状態の危険度故、オブジェクトクラスKeterから再分類されていない。




彼女、中村いちごに一切の悪気はなかった。
彼女の世界では、ダークネスに取りつかれた人が彼女の魔法によって救われる、そういう世界だった。
それが彼女にとって当たり前のことだったのだ。

だが、この財団の世界は違う。

彼女の魔法は明らかに人を殺すほどの威力を持ったものである。
そして死んだ人が二度と元に戻ることはない。
彼女はそれを知らなかっただけだったのだ。

その「当たり前」のズレが、このような悲劇を生み出してしまった。

そして彼女が冷凍保存される直前、彼女はついに「死」について理解し、「自身が加奈子を死なせてまったこと」を理解した。
彼女が最後に言いかけた言葉は、おそらく「加奈子を死なせてしまったことに対する懺悔」だったのだろう。

「友達」を殺してしまった魔法少女。そんな彼女が懺悔をする機会は、いつになるのだろうか……


追記・修正は冷凍保存状態より目覚めてからお願いします。



CC BY-SA 3.0に基づく表示

SCP-5726 - Sparkling Magical Girl ♥ Darling Pink!!
by Uncle Nicolini
http://www.scp-wiki.net/scp-5726
http://ja.scp-wiki.net/scp-5726(翻訳)

SCP-3726-JP - ダークネス襲来⁉︎よみがえれ!きらめく魔法少女 ♥ ダーリンピンク!!
by Grim-G, HITODE_chan
http://scp-jp.wikidot.com/scp-3726-jp

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最終更新:2025年01月31日 15:52

*1 SCP-1337-JPという「アクワルバッド団」から身を追われているデフォルメされたゾウに近い外見の実体から力を分け与えられた人型実体

*2 恋ヶ原ぴんくと言う名の魔法少女で、敵と戦うと必ず言葉にできないほどの凌辱を受ける、一連のイベントの後に体は元に戻る