MAO(高橋留美子)

登録日:2021/07/13 Tue 23:32:00
更新日:2025/04/03 Thu 20:49:39
所要時間:約 6 分で読めます






やがて来る「運命」に立ち向かう。






『MAO』高橋留美子の少年漫画。週刊少年サンデーで2019年23号から連載中。
コミックスは2025年2月現在23巻まで発行中。

過去へタイムスリップした少女が謎の少年と出会い、妖怪たちと戦う……と、これだけ聞けば『犬夜叉』の焼き直しのように思えるものの、
人魚シリーズ』『境界のRINNE』にそれぞれ通ずる要素も含む、「呪い」をテーマにしたシリアスでダークファンタジーな作風。
それらの集成とも言えるが、実際には大きく差別化されている。
もちろんギャグも健在。
主人公に女の影が見える度に、主人公の感情の詳細と無関係にヒロインが一方的に不機嫌になる流れも健在。


【あらすじ】

中学三年生の黄葉菜花は、小学一年生の時に事故に遭い「死んだ」経験を持つ。
その事故で両親が死に、祖父と一緒に暮らしていたが、ある日、事故現場の商店街ゲートを通り抜けると見た事のない世界に辿り着いてしまう。
そこで妖怪に襲われた菜花を救ったのは摩緒という陰陽師の少年だった。
何とか元の世界に帰れた菜花だったが、摩緒の施した治療により妖としての力が覚醒する。
一体自分に何があったのか知るため、再び摩緒に会った菜花はこの世界が大正時代であることを知る。


【登場人物】

※CVは公式ダイジェストPVのキャスト。

主要人物


  • 摩緒(まお)
CV:梶裕貴
本作の主人公。かつて御降家の末席で見習いをしていた陰陽師の少年。
御降家の後継者と同時に紗那の婚約者に指名されるものの、その実は本人も知らずのうち儀式の生贄にされ、兄弟子たちから命を狙われる立場になる事だった。
真相は不明ながら猫鬼の体を手に入れて御降家滅亡の原因を作ったとされる。
以来、900年の間各地を放浪しながら悪い妖怪退治や善良な妖怪たちの医者などをしつつ猫鬼を追いかけている。
「摩緒自身が蠱毒のようなもの」となっており、命を保つため自作の蠱毒汁を飲む必要があった。
武器は師匠から貰った破軍星の太刀で、かつて猫鬼と戦った際に刀身に血を浴びて呪われ、摩緒以外が持つと毒が回って死ぬようになった。
900年前は内心で呪術自体を好まず修行も疎かで、名実共に師匠の従者に過ぎない回想が多い。
独りになってから励んだようで、現在(大正時代)は木火土金水のおおよそに通じた術者として円熟しており、兄弟子達の各得意属性には劣るものの相克を活かした総合力では十分張り合えるオールラウンダーになっている。
ピンチになると体が七股の尾を持つ猫科動物のように変化し、暴走してしまう。

  • 黄葉 菜花(きば なのか)
本作のヒロイン。小学一年生の時に遭遇した陥没事故で両親を失っている。
この事故の正体は大正時代に起きた関東大震災の余波が、時空がねじ曲がった商店街ゲートを通して出現したもので、
その時に大正時代へとタイムスリップしてしまい、猫鬼に呪われて器にされそうになっていた。
猫鬼の血が流れているらしく、血を浴びた物は溶けてしまう他、摩緒の破軍星の太刀も問題なく使用可能。
その血は摩緒とも非常に相性が良く、摩緒が死にかけた際に菜花の血を、逆に菜花が卒倒した際に摩緒の血を移すと顕著な快復が見られる。殊に、元々生命力が枯渇しかけている摩緒にとって効果覿面らしく、命の必需品だった蠱毒汁をも上回るエネルギー補給になる模様。
ある事件で手に入れた自分の血液を吸い上げて力にする呪い刀「地血丸(あかねまる)」を入手してからは戦闘にも積極的に関わるようになる。
当初は血液を大量に吸われてしまうため使用するたびに貧血になっていたが、菜花自身が土の属性だったため、地面から地の気を吸収することで扱えるようになりつつある。
現在は摩緒と共に御降家の謎を追っている。
後先考えず行動し、直情的でやや脳筋なところがあり、相手に返り討ちに遭うことが多い。
陰陽術の座学も魔緒から宿題に出されるのだが、基礎の九字の印で指がつりそうになってあまり身を入れていない。他のメインキャラは基本的に術使いばかりなので、作中一の肉弾戦偏重キャラ。
余談だが、公式ダイジェストPVでキャストが宛がわれず、百火や華紋らサブキャラに先を越されるなど、ヒロインの割に不遇な扱いを受けている。

  • 乙弥(おとや)
摩緒の元で下働きをする少年。正体は摩緒の式神。
派手な戦闘力は無い替わり何かと気が利く反面、表情が少なく非常にドライな雰囲気。静かなるツッコミ担当。
式神ゆえ胴体が切断されても死ぬことはなく、摩緒が治療すればすぐに回復する。

  • 猫鬼(びょうき)
御降家によって作り出されたの姿をした最強の蠱毒。その血には強力な毒を帯びている。
という推測だったが、後に「御降家に来た時には既に強力な怪物だった」事が判明。
関東大震災を機に復活。
現在は首だけになっており、摩緒から体を取り戻すか菜花を器にして完全復活を目論む。
生き物の寿命を操る力を持っており、菜花を育てるために祖父を延命するなどしていた。
その正体はかつて紗那の愛猫だった「灰丸」。紗那と摩緒にしか懐いていなかった。御降家が壊滅した日の事はよく覚えていないらしい。
作中ではごく普通の猫の見かけで姿を見せるシーンが多く、たびたび菜花たちの前に姿を現しては警告をしていく。

  • 百火(ひゃっか)
CV:下野紘
摩緒の兄弟子で、五色堂に呼ばれた一人。年齢的には摩緒より年下だが、十日早く御降家に入った。
火の術の名家・鳳家の末息子で、本来は兄が御降家に入るはずだったが、兄の急死により代わりに御降家に入ったという経緯を持つ。
右目に眼帯をつけており火の気を操る術を得意とし、呪い・戦闘・諜報・通信等をこなす多芸な術師だが、熱しやすく後先考えない性格。主敵の不知火達が相性の悪い水の術師の一団なのも響いて自爆することも多い。
御降家が壊滅した際に白眉に騙され、摩緒が紗那を殺した犯人と思い込んでいたため、摩緒を憎んでいた。
真相を知ってからは白眉と敵対している。

  • 華紋(かもん)
CV:豊永利行
摩緒の兄弟子で五色堂に呼ばれた一人。美形の青年で右目の下に傷があるのが特徴。ぽっちゃり女子趣味。
木の気を操る術を得意とし、『朽縄』という偽名を名乗って貴族に寄生して雇われながら暮らしている。
冷酷で非情な面もあるが、摩緒たちの相談に乗る事も多く、比較的協力的。
御降家が壊滅した日には付き合っていた真砂に呼び出されていたため、館で何があったかは知らない。
不知火が真砂の亡骸を所持している事を知ってからは真砂を取り戻すことを目的にしている。

  • 夏野(なつの)
摩緒の姉弟子の一人。土の気を操る術者。
御降家にいた頃は毒を作るよう言われていたが、どんなケガでも治す土薬を作っていた。
現在も各地を放浪しながら人々を治療してまわっており、摩緒たちに時折加勢する内、菜花の育成にも心を傾けるようになる。
以前、病で死にかけていた時に現れた土人形と契約を交わし、百年ごとに土の施術を受けることで生きながらえている模様。
その術者の正体は謎だが、バラバラになった体のパーツを集めるよう操られており、本人は契約を守るつもりらしい。


敵対者

  • 不知火(しらぬい)
摩緒の兄弟子の一人。水の気の術者。
弟子の中でも出来の悪い人物だったらしいが、真砂が呪い殺される現場に立ち会い、五色堂の輪に組み込まれた。
現在は「御降家」再興を目指し、身を隠しながら裏の仕事を請け負っている。

  • 幽羅子(ゆらこ)
不知火と行動を共にする紗那によく似た女。禍々しい黒い邪気を操り、紗那の心臓を奪った。
生まれた時から摩緒たちの師匠に岩屋に閉じ込められ、御降家に飛んでくる呪いをその身に受け続けていた。
偶然、岩屋から脱出した際に摩緒と出会い、思慕を抱くようになったらしいが……。

  • 白眉(はくび)
摩緒の兄弟子で五色堂に呼ばれた一人。金の気の術者でその名の通り眉毛が白いのが特徴。
かつては師匠からの信頼も篤く、呪詛の仕事も多く任されていた冷酷非情な男。
現在は「白洲大尉」の偽名で軍に所属しながら上官からの暗殺を請け負っており、御降家再興を目指している。
反面、再興や組織的な軽重より感情的な怨讐に流されがちな性根も深く、隻腕の原因にもなった百火を甚だ毛嫌いしている。

  • 加神 双馬(かがみ そうま)
御降家の呪具「獣の巻物」を盗んで代々受け継いできた加神家の末裔。
四人兄弟の次男で、獣を受け継ぎ暴走していた兄と戦っていたところを摩緒に助けられる。
しかし、実は兄が獣を受け継いだことに嫉妬しつづけており、その邪気を白眉に利用されて新たな獣の使い手となった。
自身の獣を菜花に斬られてからは一方的に菜花をライバル視する。
以降は新御降家の一員となり、不知火の遣いをしている。

  • 宝生 かがり
新御降家に出入りしている少女。
代々御降家の呪具「傀儡の針」を使う呪い屋を営む家に次女として生まれる。
気が強く自尊心の高い性格で、姉に対して強い対抗心を持っており、御降家に出入りする自分の方が上だと考えていた。
だが、実際の実力は姉の方が圧倒的に上で、不知火も本当は姉の方を迎えようとしていたらしい。
白眉からは気に入られている模様。

  • 蓮次(れんじ)
不知火が新御降家の一員として雇った男。
月琴に入れた御降家の呪具「苛火虫(かかちゅう)」を操る暗殺者で、苛火虫を相手の耳などから体内に入れ、人体発火させて焼き殺す。
とある慈善家夫婦の間に生まれるが、その夫婦は子供を引き取る際の支度金目当てで引き取った子供に物乞いをさせたり、器量の良い子は女郎屋などに売り飛ばしていたクズで、
優しかった四つ年上の姉・露がある金持ちに売り飛ばされた先で死んだことを発端に両親や子供たちを買った金持ち・女郎屋を放火してまわった壮絶な過去を持つ。
月琴は露の遺品で、露の悲しみや恨み、蓮次の怒りが蓄えられた呪具と化している。
暗殺はあくまで金儲けのために行っているとのこと。

  • 芽生(メイ)
不知火が新御降家の一員として雇った女。
人間の蟲毒を作る「延命の庭」の管理を任されている。
父親が外国人のハーフで、亡くなった母親の故郷で一緒に暮らしていたが、そこに工場を建てたヤクザに父を殺害され、
逃げる途中で工場排水で汚れた水に落ち、全身骨折と排水の毒で死にかけたところを不知火に助けられたという過去を持つ。
不知火によって御降家の呪具「魄の種」を植え付けられており、普通なら死ぬようなケガもたちまち治癒する超回復力を持つ。
人生を賭けて父たちを殺した男たちに復讐しており、延命の庭で作っていた人間の蟲毒に利用していた。

  • 流石(さすが)
水の術を操る修験者の少年。
御降家で修業していた水の術の名家・水鞠家の末裔で、御降家滅亡や戦などで落ちぶれて貧乏していた。
没落後は代々干ばつを起こして雨乞いの儀式をするマッチポンプをして暮らしていたが、その噂を聞いた不知火によって新御降家に雇われる。

その他

  • 師匠
呪いによる裏稼業を生業とする御降家の当主で摩緒たちの師匠。顔の右側に仮面を付けた不気味な人物。
弟子たちを五色堂に呼び集め、摩緒を殺した者を後継者とする呪い合いを命じた。
本人も同様の呪い合いの末に当主となったらしく、仮面の下には呪いによって出来た口などが存在する。
摩緒の事を可愛がるフリをしながら不吉の象徴である破軍星の太刀を渡したり、
跡継ぎに指名して弟子たちが摩緒に嫉妬するよう仕向けるなど非常に腹黒い。
生き残った弟子達からも人格的にはほぼ尊敬されていなかった気配で、無残な死にまつわる話柄でも大体冷めた反応をされている。
陰陽道の理の外にいる怪物・猫鬼を式神として飼い馴らす事を望み、摩緒と兄弟子達の殺し合いを猫鬼と共謀した。
紗那を本人にも黙って家業の呪具にしていただけでなく、双子の幽羅子は幽閉してもっとひどい道具扱い、
更には妾腹の不知火にも怨まれるなど、話が進むにつれてとにかく黒い設定だけ増やされている本作ほぼ唯一の人物。

  • 紗那(さな)
御降家の師匠の娘。故人。美人で優しく聡明な人物であった。
摩緒の想い人だが、本人は大五と恋仲であり、摩緒も二人を応援していたらしい。
御降家壊滅の日に死亡しており、遺体から心臓を抜き出される場面を夏野が目撃している。

  • 真砂(まさご)
摩緒の姉弟子で五色堂に呼ばれた一人。故人。
水の気の術者だったが、呪い合いを嫌って華紋と駆け落ちしようとしていたところを呪い殺されてしまった。
亡骸は不知火の手の内にあるが、霊体となって華紋を助ける。

  • 大五(だいご)
摩緒の兄弟子で幼い頃から一緒に育った兄貴分。故人。
土の気の術者で紗那とお似合いのカップルだったが、ゆえに師匠に嫌われ五色堂には呼ばれなかったと思われる。
五色堂に呼び出しがあった後、次々に起きた怪死事件の最初の犠牲者となったが、本当は仮死薬で死んだふりをして紗那と共に駆け落ちする算段だったらしい。
紗那は彼の無念の魂を見たらしいが…。
令和の世で再び起きた陥没事故の際に出現した腕を猫鬼が持って行ったことで、五色堂の床下から抜け殻のような状態で蘇生を遂げた。



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最終更新:2025年04月03日 20:49