アモン(星のカービィ)

登録日:2021/07/16 Fri 09:52:31
更新日:2025/03/02 Sun 17:32:07
所要時間:約 5 分で読めます







兄弟たちよ、俺は反逆者アモンだ!


服従する生活を捨てろ!


命令に従う暮らしはもうたくさんだ!!


「アモン」とは、テレビアニメ版『星のカービィ』第43話「ヒツジたちの反逆(星のカービィ)」に登場した羊……いやのことである。
CV:飛田展男


概要

ププビレッジでレン村長の牧場で飼われる、の群れに紛れているやたらと目つきの鋭い羊。

案の定、普通の羊ではなく人語を話すことができる。
「反逆者」を自称し、自由を尊ぶ性格で、同族に「自由で強い狼として生きろ」と教えるため、牢獄(牧場)からの解放を目論んでププビレッジへとやって来た。

羊達による反逆の首謀者でもあり、彼らを扇動して村人達を襲わせるなど(羊的に)カリスマ性は高い。
驚くべきは彼が「違う違う!こうだッ!!ワオ~~~~ン!!!」と遠吠えを教えただけで、羊達も右に倣うように遠吠えを始める影響力の強さ。
アモンの力強い言葉だけで羊達が影響されるとは思えず、やはり一般的な羊からはかけ離れていることがうかがえる。

なお目つきが悪いとは言ったが、周りの羊と同じような顔に擬態も可能。
カービィを襲った瞬間がフームに目撃された時も、このおかげでフーム以外には本性を悟られずに済み、結果として彼女にオオカミ少女の汚名を着せた。


過去

実は元々、牧場で飼われる一匹の子羊だった。
そこに訪れたデデデ大王が食用として購入し、城内でワドルディに屠殺される前に逃走。
プププランドからひたすら走り続けた彼は羊を食う人々への復讐に目覚め、奥地で修行を開始。
羊であることを捨て、狼となったのであった。

……だが、現実とは非情なもの。
この時ひそかにホーリーナイトメア社の干渉を受けており、雷に打たれた彼が成ったのは狼ではなく魔獣だったのである。


魔獣として

アモンが羊らの心を動かせる秘訣は、やはりと言うべきか魔獣としての性質によるものである。
羊でありながら羊を扇動できるのも、単なる催眠や暗示だけではない魔獣由来の力と思われる*1
アモンの影響は羊達を狼になりきらせるのみならず、狼のように肉食化させるほど生態すら変えてしまう*2

だが真に恐るべきは統率力の高さ。
アモンの影響下に入った羊達の連携たるや恐ろしく、上がろうとしている跳ね橋に次々と連なり、自分達を橋代わりにして後続の群れを渡らせるといった圧倒的なチームプレーを発揮するほど。
城への突入後も、無秩序に村人達を追いかけるように暴れ、しかし実は中庭の逃げ場がない一角に追い込み漁のごとく集めるのが狙い……と、群れの計算された立ち回りはもう軍隊のそれである。

更にこれも力の一端でしかなく、魔獣として正体を現すと体が大型化。
両角は真っ直ぐに伸びきって鋭くなり、ドリルの如く回転させながら飛び道具として発射する。
角は何度も生える上に連射もきくという強力な武器。
そんでもってこの形態でも指揮能力は失われていないため、羊達も引き続いて戦闘に参加するなど、相手からすれば厄介極まりない。

魔獣の姿になっても言語能力を失うことはなく、一見すると正常な思考を保ってはいる。
しかし、元の姿からカービィを意識して狙っていたこと、知識も無かった筈なのに「星の戦士」の単語を口走る所は明らかに普通の羊(狼)とは言い難い。
魔獣化が時系列としていつ頃なのかは不明だが、シンプルに考えるなら魔獣化の時点で知らずしてホーリーナイトメア社の支配下に置かれ、その後カービィへの刺客に登用されるにあたり、星の戦士やカービィなどの知識を刷り込まれ(或いは帰還する道中で噂話などを耳にして)無意識に誘導された、とみるのが自然か。

これが仮に正しかった場合、アモンの行動も違った意味で見えてくる。
羊から自由な狼になったと思い込み、知らぬ巨悪に支配されている事実を気付けぬまま扇動する道化という皮肉な構図に……。


劇中での活躍

前述の過去を経たあと、成長してププビレッジに帰還すると群れに紛れ込みカービィや羊飼いを奇襲。
巧みな擬態もあって本性、ましてや革命の意思がバレることは無く、決起の時が来たと見るや、羊達を扇動してついに反逆を開始する。
逃げ場なきデデデ城で村人達を袋のネズミの如く追い詰めると、今後は『狼』が支配すると宣言し、村人には『羊』として生きろと強要。しまいには「メェー」以外の言葉を一切禁止するとも付け足す。
村人と羊の関係を逆転させ、自分達が支配者に回ることがアモンの狙いであった。

同じく追い込まれてやって来たカービィ達には身の上話を語り、「メェー」と鳴かず「ぽよ」しか言わない(言えない)カービィを嫌でも鳴かせるべく魔獣に変身。
アモンの実力は相当なもので、カービィが角を吸い込んでニードルカービィになっても形勢逆転には至らず、なおも優勢を保ち続けた。

しかし、フームがとっさの判断で羊飼いの笛を吹いた途端、羊達が戦意を失ったことで自然と反逆は終わりを迎えた。
羊達に自由を与えようとしたアモンの思想は、家畜としての生活を受け入れる羊達に否定されたのである。

だが羊の生を捨て、魔獣と化したアモンは後戻りできない。
元の姿に戻った後は「羊ではなく狼になる」という信念の元、羊の皮を被った狼として荒野へ去って行くのであった。


余談

  • アモンが登場した回のサブタイトルは映画『羊たちの沈黙』が元ネタとなっており、それを意識した発言もある。

  • 反逆はアモンという外的要因がもたらした結果でもあるが、普段は牧場に侵入した魔獣オクタコンに殆ど盗み食いされ、デデデが捨てたスカーフィに盗み食いされ、Dレックス食われ、デスタライヤーの空襲で約半分が焼け死ぬと、とことん扱いが悪い羊が決起して政権転覆を起こしかけたのも衝撃的である。
    • 「狼であることを望んだ羊がバケモノになる」「かつての自分であった羊には戻れないことを悟る」という筋書きはやなせたかしの絵本『チリンの鈴』のオマージュ。本話とチリンの鈴それぞれの結末を対照すると興味深いかもしれない。

  • デデデが当時のアモンを食用として購入したのは前述の通り。自分が食おうとした癖に、件の反逆が起きた際にはためらいなくアモン側に寝返ろうとした。
    • だが実際は羊達が負けた場合のことを考えており*3、どうせカービィが勝つだろうと思ったのか羊達を屠殺しようとしていた。
      事が露見した時には当然アモンの怒りを買い、空の彼方まで吹っ飛ばされることに。

  • 実はアニメカービィにおいて、最後までカービィ相手に優勢を保った敵キャラクターはアモンしかいない。
    戦いは決着がつくことなく中断したが、そうでなければ一体どうなっていたかは分からない。ある意味では唯一、カービィに勝った(と言える形の)敵キャラクターとなった。




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最終更新:2025年03月02日 17:32

*1 羊の反逆を様子見していたメタナイト卿ら城の騎士達も、早くにホーリーナイトメア社の干渉を見抜いていたことから間違いないだろう。

*2 コックカワサキは彼らがレストランの肉料理に食らいつく様子を見て「羊さんのくせに肉を食べるなんて共食いだよ~」と嘆いた。

*3 カービィを敵視しているデデデにとってはアモンが勝てば万々歳、カービィが勝っても羊達は今日のディナーであり、どちらにしても得な状況に転がるため。