羽村を取り逃がしたのは失敗だったな? 口を塞ぎ損ねた……。
お前は親っさんを殺した……このまま逃げ切れると思うな!!
上述のプロフィールは表向きのもので、その正体は八神が追っている連続殺人鬼モグラその人。
そして本作のラスボスである。
羽村とは20年来の付き合いであり、彼経由で厚生労働省の一ノ瀬からの、
「新薬実験のための被験者の拉致」 という依頼を引き受け、実行していたのが連続殺人の真相だった。
元々は綾部と同じ単なる汚職警官であった黒岩は
新人時代に先輩(同じく汚職警官)から裏社会のイロハを教わり、警察の情報を外部に横流しするなどしていた。
しかし正義感のある警官がその先輩を密告し、先輩は逮捕直前に飛び降り自殺。
こうして先輩の後釜に収まった黒岩は先輩の取引先である羽村との関係を継続させ、羽村の依頼で銃の横流しや書類偽造などの悪事を働いていた。
検挙率が高いのもヤクザの犯罪ネットワークを利用していたからである。
しかしそんな生活が20年も続くと業務に余裕が出てき始めたのか、新たな業務に手を伸ばす。
そんな「冷やし中華はじめました」くらいなノリで始めたのが殺し屋の仕事だった。
この稼業を選んだことに(少なくとも本編で描写されている限りでは)何ら特別な理由や信念などはなく、敢えて言うなら「できるからやった」というもの。
このサイコパスじみた異常な精神性には羽村も畏怖の念を抱いていた。
そして殺し屋としての最初の依頼は厚生労働省の一ノ瀬からで、「創薬センターの副所長を殺害しろ」というものだった。
黒岩はそれを初めての殺人であるにも関わらず難なくやってのけた。
しかも行きずりの喧嘩を演出するため、敢えてその場はとどめを刺さず気を失わせるだけに留め、
且つそのまま目覚めることなく死ぬよう確実な致命傷を負わせるなど、
初めての殺しにしては妙に手馴れている節があり、海藤曰く「こいつは相当暴力をわかってる」とのこと。
事実、事件発生から死亡するまでに三週間も時間が空いたせいか副所長が死んだことはあまり取り沙汰されず、結果として黒岩は人1人を静かに殺してみせたことになった。
そして本編においては、アルツハイマー病の治療の為に国を挙げて開発がすすめられていた新薬、
『アドデック9』の実験のために共礼会の組員を拉致(創薬センターを潰そうとしている梶平グループに協力しているため)して、
実験を主導していた生野に渡し、実験終了後は遺体の処分をしていた。
終盤、羽村が八神に捕まり情報漏洩の可能性が高まると自ら黒いレインコートを纏ってついに八神らの前に登場。
共礼会の組員を次々に射殺し、羽村を殺して口を封じようとするが、松金組長が羽村を庇ったことで失敗に終わる。
これによって羽村がモグラの正体を八神に打ち明けたため悪事が露見。
その後、事務次官の一ノ瀬に見限られて刺客を差し向けられたことで完全にタガが外れ、
以後おそろしいほど銃の引き金が軽くなり、行く道を邪魔するものを躊躇なく射殺するほどになる。
このあたりの暴れぶりは「切り離したトカゲの尻尾が本体を殺そうとしてきた」と喩えられる。
物語の最終局面において、創薬センターで遂に八神と対峙。
熾烈な肉弾戦の末に窓の外に吹き飛ばされて敗北……したかに見えたが、すぐに窓をよじ登って再登場。
強心剤の類と思しきアンプルを自らに注射して狂気の咆哮をあげ、そのまま第二回戦に突入する。
最期は八神に敗れ、悪あがきに生野を殺害しようとしたところに警官隊の一斉射撃を受けて遂に倒れる。
今わの際に自らにアドデック9を注射した生野が副作用で苦しみ悶える様を見て、死体の眼球が抉られていた理由を悟り、
そして頼みの綱としていたアドデック9の研究の失敗も目の前で証明され、そのまま事切れた。
なお八神が追っているモグラは黒岩で間違いではないのだが、
あくまで黒岩は拉致した被験者を生野に渡しているだけであり、殺しているのも目を抉っているのも黒岩ではなく生野。
なので真の意味でのモグラは黒岩ではなく生野の方とも言える。
あくまで実行役に過ぎない黒岩は目を抉っている理由を知らず、それを知ったのは自身が死ぬ直前だった。
なので実のところ劇中では、
八神「何故目が抉れている?」
羽村「何故目が抉れている?」
黒岩「何故目が抉れている?」
プレイヤー「何故目が抉れている?」
という状況になっていた。
プレイヤー目線でもこの理由は黒岩と同じように最後まで秘匿されており、
それが明らかになるのは黒岩と同じように眼球が青く染まった生野の苦悶の顔を見た時と、それと前後してシーンが切り替わる法廷での木戸の証言によってである。
■戦闘能力
異常。
端的に言うならばその一言に尽きる。
身体能力の高さ、銃の腕前、殺人行為に対する躊躇の無さなど、いずれも恐ろしく常人離れしており、
上述のようにヤクザ者が二人かかりで襲い掛かっても容易く返り討ちにする程の戦闘能力を有しているだけでなく、
武装した複数人の松金組員を単身で次々に射殺し、警官隊すらも同じく単騎で返り討ちにするなど、
歴代のラスボスの中でも突出して暴力に長けている様子が描かれている。
信じ難いことにこれでも百戦錬磨のヤクザ者とかではなく、いくら神室町とはいえ一介の警官にすぎない。
八神との初戦では革製の警棒(所謂ブラックジャック)を所持しているほか、シリーズ最強の武器であるムービー中の銃を多用しているが、
場所的に銃を使えなかったり殺戮に夢中で撃ちすぎて八神と戦う前に弾切れしちゃったりで八神との戦闘ではステゴロで戦う。
格闘術はなんの因果か八神と同じ中国拳法を主軸としたもの。
ただし明らかに殺人拳な上に警察官として戦う初戦でも動作や所作が明らかに警察官とは到底思えない狂気的なもの。
銃を持ってる時は雑魚相手に無双はしているが強敵相手に銃を使える程の腕なのかは不明。
そして何よりも恐ろしいのが終盤のトカゲの尻尾となった時に見せた狂気。
神室町のど真ん中で差し向けられた刺客を『発砲』して返り討ちにしたのを皮切りに、
最後の戦いの舞台となる先端創薬センターでは、警備員どころか進路上にいるだけの(適当に退かせば済むような)研究員ですらあろうことか手当たり次第に射殺したり、
渡り廊下を爆破したりするなど、司法で裁かれたら極刑確実な所業を平然と行っている。
そんな状況でも「アドデック9さえ完成させれば捕まるどころか感謝される」「これからも生野と二人で実験を続けていく」と言い放ち、
にもかかわらず直後に生野を自ら殺害しようとするなどその言動は支離滅裂であり、一ノ瀬という後ろ盾を失ったことで完全にタガが外れてしまっていた。
龍が如くシリーズの敵キャラクターには、良くも悪くも何らかの信念や意地を持ち合わせた人間味のあるキャラクターが多いが、
そんな中で黒岩はこれといった背景もなく殺し屋の仕事に手を染めた、暴力と狂気のみを突き詰めた殺人マシーンのような存在として描かれている。
同じ殺し屋だが0に登場した、依頼されたターゲット以外は極力見逃す機械のような老鬼とは対照的である。
近年の龍が如くシリーズ作品のラスボス達は評価の低いキャラクターばかり続いたため本作も不安視されていたが、
圧倒的な強さと冷酷さに加えて最後まで小物臭さを見せなかったことからラスボスとしての風格は十分。
総じて『信念なき邪悪』とでも形容すべきその在り様はシリーズでも異彩を放っており、プレイヤーからの評価も高い。
尤も、次回作ではこいつをさらに越えたド外道が登場するのだが