SCP-5153

登録日:2022/01/25 Tue 00:15:57
更新日:2022/05/02 Mon 20:22:10
所要時間:約 9 分で読めます






「この場合の”少年”は誰だったんだろう」 そう思う者はもう誰もいない。



SCP-5153はシェアード・ワールドSCP Foundationに登場するオブジェクトである。
オブジェクトクラスやメタタイトルなどは後述。

この記事は5枚の報告書からなっている。
構成としてはそれを時系列順に眺めていくことになるので、しばしお付き合い願いたい。

リビジョン1/5 1908/06/10


財団記録・情報保安管理局より通達
以下の文書は全米確保収容イニシアチブ(ASCI)とSCP財団のデータベースからアーカイブされたものです。これらの情報はSCP-5153に関連する歴史的資料として保存されています。

— RAISA管理官、マリア・ジョーンズ
2018/08/12

SCP-5153に関連する最初の報告書だが、これを書いたのはSCP財団ではない。
この時点ではまだ財団が発足していなかったらしく、その前身組織である全米確保収容イニシアチブ(ASCI)によるものとなる。
ちなみにこの組織はSCP-2237ロングの提言で言及されたり、SCP-4004を作ったりしている。
ASCIの報告書フォーマットが具体的にどういう物かは不明だが、少なくともこの記事の設定においてはSCP報告書フォーマットとそう変わらないようだ。

内容は以下の通り。

脅威カタログ番号: ASCI-5153

脅威レベル: Black

脅威の収容: 差し迫った絶滅規模の天体衝突事象に備えて、ASCI-2000の準備を整え、全ての重要な職員を避難させるものとする。

脅威の説明: ASCI-5153は巨大な小惑星であり、現時点では1908年6月下旬(新暦)に地球との衝突が予測される軌道を進行している。この衝突の影響は地球上の全ての生命を滅ぼすと予想されている。


神が我ら皆を御守りくださいますよう。

いきなり地球がヤバいことになっている。
小惑星は非異常とは言え人類滅亡の脅威はどうにかしなければならない…が、かといってできることも特にないようだ。
機械仕掛けの神はあるようだが、根本的な解決にはならない。起動できない状態になってしまえばそれで終わりだし、地上の環境が完全に終わってしまえば起動できても意味がない。

この絶望的な事態、いったいどうなってしまったのだろうか。






































SCP-5153

登録日:2022/01/25 Tue 00:15:57
更新日:2022/05/02 Mon 20:22:10
所要時間:約 9 分で読めます




SCP-5153はシェアード・ワールドSCP Foundationに登場するオブジェクトである。
オブジェクトクラスSafe

概要:リビジョン2/5 1923/02/02

SCP-5153は先ほどの報告書で言及された隕石の落下事象そのものである。
具体的に言うなら先述の隕石は1908年6月30日、ロシアの中央部にあるツングースカ川の近隣に落下した。

…聞き覚えがあるという方も多いだろう。いわゆる「ツングースカ大爆発」である。
これにより2,150平方kmの森林がなぎ倒される大被害が発生した。
表向きは数~数十mの隕石が空中で約5メガトンの大爆発を起こしたことによる惨事という情報が知られているが、この記事によると実際はそうではなかったらしい。

なんとこの隕石は15kmもの大きさであり、爆発したというより上空7~10km付近で突然消滅したというのである。
15kmの隕石…いやもはや小惑星が衝突するというのは実際約6600万年前に地球で発生している。そう、恐竜を絶滅させたとされるあの巨大天体衝突だ。
消滅の余波で発生した15メガトンのエネルギーでツングースカ大爆発は発生したようだが、もし消滅してくれていなかったら人類滅亡どころか普通に新生代が終わっていただろう。

被害がシベリアだけで済んでよかったが、それはそれとして異常現象なのは変わりないので情報を隠蔽しなければならない。
今日明らかになっているツングースカ大爆発の情報がSCP-5153の特別収容プロトコルによるものということだろう。

しかし、これでもまだ最新の情報ではないようだが…?





































SCP-5153

登録日:2022/01/25 Tue 00:15:57
更新日:2022/05/02 Mon 20:22:10
所要時間:約 9 分で読めます




SCP-5153はシェアード・ワールドSCP Foundationに登場するオブジェクトである。
オブジェクトクラスKeter

概要:リビジョン3/5 1947/01/14

突然だが、ロシア*1に巨大隕石SCP-5153が再来してしまった。
何千万年に一回レベルの事象が40年で2回起きるとんでもないことになっているが、来てしまったものは仕方がない。ロシア、いや地球に何か恨みでもあるのだろうか。
今度の隕石は13km。前回より少し小さいが依然として衝突の影響は破局的であり、最大で地球上の生命の75%以上が絶滅すると予測されている。
落下予測地点はウラジオストクにほど近いシホテアリニ山脈なので、多分日本もモロにとんでもないダメージを国土に食らう。

こんな状況とあってはいくら財団でも、GOCほか他の要注意団体と協力して人類を守らねばならない。
SCP-2000も再びスタンバイされ、O5評議会の要請に応じて起動する準備が整っている。

そして、財団人工知能Alexandria.aicはSCP-5153の追跡任務が課せされた。
以下がそのデータである。

日付 地球との距離 衝突までの時間
1946/01/01 2,890,000 km 1年1ヶ月11日
1946/06/01 1,530,000 km 0年7ヶ月11日
1947/01/01 360,000 km 0年1ヶ月11日
1947/02/01 220,000 km 0年0ヶ月11日
1947/02/11 7,000 km 0年0ヶ月1日
1947/02/12 [対象物が見つかりません] [対象物が見つかりません]


……は?





































SCP-5153

登録日:2022/01/25 Tue 00:15:57
更新日:2022/05/02 Mon 20:22:10
所要時間:約 9 分で読めます




SCP-5153はシェアード・ワールドSCP Foundationに登場するオブジェクトである。
オブジェクトクラスSafe

概要:リビジョン4/5 2018/10/16

SCP-5153は直径約13kmの隕石である。
ただ、そのことごとくがシベリアの何処かに落ちてきて、地表から15kmの衝突寸前で爆発して忽然と姿を消してしまうのである。

あの後、隕石は何回も落ちてきた。
最初から並べると1908年、1941年、1947年、2002年、2009年、2013年、2017年、2018年。
2013年のものだけ落下場所がちょっと悪く、怪我人が多く出たが死者はいなかった。この件はチェリャビンスク隕石として知っている人も多いだろう。
あの隕石も表向きは突入時17mとされているが、実はこんなデカいのだったと思ったら恐ろしいものである。
しかしこれと最初のツングースカを除けば、死傷者は一人も出ていない。
2020年2月25日に落下が予測されているSCP-5153も発見されており、落下予測地点はバイカル湖付近となっているが、これも死傷者は出ない見込みである。

特別収容プロトコル

SCP-5153は、その大きさと消え方にさえ外部に勘付かれなければ他にする必要のあることはない。
たまに場所が悪いと被害が出ることもあるが、自然災害の範囲であるしヴェールが壊れるわけでもないので、特に無力化なども試みられていないようだ。
よって、まず財団の科学者がいち早くSCP-5153の可能性がある地球近傍天体を探し出し、軌道と落下予測日時・位置を割り出す。あとは偽情報を流しつつ監視することになっている。
なにやら盛大にビビらされていた財団(とASCI)だったが、慣れてしまえばこの通りである。





































SCP-5153

登録日:2022/01/25 Tue 00:15:57
更新日:2022/05/02 Mon 20:22:10
所要時間:約 9 分で読めます







ERROR: 財団データベースに接続できませんでした

[DATA LOST]















































おそらく、皆さんはこういう流れを辿った童話を聞いたことがあるだろう。


このSCP-5153のメタタイトルを明かすとしよう。
EN本部での原題は「The Meteor Who Cried Wolf」。
その童話の英語でのタイトルの”Boy”の部分を”Meteor”に入れ替えたものである。
しかし、有名ながら日本ではタイトルが安定しておらず、絵本でも様々なタイトルで出版されている。
よって日本支部でのメタタイトルは、それでもほぼ一定のものになっている、この童話の主人公が幾度となく叫ぶある台詞をもじったものになっている。



SCP-5153


「隕石が来たぞーッ!」



何が起こったのかは言うまでもないだろうが、あえて言うのなら最後の隕石は消えなかったのだ。
最初のうちは対策していた財団も、回数を重ねるにつれ見ているだけになっていた。
突然来た本物のオオカミ、いや隕石にはなす術がなかった。
IK-クラス:世界文明崩壊シナリオ、またはXK-クラス:世界終焉シナリオである。


ところで

元ネタの童話は、オオカミが来たとウソをつく少年と、それに踊らされる大人たちと羊が登場する。
これとSCP-5153を対応させてみると、一つ気になることがある。
“大人たち”は財団、”羊”は少年ではなく大人たちの庇護対象であるという違いこそあれ、人類でいいだろう。
だが“少年”がいない。強いて言うなら”オオカミ”がその役割を兼ねている。

童話ではオオカミは最後以外は本当に来ていたわけではなかったが、SCP-5153は寸止めこそすれ本当に来ていた。オオカミ自身が幾度となく本当に羊たちの寸前まで来て、なぜか踵を返すことを繰り返したとして、誰が警戒を解いたことを責められようか。
最後に衝突した隕石。
あれは本当に不幸にもSCP-5153と同じような大きさと軌道を持った、非異常の隕石だったのか。
それとも、SCP-5153の一部だったのか。
それは、もう誰も知ることができない。



童話とは、多くは教訓を伴い、子供に読み聞かせることでその価値観を育むおはなしである。
オオカミ少年の話なら、嘘をついたことで少年が後に報いを受ける。嘘をついてはならないということだ。

でも、この話は童話ではない。教訓なんてない。報いを受ける”少年”がいない。

ただ消える隕石に踊らされ、滅亡してしまった財団と人類の、喜劇である。



追記・修正は誠実にお願いします。


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最終更新:2022年05月02日 20:22

*1 1947年なので正確にはソビエト。