パーフェクト・ジオング(サンダーボルト)

登録日:2022/01/26 (水) 18:20:36
更新日:2025/10/02 Thu 23:56:28
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パーフェクト・ジオングとは、『機動戦士ガンダム サンダーボルト』に登場したモビルスーツ(MS)。

【諸元】

名称:パーフェクト・ジオング
型式番号:MSN-02
所属:地球連邦軍
生産形態:試作機

【機体解説】

一年戦争におけるア・バオア・クー攻防戦において、地球連邦軍が接収に成功した量産中だったジオングの1機を独自改修して完成させた機体。
対南洋同盟の切り札として戦場への投下が決定され、イオ・フレミングとニュータイプであるリリー・シェリーナの二人によって運用される。
機体の操縦などはイオが担当し、火器管制はリリーが担当するが、サイコミュを介しない武装はイオでも動かせる。

基本的なデザインはオリジナルから大きく変わっていないが、カラーリングがややガンダムチックなトリコロール寄りとなり、胸部には大きな連邦軍のマークがデザインされている
「ジオン」の名前を持つ機体に反して連邦の象徴を大きく掲げるその姿は、ジオンへの侮辱と評しても過言ではないだろう。誰が名付けたか、通称「レンポウグ」。
しかも連邦要素を後付けされまくったジオングが「パーフェクト(完璧・完全)なジオング」を名乗るのだから、最早「敗戦国の兵器の末路」でも言うべきか…。


しかし、このパーフェクト・ジオングは存在自体がブラックボックス状態という最大の欠陥を抱えている。
連邦はジオングを鹵獲したまでは良かったが、操作マニュアルを手に入れてもサイコミュを初めとしたシステムを解明できなかった。
機体のメンテナンスでもサイコミュの十分な整備が出来ず、スパルタンのメカニックの技術では故障を起こした際の修理は不可能と断言されている。


【仕様】

スカート部分には念願のかざり脚…ではなく、大型のプロペラントタンク兼ブースターが接続。つまり脚のように見えて脚じゃない。
肩部などにも大きなスラスターが増設されており、スカート内のサブブースターもオリジナルから2基増加*1されている。
機体の巨大化と引き換えに機動力が向上しており、作中ではその巨体に不相応な激しい動きを見せる(無論、イオの操縦技術もあっての動きだが)。
スカートはミサイルランチャーや応用の利くサブアームなどを大量に収納した武器庫と化しており、元の機体よりも火力と汎用性を強化した。
ただし大火力の反面単純な加速力や機動性はサイコ・ザクに軍配が上がる。

脱出機能も搭載されているが、オリジナルとの違いは首元の一部も付属する点。
首元の裏側には四隅に小型スラスターがあり最低限の機動性は確保されている。

コックピットには当時としては最新鋭の全天周囲モニターを採用しており、全方角からの視認性に優れている。
座席はニュータイプとの連携による運用を前提としているため、複座型の独特なカプセル状のシートを採用。
カプセルの中は、戦闘中のGからパイロットを保護するようにジェルで満たしている。

なおブラックボックス扱いという関係上、パーフェクト・ジオングのサイコミュはニュータイプの覚醒の強化と脳への激しい精神的負担を与えてしまう。
だが、その影響が与える結果について誰も想定や想像ができていない。
サイコミュ制御と射撃管制を担当しているリリーは戦闘中でも鼻血を吹き出すなど激しい負担を感じており、長期的な戦闘には支障が出てしまう。
ジオングの売りであるサイコミュによるオールレンジ攻撃も、リリーが負担を感じていれば使用が困難となって柔軟に使うことが出来ない。
そして何より、「100%の性能を発揮するにはイオとリリーのシンクロが絶対条件」と断言されるほどピーキーな前提条件がパイロットの2人に要求されることになる。



【武装】

頭部メガ粒子砲

頭部の口部分から発射するメガ粒子砲。
一撃で護衛のガルバルディαをシールドごと貫通して撃墜する威力を誇る。

腰部メガ粒子砲

従来のジオングと同様に腰部に存在しているメガ粒子砲。

有線制御式5連装メガ粒子砲

ジオングの武装としてシリーズファンは印象深いであろう、両腕の指に搭載されたビーム砲。
片手で戦艦グワジンの主砲クラスの威力を誇り、五指掃射により一瞬でガルバディαをバラバラに細切れにして撃墜した。
作中では、腕部分のみが宇宙空間という暗闇の中からいきなり現れて相手の機体を焼くという、ホラー漫画のような演出が描かれている。
腕のみが動く姿とMSとしては桁違いのメガ粒子砲の破壊力は、南洋同盟のパイロット達を恐怖に陥れた。
両手十指一斉掃射の威力は一瞬でコロニーの一部を削り消し飛ばすというデタラメな威力を見せる。
その後も巨大なクライバー宇宙要塞すら一撃で粉砕しており、Iフィールドでもない限りは防ぐ手はない。
尚、この武装はサイコミュのためかイオの操縦では動かせず、リリーへの負担も大きい。
ただしオールレンジ攻撃をせずメガ粒子砲を撃つだけであれば少ない負担で済む。

ビームサーベル

サブアーム内に2基装備されており、隠し腕から展開する。
オリジナルにおける接近戦用の武装がないという弱点をフォローしており、隠し腕なので不意打ち的な奇襲も可能である。
その出力は大きいようで、正面から鍔迫り合ったサイコ・ザクのヒートホークの刃を叩き割る威力を発揮した。
更に一番外側のコンテナにもサブアームとセットで2基装備されている。

ミサイルポッド/6連装ミサイル・ポッド

延長されたフロントスカート下部に搭載している内蔵型ミサイルポッド。6連装ランチャーが左右に合計10基設けられている。
オリジナルには搭載されてなかった実弾兵器であり、戦艦も顔負けのミサイル弾幕を展開することが可能。

I・フィールド

両肩部と両腰部に計4基搭載され、圧倒的なブラウ・ブロのメガ粒子砲を完全に遮断する出力を持つ。
反面エネルギー消費も大きく、使えなくなる場面もあった。

バリュート

本来は大気圏突入用の装備だが、その耐熱性の高さに着目し、マイトレーヤ作戦では万が一ソーラ・レイが発射された時のために装備された。
ちなみにアトラスガンダム等ホッドロッド艦隊のMSは皆装備している。
図体の大きいパーフェクト・ジオングは縦に2つ付けられたが、それでも足のプロペラントブースターまではカバーできていない。


【劇中の活躍】


さあ…戦ろうぜ。

スパルタン残存部隊の再編中、ダリル・ローレンツのサイコ・ザクが「パーフェクト・ガンダム」を名乗ってルナツーに潜入・襲撃。
MAブラウ・ブロを奪取したという情報も入り、ダリルへの対抗馬として投入が決定されて起動試験が行われる。

そしてサンダーボルト宙域に位置する廃コロニーで、サイド3攻略訓練を行っていた南洋同盟基地を捕捉。
ダミーバルーンを使い連邦艦隊によるデブリ掃海を装ってコロニーに近付くと、誘き出されたビビ・ベンソン率いる南洋同盟部隊を奇襲。
有線腕のみで戦艦主砲並のメガ粒子砲を放ち、護衛の新型機ガルバディαを背後から瞬殺、そしてジャズを流しながらダミー掃海艇からジオングが姿を現す。

同時にビアンカとアトラスガンダム率いる新型MSトラスト隊もデブリに紛れて廃コロニーの基地に接近し、残りの量産型サイコ・ザクMk-Ⅱ達と誘き出す。
リリーの肉体的負担の影響もあって危うい様子も見せるが、咄嗟にNT能力で背後から迫るビルの瓦礫デブリを察知、緊急回避でビビ機を瓦礫に巻き込み撃破。
更に廃棄コロニー同士をぶつけるという無茶苦茶な作戦により、瓦礫に巻き込まれたエイプリルのサイコ・ザクMk-Ⅱをアトラスガンダムが狙撃で撃墜。
それを見て逆上しトラスト部隊に迫るハンクのサイコ・ザクを、いつの間にか駆け付けたジオングがビームサーベルで切り裂き撃破。
これによりパーフェクト・ジオングとトラスト部隊は初陣で3機もの量産型サイコ・ザクMk-Ⅱを撃破に成功する。
しかも出撃したMSがほぼ無傷で全機帰還するという、結果だけで見れば完全勝利とも言えるもの*2
32機のうち約1割にあたる3機を撃破という大きな戦果を上げ貢献した。だが…。

後に南洋同盟の捜索中にヨハン・ガレの宇宙要塞を破壊するが、リリーがその戦闘において衰弱してしまう。
それを受けてモニカ・ハンフリーはフォン・ブラウン市で休息を取ることを決定し、フラナガン機関においてジオング専門の技術者の補充を決める。

マイトレーヤ作戦においては、コンペイ島でバーフェクト・ガンダムと互角の戦いを演じるが、I・フィールドが勝手に起動する現象も見られた。
そしてリリーとダリルは誰かの気配を感じ始める……。
そんな中予期せぬソーラ・レイの発射により、双方は一時撤退する事になる。


その後ソーラ・レイ内部のコアを破壊するために再出撃。
最終的には頭部以外は大破、脱出機能でジオング・ヘッドになった後も戦うが事故で推進剤が切れて動けなくなり、ビグザム上部に墜落する。
幸いにもイオ達は無事だったので、作戦完遂の為にそれぞれがすべき事を始める。
捕らえられていたビアンカと合流したイオはアトラスガンダムを駆って全てにケリをつけ、ジオング・ヘッドを回収、脱出に成功した。


【因縁?】

このパーフェクト・ジオング、様々な方面に対して対比した関係性を作っている。

サイコ・ザクとの関係性

ジオングは「腕を飛ばして攻撃する足のない機体」だが、これは皮肉にも「手足のないパイロットの代わりの手足となる機体」であるサイコ・ザク系列の機体と対照的である。
つまり、「五体満足の身体のパイロットが運用する欠損した形のMS」と「四肢欠損したパイロットが運用する五体満足の形のMS」が激突することになる。
また、「リユース・サイコ・デバイス」の脅威に対して「サイコミュ」が迎え撃つという、「サイコVSサイコ」という構図にもなっている。

パーフェクト・ガンダムとの関係性

ダリルが完成させたパーフェクト・ガンダムは、フルアーマーガンダムの装甲をサイコ・ザクに被せるというガンダムを徹底的に冒涜した構図だった。
このように「連邦の象徴をジオンの象徴で侮蔑する」という偽ガンダムのエピソードが展開された直後に、上述したようにジオンの名前の機体に徹底的に連邦の象徴を詰め込んだパーフェクト・ジオングのエピソードが展開されている。
要はこの2機が作中で登場する流れは、連邦とジオンによる冒涜合戦・皮肉合戦とも言う醜悪な構図になっている(正確に言えばパーフェクト・ガンダムはジオン勢力とも敵対しているのだが)。

シャア・アズナブルとの関係性

元祖であるジオングとそのパイロットであるシャアに対しても、一種のオマージュ・対比の様子が見られる。
そもそもイオ自体が「金髪、死んだコロニーの首長の息子、一流パイロット、本性を隠している性格」というキャラ設定から、シャアのオマージュキャラという説がある。

ところが、ジオングに搭乗するまでのシャアはニュータイプである大事な人を失い、精神的に大きく疲弊しながら苦悩を続けた。
一方でイオも大事な人を次々と失って精神崩壊しかける寸前まで来たのだが、そんな最中でも弱い自分の本性を晒しながらニュータイプのリリーを支えることを決意し、残された仲間と共に戦う覚悟を決めている。
ジオングの初出陣も「一人で苦しみながら戦うジオング」と「多くの仲間と支え合いながら戦うジオング」という対照的な様子となっている。

【余談】

  • 元ネタは疑うまでもなく漫画『プラモ狂四郎』やMSVに登場するパーフェクト・ジオングだろう。
  • 実は「トリコロールカラーで胸に地球連邦軍のマークを付けたジオング」には前例がある。
    • 遡ること約20年前のアーケードゲーム「機動戦士ガンダム 連邦vsジオンDX」において、地球連邦軍を選んでジオン軍の機体を使用した際のいわゆる鹵獲機体カラーとして採用されている。
  • 初期案ではブラウ・ブロとの合体案や従来のパーフェクト・ジオングのような脚付きのデザインも構想されていた模様。
    ブラウ・ブロとの合体というギミックは、パーフェクト・ガンダムの方で採用されている。
  • 作中ではニュータイプですら短時間の運用だけでサイコミュの過負荷に苦しみ、戦闘後医務室に搬送される姿が描かれている。
    結果としてジオングへの初搭乗&単独操縦で未経験のサイコミュの使用の両立を成し遂げているシャアの操縦技術とNT能力の化け物っぷりがよく分かる構図となっている
    シリーズにおいてはニュータイプとしては他より劣るような描写がされやすいシャアだが、シャアが劣るというよりはアムロを初めとした周囲のニュータイプの発達具合があまりにもおかしすぎるのだろう。
    • 正史世界とはパラレルワールドとされるサンダーボルトの世界でも、シャアはア・バオア・クー攻防戦において正史と同様の活躍をしていたことが示唆されている。
      優れたパイロットであるサム・シェパードを絶体絶命に追い込むなど、変わらず絶大な力を見せつけていたようだ。
  • 上述したようにジオンを侮蔑するかのような機体だが、雑誌掲載時の柱コメントも「退け!これが連邦のパーフェクト・ジオング!」など、スペリオール編集部までもがジオンを煽っているかのようなノリを見せている。
    • 一方、南洋同盟はソーラレイ奪取のためサイド3、つまりジオン本国を襲撃する計画を立てているため「祖国の危機に国の名を持った機体が立ち上がる」という一見ヒロイックな構図であるのもまた皮肉である。


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最終更新:2025年10月02日 23:56

*1 5基→7基

*2 その一方でザク側のビビの息子アレックスとハンクの娘エミリーが、地球にある南洋同盟の寺院学校でそのことを知る由もなく、授業の作文で自分達の親の事を慕う文章を読み上げるという皮肉った演出。