ステインボーイ

登録日:2022/09/18 (日) 16:40:53
更新日:2024/09/04 Wed 00:56:20
所要時間:約 9 分で読めます




スーパー・ヒーローは数多けれど

最も風変わりなヒーローは

猛烈パワーももってなければ

いかした車も運転しない




たしかに平凡なやつだけど

僕には特別なヒーローさ

その名もステイン(しみ)ボーイ



オイスター・ボーイの憂鬱な死より引用

概要


『ステインボーイ』(原題:The World of Stainboy)は、2000年に制作されたFlash短編アニメ集である。全6話。
監督・脚本はティム・バートン
彼にとって『バットマン リターンズ』以来のヒーローものの作品である。……一応。
かつてはShockwave.com というサイトで日本語字幕付の動画が公開されていた。
また、日本でも開催された「ティム・バートンの世界展」でも上映されていたので、こちらでご覧になった方も多いと思われる。
Shockwave.comでは妙にクオリティの高いミニゲームも遊べていたが、現在はプレイする手段がない模様。

本作の登場人物の多くは、同じくバートンが手がけた絵本『オイスター・ボーイの憂鬱な死』(原題:The Melancholy Death of Oyster Boy & Other Stories)が由来。
日本では99年に発売され、東京では青山ブックセンター六本木や渋谷パルコブックセンターといったクリエイター御用達の書店で週間ベストセラーになるなど、ちょっとした話題になった。
この作品に登場する子供たちは、いずれも彼の作品のメインテーマである異形の悲哀を背負っている。
と同時に、全体的に不条理なブラックユーモアで彩られ、中にはどこからツッコんでいいのか分からなくなるような話も
こうした原作を持っているのなら、当然本作も普通のヒーローものの物語になるはずなどなく……


あらすじ


舞台はロサンゼルス郊外の街、バーバンク*1
警察署には日々、異形の者たちに対する苦情が寄せられる。
ステインボーイは今日もグレンデール巡査部長の命令で、彼らを逮捕するべく奮闘(?)するのだった。


登場人物



  • ステインボーイ

バーバンク警察署に勤務している謎のヒーロー。
高層ビルのまわりも飛べない、特急列車も追い越せない。
実際彼も走ったり飛んだりできないことを結構気にしているらしい。
ないない尽くしの彼の唯一の特技は、汚いしみを残すこと。
そのため、クリーニング代に悩まされている模様。
絵本では全身しみに覆われて真っ黒になっている。
ちなみにこのキャラクターはバートン曰く、当時手がけようとして結局ボツになってしまったスーパーマン映画の企画の象徴なのだという*2


  • グレンデール巡査部長

いつも怒鳴っているステインボーイの上司。
名前の由来は、バーバンク近郊の都市の名前から。
風貌がバート・シンプソンっぽい。
回が進むごとに勤務態度が怪しくなっていく

  • ステアガール

「ステインボーイ、バーバンクの街に誰も近付こうとしない家があって、そこにじーっと見つめるだけのステアガールがいる。この件はお前に任せる」
「さっさと行け!首尾よくやれよ!」

誰でも何でもかまわず、じーっと見つめる謎の少女。その理由を知る者は誰もいない。
一度目を合わせたら彼女の視線を反らすことはできず、地元の「じーっと見つめるコンテスト」で優勝した経験もある。
作中で人に直接危害を加えた様子はなく、敵の中ではおそらく一番危険度は低いと思われるが、そこまでして捕まえなければならない理由は不明。

サイトで遊べたミニゲームは、ステアガールとのにらめっこ。ステアガールの目からカーソルを離さなければいいだけなのだが、時折起きるトラブルに対しては即座に対応しないとアウト。
目からカーソルを離しすぎても当然アウトなので、何気に難易度は高い。


  • トキシック・ボーイ

「ステインボーイ、バーバンクの街に苦情が出ている。市民がむかつき、目の痛み、おう吐などを訴えている。大気汚染あるいは朝食のパンケーキによる食中毒だと睨んでいる」
「行け!首尾よくやれよ!」

本名はロイ。しかし、トキシックボーイとして知られている。
その名の通り、アンモニアやアスベスト、タバコの煙や排気ガスといった有害物質を愛している。
作中でも、殺虫剤やパイプ洗浄剤、カタツムリ駆除剤をガブ飲みした挙句、床に大穴を開けるほどの腐食作用を持ったゲロをぶちまけるという危険性を見せつけた。


  • ボウリング・ボール・ヘッド

「ステインボーイ、バーバンクのボウリング場周辺が大騒ぎになっている」
「何者かが金持ちのボウラー達を殺し、路地裏に引きずり込んで、トロフィーを奪い、ボウリングシューズを売りさばいている。正義のために一役買ってくれないか」
「ぼやぼやしてる暇はない!行け!」

頭が巨大なボウリング玉になっている異形。声がウギー・ブギーっぽい。ちなみに敵キャラの中で唯一絵本に登場しない。
ステインボーイがボウリング場の路地裏に忍び込むと、何かがうごめく音が。
振り返ると、ボウリングのピンたちと、大きなゴミ箱によって逃げ道をふさがれていた。
そして背後からピンたちの親玉であるボウリング・ボール・ヘッドが姿を現し、彼に語り始めるのであった。
このくだりはガチのサスペンスになっていてなかなか見ごたえがある。


  • ロボット・ボーイ

「ステインボーイ、バーバンクの街が停電になっている。誰かが、俺の過去の3回の結婚よりもエネルギーを無駄遣いしているらしい」
「お陰で好きなTV番組も見られやしない。すぐに行って原因を調べてこい!

スミス夫妻の間に誕生した異形。ちなみに実の父親は電気ミキサーらしい。
抱きしめたくなるような温もりも柔らかい皮膚もなく、あるのは冷たくて薄いブリキの皮。頭からはワイヤーやチューブが突き出している。
自力で動くことはなく、唯一生きていると思わせるのは延長コードをコンセントに差し込んだときだけ。
ステインボーイが新聞に気を取られている隙に体を組み立てて襲いかかる。
その風貌は『サンリオタイムネット』のロボマシンガーにちょっと似ていたりする。
なお、この回で巡査部長が読んでいる雑誌には『COPS WITHOUT TOPS(上半身裸の警官)』なる番組の名前が見られる。

サイトで遊べたミニゲームはロボットボーイの改造。特別クリアなどの概念はなく、ひたすらロボットボーイに色々なパーツを組み付けて動かすことができるだけ。


  • マッチ・ガール

「ステインボーイ、お前の昔の女がガソリンスタンドで客を脅してガスポンプの売上金を奪っている。何が言いたいか解るな?」
「今すぐ行って彼女と話をつけてこい!」

ステインボーイの元カノ。*6このナリでリア充だったのかこいつ……
可憐でセクシーでとてもホットな彼女は、恋の炎で相手を焼き焦がしてしまうヤンデレ。
今でも彼のことが忘れられない彼女は、恋の炎を熱く燃え上がらせるのだった。
声の担当は当時のバートンの恋人リサ・マリー。つまり、ステインボーイのモデルは当然……



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最終更新:2024年09月04日 00:56

*1 ちなみにバートンの出身地

*2 出典:ティム・バートン[映画作家が自身を語る] P210

*3 ちなみに、職員の左手をよく見てみると指の数が……

*4 ここに住んでいる子供は、絵本から「両眼に釘がささった男の子」「たくさん眼のある女の子」「まんまるチーズ坊や」「ジミー(みにくいペンギンの子)」が出演している

*5 この伏線は最終話で回収される

*6 絵本版での彼氏はスティック・ボーイという、黒焦げのジャック・スケリントンみたいなキャラクター

*7 こうして彼女は、前回の敵であるロボット・ボーイの中に捨てられる。ロボット・ボーイは絵本版でもよくごみ箱に間違えられると書かれている