ナイトメアー・ビフォア・クリスマス(映画)

登録日:2011/07/11 Mon 21:01:45
更新日:2024/04/03 Wed 01:19:53
所要時間:約 12 分で読めます






昔々、かなり大昔のこと。君たちが夢で見たような場所だ。

今からお話しするこの出来事は、ホリデーワールドで起こったこと。

ホリデーがどこから来たのか知ってるかな?知らない?

では今からその答えを解き明かそう……



\This is Haloween♪/



概要


『ナイトメアー・ビフォア・クリスマス』(原題:The Nightmare Before Christmas)は、1993年10月29日に公開されたディズニー映画。
日本では1994年10月15日に公開。
タイトルは、アメリカでよく知られている詩『クリスマスのまえのばん』(The Night Before Christmas)のパロディ。
さらにその根底には、ドクター・スースの絵本やクリスマス特番への愛情が込められている。
原案・原作・製作は『バットマン』や『シザーハンズ』のティム・バートン
監督はヘンリー・セリック。
なぜバートンが監督でないのかというと、当時彼は『バットマン リターンズ』の撮影で手が離せなかったため、代わりにディズニー時代からの友人セリックが担当することになったから。
そのため、本作はバートンの代表作でありながら監督作でないという、少々特殊なポジションになっている。
そしてタイトルに『ティム・バートンの~』と入れられたせいで、未だにセリックは本作の監督として認識してもらえないことが多いという気の毒なことに……*1

本作は後の『コララインとボタンの魔女』と同じく、ストップモーションアニメという技術と、当時の最新のデジタル映像技法の組み合わせで作られたアニメ。
本編の半分くらいが歌で構成されており、歌の中で話が進んでいくミュージカルのような構成となっている。

この企画は、バートンがアニメーターとしてディズニーに在籍していた時に作った詩から始まった。
しかし悲しいかな、当時はあまりにも独特すぎる感性や世界観ゆえに上層部から「いや……子供に観せるにはキモすぎるでしょこれ……」と、一度却下されていた。
しかもその後バートンはクビにされた挙句、この企画もディズニーが所有することになったので手が出せない状態になってしまった。
転機が訪れたのは1990年。バートンは『バットマン』の歴史的大ヒットにより、ハリウッド一の売れっ子監督として大出世を遂げており、企画を買い戻そうとしていた。
逃した魚の大きさにやっと気づいたディズニーも、これを長編映画として映像化しようと彼に提案。
この企画をずっと忘れられないでいた彼は「思い通りに作らせてくれること」を条件に出し、無事その約束を取り付けた。
ショット数10万以上。脚本が中々出来上がらないので曲から作り始めた。当初の脚本家(『ビートルジュース』のマイケル・マクダウェル)は給料をコカインに使いサボっていた*2
ラストシーンの改良を提案された途端発狂し、編集機に当たり散らすバートンetc……
様々な逸話を持つこの作品は、こうして数えきれないほどの艱難辛苦を乗り越えて完成した。
バートンの思いは、アニメーター時代から数えて10年以上の長い年月をかけてようやく実を結んだ。

しかし、これだけの苦難を乗り越えて完成したにもかかわらず、子供向け試写の評判は最悪だった。
もっとも、上層部に以前「不気味過ぎて子供向けじゃない」と批判された奇抜すぎるデザインや数々のグロテスクな演出(特にトラウマ物である悪役の最期)を考えれば子供が嫌がるのも無理はないだろうが……
そのため作品はPG指定かつ、大人向けレーベルの「タッチストーン・ピクチャーズ」名義で公開された。
結局公開当時の興行収入は、元こそ取れたとはいえかなり微妙なものに。
これには関係者一同大いに打ちひしがれたが……











世間はこの作品を完全に見捨ててはいなかった…











熱狂的なファンによる布教活動や、時代変遷の甲斐あり、この作品は再び世間から再評価されるようになった。その後本作は様々なグッズ展開がなされ、ビデオやDVDのレンタル数も次第に増加。
作り手達も知らないうちに、本作は長い年月をかけてじわじわと人気を得ていた。
実際、公開から10年以上経った2005年、音楽担当のダニー・エルフマンはバートンと共に『チャーリーとチョコレート工場』の宣伝のために来日した際、おもちゃ屋で本作のグッズが人気を博しているのを見て驚いたのだとか。
そして現在では正式にディズニー作品として扱われ、不動の人気を手にしたのは皆さんご存じの通り。
彼の感性に、ようやく時代が追いついたのだ。

あらすじ


どこかにある〈祝日の国〉の一つ、ハロウィンタウン。
ハロウィン当日、ハロウィンタウンの住人達は大盛り上がり。
だが、パンプキン・キングのジャック・スケリントンは、毎年毎年同じことの繰り返しでしかないハロウィンにうんざりしていた。

そんな時、森の奥で不思議な扉の付いた木を見つけたジャック。
その扉の中に転がり落ちた彼が行き着いたのは、暗い雰囲気のハロウィンタウンとは全く違う、陽気で明るいクリスマスタウンだった。

美しい雪景色の中、色鮮やかな電飾で飾られた街全体が祝うクリスマスにジャックはすっかり心を奪われた。
そしてサンタクロースの影を見た彼は、自分達でサンタクロースの代わりにクリスマスを行おうという計画を立てる。
そんな中、ジャックに密かに想いを寄せるサリーは、何か悪いことが起きるのではないかという予感にとらわれていた。

彼女の心配を他所に、クリスマスの準備は着々と進んでいく。
だがジャックも住人達も本当のクリスマスというものを勘違いしている為に、事態はどんどんおかしな方向へと転がって行き……。


登場キャラクター


(CVは原語版/吹き替え版)

○ジャック・スケリントン
(クリス・サランドン、歌:ダニー・エルフマン/市村正親)

主人公。お馴染み丸顔の骸骨。デザインや動きのモチーフは他にも案山子やクモが入っている。
優しくて紳士的な性格だが怒ると恐い。
誰かを恐がらせることにかけてかなう者はなく、「怖い」ことに価値を置くハロウィンタウンの住人達にとって憧れの的。
しかし毎年同じことの繰り返しであるハロウィンにうんざりしている。

クリスマスタウンに迷い込んだ際に、サンタクロースを見てクリスマスをやってみたいと思い始める。
そして、ハロウィンタウンの住人たちを巻き込んで準備に取り掛かるが、サンタクロースの代わりにクリスマスを行おうと本物のサンタクロースを誘拐させたり、人間界のクリスマスを恐怖の渦に巻き込んだりと、実は主人公でありながら全ての元凶
思い込みがちょっと激しいことを除けばいい人、じゃなくて骸骨。

原語版では、バートン映画の音楽でおなじみダニー・エルフマンが自慢の歌声を披露してくれる。
彼は自身のバンド『オインゴ・ボインゴ』ではリードシンガーとして王のような存在であるが、それ故に抜け出せないという、ジャックと同じ立場だったために深く感情移入していたという。
しかし歌はともかくセリフは大根な演技だったそうで、セリフ部分はクリス・サランドンに変更された。
この変更の件についてバートンは直接伝えなかったため、エルフマンは相当根に持ったらしい……

○サリー
(キャサリン・オハラ/土居裕子)

本作のヒロイン。密かにジャックに想いを寄せている。
フィンケルスタイン博士によって作られたつぎはぎの人形で、高いところから落下するなどの衝撃を受けるとバラバラになってしまうが、そうなっても縫い合わせれば元通りになれる。
実際、パーツをセルフ縫合するシーンもある。
また、体は一部分だけ分離していても自由に動かせるようで、腕だけの状態で相手をポカポカやることもできる。
博士の束縛に嫌気が差しており、時折食事に一服盛り、彼を眠らせて外に逃げ出すこともしばしば。
住人達の中ではただ一人、ジャック達のクリスマス計画に不安を感じていた。サンタクロースにはハロウィンタウンでは唯一まともな人物だと評される。
映画のラストでジャックに想いを打ち明け、無事結ばれることができた。


○フィンケルスタイン博士
(ウィリアム・ヒッキー/三ツ矢雄二)

偏屈で体が不自由なマッドサイエンティスト。サリーの生みの親。
彼女のことは家政婦のように考えており、いつも自分の世話をするよう強制している。その為彼女との折り合いは良くない。
頭部を開閉でき、たまに自分の脳みそをいじっている。最後にサリーの代わりとなる新たな人形を作り、自分の脳の半分を移した。


○ウギー・ブギー
(ケン・ペイジ/小林アトム)

町外れの賭博場に住む荒くれ者で、本作におけるヴィラン(悪役)。歌の場面ではかなりの歌唱力を発揮する。
大きな麻袋で出来た体の中には、蜘蛛や百足などの夥しい数の虫がぎっしりと詰まっている。かなりグロい。
「イカサマが得意なギャンブラー」を自称するだけあって自分の欲求を満たすためなら手段を選ばず、住人達から嫌われているのみならずジャックからさえ「ろくでなし」呼ばわりされている始末。
子分達が誘拐してきたサンタクロース、そしてそれを助けようとしたサリーを食べようとする。
意外と手先が器用なのか、彼の賭博場はカッターやらロボットの兵隊やら危険なトラップが満載。
ジャックからサンタクロースとサリーを素直に開放するよう言われるが拒否し、予てから疎ましく思っていたジャックを殺そうとするが、最終的にヴィランの中でも最も凄惨で悍ましい最期を迎えることに

ちなみに没設定ではフィンケルスタイン博士と同一人物というものがあった。
が、根本的な部分が変わってしまうこの案を知ったバートンはスタジオの壁を蹴って穴を開けるほどブチギレたとか何とか……
そして翌日には壁に「ティムがキックして開けた穴」と書かれ、さらに有名人が開けた穴ということで、その部分は切り取って額に入れられたそうな。


○ロック、ショック、バレル
ロック(ポール・ルーベンス/園岡新太郎)、ショック(キャサリン・オハラ/土居裕子)、バレル(ダニー・エルフマン/松澤重雄)

いつも一緒にいるブギーの子分の三人組。ジャック曰く「ハロウィンタウンきっての悪ガキトリオ」。
悪魔のマスクを被っているのがロック、魔女がショック、食屍鬼がバレル。ロックが三人組のリーダーだが実質主導権を握っているのはショック。
ジャックに命じられてサンタクロースを誘拐した。
ちなみにショック役はサリーと兼役。
原語版のロック役は、バートンの長編デビュー作『ピーウィーの大冒険』のピーウィー・ハーマンことポール・ルーベンスが担当している。


○ハロウィンタウンの住人達

顔が二つある市長に魔女や吸血鬼等、個性あふれる面々。皆ジャックを慕っている。
しかし市長は自分では何も決められないとか……それでも市長なんだろうか?


○ゼロ

ジャックが飼っている幽霊。幽霊なのでふよふよ浮いている。人語は話さないが表情豊かで可愛い
カボチャの形をした鼻は明かりのようになっていて、ソリで飛ぶ際には赤鼻のトナカイよろしく照明の役割も果たしている。


○サンタクロース
(エド・アイヴォリー/永江智明)

丸々と太ったおじいさん。サンタクロースその人。
ジャックにサンディ・クローズ(爪を持つ男)と間違えられ誘拐された挙句、危うくブギーに食われそうになったり、その間に人間界のクリスマスをメチャクチャにされたりとこの作品一番の被害者。
「人には領分というものがある」とジャックを諭す一方で、
自分のしでかしたことを反省した彼を許し、最後にはハロウィンタウンに素敵なクリスマスプレゼントを贈るという懐の深さも併せもつ。 


<その他の展開について>


キャラクターは知っているしジャックは好きだという人が多いが、映画を見たことがないという人もまた多いようだ。
グッズを買うのもいいが、一度は映画の方もご覧いただきたい。
DVDを買うなら、少し高めだがボーナスコンテンツが豊富な二枚組のプレミアムエディションがオススメ。さらにハマれるだろう。
講談社からは映画のコミカライズ版も出版されている。

また正式な続編であるゲームが発売されている。時系列順に並べると『パンプキン・キング』(GBA)→映画本編→『ブギーの逆襲』(PS2)となる。

ディズニーキャラクターが登場する『KINGDOM HEARTSシリーズ』にもステージや主要人物が登場した。
恐ろしい敵であるハートレスをサプライズの道具として活用しようとしたり、カボチャの爆弾をそこらにバラまいたりと色々しでかしてくれる。


<『ホーンテッドマンション ホリデーナイトメアー』について>
東京ディズニーランドでは、2004年から毎年*3行われている期間限定仕様『ホリデーナイトメアー』で彼らに会える。
ハロウィンとクリスマスがぶつかりあって、一体何が起きたのか……?
かなり混雑するが、ファンなら一度は訪れてみよう。怪しくも愉快な一味違うホーンテッドマンションが楽しめる。子供達や通常版が怖い人にもオススメ。
この時期はのケープを身につけているキャストもおり、ムードを高めてくれる。
例年大体9月中旬から翌年の3が日まで開催されている。時期が近くなるとアナウンスがあるのでチェックしてみよう*4

なお、本家ディズニーランドでもほぼ同時期に開催されている*5


<余談>


ハロウィンタウンとクリスマスタウン以外の祝日の扉はハッキリ写っていないため判別が難しいが、設定では以下の通り。
  • 卵:イースター
  • 星条旗:インディペンデンス・デイ(独立記念日)
  • ハート:バレンタイン
  • 七面鳥:サンクスギビング(感謝祭)
  • 四葉のクローバー:聖パトリックデー*6
祝日の選出にだいぶ偏りがある気がするが、そこは仕方がない。
ゲームにて明かされた設定では、それぞれの祝日の国にもジャックやサンタクロースのようなリーダーが居るとされる。残念ながら姿は映らなかったが。
またサンタクロースと間違えて誘拐されてきたウサギが登場するシーンがあるが、恐らくイースターの国の住民と思われる。

不気味でアンバランスなバートン独特のキャラデザを立体で表現することには、多くの困難が伴っている。
例えばジャックの手足は原画ではあまりにも細すぎて、2倍ぐらいの太さにしてようやくパペットで動かせる限界ギリギリのものだった。
また、サリーは女性らしい丸みを帯びた体つきだが、足首が細すぎて全身を支えられないため、セリックが靴下を履かせてバランスを取るという案を出している。

人気少年漫画ONE PIECEスリラーバーク編のキャラは本作が元ネタらしく、デザインや雰囲気が似通っている。
また、同作品の登場人物である道化のバギーは『初期案では「ブギー」という名前だったが、作者がある映画の観賞中に同名のキャラが登場したのを見て急遽「バギー」に変更した』という逸話が存在するが、「ある映画」とは本作の事だと思われる。

バートンにとって最も重要な作品の一つである本作。
それだけに、続編・前日譚・リブートには断固反対しており、「発電所から自分の土地を守っている老人みたいなものだよ。俺の土地から出ていけ!ショットガン持って来い!みたいにね」とまで言い切っている。*7
実際、2022年にディズニーへの決別宣言を出したバートンであるが、その原因の一つが、ディズニーからDisney+向けに本作の続編製作を打診されたことと見られている。*8



<バートンからのメッセージ>





誰でも自分のすることを、はっきりと意識しておかなくちゃいけないんだろうけど、この映画だけは違うんだ。

僕にとってこんなに特別なものはない。

キャラクターもまったく個人的なものばかりだ。

ときどき、座って絵を描いていても、ふと、何をしているのか分からなくなったりしてね、

それでも絵は描いているんで、これはもう、潜在意識から直接あふれ出てきたようなものだね。

この映画には僕の好きなものが全部つまってる。

ホリディもそうだし(僕はハロウィンもクリスマスも大好きだよ)、

可愛いけれども勘違いばかりしてるキャラクターたち、

ドラマにしても、哀しいことや元気なことも、この映画には全部入っているんだ。

もとを質せば、それはずいぶん長いこと僕のなかにあったものだけれど、

出来上がった映画を見て思うのは……




みんな、愛してるよってこと!



引用元:ティム・バートン ナイトメアー・ビフォア・クリスマス メイキングブック P165


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参考資料
ボクらを作った映画たちシーズン3 第7話(Netflix)
ティム・バートン ナイトメアー・ビフォア・クリスマス メイキングブック(河出書房新社)

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最終更新:2024年04月03日 01:19

*1 セリック本人もこの誤解を気にしており、2022年11月に行われたインタビューで不満を漏らしていた。

*2 当然彼はクビになり、代わりに『シザーハンズ』のキャロライン・トンプソンが引き受けることになった。

*3 2020年および2021年は開催なし。

*4 なお、この関係で開催期間前後に改修工事が行われるため、この期間のみホーンテッドマンション自体が一時期クローズする。改修期間はおよそ1ヶ月ほどなので通常バージョンに乗りたい方は注意。

*5 但し名前は『ホーンテッドマンション・ホリデー』。

*6 アイルランドの祝日。

*7 出典:https://variety.com/2023/film/news/tim-burton-shuts-down-nightmare-before-christmas-sequel-prequel-reboot-1235805330/

*8 出典:https://twitter.com/TimBurton_JP/status/1728072294520774683