SCP-001-JP > 雨四光の提言

登録日:2022/11/23 Wed 17:00:00
更新日:2024/04/06 Sat 23:15:59
所要時間:約 14 分で読めます






ようこそ。

そしてお疲れ様でした、担当職員様。

特別纏衣プロトコル(Special Clothing Protocol)の実行を確認しました。

責務を遂行してください。





雨四光の提言とは、シェアード・ワールド「SCP Foundation」に登場するオブジェクト、そして001提言及びSCP-001-JPの1つである。

001提言についての解説はSCP-001へ。


旧 特別収容プロトコル


まずはここから。昔の特別収容プロトコルであり、現在は違う特別収容プロトコルとなっている。

まず、SCP-001-JPに関して「イベント・レッドローズ」というものが発生するのだが、その時に発生した文章をセキュリティクリアランス4以上の担当職員が精査する。
その文章に書かれていたことは、財団職員の誰かから自発的に出た意見、という風に処理される。

文章に対する返事は、管理者████によって、サイト-███の前庭からサーチライトを用いたモールス信号の形で行われる。


現在の特別収容プロトコル


ここからは現在のプロトコルを見て行く。ちなみに先ほどとはSCP-001-JPの定義が異なる。


まず、財団職員は特別纏依プロトコルが実行されるまでSCP-001-JPを収容し、最後の時に備える。

「あなた」の連続する意識と蓄積される記憶の全てが特別纏衣プロトコルの前段階足り得ることに留意し、あなたは、生を生き抜いていかなければならない



概要


SCP-001-JPとは、とある別次元に住む神格的な知性体である。

だったのだが、現在は定義が変更されており、「次元間婚礼様式実体」という実体を包括するもの、となっている。

何を言っているのかわからない?現在のSCP-001-JPは、具体的に言うとSCP-001-JP-Aと-Bと-Cの総称である。以下にその説明を載せる。

SCP-001-JP-A


純銀製の指輪。異常性は後述する。
特別纏依プロトコル実行時、SCP-001-JP-Cがはめることになっている。


SCP-001-JP-B


"精神紡糸技術"により製造される衣装。詳細は後述。
特別纏依プロトコル実行時、SCP-001-JP-Cが着ることになっている。


SCP-001-JP-C


財団職員である、「管理者████」という人物。SCP-001-JP-AとSCP-001-JP-Bの着装対象。



経緯1


なんのこっちゃ?という方は安心してほしい。ここから、いろいろな経緯の説明をする。



まず、199█年6月2日、財団職員のひとりである管理者████の執務室の机の上に白封筒に入った文書と、非異常な一本のバラが出現。

これに始まる、「手紙とバラが不定期で出現する現象」をイベント・レッドローズという。

さて、気になる文書の内容は、なんと手紙

突然こんなお手紙を差し上げて、さぞ驚かれたことでしょう。無礼だとは承知しています、ご容赦ください。

 何から話せばよろしいでしょうか。
 唐突ですから、信じていただけないかもしれません。
 ともかく、私はあなた方とは別の次元にいて、あなた方の次元を観測し続けていました。ガラス細工を掌上でおっかなびっくり慈しむように、プラネタリウムに投影された、実体を持たない星々を眺めるように。
 ろくに干渉もできない他次元を日がな一日眺めてお前は何がしたいんだ、なんて馬鹿にされて笑われたこともありましたっけ。
 ですが、孤独な私にとってあなた方の次元が放つ輝きは確かに救いでした。生命の愚かさを切り捨てるのは簡単でしょう。でもそうするには、あまりにあなた方の営みは美しかった。
 愛玩でも、憐憫でもない感情です。
 恋に近しいものだと気づきました。

 つまり、これはあなた方の次元に対する恋文です。

 顔を見せない私を、信用していただくことは難しいでしょう。ですが私の力では、こうして手紙を送ることが精一杯なのです。あなた方より上位の次元に位置していたとしても、あなた方から見てたとえ私が神格であっても、所詮全能ではないのですから

 それでも、日々異常に向き合うあなた方なら私の声に耳を傾けてくださるかもしれないと思ったのです。
 勝手な行為を、どうかお許しください。


手紙はお読みいただけただろうか。
そういうわけで、財団職員である管理者████に手紙を送った、というわけだ。

手紙の送り主は、地球の全てを見ることができるものの、こちらに対しては手紙と一輪のバラしか送ることが出来ないような存在。


ちなみに手紙には追伸として、7月(来月)内にカリフォルニアで起こる超常災害の予知と、その対処方法が書かれていた。

この手紙の信ぴょう性を確かめる意味も込めて財団がヒューム値などの検査をすると、本当に超常災害が起きそうなことが判明。

実際7月15日に超常災害が発生したものの、この手紙のおかげで身構えていた財団は、軽傷者を12人出すだけの最小限の被害におさめることができた。


これを受け、手紙の送り主に返事がしたくなった財団。しかし財団は安定して次元間を移動する技術を持っていないし、移動できたとしてもどの次元に行けばいいのかわからない。

そういうわけで、手紙の返事は、サイト-████前庭から、管理者████がサーチライトでモールス信号を発信という形で行われることとなった。
ちなみにその内容は「超常災害を予知したことへの感謝」「財団に協力した理由の問いかけ」だという。


続く199█年2月17日、またイベント・レッドローズが発生。気になる手紙の中身は

お返事をくださって、本当にありがとうございます!
 天を貫く光のなんと眩しかったこと……遠く隔たれたあなた方と指先が触れ合った事実を、とても嬉しく思います。
 このお手紙が届くのも、きっと次元の壁に阻まれて遅くなってしまうでしょう。心はこんなに高鳴っているのにすぐにお返事ができないだなんて、どうも不便ですね。

 あなた方が私の、こんな私の言葉を信じてくださった奇跡に、深く感謝いたします。


もう、とてつもなく嬉しそうである。

続いて彼女は、自身が財団に協力した理由を語りだす。

彼女は、地球の全てを知ることができる一方、地球に関しての干渉はほとんどできない。

しかし彼女は地球を愛している。せめて、あらゆる命が道理の中……すなわち“正常な”世界の中で生き、死にゆくことができたら、その手伝いを少しでもすることができたら、と思ったらしい。


 恋した世界に、私のできることをしたいと、どうしても思ってしまったのです。
 そんな、些細なお節介です。

 これからもお手紙をお送りすることを、どうか許していただけないでしょうか。
 またあの光が見られる瞬間を、お待ちしています。


手紙には加えて、KeterクラスオブジェクトであったSCP-████というオブジェクトの収容方法が書かれていた。

いままでSCP-████によって発生していた年間250人の死者0人になり、オブジェクトクラスもSafeに変更。


そして財団、というか管理者████は「重ねての感謝」「送り主への負荷の懸念」「財団への要求の有無」を返信した。


そして200█年10月19日、またしてもイベント・レッドローズが発生。手紙の中身は

 お元気でしょうか?
 私のことを気に掛けてくださってありがとう。ご心配には及びません、こちらはとても元気です。これも全てあなた方のおかげです。
 こうしてあなた方の観測を続けることが、お手紙を書けることが、私の何よりの活力の源になっています。あんなに優しいお返事がいただけるだなんて、私はなんて幸せ者でしょう。

そして彼女は言う。
見返りについては必要ない、と。

そもそも、最初は見ているだけでも満足で、見つめるだけでも十分だった。
しかしこの気持ちをあの世界の誰か1人にでもいいから伝えたいと思ってこの手紙を送り始めた。

手紙の送り主である彼女は、いままで孤独で、憂鬱で、恵まれない人生だった。でも、最初に返事をもらった時、本当に生きててよかったと心の底から思った、という。

 あなた方は私の救い主なのです。だから、私は報い続けたい。

 あなた方の日々が、美しいものでありますよう。


手紙にはいつものように財団に役立つ情報が載っていて、今回はサイト-81██で開発中だった強化外骨格への進言だった。

これによって、その強化外骨格の開発は3か月早く終わり、なんとサイト-81██襲撃事件で役立った

またもや、手紙の主は多くの命を救ったのだ。


財団は手紙の送り主が人類に友好的なこと、情報のお役立ち性を評価、オブジェクトクラスThaumielに指定。

その一方で、財団職員の自主性を奪い、自らの研究及び職務の意味を疑問視させかねない性質から、ダミーの中に秘匿するものと決定しSCP-001-JPとして指定することとなった。


それで返信だが、「気遣いの言葉と感謝」「強化外骨格によって多くの職員が救われた件」「いつも手紙に添えてあるバラの意味」を送った。

すると200█年5月18日に4回目のイベント・レッドローズが発生。


 またあの光が見られる瞬間を、今か今かと心待ちにしていました。お役に立てたようで何よりです。
 あなたがサーチライトを持ってお庭に出ていらしたときの私の喜びようをお見せしたいくらいです。あまりに嬉しくて部屋をくるくる駆け回ったのですよ、比喩ではなく。
 心が通じている、私が憧れた次元の生命と、夢見た人と……その事実のなんと心強く、日常を輝かせてくれること……以前より、私はずっと明るくなったような気がします。何だか変わったね、なんて言われているのを聞きましたもの。


バラについては、実はSCP-001-JPの庭に生えているものだそう。

先述の通りSCP-001-JPは孤独な人生を歩んでおり、この世界を見ることとバラを育てることだけが心の救いだったという。

だから、手紙には、SCP-001-JPの持ち物の中で最も美しいものをささげたい、と思いバラを添えているのだという。


 特に、いつもお返事をしてくださるあなたが気に入ってくださっていれば幸いなのですけど……突然机に置いてしまっていますから……できることなら満開の季節に、私の庭をご案内したいものです。きっとそれは叶わぬ夢なのでしょう、でも夢見ることだけは自由です。

 こうして改めて書くと、照れてしまいますね。
 どうかお体に気をつけてお過ごしください。



その後も管理者████とSCP-001-JPとのやりとりは続き、イベント・レッドローズは合計で██回発生した。

また、管理者████が、財団職員としての立場を越えた感情をSCP-001-JPへ抱いている、という指摘があったものの、担当者を変えるとSCP-001-JPが協力してくれなくなる可能性があるため、担当者変更は却下された。


ちなみに毎回送られてくるバラは、防腐処理の後に管理者████がしっかり引き取っている。


しかし20██年12月16日のイベント・レッドローズで事件が起きた。

その時のイベント・レッドローズでは、いつもと違い、100本のバラの花束白銀製の指輪が添えてあった。


今まで私とこうして文通を続けてくださって、本当にありがとう。
 私はとても幸せでした。
 ですがこれが最後になります。

 あなた方の次元は、遠からず滅びます。


彼女は語る。自分の愛した、恋した世界が消えてしまう事の悲しみ。
自分にはどうしようもできないという悔しさ。


それで彼女は、禁忌を犯してでも一筋の光に縋りたいと考えた。

このお手紙が、間に合いますように。
 伝えられますように。
 そんな風に、最早祈ることしか、できないけれど。

 愛しています。
 あなた方の次元、息衝く命、繰り返される営み、生と死の輝きの全てを。
 そして、私にずっと返事をしてくださったあなたを。
 どうか私と共に、生きてくださいませんか。


ここで手紙は終わり、以降イベント・レッドローズは発生していない

手紙には、当時O5しか知らなかった確定的YK-クラスシナリオの詳細が記されていた。

さらにこの指輪は、人間を1人だけ他次元へワープさせることができるものだと判明。


しかも、よくある「みんなで手をつなげばみんなワープできる」とかではなく、正真正銘1人だけしかワープできない指輪。まあ、その1人が身に着けている服ぐらいは一緒にワープできるらしいが。

SCP-001-JPは、そもそも手紙1通送るだけでも精いっぱいだった存在。そのSCP-001-JPが禁忌を冒してまで送ってくれた指輪。そして、それ以外に終焉を免れる方法は見つかっていない。


O5評議会はこの指輪を、指輪は人類種をK-クラスシナリオより保護し得る手段であると認定し、SCP-001-JPの定義を変更。この指輪をSCP-001-JPと呼ぶようになった。

そして、オブジェクトクラスもThaumielではなく、Thaumiel=Agapeという、SCP-001-JPだけの特別なものに変更。


その後、管理者████からサーチライトで


よろこんで。


とモールス信号が送られた。



経緯2



指輪を有効活用するために財団が考えたのは、当時研究中であった精神紡糸技術というもの。

これは、任意の人間における、生まれてきてから現在までの記憶からなる心の世界糸状に抽出するというもの。

別名は「魂の抽出


あの指輪は、指輪を付けた人とその服がワープされる。
だから、人類のひとり指輪をつけさせ、その人以外の記憶を糸状に抽出し、その糸で衣装を作ればいい、ということ。

これを受け、またSCP-001-JPの定義が変わった。それは現在の特別収容プロトコルと同じ、

  • 「指輪」がSCP-001-JP-A
  • 「衣装」がSCP-001-JP-B
  • 「人類のひとり」がSCP-001-JP-C

というものである。

SCP-001-JP-Bは衣装の形をとるが、実際は人類全員の「心の世界」からできたこの世界の複製である。
この衣装……SCP-001-JP-Bが存在する限り、人類は地球で生きることができるのだ。

それで、この衣装を纏うのはほかでもない管理者████。
これは管理者████だけ「魂の抽出」を受けず、管理者████だけSCP-001-JP-B内の地球で生きることが出来ないということを表す。

それでも、管理者████はSCP-001-JP-Cとなる決断を下した。
手紙の送り主がやっとの思いで送ってくれた“愛”を受けるために。

同時に、SCP-001-JP-Bの形は婚礼衣装とすることが決まった。


特別纏依プロトコル


特別纏依プロトコルとは、SCP-001-JPを用いてYK-クラスシナリオから生命体を救う手順である。

まず、YK-クラスシナリオが起こった直後に、財団が観測可能な全ての生命体眠らせ、魂を抽出できるようにする。

それで、この抽出できる魂だが、生命体の心理遺伝に基づいて先祖の魂も遡って抽出できる。


それで、抽出した糸状の魂はすぐに織り上げられ、処置の進行とともに全生命体は苦痛なくSCP-001-JP-Bの一部となる

目覚めたとき、そこが元居た世界ではなくSCP-001-JP-B内の世界だというのに気づく者はいない。


そうしてSCP-001-JP-Bができたら、SCP-001-JP-C、すなわち管理者████はSCP-001-JP-Aをはめ、SCP-001-JP-Bを着る。その姿はまるで花婿のよう。

SCP-001-JP-C旅立ちの際には、担当職員会議によって作られた旅立ちへの祝福が送られる。


ちなみに、ここにSCP-001-JP-Bに入る記憶の例を挙げる。すべて報告書からの引用となるが、ぜひ数個だけでも目を通してほしい。


  • カウナケス*1の青年が、草を食む羊と共に眺めた朝焼けの空と揺蕩う雲。
  • カラシリス*2の女性が恋人から贈られた真珠の輝き、頰を撫でるあたたかな掌。
  • トーガ*3を着た男性が妻の出産の無事を祈り続ける部屋に揺らめく灯火、そして響く新生児の泣き声。
  • ダルマティカ*4の青年が、飢饉を乗り越えて両手いっぱいに抱えた金色の麦の束。
  • 童直衣*5を着た男児が母の腕の中に包まれてはしゃぐ笑い声、満開の梅の芳香。
  • インカ帝国の伝統衣装を着た老人が、満天の星を見上げながら孫に語った神話。
  • ローブ・ア・ラ・フランセーズ*6を着た女性が見上げるヴェルサイユ宮殿の鏡の間。
  • 旗袍*7を着た女性がヒールの音を響かせて歩く街路の喧騒、笑顔で手を振る市場の売り子たち。
  • 橙色のジャンプスーツを着た男性が、燃え盛る炎の中で自らの子と重ねて逃した幼児の走り去る足音。


上から下に進むにつれて時代が服とともに、人類とともに進んでゆく。

SCP-001-JP-Bは、ここには載らないような、どんなささいな記憶でさえも大切に織って、管理者████とともに旅立つのだ。



SCP-001-JPの存在は

財団が終わりの瞬間まで正常性を保護し世界を守護し続けてきた事実の記録、

そして新たな歴史の始点であり、


当次元に存在する生命体は次元を転移するSCP-001-JP-Cに先導される

"生命史の婚礼行列"

として定義されます。



たとえ我々の次元が衣装の中に閉じ込められた魂の活動のみで構成される形に変貌したとしても、

正常な世界を生きて死に命を繋ぐ無辜の民衆が事実に気がつくことはありません。

それを財団は一種の救世であると肯定します。



SCP-001-JPは我々の方舟であり、
我々に注がれた真摯な愛への返答です。











特別纏衣プロトコルは滞りなく進行しています。

あなたが最後の一人です、担当職員様。



神は天にいまし、全て世は事もなし。
まことに、人生、花嫁御寮。



繭化措置を実行します………



おやすみなさい。
そして、後へ続きましょう。
光射す方へ。笑顔で、胸を張って、誇り高く。
きっと、美しい旅路になるのですから。




SCP-001-JP
雨四光の提言


綺羅

OC: Thaumilel Thaumiel=Agape





Agape、それは神からの絶対愛

それは愛による救世


そして「真の愛」








追記・修正は特別纏依プロトコルを終えてからお願いします。

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最終更新:2024年04月06日 23:15

*1 メソポタミア文明初期に着用された腰巻状の獣毛製衣類。

*2 エジプト新王国時代に着用された亜麻製のドレープを特徴とする衣類。

*3 古代ローマ帝国で着用された一枚布の上着。

*4 古代ローマ末期からビザンツ帝国期にかけて着用された広袖のチュニック。

*5 中世日本において着用された公家に属する成人前の若年者の平常服。

*6 18世紀フランスの宮廷において着用された盛装用女性服。

*7 20世紀に西洋の洋裁技術を取り入れて発展した満州族の衣服。