TOUGH 番外編 柔の章

登録日:2023/01/16 Mon 22:58:39
更新日:2024/11/11 Mon 02:46:34
所要時間:約 6 分で読めます







ワイにもやっと見えた(・・・)んです





TOUGH 番外編 柔の章』とは、パラリンピックジャンプで連載していた格闘漫画
作者は格闘漫画の巨匠 猿渡哲也。全1巻。


概要

東京パラリンピックの開催を記念して、2017年から2021年にかけて年に一度・五回に分けて刊行された『TOKYO 2020 PARALYMPIC JUMP』の連載作品。
本雑誌では車いすテニスやチェアスキーといったパラスポーツについて取り上げており、その中の1コーナーとして視覚障害者の柔道を描いている。
ちなみに、連載陣には『SLAM DUNK』の井上雄彦氏や『キャプテン翼』の高橋陽一氏といった大御所も加わっていた。そんな面子に混じれるなんてやっぱり猿先生はすごい。

タフシリーズとしてタイトルにも「TOUGH」を冠している本作だが、番外編という立ち位置のためか本編との繋がりはかなり薄め。
同じスピンオフの『OTON』や『デビデビ』のようにおとん鬼龍らメインキャラは登場せず、脇役が一人登場するのみに留まっているのでシリーズを知らなくても単品で十分読める内容になっている。
一方で「強さとは何か」というタフ本編に通ずる概念にも触れており、視覚障害という重くなりがちな題材についてユーモアを交えつつ、迫力の格闘描写と共に真摯に描いた作品である。

また、本作の主人公は実際にパラリンピックの柔道で活躍してきた藤本(ふじもと) (さとし)選手をモデルに創作された。
単行本では氏のインタビュー記事や、猿先生との特別対談も掲載されている。


あらすじ

  • 仕合01 盲目の柔道家、現る
パラリンピック柔道で輝かしい記録を残してきた盲目の柔道家こと藤垣聰。
彼はより強くなるための修行の一環で、棒術に関して達人の域にあるという全盲の老人・帯刀右近に挑戦し…。

  • 仕合02 マブダチ
チンピラ数人に絡まれる見ず知らずの人を庇い立てる藤垣。
視覚障害者ながらも健常者を守ろうとする彼の脳裏に去来するのは、親友・小杉マモルと過ごした特訓の日々だった。

  • 仕合03 凶敵
ついに迎えた柔道選手権大会。
準決勝へと順調に駒を進めていく藤垣だったが、決勝の舞台では元軍人という異色の経歴を持つ「壊す柔道家」山田カラバフ太郎が立ちはだかる。

  • 仕合04 深闇
山田との一戦を経て藤垣のモチベーションが高まるばかり。
しかし練習中のアクシデントでリハビリを余儀なくされ、山田に会いに行く事を思い立った藤垣はそこで彼に纏わる壮絶な過去を知る。

  • 仕合05 戦場
東京パラリンピックの柔道代表を賭けた一戦で再び相見える二人。
以前戦った時より更に強くなった山田に対し、柔道を通してその内面を垣間見た藤垣も己の強さをぶつけていく。


登場人物

  • 藤垣(ふじがき) (さとし)
本作の主人公。愛称は「フジモン」。
柔道家らしい恵体でガタイが良く、左目は常に瞑っている。
出身がそちららしく、徳島弁混じりの喋り方をする。くらっしゃげるんぞ!*1

両目に視覚障害を患っていて、左目は先天性の視神経異常に不慮の事故が重なって視力ゼロ、右目も色素変性症で0.05しかなく、その視界も本人曰く「五円玉の穴」ほどしか見えていない。
一応杖を使わずとも歩ける他、ルーペを使えば漫画も読める程度の視力は残っているが、日常生活を送る上で大きなハンデとなっている。

柔道家としては、柔道パラリンピックにてアトランタ・シドニー・アテネの三大会連続で金メダル、4年後の北京で銀メダル、もう4年後のリオで銅メダルを勝ち取るという凄まじい記録を打ち立ててきた名選手。
現在は格闘ジム「SAMURAI stability」に所属し、周囲のサポートを受けて柔道に精進中。
非常に負けず嫌いで向上心に溢れており、日々の研鑽を積みながら「当たり前の練習をやっても強くなれない」として様々な特訓に挑んでいる。
番外編のキャラではあるが、彼もまた「タフ」を体現する一人である。

モデルは概要でも触れた通り藤本聰。
藤垣の視覚障害やパラリンピックで五つのメダルを獲得した記録は、なんと藤本選手のエピソードそのまま
三大会連続で優勝を決めるも四度目の北京大会では銀メダルに終わり、更にその頃から以前より押していた怪我が悪化してしまう。
肉体的にも精神的にもドン底にあった藤本選手だったが、周囲の応援をバネにして練習を重ねていき、41歳でリオ大会の舞台に復帰して見事銅メダルを勝ち取っている。
タフって言葉は藤本聰のためにある。

  • 小杉(こすぎ) マモル
「SAMURAI stability」に所属する藤垣のマブダチ。
マルコメの髪にふくよかな体型をしていて、柔道の腕前もかなりのもの。

マモル自身は視覚に異常のない健常者であり、藤垣が練習や外で移動する際によく肩を貸している。
時には「眉山の獣道を匍匐前進で登る」という無茶な特訓にもブツブツ文句を言いながら共にこなしたり、付き合いが良く藤垣にとっては良き練習仲間であると同時にかけがえのない友でもある。
そんな良心は突然の危機が藤垣を襲った時にも表れ…。

  • 稲本(いなもと) さん
「SAMURAI stability」に所属する藤垣のトレーナー。下の名前は不明。
日々の練習量を指南したり故障した際にはリハビリのメニューを与えたりして、マモルと共に藤垣をサポートしている。
一方で自分が課したハードな特訓に誘われた際には「イヤやっ」とキッパリ断ったりするお茶目な一面も。

ちなみにネットで定型としてよく使われる「うーん○○だから仕方ない本当に仕方ない」の発言者はこの人。
うーん猿漫画はキャッチーな台詞回しが多いからついつい使いたくなるのも仕方ない本当に仕方ない

盲目にして棒術の達人。
タフ本編から登場した唯一のキャラ。「虹色(レインボー)列車でやんす」の人と言えば分かりやすいだろうか。

逆打ちしていたところでお遍路で待ち伏せしていた藤垣と対峙。
ハイパー・バトル予選でキー坊を追い詰めた実力は健在で、全く見えていない全盲であるにもかかわらず金剛棒を巧みに操り藤垣を滅多打ちにした。
1話だけの出番かと思いきや最終話でも登場しており、藤垣の山田へのリベンジ戦を見届けている。

全盲だが夕日はわかる。全盲なのでスマホの画面は見えない。

  • 山田(やまだ) カラバフ 太郎(たろう)
アルメニア*2から帰化した元軍人。カレンという美人の妹がいる。
戦場で爆弾にやられて視覚と聴覚と声帯を失くしており、目元や胸にはその時の傷痕が痛々しく残っている。

柔道には幼少の頃から触れており、高校生の時にはアルメニアの強化選手に選ばれるほどの猛者へと成長。
しかし戦争で視力を失ってからはパラ柔道へと転向し、第二の祖国である日本の代表になる事を目標にして生きるようになった。

元々素養があった事に加えて従軍した際の経験から心が今も戦場に囚われており、「殺るか殺られるか」のメンタルから繰り出される情け容赦ない戦い方によって、山田と一戦交えた選手は必ず怪我を負わされている。
藤垣とは3話と5話で二度対戦し、本作の実質的なライバル兼ラスボスとして立ちはだかった。

  • 小村(こむら) 宏二(こうじ)
柔道・柔術・総合格闘技を教える「小村道場」の主。
「寝技スペシャリスト」を自称しており、わざわざ自分で言うだけあって寝技の技量は確かなもの。
藤垣はその技を学ぶべく小村道場へと出稽古に向かったのだが、乱取りが原因で怪我を負ってしまう。

しかしこの時学んだ寝技は、後に"コムロック"として山田へのリベンジ戦で活きる事になる。
そして本人もちゃっかり観戦しに来ている。

モデルは柔道家・ブラジリアン柔術家の小室宏二。
コムロックの技名に至っては元ネタまんまである。


余談

  • 単行本の表紙は、同時期に発売した『TOUGH 龍を継ぐ男』21巻に描かれている長岡龍星と繋がる豪華仕様。
    龍星の方は首から下に既視感があるけど気のせいなんだ
    発売当時は二冊とも買えば抽選でTOUGHマスクが貰えるというキャンペーンもやっていた。



追記・修正は片目で五円玉の穴を覗きながらお願いします。

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最終更新:2024年11月11日 02:46

*1 「どつき回すぞ」の意

*2 イラン・トルコ・ジョージア・アゼルバイジャンに囲まれた西アジアに位置する国