九条シオン

登録日:2023/02/03 Fri 23:33:01
更新日:2023/06/09 Fri 21:31:47
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神よ…これから始まる私の罪を許したまえ


大人気格闘漫画タフ・シリーズの登場人物。
第二部『TOUGH』の最初の強敵キャラとしてキー坊の前に立ちはだかった。




【人物】

キリスト教の中で最も戒律が厳しいとされるカソリック(カトリック)系の神父。
宗教上、格闘技も暴力としてみなされるため、公式には格闘技の試合を行ったことはない。
しかし内にはファイターとしての闘争心・凶暴性もあり、そんな自分自身を悪魔と例えている。
また、多量の血を見るとスイッチが入り、ヤクザからも“悪魔よりも恐ろしい者”と言われるほどの狂人へと変貌する。

表面上は聖職者として悪人にも救済を唱えて祈りを捧げるが、後述する悲しい過去により心中では悪人(特にいたずらに殺人を犯した犯罪者)に対して辛辣な態度を取っており、怒りと憎悪で満たされている。

バトル・スタイルはアマレスとボクシングをベースとしたもので、最大の武器は悪魔の右手とも称される右手にある。彼の右手小指の中手骨は異常突起しており、この奇形の骨が削岩機の刃のように肉を抉る。
必殺のグランド・パウンドは牛でも容易く解体でき、ただのフックでも格闘技のリングを切り裂く威力と鋭さを持つ。


【活躍】

キー坊の闇試合の相手として名前が出され、タフ・シリーズで度々みられる上裸マッチョ+顔が影ってて目がキュピーンのイメージ像が描かれた。
本格的な初登場シーンでは遊ぶ金欲しさに強盗殺人を犯した死刑囚の死刑執行に立ち会い、祈りの言葉を口にしていたが、心中では「悪魔に魂の救済はいらない」と呟いていた。

その後、ヤクザ同士が闇試合(ダーク・ファイト)のオーナーの権利を賭けた代理戦争の試合のため、関東道城会の若林に招集される。
若林のことも快く主っていないようで、彼のことも悪魔と嫌悪していた。
ヤクザから腕試しとでもいうかのように体長3m、体重1600kgの猛牛を差し向けられたが、タックルを真正面から捌き、パウンドによってものの数秒で牛を解体してしまった。

そして闇試合当日、“なんでもあり”のノー・ピープル・マッチということでヤクザ関係者以外の者が一切いない闘技場で、相手方のヤクザ(リキちゃんこと新藤力丸)が選出したファイター、キー坊と対峙。キー坊を悪魔だと思い本気で殺しにかかると宣言する。
加えてキー坊にも悪魔を相手にしていると思って本気で殺しにくるように言うが、キー坊は“人間”であるためにノールールでも自分のルールは守ると答える。

シオンが聖書を唱えつつ放った左ストレートが試合開始の合図となり、互角の打ち合いが始まった。
キー坊にパンチを捌かれていたが、悪魔の右手の一撃によって彼の手のひらには大きな切り傷ができていた。
切り傷を見てキー坊が怯んだ一瞬の隙をついてタックルによってテイク・ダウンし、マウントからの削岩のパウンドを見舞う。
その一撃は空を裂いたが、リングの床には刃物で抉ったような跡が残されており、今までに見たこともない攻撃に百戦錬磨のキー坊も冷や汗をかく。

スピードではキー坊に劣るため、連撃を避けられて顔面に一発もらったが、右手を警戒して踏み込みが浅いキー坊にすぐさま反撃を繰り出す。
キー坊の一撃で鼻が潰れて大量出血したことによって忌まわしい記憶がよみがえり、シオンを悪魔へと変えていく。



────シオンの父は神父、母は未成年犯罪者の自立支援施設の職員であった。

だが、両親は更生させようと面倒を見ていた非行少年によって殺害された。
しかもその少年は少年法に守られていることに加え、心神喪失という理由から大した罰は受けず、反省するどころか裁判の傍聴席にいたシオンに向けて薄ら笑いを見せる始末。
その怒りや憎しみがシオンの中に悪魔を生み出してしまったのだった。



モニター・ルームでリキちゃんもシオンの過去を若林から聞かされ、戦慄の表情を浮かべていた。
そしてシオンは自らの血で大きな十字架を胸に描き、憎悪というフィルターがかかったその眼にはキー坊が両親を殺した少年に見えていた。

「なぜ両親を殺したあっ」
「神への謀反と言われようと…お前を殺さずにはいられない!」

試合前に若林の部下に薬を盛られ、体の動きが鈍くなっているキー坊に削岩機のパンチを次々とヒットさせて肉を抉っていく。
体中いろんなところの皮膚がちぎれててメチャクチャ痛々しいっス

するとそこへヤクザたちをなぎ倒して鬼龍が現れる。その辺のヤクザを倒して積み重ねてイス代わりにしながら「熹一の無様な“人生の終わり”を身に来た」と言い出し、筋弛緩剤を盛られたことにも気づかないのかと嘲笑する。
甥っ子に発破をかけ、薬を盛られたことを教えに来てくれたツン・デレおじさんにしか見えないっスね
おとんから継いだ灘神影流の当主の名に懸けてなんとか立ち上がるキー坊だったが、筋弛緩剤の効果もあり、シオンのラッシュを浴びて再びダウンしてしまう。

勝負ありと思われたものの、キー坊は脱力した体勢のまま灘神影流“総身退毒印”によって筋弛緩剤を吐き出し、独特の呼吸法で免疫を高めて排毒していく。
ある程度復活し、再びファイティング・ポーズを取るキー坊を悪魔と吐き捨てるシオン。リングの傍らにいる鬼龍は彼に対し、「お前の中にも悪魔がいる」「思い出すがいい…悪魔の記憶を…」と意味深な言葉を投げかける。
シオンとキー坊が激しい打ち合いを再び繰り広げる中、シオンは何故か刃物を人体に刺したときの感触とキャベツを刻むような肉を裂く音を感じていた。

一方その頃、モニター・ルームの若林は筋弛緩剤を盛ったことがリキちゃんにバレてピンチになっていた。
そして試合が終わった後に始末すると宣言されたとき、若林の口から衝撃の事実が明かされる。

「シオンは生まれながらの殺人者」
「両親を殺したのはシオンや!」

…さっきと言ってること違うんスけどいいんスかこれ

シオンの両親を殺害したのは実はシオンであり、記憶にあった殺人犯の少年はシオン自身の姿だった。彼に薄ら笑いを向ける少年の姿を見た光景は、現実逃避のために生み出した想像の産物だったというわけである。
封印していた記憶が戦いの最中で突如蘇り、自己崩壊を起こしたシオンは「私を殺せえっ」と錯乱しながらキー坊に襲いかかり、「死をもって償いたいんだっ」と叫ぶ。
自分が殺人者であることを思い出し、さっきまでとはまた別の意味で狂ったように戦い続けるシオンを「情けない」と鬼龍は愚弄した。

「そんなに死にたいなら…いっぺん死んでみるかあっ」

シオンのラッシュの合間を縫って片脚を取り、流れるような動きでシオンの身体を固めていくキー坊。
そしてチキン・ウィング・アーム・ロックの体勢から更に腕を極めて首を締め上げる灘神影流“罪人固め”を繰り出し、シオンは神に祈るような気持ちで失神した。

闇試合の決着と時を同じくして、ちょうど若林の方もリキちゃんにハジかれてラーメンのスープのダシ…ではなくカラスとウジ虫のエサとなったところであった。

そしてシオンは眼を覚ました後に何故殺さなかったかを尋ねると、キー坊から「お前が信じてるものも ワシが信じてるものも人を殺すためにあるんやないやろ」「お前は神様が…ワシは灘神影流があるから生きていけるんや」と言われる。
キー坊の言葉を聞いて静かに涙を流すシオンの傍らで、キー坊は「殺してええのは本物の悪魔だけや」と呟き、いつの間にか姿を消した鬼龍が残していった残気を見つめていた。


【余談】

悲しい過去が突然改変されたように見えるが、“聖なる殺人者”という肩書や、殺人犯と同じように自分も悪魔と形容するなど、人を殺めたことを匂わせる要素が全くないわけではない。
しかし両親を殺害した理由も心神喪失としか言及されず、そこに至るまでの背景など特に過去を掘り下げられることなく出番が終わってしまったので、別にタフ・シリーズでは珍しいことでもないが唐突感は否めない。

前述した通り第二部の最初の強敵キャラとして登場したが、主人公との死合いが終わった後にもいくらか出番があった黒田と姫次の二人と違って速攻で退場してしまった。
シオンには「主人公とは対となる流派の使い手」、「主人公の異母兄弟」というような主人公との因縁や、味方になるような友情も特に無いんだ 悔しいだろうが仕方ないんだ



おおっアニヲタよ!
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最終更新:2023年06月09日 21:31