登録日:2023/05/08 Mon 16:11:19
更新日:2025/04/30 Wed 08:45:56
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説明
SCP-8691-JP-Jは、
要注意団体の
酩酊街で発生した異常な好景気と酩酊街の文化風俗の変容、およびそれに伴う超自然的改変現象の総称である。
もともと、酩酊街の経済は小規模かつ前時代的なものが中心だった。というか、酒場の経営者以外のほとんどの住民が財産と言えるものを持たなかった。停滞を理念とするような世界であるため、当然といえば当然だ。
しかし、2015年ごろを境に、経済という概念に興味を持つ者が多数現れはじめ、私企業の設立や株式による投資が盛んになり、遂には「酩酊街証券取引所」まで誕生した。
なお、これらの経済活動に必要な貨幣は、酩酊街に漂着した、つまり忘れ去られた金銭…
例えば、預金についた1円以下の利息や自販機下に落とした小銭、徳川埋蔵金などで賄われているようだ。
そして好景気と共に、酩酊街の環境や文化風俗にも変化が起きた。
町の各所に大規模建築が乱立し、「アッシーくん」と呼ばれる下半身だけのアノマリーが交通手段に。
またディスコで踊る肩パッドの群れが金曜夜の風物詩となり、郊外にはスキー場が大量発生。
…もうお分かりだろう。
酩酊街に、バブルが訪れたのだ。
「アッシーくん」にディスコ、肩パッドにスキー場…いずれもバブル期に大流行したものたちである。
なんかちょっと違うけど。
これについて、財団の研究チームは、
現実においてバブル期のような好景気や経済への高揚感が忘れられ、酩酊街に漂着した結果、このような事態が起きたと推測している。
逆に言えば、現実に好景気が訪れれば自然とこのオブジェクトは弱体化すると見られ、
財団は数々の景気刺激策を投入しているが、バブル期ほどの好景気には繋がっていないらしい。
2020年代に入り、酩酊街は更なる発展を遂げ、現実世界への介入が頻発するようになった。
アメリカのニューヨークに出現した、酩酊街による「宣戦布告」がこちら。
ナウでヤングな新人類たちへ お元気ですかー?
ウチら今度、カイセー獲りに行きますんで、そこんとこヨ・ロ・ピ・ク♡
メーテーとリアルがアベックになったら、とってもチョベリグだと思わない?
ぷっつんしても許してちょんまげ!お土産にゲンナマどっさり持ってくからね~!
Drunkness Streetより ありったけのLOVEを込めて
喋り方までバブル期に染まってしまった…
なお、注釈まで原文ママである。最後のほう雑になってない?
この後も酩酊街による現実への介入は止まらない。以下、タイムラインを抜粋する。
2019年: 大納会で酩経平均株価が史上最高値の3萬8957圓44錢を記録。
酩経平均株価なる新しい指標ができている。
ちなみにこの最高平均株価は、現実における日経平均株価の最高値(1989年の大納会にて記録)と全く同じである。
2022年: ハワイ州ワイキキビーチに大量のごみが漂着。検査の結果、酩酊街からの観光客であることが判明。
モラルの無さが垣間見える。あの礼儀正しかった酩酊街はどこに行ってしまったのだろうか。
2023年: 神武天皇を名乗る人型実体が出現し、酩酊街商工会長に就任。
2025年: 伊弉諾尊的実体による"土地転がし"とも呼ばれる環境改変により、酩酊街の整備速度が飛躍的に短縮される。
2026年: 天照御神的実体がTtt社との神格的コネクションを通じ、合法的に企業を進出させ始める。
初代天皇に国産みの男神、はては日本神話の最高神までもが降臨。
それぞれ、神武景気、いざなぎ景気、岩戸景気という3つの好景気に由来しているようだ。
2035年: 神武商工会長の「もはや異常ではない」発言により、現実世界への進出が露骨化。ヴェール崩壊。
その後
2045年追記: ヴェールが崩壊したことで、酩酊街は現実世界の土地や建物を大々的に買い集めるようになりました。
すでに日本国はもちろんのこと、
アメリカ全土が酩酊系企業の名義に置かれており、アウターオーサカ、スリー・ポートランドといった超常領域にも攻勢がかけられています。
マーシャル・カーター&ダークの親会社・
スーパーなかぞのが買収されたことにより、在来企業による反抗は終焉を迎えました。
ヴェール崩壊から10年。酩酊系企業が天文学的規模の資金を投下したことにより、酩酊街はアメリカ全土を支配。
世界の経済を掌握したといっても過言ではないだろう。
当然、世界各地で前代未聞の好景気が発生。日本においても購買力が劇的に改善、バブル期をしのぐ高揚感が生まれた。
…ん?現実に前代未聞の好景気…?ってことは…
酩酊バブルの崩壊
これを受け、SCP-8691-JP-Jは徐々に弱体化の兆候を見せ始めており、2040年代に入ると酩酊系企業の減益・現実世界撤退が相次ぐようになりました。
…すでに述べたように、SCP-8691-JP-Jの発生要因、それは「現実で好景気が忘れられた」ことであり、
現実に好景気が訪れればSCP-8691-JP-Jは衰退すると見積もられていた。
その推測は正しかった。
他ならぬSCP-8691-JP-Jと酩酊街によって未曽有の好景気がもたらされた結果、SCP-8691-JP-Jが衰退。
その結果、酩酊街の正常化が進むとともに、"酩酊マネー"が消失し、現実経済は急速に冷え込んだ。
…簡潔に言おう。
バブルが弾けたのだ。
酩酊街もそれを予期したようで、日本の国税庁にこんな書簡が届いた。
お元気ですか? こちらは最近、脱サラしてのんびりスローライフを始めました。
さて、現在世界193ヶ国の政府および企業より、法人税・固定資産税・代金支払い・預金償還・その他諸々の督促を受けておりますが、こちらとしては少々懐が寂しく、早急な支払いが困難であることを僭越ながらご報告させていただきます。
理由としましては、
1.現実が不景気の概念を忘れつつあり、それに連動して酩酊街が深刻な不況に陥っていること。
2.酒さえ飲めば生きていける土地であることが再注目され、生産性が低迷していること。
3.酩酊街は元々「停滞」の街であり、滞納や延滞しても特に気にしない住民気質であること。
4.納付書や契約書など、書類の多くを紛失してしまっていること。
1.酩酊街ではよくあることです。いずれ見つかるとは思います。
等の点が挙げられます。
というわけですので、累計36,817,719,145,563,214ドルの振り込みについては来年度以降に繰り越されるものと思われます。迷惑をかけちゃうと思いますが、あなた方のことです、きっとうまくやっていけるでしょう。どうか気長に見守ってやってくださいね。
酩酊街より 慈愛の心でよろしくお願いします。
おいふざけんな。
簡単にまとめると、「税金とか代金とか色々あるけど、今払えないからまた今度で!がんばってね!」ということである。
3京6817兆ドル、日本円にして500京円以上もの支払いを踏み倒されては、現実経済はひとたまりもない。
酩酊街の悪いところが、現実に牙をむいた瞬間である。
なお、酩酊街に資金の大半を預け、年率10%もの利息収入を得ていた財団はこれを受け、
大規模記憶処理剤を用いてSCP-8691-JP-Jを持続させるという対処を検討している。
てなわけで、
特別収容プロトコル[2045年改定]:SCP-8691-JP-Jは現在未収容です。現実世界にオブジェクト由来の物品、組織、購買記録が見つかった際は、必要に応じて収容または隠蔽工作を行ってください。経済学部門の主導の下、安定的な収容を確立するための諸対策(プロトコル"財テク")が財団の総力を挙げて実施されています。
財団の明日はどっちだ、主に経済的な意味で。
余談
このオブジェクトは2023年の2月に開催された「72時間ジャムコンテストJP-2023」の、
テーマC「時よ止まれ」で優勝した作品である。
上述の流れを見ればわかると思うが、このオブジェクトは原理的に必ず自滅する。
しかも、下手すると「酩酊バブル→崩壊して現実経済が冷え込む→酩酊街に好景気が漂着→オブジェクト発生」という流れが延々と繰り返されることになる。
そのうえ発生要因が酩酊街のシステムそのものなので、酩酊街が消えてなくなるまで発生し続ける…と、
実はとんでもなく厄介なオブジェクトである。Joke枠でよかった。
ちなみに8691というオブジェクトナンバーだが、これはバブル期が1986年から1991年まで続いたということに由来していると思われる。
バブル期を知る方は追記・修正お願いします。
- 漂着したゴミそのものが観光客なんだろうし、ディスコでは肩パッドそのものが踊ってるんだろうなぁ -- 名無しさん (2023-05-08 17:25:39)
- しれっとMC&Dがスーパーマーケットに買収された話を引き継いでるの笑う -- 名無しさん (2023-05-08 17:36:49)
- (プロトコル"財テク")で駄目だった -- 名無しさん (2023-05-08 17:49:33)
- 現実世界のお金の総額は1600兆ドルなんですけど、その2万倍の借金ってどうしたらそんなことになるんすかね -- 名無しさん (2023-05-08 18:36:39)
- サービス終了した仮想通貨とかも流れ着いてるのかな -- 名無しさん (2023-05-08 21:25:21)
- jとはいえこの性質把握しといてほぼ全額投資する財団の明日の平均株価(色んな意味で)はどっちだ -- 名無しさん (2023-05-08 21:31:24)
- どこぞでは焼かれたりして同情してたがこれは焼かれても仕方ない案件 -- 名無しさん (2023-05-09 02:14:38)
- 焼いたら借金の回収が…… -- 名無しさん (2023-05-09 10:56:43)
- 注釈にいちいち「死語」って入ってるのがじわじわくる -- 名無しさん (2023-05-09 11:50:17)
- 酩酊街やらかし案件ww -- 名無しさん (2023-06-02 16:34:27)
- ↑5 頭と尻尾はくれてやれ……バブルはいずれ弾けるから、それまでの間に荒稼ぎして弾ける前に手仕舞いして降りるのが鉄則。まあ大抵は逃げきれないわけだが。 -- 名無しさん (2023-07-22 06:05:53)
- バブルに染まった酩酊街、なんかやだなぁ -- 名無しさん (2024-09-05 03:13:23)
- ↑バブル時代の価値観や意識も「忘れ去られつつあるもの」だから酩酊街に流入するのは不思議なことじゃないからなぁ -- 名無しさん (2024-09-06 13:57:52)
- これから毎日、街を焼こうぜ -- 名無しさん (2024-12-16 18:14:15)
- 財団が悪ノリに付き合ってるからジョークオブジェクトなんだけど。財団「未来で破綻するのは絶対確実なんで今の内に対策たてないとやべーぞ」って論調で話が進んでたらジョークじゃなくて普通に財団の明日はどっちだ案件なオブジェクトだな -- 名無しさん (2025-02-09 12:28:08)
- 徳川埋蔵金は見つかって無いだけでロマンを求めて必死に探してる人もいるんだから「忘れられた」金では無くないか -- 名無しさん (2025-02-14 17:25:10)
- バブル→バブル崩壊→酩酊バブル→酩酊バブル崩壊の無限ループ 「忘れられたモノが行き着く酩酊街」として理屈としては成り立ってるのがまた面白い -- 名無しさん (2025-04-30 07:10:02)
- 酩酊街の未払い金額が原文のところは合ってるけど、解説部分で間違ってたのを修正。3京8617兆ドルを3861京ドルと間違えるのはヒドくないかい……額が大きすぎて大差ないって? -- 名無しさん (2025-04-30 08:45:56)
最終更新:2025年04月30日 08:45