登録日:2024/01/19 Fri 13:11:37
更新日:2024/09/06 Fri 15:30:04
所要時間:約 6 分で読めます
『僕たちがやりました』は金城宗幸原作・荒木光作画のサスペンス漫画作品。
2015~2017年に週刊ヤングマガジンで連載されていた。単行本は全9巻。
概要
ちょっとした出来事から、まさかの人殺しを犯してしまった高校生たちの苦悩と逃亡劇を描いた作品。
人の愚かさ・醜さが生々しく表現されており、全体的にクズと呼んで差し支えないキャラが多いので、読んでいてスカッとするような漫画ではない。
また、最終話の最後のコマは、オチをつけるのを放棄したとも受け取れる意図の分かりにくい描写で物議を醸した。
一方で、安易に友情や絆を描かず、綺麗なオチも用意しなかった点はむしろ作り手のこだわりであり、その結果生まれた高校生たちの妙なリアリティー(成長しそうでしない様子や、仲間意識があったりなかったり等)は評価されている。
原作の金城によると、元々は編集と「『
行け!稲中卓球部』のような
ギャグ漫画をやりたい」と話していて始まった企画だという。
その後、作画が荒木に決まったことで「エロとヤンキー要素を入れよう」という話になり、さらに編集から「高校生がテロをやる話」という提案があり、本作のおおまかな方向性が決まった。
金城としては本作は「あくまでギャグ漫画」という認識だったようで、思った以上に読者がシリアスに読んでいたことには困惑したという。
とはいえ、ギャグもシリアスも描ける荒木が作画に入ったことで、シリアスに読む人には「これはギャグ漫画やで」、ギャグ漫画として読む人には「それだけでもないで」と言える、どっちつかずな作風ゆえの面白さが生まれたとも語っている。
本作のストーリーは先々の展開やクライマックスを考えて綿密に伏線を仕込む…といった計算はしておらず、それこそ作中の逃亡劇のように、その場しのぎの展開を繋げて作られた。
原作の金城がストーリーの叩き台を出し、それを元に原作・作画・担当編集がアイデアを出して話し合って、“最も面白い展開”を決めていたという。
編集部としては「若者に響く作品」を目指していたとのことで、「読者が主人公たちに共感してもらう必要はなく、『自分が同じ立場だったらどうするか?』と考えられるような作品にしたい」という想いを込めていた。
2017年7月に関西テレビ・
フジテレビによってテレビドラマ化された。
エピソードは全10話。
主演であった窪田正孝と水川あさみ夫妻がテレビドラマ版の制作をきっかけにゴールインしたこともあって話題となった。
ただし、テレビドラマ版の評価については上記のタグ一覧で察して欲しい。
あらすじ
凡下高校に通う増渕トビオは、友人のマル、伊佐美、パイセンとつるんで、“そこそこ楽しい日常”を謳歌していた。
ある日の朝、トビオ・マル・伊佐美は不良校で名が知られる矢波高校の生徒が凡下高生にカツアゲしている場面に出くわす。
矢波高生と関わりたくない三人はその場を立ち去るが、その日の放課後、ボウリング場に向かうトビオとマルはまたもや矢波高の不良を見かける。
思わずマルが(相手に聞こえない程度の小声で)「死ねー!マジ死ねー!」「矢波高全員死ねー!」と叫び、トビオも笑いながら止めるが、二人の背後にいた矢波高トップのヤンキー・市橋にそのやり取りを聞かれてしまう。
「服 全部脱げ」
「はい?」
「脱ーげ」
(あーもー 最悪…)
市橋に威圧され二人は縮こまるが、たまたま駆けつけたパイセンの機転で難を逃れる。
しかしその後、トビオたちが4人で遊んでいた際に市橋は取り巻きと共にマルを拉致し、リンチを加えた後に段ボールに詰め、トビオらの元に“お届け”する。
矢波高生の日頃の素行の悪さに鬱憤が溜まっていたトビオは、暴行されたマルを見て怒りが限界に達し、一言呟く。
「アイツら殺そう 俺たちで」
その場にいた伊佐美、パイセンもこれに同調し、4人は矢波高への復讐を決意する。
金持ちなパイセンの財力を使い、殺傷能力のないプラスチック爆弾を大量に作製した4人は、夜中に矢波高に侵入してこれを仕掛け、翌日の昼休みにそれらを爆破して矢波高生をビビらせる…という作戦を立案する。
「ほんまに殺したら逮捕やからな!」
「矢波高の日常ブッ壊すには最高の作戦やろ!?」
パイセンのいうとおり、これはあくまで“いたずら”───のハズだった。
作戦当日、4人は遠隔でプラスチック爆弾を次々に起動し、窓ガラスが割れてパニックに陥る矢波高の不良たちを見て楽しむが、その最中、プラスチック爆弾の威力では考えられない大爆発が発生する。
プラスチック爆弾のひとつが近くのプロパンガスに引火し引き起こされたこの爆発によって、矢波高では多数の死傷者が出る大惨事へと発展してしまう。
予想だにしなかった光景に、呆然と立ち尽くす4人。
(俺の人生……「そこそこ」でよかったんですけど……)
「そこそこ」楽しい毎日を望んでいたトビオは、この日を境に一転、“人殺し”として逃亡生活を送ることとなる。
登場人物
主要人物
演:窪田正孝
凡下高校2年。「そこそこ」の人生を理想と語る、普通の高校生。
爆破事件によって死者が出たことで罪の意識に押し潰されそうになり、逃亡生活を送ることとなる。
妹が一人おり、兄妹の仲は良い。
実写版では「増渕」となっている。
主要キャラ4人の中では最も自身の犯した罪に苦悩しており、比較的まともで読者にも分かりやすい少年。
しかし罪から逃れたい気持ちは普通にあるし、欲望と怠惰に流されては浅慮で事態を悪化させる事もある等、身勝手な一面も覗かせる。
まともなのはあくまで「この4人の中では」であって、年相応の幼稚さや人間性の難も見られる主人公。
演:葉山奨之
凡下高校2年。通称“マル”。トビオの友人。
外見はおとなしい雰囲気で内向的な性格だが、内にはドス黒いものを秘めている。
爆破事件で死者が出たことについて、自分をリンチした不良たちには当然の報いだと考えており、罪の意識はさほどない。
事件後にパイセンからもらった口止め料300万円で風俗通いを繰り返し、これがきっかけで「金」と「女」に執着するようになる。
自身の欲望に忠実で、トビオや伊佐美の持つ300万(同じくパイセンの口止め料)を狙うなど、ろくでもない行動を繰り返す。
いっそ清々しいほどのクズ。
演:間宮祥太朗
凡下高校2年。トビオの友人。
トビオの友人グループの中では唯一の彼女持ち。
性格は明るくお調子者だが、爆破事件によって冷静な一面が見えるようになる。
トビオと同じく罪の意識に追われ、自殺を決意するが失敗。
色々あって「“心”に“生きる”って書いて“性”」「“生きる”ってのは“チ○コ”!!」等と意味不明な境地に達し、
セックスに依存するようになる。
演:今野浩喜
凡下高校OBの20歳。通称“パイセン”。トビオの友人。
背格好は坊主頭の小太り男と冴えないが、恐ろしいほどの金持ち。
会ったこともない親から凄まじい金額の仕送りがあり、それを使って
ニート生活を送っている。
彼が仕掛け、そして起動した爆弾が爆破事件のきっかけとなった。
トビオらと違い未成年ではないため、警察に捕まれば死刑がほぼ確定しており、それを恐れてトビオ・マル・伊佐美に口止め料としてそれぞれ300万円を渡す。
その他の登場人物
演:永野芽郁
ヒロイン。トビオの幼馴染。
クラブで踊るのが趣味で、矢波高の市橋とつるむなど遊び慣れている雰囲気だが、意外にも処女。
わりと真面目な女子高に通っているが、勉強は得意でないらしい。
トビオを好いており、事件後に失踪したトビオを懸命に探す。
演:新田真剣佑
矢波高校を仕切るヤンキー。2年。
マルの暴言を許さず、彼をリンチし、これが結果的にトビオらの爆破事件に繋がった。
爆破事件で大怪我を負い、車椅子生活を余儀なくされる。
身体が不自由になったことで周囲の不良からも見放されるが、蓮子だけは以前と変わらずに接してくれたことで、彼女を好きになる。
将来は飛行機のパイロットになるという夢があり、そのための
予備校にも通っていた。
両親はおらず、祖母と二人暮らし。不良ではあるが、いろいろと二面性のある人物。
演:川栄李奈
凡下高校の1年。伊佐美の彼女。巨乳のエロかわ女子。
見た目や振る舞いは少しバカっぽい雰囲気のギャルだが、根は優しい良い子。
亡くなった母のために、仏壇にごはんをお供えするのを日課にしている。
父親は漁に出るため留守がちで、普段はほぼ独り暮らし。
逃亡生活で転がり込んできた伊佐美やトビオのためにごはんを用意してくれたりと、人に尽くすタイプ。
演:古田新太
パイセンの父親。風俗界の首領。
多数の愛人を持ち、パイセンも愛人の一人に生ませた子。
息子であるパイセンに対する愛情はなく、そもそも存在を忘れていた。
パイセンに毎月仕送りをしている…が、輪島本人は詳しく把握しておらず、顧問弁護士が金銭を管理している。
演:三浦翔平
若手刑事。爆破事件を追っており、真相にほぼたどり着く。
しかし、輪島の介入により捜査は強引に打ち切られ、彼がたどり着いた真相は闇の中へ葬られる。
納得がいかない飯室は、真犯人であるトビオら4人に接触し、彼らにとある“呪詛の言葉”を言い残す。
追記・修正はスポッチャで遊んだ後にお願いします。
- 結末が原作とドラマで違う 一見はドラマの方が厳しいが「苦しみから抜け出せた」のに対し、表面上の幸せを手に入れられた原作のほうが文字通り「一生苦しみ続ける」という対比 -- 名無しさん (2024-01-19 13:18:31)
- 2017年のドラマはこれ含めて豊作だった。 -- 名無しさん (2024-01-19 20:12:43)
- 主題歌2曲も結構流行ったしね -- 名無しさん (2024-01-19 22:09:53)
- 飯室があそこまで事件に執着してた理由ってなんだったんだろう -- 名無しさん (2024-01-19 22:12:46)
- 特に語られてない、まぁ只管むかついてたんだろう、確かにトビオ達はアレだがわざわざ陰湿なセリフを吐き捨てる飯室も正直大概な男ではある -- 名無しさん (2024-01-21 02:55:10)
- 最後の最後に事件発生時にトビオが笑ってたのが明かされたのは後味悪かったが、これこそ真実と単純な話でもないよな。その後劇中で自殺を図るほど苦しむ呵責→脱出のループをひたすら繰り返してたし、そのサイクルの一つに過ぎず、生涯引きずっていくってことだと思う -- 名無しさん (2024-01-21 03:17:03)
- ↑2自分達の捜査が完全に無駄に終わらせられたことに対する腹いせもあるんだろうな -- 名無しさん (2024-01-21 12:59:09)
- 原作の方だと飯室は「罪から逃れられてしまった」トビオたちに「吐き気がするよ」って更に恨み言を吐いてたが、罪を償ったドラマのトビオに対してはどう思ってんだろうか まあ「クズが死ぬまで苦しんでる、いい気味だね」って吐き捨てそうな気もするが -- 名無しさん (2024-01-21 13:21:47)
- 大量死に殺人犯みたいな感じで語られ、当人らもその意識だが実態はそうじゃないんだよね。重過失致死が最高で少年法と自首があれば減刑出来た。逃げ切ったが一生殺人意識で背負わなければならない方がある意味重くなったとも言えそう -- 名無しさん (2024-01-21 13:43:34)
- 同時期のテレ朝の遺留捜査では会ったこともない父とは名ばかりの男のために自分が息子である事を隠して殺された被害者の話(感動ものっぽくなってるがぶっちゃけこちらも胸糞)があったが、僕やりの輪島と比べると綺麗ごとが過ぎるなと思ってしまう。もし輪島がその被害者の父親だった場合でも平然とゴミ扱いするだろうが、そう言われた血縁だけの息子は自分に父親はいないと決着をつけて自分の人生を歩んだと思う。 -- 名無しさん (2024-02-05 16:41:32)
- 結局のところヤンキー達に今までの悪いことしたツケが帰ってきただけでは? -- 名無しさん (2024-08-30 06:51:13)
最終更新:2024年09月06日 15:30