お前は何があろうと私にとって永遠の友達だ(キン肉マン)

登録日:2024/10/13 Sun 13:30:10
更新日:2025/02/10 Mon 00:38:28
所要時間:約 8 分で読めます




「お前は何があろうと私にとって永遠の友達だ」とは『キン肉マン』の超神編(仮題)にて登場したキン肉マン/キン肉スグルの台詞である。
スグルの発言でありながら色んな意味でバッファローマンという超人を象徴するようになってしまった名言でもある。




※以下、キン肉マン超神編のネタバレを含みます。


<発言の経緯(と前振り)>

バベルの塔における超人対超神の決戦も順調に進み、残すはスグルとバッファローマンの二人だけとなった。
そして現れた“洞察の神”マグニフィセントを前にして、相変わらずヘタレまくるスグルに対して、苦笑いしつつも的確なイジりとツッコミを入れるバッファローマン。
「今まで自分が万全の力を出せたのはミートという最高のセコンドがついていたから」というスグルの弱腰発言を耳にしたマグニフィセントは、スグルに万全の力を出させるべく、神の力でまだローマに残っていたミートをリングサイドに転送する
ミートが現れ、落ち着きを取り戻したスグルを見てもう大丈夫だろうと判断したバッファローマンは健闘を祈りながら自分を待つ最後の超神がいるリングへと向かうが……

「待ってくれ バッファローマン」

先ほどヘタれていた時とは大違いの真面目な顔をしたスグルが彼を呼び止めた。

「ここまでありがとう」
「お前が私やウォーズマンと同行してくれたこと…私は本当に嬉しかった」
「所属としては悪魔超人に戻ったのかもしれん」
「だがお前は何があろうと私にとって永遠の友達だ 武運を祈るぜ!」

かつてのように正義超人として共に過ごすことはできなくなってしまっても、自分達の間に築かれた友情は決して変わらない。
その真摯な訴えを耳にしたバッファローマンは、背を向けたまま無言のサムズアップで彼の友情に応えたのだった。


……ここまでは両者の友情を描いたシンプルないい話であり、スグル自身の発言も至極真っ当な物であった。
しかし、この発言がまさかの形で読者を驚かせることとなる……。


<友情とは 仲間とは>

その後、バベルの塔を登った先でバッファローマンを待ち受けていたのは、今回下天してきた超神達のリーダー格、“調和の神”ことザ・ワンであった。
完璧超人始祖編」において最強の超人と名高い悪魔将軍を圧倒したザ・マンと同格の実力者という、まさにキン肉マン世界最強の双璧を成す男。
尊敬する悪魔将軍から「神をも超える新たな力を手に入れろ」と勅命を受けたバッファローマンにとってはまさに師匠の師匠を超えて実質的な師匠超えを果たすうってつけの機会だったが、その実力差は文字通り天と地ほどもあり、まるで赤子の手を捻るようにあらゆる技を簡単にいなされてしまう。
絶望的な戦局の中、ザ・ワンがわざわざバッファローマンを相手にした理由を掲示した。
要約するとこうである。

  • 悪魔将軍ことゴールドマンがあれほどに強かったのは生みの親であるザ・マンに師事したからで、系譜が違うバッファローマンが悪魔将軍に師事したところで限界がある
  • バッファローマンと自分は同じ系譜であり、類まれな潜在能力を誇るバッファローマンが自分に師事すれば本当に神をも超える強さを得る可能性がある
  • これから先、世界に待ち受ける危機を乗り越えるためには強力な超人が必要であり、最強に届きうる可能性を秘めたバッファローマンは自分が鍛えるのにうってつけの存在である
  • ここで潜在能力を発揮できないまま死ぬか、自分の軍門に下って更なる強さを得るか選べ

見方を変えればバッファローマンにはもう勝ち目はないと見下しているわけだが、バッファローマンは怒るどころか思い当たる節が確かにあった。
正義・悪魔という所属/イデオロギーにこだわらずにどこまでも強くなれというのは悪魔将軍の勅命と同じ意味であり、スグルから同じように応援されたこともある。
しかしそれと同時に思い浮かぶのはそのスグルの「お前は何があろうと私にとって永遠の友達だ」という言葉。
また悪魔に戻った自分を友として変わらず認めてくれる。あの時のスグルにそう言ってもらった時の喜びを思い出せば、どんなに勝ち目がなくてもこれ以上仲間を裏切ることなんてできないと、誘いを拒否し戦いを続行する。

……しかしながら歴然とした実力差を前に、持てる全ての力を出し切り、自身の奥義を叩き込んでもまるでダメージを与えられないまま、バッファローマンはザ・ワンに完全敗北を喫する。
そしてザ・ワンは最後の通告として、もう一度「殺されるか、弟子になるか」の二択を突き付ける。

身も心も圧し折られたバッファローマンは自分がこれまで歩んできた道を振り返ってきた。

ある時は悪魔超人、ある時は正義超人、そしてそのどちらにも属さない超人血盟軍……何度も所属を変え、そのせいで裏切り者と呼ばれるようになった彼だが、それは『自分の信念だけは決して裏切らない』という生き方の結果であった。
そして、今の自分が行くべき道は──


「これで何度目だろうか また仲間を裏切るのは……」
「だがよぉ…本当の仲間って…いったい何なんだろうな?」

「何を心配しとるんじゃ?お前は」

そんなバッファローマンの肩にスグルの手が触れる。

「キ…キン肉マン…オレは…オレは一体どうすれば…?」

「言ったであろうが」

「何があってもお前は私の永遠の友達だと」

「何があっても…永遠に……」

「おうとも安心せい!何があっても…だわい!」

その優しさに溢れた一言にバッファローマンは歓喜の涙を流し、
本当に強くなれるというのならどんなことでもやってやる
という決意を新たに、ザ・ワンについていく道を歩むのだった。


<ネタ扱いの理由>

スグルが何気なくかけた「永遠の友達」の一言はバッファローマンにとって非常に重く、彼とスグルの友情の尊さを裏付ける名台詞だった。
……と、言いたいところだが、ここまで読んで真っ先に気になるのは、

『途中で別れた筈のスグルはどこから出てきてどこへ消えた?』

という点ではないだろうか。

実際読んでみたらわかるのだが、この時現れたスグルはバッファローマンの妄想の産物である。
優しく語り掛けながら肩に触れたスグルの手も実際には目の前にいるザ・ワンの手だった。

身も蓋もない言い方をすると、頭の中=妄想のスグルに「例え裏切ったとしてもお前と私は永遠の友達なんだから安心していいよ」と勝手に許してもらっているのだ。
より辛辣な表現をすれば『自分の信念を曲げる言い訳としてスグルの言葉を利用した』も同然である。

元々、読み切り短編「キン肉マンの結婚式!!の巻」でスグルから「豪放磊落を売りにしているが1人ボッチが大嫌いな寂しん坊!」と煽られ、新シリーズに入って以降、悪魔超人に出戻りしたにもかかわらず、かつての正義超人仲間が活躍している場面を見れば無意識のうちに笑みをこぼしてしまったり、逆に悪魔超人仲間があまりにも一方的にやられている時には思わず目を背けそうになったりと、男らしい外見とは裏腹に仲間想いで情に絆されやすいキャラクターとして描かれる傾向がより強くなったバッファローマン。
読者からも「悪魔超人らしく振る舞おうとしてもどうしても上手くいかないお人好し」として愛されていた。

しかしながら、まさかそのスグルが言った「永遠の友達」という発言からイマジナリースグルを作り上げて脳内会話の末に感動の涙を流し、そして結果的にまたしてもスグルと道をたがえるという斜め上すぎる展開、
そしてバッファローマンの「多大な葛藤をしつつも『何があっても永遠の友達でいてくれる』と信じるからこそ、最後には裏切ってしまう」という脆い心を一つにまとめて見事に昇華させたゆでたまご嶋田先生の手腕に、
そしてその妄想の中のスグルに対する「マジかよ……こんな俺の事を許してくれるなんてキン肉マン優しすぎるだろ……」と言わんばかりのバッファローマンの絶妙な歓喜の表情を見事に描き切ったゆでたまご中井先生の画力の両方に読者は恐れ戦いたのだった。

……なお、その永遠の友達ことスグルはというと、ザ・マンと共に登場したバッファローマンから改めて裏切りを聞かされた際は、
彼を糾弾するような真似こそしなかったものの「へ?どういうこと?」と完全に困惑していた。
よもや永遠の友情を誓った相手が脳内の自分と話し合って裏切りを決めたなど予想できるわけもないので仕方ないのだが。

もっともバッファローマンの裏切りに対して仲間達の戸惑いはあったものの、ザ・ワンと休戦状態になった状況もあってかアシュラマンに嫌味を言われた以外はさしたる非難を浴びることはなかった。
そのアシュラマンも砂になったサンシャインの導きに従いザ・ワンに付くことを選択しており、バッファローマンのメンタル的にもさほど悪い状況ではなさそうである。
サンシャインがザ・ワン側に付くようアシュラマンに伝えたのも、もしかするとバッファローマンを気遣ってのことかもしれない。

果たしてこれから先、来るべき“刻の神”&時間超人軍との最終決戦においてこの選択(とバッファローマンのメンタル)がどう影響してくるのか……刮目して待つしかない。

追記・修正は友情パワーをこじらせない程度にお願いします。

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最終更新:2025年02月10日 00:38