シャイニング(映画)

登録日:2024/11/19 Tue 20:50:18
更新日:2025/04/11 Fri 19:07:32
所要時間:約 22 分で読めます





キューブリックの映像がとらえた
20世紀最大の
モダン・ホラー最高傑作!


仕事ばかりで遊ばない(All work and no Play)
ジャックは今に気が狂う(makes Jack a dull boy)



THE SHINING

『シャイニング(原題:The Shining)』は、1980年5月に公開された米国のサイコスリラー/サスペンス/モダン・ホラー映画。
77年に発表された、スティーヴン・キングの同名小説をスタンリー・キューブリックが映像化した。

製作・配給はワーナー・ブラザース。
日本では1980年12月13日より公開された。
かつてはTV放映もされていたのだが、後にR15+指定を受けている。

主演はジャック・ニコルソンで、キューブリックが意図的に追い詰めて(られて)いった部分も大きいからだが、本作で見せた狂気的な演技は永遠に語り継がれることになるであろう。


【概要】

直接的に幽霊などが描かれている場面は殆どないものの、キューブリック特有の画面越しからですら伝わってくる呪われたホテルの圧迫感・閉塞感が、
シーンによっては疑似体験させられているかの如くレベルで表現されているのが特徴。

圧巻の映像美と画面構成の美しさが話題に挙がりやすいが、それに付随する不安と焦燥感を掻き立ててくる音の演出や、
サブリミナル効果にも通じるような細やかで異質な場面が挿入される編集の妙、
難解で疑問符だらけになりながらも目が離せなくなってゆくストーリー構成……と、
のめり込める人間ならばとことんまでのめり込める類の映画というか映像作品である。

前述のように心霊や超能力を取り扱った映画であるにもかかわらず、決してそれを目立つように描いてもいなければ前面に押し出している訳でもないのだが、
かつての英国での検証にて数学的に見て最も怖い映画━━と、分析されたこともある。

上述の通りで公開当時は余りの難解さから賛否両論が巻き起こり、原作小説から多くの部分でアレンジを加えられたことには作者のキングからも批判が寄せられた。
……が、とにかく様々な方面から深読みや分析を出来る類の映画であるためか口コミで内容が広がると共に多数のリピーターをも生み、
結果として、劇場公開されている内に否定意見を隅に追いやっていき、大ヒット作となると同時にカルト的な人気をも獲得させることになった。

今日では、映画に於けるモダン・ホラーの開祖・代名詞と呼ばれている。
余りの影響力の大きさから、本作自体が代表的なポップカルチャーの一つとまでになっていった。

2018年には「文化的、歴史的、または美学的に重要である」として、米国議会図書館によってアメリカ国立フィルム登録簿に保存されている。

【物語】

売れない小説家のジャック・トランスは、
当面の生活費を稼ぐ為の仕事として、厳冬期には客ばかりか従業員にすら暇を出す、
コロラド州ロッキー山脈中のオーバールック(展望)・ホテルの冬季管理人の仕事に応募を出し、仕事にありついた。

……支配人による面接自体はスムーズに進んだものの、前の支配人の時に雇われた1970年の冬季管理人のチャールズ・グレイディが一緒に連れてきていた妻と双子の娘*1を斧で殺害したという事件の話を聞かされる。

オーナー曰く「孤独が原因で、それだけが心配」とのことだったが、ジャックは明るく「孤独は、寧ろ創作に好都合だ」と答えるのだった。

━━仕事が決まったことを妻のウェンディに報告するジャック。

しかし、2人の一人息子であるダニーは自分の内に潜む“トニー”からホテルで良くないことが起きる……という警告を受け取っていた。

【主要登場人物】

※吹替版は、嘗てテレビ東京にて製作されたTV放映版のみで、基本的にソフト化・VOD化はされていないがLeminoとSPOOXでのみ視聴可能。

  • ジャック・トランス
演:ジャック・ニコルソン/吹替:石田太郎

本作の主人公。
中年に差し掛かり、妻子を抱えながらも夢を諦めきれずに(自分でも順調とは言い難いと理解している)創作活動を続けている売れない小説家。(作家志望とも。)
映画では(公開された部分では)触れられていないものの元職は高校教師であり、ディベートチームのコーチも務めていた。
本作の最大の被害者にして最大の敵*2であり、難解と言われる本作のストーリーではあるが、要は呪われた土地(ホテル)に足を踏み入れたジャックがじわじわと狂っていく様を描いている物語である。(ただし、映画では狂気に陥った原因について様々に考察できる要素を浅く広く配置することで徹底的に真相を曖昧にしている。それこそ、映画に限れば呪いを抜きにジャックが狂っただけかもしれず、答えは個々人に委ねているとも言える。)

これも、映画ではジャックの台詞とウェンディの反応から“匂わせる”程度に留めているが、(父親から引き継がれた)酒乱とアルコール依存症に悩まされていた過去があり、その時に振るった暴力によりダニーの腕を骨折させている。*3

……勿論、このことはジャックにとっても不本意であり、二度とあってはならない事と認識している。
事実、以降は意思の強さから断酒しているものの、酒を飲めないことが潜在的には発散できないままのストレスを溜めることにも繋がっていたと思われる。
そして、中盤からは精神的にも立場的にも追い詰められていった結果、無人の筈のバーに逃げ込み再び酒に逃げる━━が、これすらも映画に限れば現実では飲んでいない可能性が高い。(ただし、精神的には飲酒を再開したと呼んでも差し支えがない酩酊・酒乱の状態。)
中盤ともなると創作の行き詰まりや、(悪霊共の存在を肯定するのならば)ホテルに取り憑いた邪悪な意志の介入と誘惑が強まり、愛する妻と息子との絆すら断ち切られてしまうことに。
━━いや、そもそもがジャックは自分が熱心に創作に打ち込んでいると思い込んでいたが……という描写となっているあたり、ジャックがどの時点で狂っていたのかも、考察し甲斐のあるポイントである。

……『シャイニング』といえば、メインビジュアルとして使われるジャックのあの顔だが、ぶっちゃけると、ニコルソンの演技と存在感が凄すぎて全編が顔芸と言ってもいいレベルのホラー要員である。*4

  • ウェンディ・トランス
演:シェリー・デュヴァル/吹替:山田栄子

ジャックの妻。
如何にも伝統的な価値観を持つ良妻賢母だが、割とダメな夫を立てる一方で、ダニーを守るためには立ち向かう勇気を持つなど普段の控え目な態度や見た目からは想像できない程に芯が強い。
これも、現在の公開版では触れられていないが過去に感情的に不安定な母親からの虐待に遭い、それに立ち向かった過去があるため。喫煙者でもある。
この人も中々の顔芸ホラー要員で、追い詰められていくシーンは寧ろホラーである。(褒め言葉)*5

  • ダニエル(ダニー/ダン)・トランス
演:ダニー・ロイド/吹替:伊藤隆大

ジャックとウェンディの一人息子。
まだ未就学児ながら、自ら“トニー”*6と呼ぶ未来予知の能力を持つ“友達”を内に秘めており、その“トニー”の導きもあってか、年齢に見合わない程に知能や理解力に優れた様子を見せる。
この能力は、オーバールック・ホテルにて出会い、彼のメンターとなるハロランが“輝き”(シャイニング)と呼ぶものである。
尚、ハロランが「本の中の絵」と語っていたように、悍ましいものではあるが恐れるようなものではないと語っていたホテルに潜む邪悪にダニーが襲われたのは、ダニーの“輝き”がハロランより遥かに強力であったためである。
本作でダニーを演じた6歳当時のダニー・ロイドは非常に愛くるしいが、彼も映画を見れば判る通りの結構なホラー要員。*7

  • ディック・ハロラン
演:スキャットマン・クローザース/吹替:前田昌明

オーバールック・ホテルの料理長。
快活な性格の黒人の老人で、楽しそうにウェンディとダニーにキッチンを案内していた。
……一方、ウェンディが指摘したように見聞きする前からジャックとウェンディのみが用いるダニーのあだ名である“先生”(Doc)を使うなど、奇妙な様子を見せる。(ウェンディに指摘された際には“先生”が決め言葉の『バッグス・バニー』の物真似で誤魔化していた。)
……実は、ダニーと同じく常人を超えるレベルの“輝き”の持ち主であり、一目でダニーが何者なのかを見抜き、既にダニーが感じ取っていたホテルの邪悪に近づかないようにとの忠告を与えていたが……。

  • スチュアート・アルマン
演:バリー・ネルソン/吹替:阪脩

オーバールック・ホテルの現在の支配人。
ジャックを面接で雇い入れる一方で、1970年に発生した当時の管理人“グレイディ”による惨殺事件を伝えた。
演じるバリー・ネルソンは、54年のTVドラマ『カジノ・ロワイヤル』にて初めてジェームズ・ボンドを演じた俳優である。

  • デルバート・グレイディ
演:フィリップ・ストーン/吹替:大木民夫

物語の後半にジャックが出会うことになるホテルのボーイ。
“グレイディ”ではあるが、あの“グレイディ”ではないと語る。
……が、家族構成は一緒である。
そして、ジャックには必要だったので“しつけた”とも語り、同じ事をすることを迫る。

  • ロイド
演:ジョー・ターケル/吹替:糸博

ホテルのバーテン。
ジャックとは顔馴染み(●●●●)
“ロイド”とは、此処に立つ者が記憶と共に引き継いでいく名前のようである。
演じているのは『ブレードランナー』のタイレル社長。


【後半からの展開】

※以下はネタバレ含む。


【原作との違い】

先ず、キングによる原作が明確に超能力と悪霊の存在を前提に置いた物語であるのに対し、キューブリックが心霊否定派*12ということもあってか、リアリティの増した反面、肝心の原作の主題は非常に曖昧な表現に留まり、なんなら存在するかしないのかすら解らない程度までに留まっている。

そして、原作では何よりも悪霊により父親が狂わされたとはいえ主題は家族愛を描くことであり、事件の解決のために活かされるのが息子のもつ“輝き”(超能力)……なのだが、映画ではせいぜい観客を怖がらせる要素の一つ程度であり、原作では本作の時点(●●●●●)でダニーのメンターとなるハロランの存在も軽んじられている。

以上のように、キューブリック版は俗っぽい言い方をすればファンタジー色の強いオカルトホラーである原作を、同じ素材を扱いつつも遥かにリアリティのある、何なら狂人の見た夢━━とも解釈できる乾いた物語に纏められた、とも言ってしまえる。

因みに、キューブリックは前述のように最初から心霊否定派なこともあってか原作を無視する気が満々だったようで、ニコルソンに「この物語はどんな話だ?」と聞かれて「(幽霊なんて出てくるんだから)簡単な話だ」……と、答えたなんて話まで伝わっているあたり、リスペクトに欠けた態度までが窺える。

キャスティングに関しても、ニコルソンやデュヴァルは前述の通りでキューブリックが自ら希望して出演させた俳優達だが、特に原作では“普通の男が狂っていく過程を大事に描く”都合もあってか、ジャックを没個性的とイメージしていたキングからしてみれば、ニコルソンやその他の候補*13も何れも希望にはそぐわない役者ばかりで、そんなことが続いた中でキングが折れて晴れてニコルソンの起用となったのかもしれない。(そして、案の定で映画の公開後は世間の『シャイニング』のイメージはキューブリックの手柄かニコルソンの演技か……に上書きされることに。)

……そんな訳で、まだキャリア的には浅かった(『シャイニング』は長編3作目。)のもあったのたのだろうが、結構な原作レイプに遭ってしまったキングは、確かに問答無用というレベルで完成されたキューブリック版の圧倒的なビジュアルに関しては流石に認めざるを得ない……としているものの、それ以外は完全否定する立場と批判の攻撃は止むことなく続けている。(曰く「美しいだけでエンジンが積まれていないキャデラック」)

キングも、その後のキャリアにて発言を無視することの出来ないレベルの巨匠になったこともあってか、後には「キューブリック版を批判しないことを条件」に原作に忠実なTVドラマの製作を許されており、実際に総監修したものが1997年に公開されたのだが、99年にキューブリックが逝去すると再び批判を再開している。

……尚、このキング版とも呼ばれる原作に忠実なTVドラマ版だが、映像作品としては退屈にも程がある駄作として有名。
他のキングの手掛けた映像作品にも共通してしまっているのだが、矢張り文章をそのまま素直に映像化してもテンポが再現できる訳がなかったというか━━。

【結末について】

実は、当初はしっかりとエンディングと呼べるものが用意されていた。

【余談】


  • キューブリックが本作の撮影にあたり、参考として事前にスタッフに見せたのはデヴィッド・リンチの『イレイザーヘッド』である。

  • 繰り返すが、キューブリックは演出のためにも役者を疲れさせるべくリテイクを要求し続けたことで、平気で100デイクを越える場合も少なくなかった。
    そして、ウェンディがバットを振るシーンのリテイクは127回に及び、世界で最も撮り直されたシーンとしてギネスブックに載っている。

  • 巨大迷路やホテルの一部は英国のエルストリー・スタジオに組まれた実物大セット。
    特に、迷路はリアルに作りすぎて撮影の為に中に入ったキューブリック達が出られなくなることもしばしばだった。
    尚、撮影中に迷路と一部のセットが火災で焼けて作り直す羽目になり、その後に同じスタジオで撮影予定だった『スター・ウォーズ帝国の逆襲』のスケジュールを遅延させている。

  • 凄まじく寒々しい映画だが、実は映画内で用いられているのは塩と発泡スチロール。
    なので、ダニーが大雪の中を上着も付けずに走り回ってても虐待じゃない。
    というか、あんなに寒そうな演技が出来るニコルソンやその他のキャストが凄すぎる。

  • オカルトへのスタンスの違いもあってか、原作の多くを無視する形となったキューブリックだが、どうやら「超常現象は人間の深層心理に基づく」という哲学を持っていたらしく、その考えには添う形で原作の要素を織り交ぜているとの意見も。(蜂が出てこない→蜂の巣を思わせるホテルのカーペットの柄。ダニーを驚かせる犬男→初代支配人とアッーに及んでいる熊男。先住民族の呪い→ホテルの至る所の意匠やウェンディの服装。)

  • 最も有名なエレベーターから大量の血液(2000ガロン=7500リットル相当!)が溢れ出すシーンの撮影には意外なことにキューブリックは立ち合っていなかった。流石にあのシーンはやり直し不可の一発撮りである……はずもなく実は3回撮り直している。他のシーンに比べると少なく感じてしまうが、再撮影の度に清掃とセットに血糊を満たすのに膨大な時間がかかり、撮影に一年を費やしている。
    あの迫力にはキューブリックも満足だったらしく、自ら編集した予告編では当該シーンのみを用いるなど、名実ともに本作を象徴するシーンとなっている。

  • オープニングの地を這うような空撮シーンの迫力も有名だが、この空撮の未使用部分は、後に同じく英国出身のリドリー・スコットの『ブレードランナー』にて、試写会にてダメ出しを食らって慌てて付け足したハッピーエンド(最初の公開バージョンのレイチェルと逃げるエンディング)のシーンとして流用されている。
    リドリー・スコット曰く「キューブリックなら余分に撮影している筈」とカマをかけたら案の定で、更にはスムーズに提供もしてくれたそうな。

  • それなりに古く知名度がある映画だからか、アメリカ国内・国外問わず様々な作品でパロディやオマージュとして引用されている。*14
    特に映画『レディ・プレイヤー1』では、劇中で主人公達に与えられる試練として本作の世界が再現されたものが登場している。結構再現度が高いので必見。そしてキングが本作に対してかなり否定的だった件についても劇中でしっかりと触れている。
    ちなみに、原作『ゲームウォーズ』にて登場してくるのは『ブレードランナー』で、製作当時に続編の『ブレードランナー2049』も製作中だったので差し替えられたと言われるなど、何処までも妙に関係(因縁)の深い2作であった。





追記修正は呪われたホテルから脱出してからお願い致します。







あれから40年━━“輝き”(シャイニング)は途絶えない。
……NEXTDOCTOR SLEEP


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最終更新:2025年04月11日 19:07

*1 本作を代表する名キャラクターだが、原作では只の姉妹であり双子ではない。キューブリックは結合性双生児の美少女のビジュアルを参考に双子を発想したという。

*2 2011年にアメリカ映画協会が定めた史上最高の映画悪役にて25位の高順位。

*3 教師の職を失ったのもアルコールによる生徒への暴力が原因。

*4 言わずもがなだが、先ずジャック・ニコルソンの容姿が只者ではない。そして、ニコルソンはキューブリックが今回は映画の順番通りに撮影すると言ったことから自ら睡眠を削り脚本通りに自分の手で演じるジャックを追い詰めていった。…更に、キューブリックが役者を追い込む意図もあってか場合によっては100テイクを越える撮り直しを強いたことによる相乗効果が、あの終盤での狂気的な迫力の演技である。

*5 原作では金髪とされているウェンディとは似ても似つかぬデュヴァルを選んだのは、キューブリック曰く「ニコルソンに追い詰められる(剰え反撃する)キャラなのだから被害者とはいえ只者ではない女優が欲しかったから(意訳)」……微妙に酷くない?という、普通に失礼じゃない?……尚、デュヴァルも前述の通りで演出の意図も合ったとはいえ出演シーンでは苦行のようなリテイクをさせられ、また出番外でもキューブリックに辛く当たられたとのことで、何とストレスで脱毛症まで起こしてしまったのだとか。(現在ならパワハラで訴えられてたことだろう。)しかも、そこまでがんばったのに映画の公開後はキューブリックの手腕を賞賛する声ばかりで原作者キングの批判同様に、役者の苦労は殆ど表には出ず……で、余計に嫌になってしまったなんて話も。

*6 小説版ではフルネームがダニエル・アンソニー・トランスと明かされており、トニー=アンソニー=自身の別人格、或いは高次元の自分が正体と示唆されている。

*7 頭に“何か”を飼ってる子供の元祖と呼ぶべきか。尚、5000人のオーディションから選ばれてデビューした当のダニー・ロイドは、前述の通りで大人の役者達が散々に苦労させられた本作の撮影を「ホームビデオを撮ってる感覚だった」と語っており、鬼のキューブリックも例外的に子供だけには優しく注意深く配慮していたのが窺える。……結構ホラーなシーンもあると思うのだが、単にロイドが図太かっただけ━━だったりして。

*8 映画では最初こそ“一ヶ月後”と時間経過が提示されるが、以降は曜日が提示されるようになり、視聴側にとっては“よくよく考えると全く時間経過を示されない物語”を見せられている状況になってゆく。

*9 米国の諺。日本で言えば“よく学びよく遊ぶ”あたりの意味。尚、この文はスタッフがわざわざ実際にタイプライターで打ち込んでいる……500枚分も。(そのために誤字脱字が存在する)、更にキューブリックは欧州公開を見据えてイタリア用、ドイツ用…と、各国毎に諺を変えたのでその分だけスタッフの苦労が増えた……鬼畜!!

*10 日本人からすれば“ジョニー”って誰だよ?“ジャック”じゃないの?という話であるが、これは単に幾度ものリテイクでドアを壊し続けてハイテンションになったニコルソンから飛び出したアドリブで、元ネタは当時の有名なTVショー『ザ・トゥナイト・ショー(スターリング・ジョニー・カーソン)』のホストのジョニー・カーソンがスタジオに呼び込まれる時の定番のフレーズ。英国人のキューブリックは元ネタを知らずにOK出した説あり。(完璧主義者なのに…)因みに、このシーンでニコルソンが破壊したドアは60枚に及ぶとか何とか。

*11 このハロラン殺害シーンも40回も撮り直しているのだが、クローザースが高齢なことから健康状態を案じたニコルソンが殺す側にもかかわらずキューブリックに頼み込んで止めさせた。

*12 一応、超能力は認めている━━らしい。

*13 ロバート・デ・ニーロ、ロビン・ウィリアムズ、ハリソン・フォード…等の名前が挙がっている。…そっちも見てぇぇぇぇぇ!!(特に、キレたら本気で殺りかねない短気な頃のハリソン。)

*14 英語版Wikiでは“多すぎで明記できない”…と匙を投げられている。