登録日:2024/12/04 (Wed) 14:35:00
更新日:2025/01/18 Sat 14:21:58
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概要
2006年2月3日発売の「ギルドパクト(GPT)」で初登場したメカニズム及びサイクル。
主に
- 4マナ
- エンチャント(例外あり)
- ゲーム開始時の手札にあれば、戦場に出ている状態でゲームを始めることができる
という特性を持つ。
最近では「初手に○○を握っていない方が悪い」という文言がまかり通るほど煮詰まったTCG界隈だが、それはあくまでも比喩。
こちらは比喩でなくテキストで実際に初手にあることを参照し、それによって効果を最大限発揮するという、MTG全体を見ても変則的なカード群である。
効果は自分の盤面にのみ作用するものから、相手の動きを妨害するもの、ルール自体に干渉するものまで多種多様。
なお力線は「非常にデザインが難しいメカニズム」とも言われている。
「0マナで出しても強すぎない」と「4マナで出しても強い」を両立することが難しく、弱すぎるか強すぎる方向に振り切れてしまうことが多いのだ。
新セットで各色1枚ずつの5枚サイクルで収録される際も、複数種が再録されて新規の力線はあまり刷られないのが慣例となっている。
利点・弱点
0ターンに一切のコスト不要で効果を発揮しはじめてくれるのがなによりの利点。
特に妨害効果のものは「0ターン目に唱えることすらせずに盤面に出た状態でゲームが始まる」という事前対策を一切許さない性質が非常に凶悪。
これとエンチャントというカードの特性上、相手のデッキの戦術を初っ端から完全に縛ってしまうこともあり得る。
それどころか、デッキによっては冗談抜きで「0ターンキル」と言えるほどにえげつない結果をもたらすことさえある。
特定のデッキに対するメタカードとしてサイドボードに採用されることも珍しくない。
初手にあればえげつないレベルの働きをする力線だが、弱点も多い。
まずひとつが4マナのエンチャントとして見ると効果自体は控えめなものが多く、普通にマナを支払って唱える(素出し)には弱いこと。
例えば墓地対策ができる《虚空の力線》は初手にあれば0マナで場に出せるが、そうでなければ黒のダブルシンボルで4マナもかかってしまう。
似たような効果を持つ《安らかなる眠り》などの墓地対策は現在では2マナ以下であることが多いため、こちらの素出しは割に合わない。
カードのインフレが激しくなってきた昨今では4マナ以降はゲームの大勢を決するようなカードも多いため、なおのことこの傾向が強まっている。
さらに手札事故を起こしやすい。
初手に引く確率を上げるためには4枚フル投入したいところだが、そうすると後から引いた際に事故要因となる確率まで上げてしまう。
「トップデッキ勝負にもつれ込んだときに力線を引いて負けました」なんてこともしばしば。
かといって「手札事故との兼ね合いで投入枚数を調整する」というのも難しい。
というのも先述のように、力線はマナに対して効果が控えめ。
0マナで出さないのなら役割の似ている別のカードを入れた方がいいので、絶対にあるいはできる限り初手に来てほしい。
つまりよほど奇妙な使い方をする力線でない限り、4枚フル投入しないと本末転倒なのである。
だいたいのプレイヤーは手札事故の要素と天秤にかけた上でまず間違いなく4枚フル投入する。そして事故る。
また、力線には複数枚戦場にあっても効果が累積しないものが多い。
ただでさえ素出しが重いとされがちなのに「2枚目以降を場に出す意味が無い」カードは手札で非常に腐りやすい。
特にカードプールの狭いスタンダードやパイオニアなどではこのデメリットは大きい。
ただしモダン以下の環境では手札の消費を要求する「ピッチスペル」のコストに充てたりできるため、それほどデメリットとして目立たなかったりする。
また効果が重複しなくても複数枚戦場にあることはデメリットだけではない。
複数のカードを1枚で対処できるカードは案外少ないため、対処に手間取らせることで結果的に相手の足止めをできたりする。
力線対策に《解呪》系のカードを握って安心していたら、力線が2枚出てきてげんなりするなんてこともプレイヤーのあるあるネタ。
そして非常に戦略的な弱点として、
「手札の状態があまりよくなくても、力線があるのでキープせざるを得ない」という選択が起きがちになる。
プレイヤーの間では「力線キープ」と呼ばれたりもする。
60枚デッキにおいて4枚投入したカードが初手に来る確率は4割弱、確率としては半分にも満たない。
それを引けた手札をマリガンするというのは難しい判断を迫られる。
しかもマリガンをするたびに手札は1枚ずつ減っていく。マリガンして更に良い手札になったとしても枚数差で負けるなんてことも起きかねない。
故に「力線があるからとりあえずキープするか…」という判断が起きがちなのである。
感想戦で「
マリガンしてればよかったニャ」と後悔することもよくある。
それからそもそもの話として、0ターン目出せたからといって完全に勝てるわけではないというのもある。
特に強力な力線になるほど、対策される使い手にとっては「メインは勝てて当然、サイド後に力線を出されてからが本番」と言われることもある。
最近はカードのインフレも激しくなったため「対策が他のカードならキツいが、力線ならまだ全然勝ちに行ける」なんて言う人もいたりする。
早い話が力線は案外乗り越えられるものであり、乗り越えなければならないために専用の対策が組まれているのだ。
例えば上述の力線キープを即座に見抜かれて、対策の効かないプランBで強引に勝ちにこられたりする。
これらのデメリットも加味したうえで採用するかどうか検討しなければならないのが悩みどころ。
特に妨害効果の力線は評価が人の好みによってハッキリ分かれる。
素出しするには明らかに弱かったり、上振れたときは強いがそうでないと完全に手札に腐ものは喧々諤々の議論が行われがち。
各カードの解説
現在、白・青が3種類、赤・緑が4種類、黒・多色が1種類ずつ存在する。
並びは登場順。
弱者の力線/Leyline of the Meek (2)(白)(白)
エンチャント
弱者の力線があなたのゲーム開始時の手札にある場合、あなたはそれが戦場に出ている状態でゲームを始めてもよい。
クリーチャー・トークンは+1/+1の修整を受ける。
「ギルドパクト(GPT)」で登場した初代白の力線。効果はトークン限定の全体強化。
名前に反してどう見ても弱者じゃない《マリット・レイジ》トークンのような大型クリーチャーも、トークンでさえあればちゃんと強化される。
相手のトークンまで強化してしまうが、登場時期のカードとしては一般的なテキストである。
当時としては「0マナで出せる《栄光の頌歌》系カード」というだけでも十分魅力的。
何より2枚目以降を並べても全く腐らないどころか、むしろ効果が累積していくのが嬉しいところである。
トークンの生成手段も現代には劣るが豊富かつ現実的なものが多く、それらを強化できるということでトークン系のデッキに入っていた。
ただしそれは力線効果で0ターン目に出せた場合の話。それ抜きだといくらなんでも4マナで+1/+1しかされないのは重い。
今ほどではないが「素出しするには弱い」というのは、登場当時から一般的な評価だった。
現在では同じくトークン全体強化を持つエンチャントとしては素出しコストが半分の《無形の美徳》が存在する。
更にこちらは警戒も付与するし強化対象も自軍だけなので、トークン系デッキが組まれる際もまずそちらが優先される。
不同の力線/Leyline of Singularity (2)(青)(青)
エンチャント
不同の力線があなたのゲーム開始時の手札にある場合、あなたはそれが戦場に出ている状態でゲームを始めてもよい。
すべての土地でないパーマネントは、伝説である。
「ギルドパクト(GPT)」で登場した初代青の力線。効果は土地以外の全パーマネントの伝説化。
伝説のパーマネントは同名のものを並べることができなくなる。つまり同名カードの横並びへの対策になる。
特にトークンは同名を複数体生成するものが多く、それ以外でも同名クリーチャーの一斉展開などを防げるようになる。
そのためそういった横並び戦略を重視するデッキに対して力線効果で出せれば、ほぼ0ターンキルとなる。
ただ、ぶっちゃけそれだけ。ほとんどのデッキにとっては「同名カードをちょっと並べづらくなる」程度で終わってしまう。
むしろ自分のカードの横並びを妨害してしまいやすいため、採用されるデッキは極めてニッチな戦略を取るものになりやすい。
なお伝説を付与するカードであるため、レジェンド・ルールによく振り回されるカードでもある。特に2013年7月以前と現在ではかなり異なる。
当時は俗に言う「対消滅ルール」であり、「同名は戦場全体で1枚のみ」「2枚以上出ていたら全てを墓地に送る」というルールだった。
つまり土地以外の同名カードが「自分・相手の盤面において2枚以上」出ていたらその時点で墓地送りとなるため、今よりも戦場に残す条件が厳しかった。
これにより今以上にトークン対策で用いられることが多かった。例えば《巣穴からの総出》は1体すら残せずに完全に機能不全を起こす。
また《不同の力線》自身の伝説化を利用し、2枚目を出すことで力線を墓地に送って効果を終わらせることもできた。
さらにこの時代ならではのデッキとして【ハンテッド・レイライン】というデッキが存在した。
高いマナレシオを持つ代わりに対戦相手にトークンを与えてしまう「狩り立てられた(Hunted)○○」という名前を持つカード群を採用。
本来は処理するのに手間がかかるそのトークン達だが、数が2体以上なら《不同の力線》でマナをかけずに処理が可能になるのだ。
これにより自分だけ「2マナ7/7トランプル」「3マナ4/6アンブロッカブル」のような無法なクリーチャーを使える、というデッキである。
ルール改正後はこういった除去としての性能さえ中途半端になってしまい、さらにこれ以外にも非伝説パーマネントを伝説化できるカードも増えてきた。
このカードならではの使い道は着実に減ってきてしまっている。
ちなみに、後述する他のものも含めて青の力線はどれもニッチな効果なものばかりである。
なぜここまで青の力線の効果が変なのかというと、先述したピッチスペルとの兼ね合いが大きいと思われる。
青のピッチスペルといえば、誰もが知るであろうあの打ち消しである《意志の力》。
この存在により、青いというのはそれだけで他の色に比べてメリットが大きいと捉えられるのだ。
特にこれの登場当時はまだ《誤った指図》など他の青ピッチ亜種も現役バリバリだった時代だったので、なおのこと効果がニッチなのである。
虚空の力線/Leyline of the Void (2)(黒)(黒)
エンチャント
虚空の力線があなたのゲーム開始時の手札にあるなら、これが戦場に出ている状態でゲームを開始してもよい。
カードがいずこかから対戦相手の墓地に置かれるなら、代わりにそれを追放する。
「ギルドパクト(GPT)」で登場した初代黒の初代。効果は相手の墓地へ送られるカードを追放する墓地対策。
そもそも力線の一番の強みというのは「0ターン目に出せる」こと。コストを支払わず、打ち消しといった妨害もされずに出せることである。
この性質が強力に働くのがサイドボード後、つまり「2戦先取戦の2戦目以降、デッキに相手へのメタカードを入れた後」である。
1戦後にサイドボードから《虚空の力線》を4枚投入すると、だいたい40%の確率で初手7枚中に1枚は《虚空の力線》になる。
マリガンを考慮すればさらに確率は高くなる。
そして《虚空の力線》を0ターン目に出されただけで戦略が成立しなくなるデッキというのは、墓地利用特化の【ドレッジ】のように結構多い。
詰むほどではなくとも動きが制限されるデッキはなお多い。
ありていに言えば、特定の条件下のサイドボード後では
デッキ構築段階で40%の勝利がほぼ確定するカードになるのだ。
そういった「相手デッキへの直接的な対策となるカード」を入れるサイドボーディングと、0ターン目に出せる力線の性質は相性が良いのである。
他にも、このカード自体がコンボのキーカードになる【
ヘルムヴォイド】では0ターン目に出せればコンボ完走までのターン数がグッと縮まる。
一方でこれを力線効果で0ターン目に出せない場合、黒ダブルシンボル4マナの墓地対策として扱うことになる。
墓地対策としては非常に重くて不完全、さらに墓地対策が必要となるようなデッキ相手に4ターン目に出すのはほぼ手遅れ。
参考までに(色や細部は違うが)墓地対策としてはより強力な効果を持つ《安らかなる眠り》は2マナである。
それゆえこれを採用する場合は、これが初手で引けなかった場合にどうするかを構築段階でよく考えておく必要もある。
でもそんなリスクの高いこれをメインから複数積まなきゃいけないほどに
墓地利用デッキがヤバい時代もあったりした。
登場当時など墓地対策の選択肢が少なかった時代では、特に黒の入っていないデッキで愛用されていた。
現在では別の用途でも使える軽量かつ強力な墓地対策も登場しており、それらのカードの方が厄介だという人も多い。
また先述の通り、使われる相手からすればこのカードの存在は前提に近いという側面もある。
総じてデザインが難しい力線の中でも最高傑作と名高いカードである。
力線がサイクルで新セットに収録されるたびに黒はひたすらこれが再録された結果、唯一の黒単色の力線ともなっている。
再録を繰り返したおかげか、環境需要が非常に高いカードでありながら現在は値段が落ち着いている。
一方で3回目の再録である「基本セット2020(M20)」のあたりから、新しい黒の力線を求めるプレイヤーも増えてきている。
稲妻の力線/Leyline of Lightning (2)(赤)(赤)
エンチャント
稲妻の力線があなたのゲーム開始時の手札にあるなら、あなたはそれが戦場に出ている状態でゲームを始めてもよい。
あなたが呪文を唱えるたび、プレイヤー1人かプレインズウォーカー1体を対象とする。あなたは(1)を支払ってもよい。そうしたなら、稲妻の力線はそれに1点のダメージを与える。
「ギルドパクト(GPT)」で登場した初代赤の力線。効果はあらゆる呪文を唱えたときに1マナで本体火力1点を飛ばせる。
テキストの形式はだいぶ異なるが、後に同じくラヴニカを舞台とするセットで登場したオルゾフ組の能力「強請」に似た効果である。
理論上は当時のグルール族の能力「狂喜」と相性が良く、1マナ追加するだけで条件を満たせるなど、光る点自体はある。
しかし1マナ1点でクリーチャーに飛ばない火力は単純にパワー不足。
使用には1マナを余らせなければならないため、当時の赤の「軽量カードを素早く展開する」「マナを無駄なく使う」戦術との相性もあまり良くはない。
さらにこの時代の赤は「ルーティング」「衝動的ドロー」はおろか「キャントリップ」「占術」さえ夢のまた夢という時代。
要するに他の色に比べて力線が手札に腐りやすい。
2枚目以降を出すと効果は累積こそするものの、能力を使用するのに1マナ余分にかかるのでほとんど意味がない。
総じて弱点が非常に多く、採用できるデッキが他の4枚に比べてかなり狭い。
そもそも狂喜との相性がいいというのも理論上の話。
狂喜は「条件を満たせば軽いが条件を満たさないと割に合わない」というデザインなので、条件のために自分から追加でマナを支払うのは本末転倒。
《放蕩紅蓮術士》のようなもっと相性の良いカードが登場してからは見向きもされなくなった。
生命の力線/Leyline of Lifeforce (2)(緑)(緑)
エンチャント
生命の力線があなたのゲーム開始時の手札にあるなら、あなたはそれが戦場に出ている状態でゲームを始めてもよい。
クリーチャー呪文は打ち消されない。
「ギルドパクト(GPT)」で登場した初代緑の力線。効果はクリーチャー呪文への打ち消し妨害。
緑と言えばクリーチャーデッキ。マナを稼いで出した大型クリーチャーを打ち消される最悪の事態を対策できるというわかりやすい役割を持つ。
力線効果で0ターン目に出すなら自身が打ち消される可能性がないため、力線であることに強い魅力があるのも良い。
しかも登場当時は《対抗呪文》こそ落ちたが、青の打ち消しはまだまだ強かった時代である。
とはいえ相手が青いデッキでなければほぼ意味がなく、青であったとしてもパーミッションデッキにしか刺さらない。
つまりサイドボード用カードなのは当然として、その役割すら割と狭いのが欠点。
それこそ昔の【ドロー・ゴー】などを相手にするなら非常に頼りになるカードだが、そんなデッキは当時のスタンダードではとっくに絶滅。
そもそもその手のデッキにも除去やコントロール奪取などが多数入っているので、これ一つで完封とまではいかない。
つまりデッキの構築段階での工夫やプレイングでどうにでもなってしまうことが多いのだ。
さらに素出しする性能ではない。力線効果で0ターン目に出せないのなら他にも強力な打ち消し対策カードがごまんとある。
総じて、対策として使うには色々と粗が目立つカードである。
どちらかというと《虚空の杯》のような「自分のカードも打ち消してしまう」カードとの併用などを考えた方が良いかもしれない。
神聖の力線/Leyline of Sanctity (2)(白)(白)
エンチャント
神聖の力線があなたのゲーム開始時の手札にある場合、あなたはそれが戦場に出ている状態でゲームを始めてもよい。
あなたは呪禁を持つ。(あなたは、あなたの対戦相手がコントロールする呪文や能力の対象にならない。)
「基本セット2011(M11)」で登場した2代目白の力線。効果は自身への呪禁付与。
同じマナコストのエンチャント《象牙の仮面》と効果がほぼ同じであり、実質そちらの上位互換。
呪禁を持つことにより自身が対象に取られなくなるため、ほぼ全てが対象を取る赤の本体火力や黒のハンデスなどを防げる。
対抗色である赤と黒によく効き、さらにそれらの色は基本的にエンチャントに触ることができない。つまり除去されることもない。
もちろんサイドボード用カードとしても超優秀で、登場当時のスタンダードではコントロールデッキで用いられた。
現代でも、コンボデッキがピーピングハンデスや火力による速攻を封じるために採用することがある。
デッキによっては一瞬で詰むため、特に登場時のスタンダードやレガシーでは「0ターンキル」というのはもっぱらこれのことを指した。
このカードで詰むデッキは意外と多い。【赤単バーン】などはまだマシな方。
- ハンデスを軸にした【黒単】
- 《苦悶の触手》《思考停止》《ぶどう弾》のようにプレイヤーを対象に取るフィニッシャーを用いる【ストーム】
- 戦略自体が対戦相手を対象に取る【青黒ライブラリーアウト】や【ランタンコントロール】
他にも《火の玉》《ゴブリンの放火砲》《天才のひらめき》《精神隷属器》などをフィニッシャーにするデッキなども大幅な減速を余儀なくされる。
デッキによってはゲーム開始前に詰むことさえある。
これらのデッキは色の役割や戦略の都合上、墓地利用デッキほど器用な動きができずに力線を迂回できないことも多かったのだ。
そのためかつてはサイドボードの定番どころか、むしろこれらのあまり好ましくないデッキがのさばらないようにする安全弁の役割も果たしていた。
ただし最近はデジタルでのプレイ感の優先やインフレによって「本体を対象に取る強力なカード」に頼ることが相対的に少なくなってきた。
そのため現代では「0ターンキル並の対策」という用途で使われることはずいぶんと減ってた。
また刺さる相手には開幕で致命傷を与えるが、刺さらない相手には全く刺さらない。
特に「クリーチャーを展開する」という行為には一切干渉してこない。
そのため例えば【ストーム】なら、プレイヤーを対象に取るのではなくトークンを並べる《巣穴からの総出》を用いることで迂回して勝利できる。
ちなみに登場当時のルールではプレインズウォーカーへの火力もこれで保護できたが、移し替えルールが撤廃されたのに伴い防げなくなった。
この点は非常に忘れられやすいため注意。
昔の記事や回顧録などで書かれているとうっかり指摘したり、wiki形式の場合は間違いだと勘違いして修整してしまうこともしばしばある。
予期の力線/Leyline of Anticipation (2)(青)(青)
エンチャント
予期の力線があなたのゲーム開始時の手札にあるなら、あなたはそれが戦場に出ている状態でゲームを開始してもよい。
あなたは呪文を、それが瞬速を持っているかのように唱えてもよい。
「基本セット2011(M11)」で登場した2代目青の力線。効果は自分の唱える全呪文への擬似的瞬速付与。
要するに土地以外のすべてのカードがインスタント・タイミングで唱えられる。
あらゆる呪文を相手ターン中だろうが攻撃中だろうが終了ステップだろうが強引に唱えることができるようになるというルール破壊カード。
しかしこれ単独ではアドバンテージを稼がない。また「そこまでしてインスタントタイミングで唱えたいか?」というのも冷静に考えるべきである。
何かしら入っているであろうソーサリーの除去やドロー等を自由に構えられれば嬉しいのは間違いないが、力線に見合っているかは別問題。
2枚目以降が腐るし、出てないときと出ているときに求められるプレイングががらりと変わることで使い方はものすごく難しい。そのため極めて癖が強い。
「理論上の0ターンキル」では多く使われるが現実的には使い道が少ないという、青らしい理論重視のカードでもある。
あまり研究されているカードではないため、もしかしたら今後テキストの穴を突いたコンボが大成して大化けするかもしれない。
下環境では
「1ターンの価値が高いため、瞬速を噛ませて強引に相手ターンに動く価値も高い」
「コンボデッキにおいて、あらゆるタイミングからコンボを確定させられる」
などのメリットから有効な場面が多く、たまに使われる。
例えば【ベルチャー】や【The Spy】では自分が後手になることが確定している際にサイドボードから投入されることも多い。
この場合、比喩ではなく文字通りの0ターンキル(後手番が回ってくる前に相手を倒す)ということも起こりうる。
しかも青なので、初手に来なくて素引きしてしまった力線は《意志の力》のコストにもできると至れり尽くせり。
「よほど奇妙な使い方をする力線でない限りフル投入しないと本末転倒」と述べたが、その例外となる「よほど奇妙な使い方をする力線」がこのカード。
サイドボードに1枚挿しということが多い。
0ターンキルのことを考えると4枚フル投入した方が圧倒的に強いのだが、このカード自身は何の仕事もしないため。つまり4枚入れると過剰すぎるので、「デッキのバランスを崩すことなく、もし初手にあったら機先を制する」という程度で入れられるのである。
といっても、この辺はコンボデッキ使いの間での空中戦の話題なので説明が難しい。
最近最も活躍したこのカードの使い道は、「相棒の春」の初期の【ジャイルーダ・コンボ】全盛時代。
【ジャイルーダ・コンボ】は6マナさえ出せればそこからコンボに行くことが可能であり、1ターンキルも頻発する。
そのためミラーマッチでさらに上を行くために《予期の力線》が投入されたのだ。
そして4マナなので 《深海の破滅、ジャイルーダ》の相棒条件を阻害しない。
そのためこれを0ターン目に出して初手に6マナ出せる手札が揃っていればほぼ勝利できる。
1ターンキルができる手札だと笑んでいたら相手から0ターンキルされてお互いに大爆笑という、心温まる風景も見られたりした。
3戦目にお互い《予期の力線》が出ている状態になると「全知MTG」だの「メンタルマジック」だのとは違った意味でめくるめくカオスが始まる。
ここまでくるともはやMTGとよく似た別のゲームである。
処罰の力線/Leyline of Punishment (2)(赤)(赤)
エンチャント
処罰の力線があなたのゲーム開始時の手札にある場合、あなたはそれが戦場に出ている状態でゲームを開始してもよい。
プレイヤーはライフを得られない。
ダメージは軽減できない。
「基本セット2011(M11)」で登場した2代目赤の力線。効果はライフ回復とダメージ軽減の禁止。
一見強そうに見える。実際当時の【赤単】使いには採用する人もいた。
実際「0ターン目に出せれば」かなり強い。当時の赤対策には「プロテクション(赤)」が使われることが多く、赤はこの能力に対して何もできなかった。
これが出ていれば《ブレンダンの炉の世話人》《コーの火歩き》などでも、ブロッカーとライフ回復役としての仕事を完全に封じ込めることができる。
【ソウルシスターズ】で使われる《魂の従者》系のカードも、このカードが出ていたら単なるバニラである。
赤が非常に苦手にしていたカードへの対策としては、0ターン目に出ていたら本当に頼りになる。
しかし上振れしなかったときの問題点が山ほどある。
「0ターン目に出せなければ完全に手札に腐る。4マナ払って出してる暇は無い。」
「0ターン目に出せたとしてもただでさえ減りやすい【赤単アグロ】の手札が1枚減る。」
「そもそもプロテクションの「対象に取れない」という部分が解決しないため、《稲妻》などの除去でプロテクション持ちを狙えない。」
「呪禁や破壊不能が相手の時は無意味。」
「当時の赤は占術も希少で非常に事故りやすく、このカードを素引きすることを看過できない。4枚投入したいが、4枚投入すると思いっきり事故る。」
「当時の赤は速度で相手を圧倒するものだったのだが、このカードは『対策の対策』という後ろ向きのカードに過ぎないので速度が落ちてしまう。」
などの問題点を押しのけてまで使いたいカードではなかった。
というより、このカードをデッキに投入することで別の問題が起きてしまう。いろんな意味で本末転倒であった。
しかしそれでもこんなカードに頼らなければ色対策カードを対策できなかった当時の赤の事情もあって、評価に喧々諤々の議論を呼んだカードである。
赤のドロー事情が改善した現在では細々と使われている。
とはいえ回復やダメージ軽減の禁止というよりも「初手で癖のないパーマネントを展開する」ことを重視した使い方になる。
活力の力線/Leyline of Vitality (2)(緑)(緑)
エンチャント
活力の力線があなたのゲーム開始時の手札にある場合、あなたはそれが戦場に出ている状態でゲームを開始してもよい。
あなたがコントロールするクリーチャーは+0/+1の修整を受ける。
クリーチャー1体があなたのコントロール下で戦場に出るたび、あなたは1点のライフを得てもよい。
「基本セット2011(M11)」で登場した2代目緑の力線。効果は自軍のクリーチャーのタフネス強化とライフ回復。
シンプルに効果が弱い。タフネス+1もライフ1点も馬鹿にはできないが、手札1枚と初手に来る運を使ってまでやることかと言われるとだいぶ怪しい。
現代ではもちろん、当時でさえ「2マナでも使いたいかどうか怪しいカード」である。
しかし実は当時のスタンダードにおいて、【ソウルシスターズ】や【エルフ】などで用いられた実績を持つカードであったりする。
ライフ回復の部分は、このカードが初手で出ていると赤を大きく減速させることができた。
タフネスの強化はクリーチャー主体のデッキではなかなか馬鹿にならない。
【エルフ】では素出しも容易であり、当時は全体火力として《紅蓮地獄》などが存在していたので、素出しする価値も十分にあった。
つまり力線にもかかわらず「素引き・素出しにも耐えうる」「重ね張りができる」「メインデッキからも積極的に採用できる」という利点があったのだ。
そういった事情から、デッキに継戦能力を持たせたい場合や《魂の従者》系のカードが追加でほしい場合などに用いられた。
非常に地味ながら採用されることもあったカードである。
ただ、その上で言うのだがシンプルに効果が弱い。
当時使われた理由は
「当時の環境が高速化していたため、0ターン目に使えるカードが欲しかった」「このカード1枚で状況が好転した」
という事情によるところが大きい。
上述の実績だって、4枚フル投入ではなく「似たような役割のカードの5~9枚目以降」として1~2枚というものだった。
現代で言うところの「オタクカード」に近いかもしれない。
発火の力線/Leyline of Combustion (2)(赤)(赤)
エンチャント
発火の力線があなたのゲーム開始時の手札にあるなら、あなたはこれが戦場に出ている状態でゲームを開始してもよい。
あなたやあなたがコントロールしている1つ以上のパーマネントが、対戦相手がコントロールしている呪文や能力の対象になるたび、発火の力線はそのプレイヤーに2点のダメージを与える。
「基本セット2020(M20)」で登場した3代目赤の力線。効果は自身と自軍のクリーチャーに「対象に取られたとき2点の本体火力を飛ばす」を付与。
「クリーチャーでダメージを与える」デッキにとっては非常に優秀なカード。
相手からのクリーチャー除去やハンデスでの出される前の対処など、あらゆる動きによって2点火力を与えられる。
単体の強さもさることながら、サイドボード用カードとしても優秀。
特に【アグロ】に対して大量の単体除去で対抗するデッキは多く、そうした天敵への対抗札になりうる。
豊穣の力線/Leyline of Abundance (2)(緑)(緑)
エンチャント
豊穣の力線があなたのゲーム開始時の手札にあるなら、あなたはこれが戦場に出ている状態でゲームを開始してもよい。
あなたがマナを引き出す目的でクリーチャーをタップするたび、追加で(緑)を加える。
(6)(緑)(緑):あなたがコントロールしている各クリーチャーの上に+1/+1カウンターをそれぞれ1個置く。
「基本セット2020(M20)」で登場した3代目緑の力線。効果はマナクリーチャーの強化。
1ターン目に
《ラノワールのエルフ》を出すだけで、2ターン目に一気に4マナまでジャンプできる。
またマナが溢れてしまった際の受け皿としてか、8マナで全体強化ができる効果が付いている。
シナジーするのがマナクリーチャーのみと狭いが、上振れれば極めて強大な出力を発揮するカード。
マナクリーチャーを多用する【エルフ】のようなデッキでは強力。
更にこのカードにおいては力線の持つ隠された力も牙を剝いた。
それは0ターン目から場に出る「(2)(緑)(緑)のパーマネント」であるということ。
MTGにおいては、この「パーマネントに含まれる(緑)というマナ・コスト」を参照するメカニズムが存在した。
ギリシャ神話モチーフのテーロス次元においてその色の神への信仰を表現したメカニズム、「信心」である。
例えば(2)(緑)(緑)である《豊穣の力線》の緑への信心は2、といった感じ。
そして信心を扱うカードには2マナ+タップで1色の信心分のマナを出す土地《ニクスの祭殿、ニクソス》が存在した。
更にそれを中心に《ラノワールのエルフ》や《エルフの神秘家》といったマナクリーチャーも扱う【緑単信心】というデッキも存在した。
ここに《豊穣の力線》が加わればどうなるか。
「マナクリーチャーの効果倍化」「《ニクスの祭殿、ニクソス》から出るマナをタダで2増加」「余ったマナを注ぎ込んで全体強化」
のすべてを一手に、しかも0ターン目に出せればノーコストでこなす怪物カードに変貌。
しかもデッキ全体でマナが大量に出せる関係上後から引いてもそこまで問題が無いおまけ付き。
結果としてパイオニアで
【緑単信心】が大暴れ。
2019年末を以てパイオニアで禁止と相成った。
能動的に使える「攻めの力線」が暴れた最初の例である。
ギルドパクトの力線/Leyline of the Guildpact(緑/白)(緑/青)(緑/黒)(緑/赤)
エンチャント
ギルドパクトの力線があなたのゲーム開始時の手札にあるなら、あなたはこれが戦場に出ている状態でゲームを開始してもよい。
あなたがコントロールしていて土地でない各パーマネントはそれぞれすべての色である。
あなたがコントロールしているすべての土地は、他のタイプに加えてすべての基本土地タイプである。
「カルロフ邸殺人事件(MKM)」で登場した初の5色の力線。
緑だけでも唱えられるが、混成マナにより他の色でも1マナ分は替えることができる気色の悪い前代未聞のマナコストを持つ。
効果は自軍の全パーマネントの5色化とすべての土地を5色土地化。
まず効果の前に、このマナコスト自体が強い。
先程の《豊穣の力線》は0マナで緑2の信心を稼いだ。ではこの《ギルドパクトの力線》はどうかというと、緑4(ついでに白1青1黒1赤1)の信心を稼げる。
マナクリーチャーの強化もなく効果自体も腐るものの、0コストで《豊穣の力線》2枚分の緑信心を稼ぐのは上振れとしても流石に強力。
当然のように【緑単信心】に採用されている。
次に本題の効果だが、単純に単体で使う分には「色事故が起きなくなる」くらい。悪くはないが力線として0ターン目に出すほどではない。
だがMTGには「基本土地タイプを参照する効果」や「色を参照する効果」が多く存在している。
特に5色の土地タイプを揃えれば最高出力となる【版図】では、初っ端から最高出力を発揮できるようになる。
その中でも基本土地1種につき2マナ軽減して出せて各色のクリーチャーにキーワード能力を付与する
《ドラコの末裔》は最高の相棒。
併用すると「2マナ4/4で自軍全体に飛行・警戒・呪禁・絆魂・先制攻撃・トランプルを付与する」という、何もかもを間違えた化け物が誕生する。
希望の力線/Leyline of Hope (2)(白)(白)
エンチャント
希望の力線があなたのゲーム開始時の手札にあるなら、これが戦場に出ている状態でゲームを開始してもよい。
あなたがライフを得るなら、代わりにあなたはその点数に1を足した点数のライフを得る。
あなたのライフ総量が初期ライフ総量より7点以上多いかぎり、あなたがコントロールしているすべてのクリーチャーは+2/+2の修整を受ける。
「ダスクモーン:戦慄の館(DSK)」で登場した3代目白の力線。効果はライフゲインの強化とライフが初期より多い場合の自軍全体強化。
ライフゲインを多く行う【ソウルシスターズ】【天使】など向きの効果。
ただ結局のところこの手のカードは「ライフを得るクリーチャー」との相性で成立しているので、ライフロス以上にクリーチャー除去が痛い。
そもそも「早期に出せる力線」と「時間をかけてライフを得て強化」というデッキ性質が噛み合っておらず、総合的には微妙。
変貌の力線/Leyline of Transformation (2)(青)(青)
エンチャント
変貌の力線があなたのゲーム開始時の手札にあるなら、これが戦場に出ている状態でゲームを開始してもよい。
変貌の力線が戦場に出るに際し、クリーチャー・タイプ1つを選ぶ。
あなたがコントロールしているすべてのクリーチャーは、他のタイプに加えてその選ばれたタイプである。あなたがコントロールしているすべてのクリーチャー呪文と、あなたがオーナーであり戦場にないすべてのクリーチャー・カードについても同様である。
「ダスクモーン:戦慄の館(DSK)」で登場した3代目青の力線。効果は自分の全てのクリーチャーカードにクリーチャータイプを1つ追加。
《予期の力線》と同じく、単体でアドバンテージは稼がない極端なコンボ特化カード。
この手の効果は今まで3マナの《秘儀での順応》が最低コストなので、力線効果でコスト無しで出ることにより新しいコンボも可能になるか。
やはり青らしく理論重視で実用性軽視のカード。
……と思いきや、無色のエルドラージ呪文を2マナ軽減する土地である《ウギンの目》と揃えるデッキがレガシーで成立。
大量の無色2マナクリーチャーを1ターン目から展開しぶん殴る!といった動きに貢献している。
残響の力線/Leyline of Resonance (2)(赤)(赤)
エンチャント
残響の力線があなたのゲーム開始時の手札にあるなら、これが戦場に出ている状態でゲームを開始してもよい。
あなたが、あなたがコントロールしているクリーチャー1体だけを対象としていて、インスタントやソーサリーである呪文1つを唱えるたび、その呪文をコピーする。そのコピーの新しい対象を選んでもよい。
「ダスクモーン:戦慄の館(DSK)」で登場した4代目赤の力線。効果は自軍への強化呪文のコピーによる倍加。
単体強化をコピーするだけなのだが、登場当時のスタンダードではよりにもよってその単体強化を重視した速攻デッキ【赤単果敢】がトップメタ。
- 「自分の呪文や能力の対象に取る」ことで爆発的な強化を得る《心火の英雄》のような雄姿持ちマウスフォークたち
- 既存の強化呪文のパワーラインを踏み越えた《巨怪の怒り》や《裏の裏まで》のような単体強化呪文
と組み合わせて大暴れ。
上振れ要素ではあるものの、スタンダードにおいて最速2ターンキルできるのは流石にやりすぎの部類。
とはいえ0ターン目に出せなければデッキの中では重いカードになってしまうのも事実なので、安定性を取って採用を見送る構築も増えていて、なんだかんだで適正なカードパワーに収まっている。
問題はオンラインゲームであるMTGAの方。
初手の土地補正でマリガンのリスクが低く、プレイ人口の多いBO1ではサイドボードでの対策もないので1回揃えばOKと凶悪に噛み合ってしまった。
結果として環境が《残響の力線》入り【アグロ】デッキだらけに。
挙句の果てには「デイリーミッションを高速でクリアする為に【残響アグロ】を握り、初手が悪ければ即降参」といったゲームにならない行為すら多発。
統計でも「4ターン目までに決着したゲーム数が倍増する」というとんでもない数字が出ることに。
これにより2024年10月23日付けでアリーナスタンダードBO1で禁止、およびアルケミーで再調整を前提とした一時停止となった。
その後アルケミーでは、同年11月13日に「(1)支払った場合にのみコピーする」と追加コストが課される再調整がなされた上で解禁された。
入れ替わりに《巨怪の怒り》は手の施しようがないと禁止された。
変異の力線/Leyline of Mutation (2)(緑)(緑)
エンチャント
変異の力線があなたのゲーム開始時の手札にあるなら、これが戦場に出ている状態でゲームを開始してもよい。
あなたが唱える呪文のマナ・コストを支払うのではなく、(白)(青)(黒)(赤)(緑)を支払ってもよい。
「ダスクモーン:戦慄の館(DSK)」で登場した4代目緑の力線。効果は全ての呪文を5色5マナで唱えられるようにする。
かつてモダンで使われた《太陽の拳》と同じテキストを持つ力線。5色5マナさえ払えればエムラクールだろうが軽く唱えられるようになる。
《変貌の力線》と同じくこの手の効果を持つ他のカードと違ってコストがかからないため、本命の大型呪文を唱えるまでの隙を減らせるのが強力。
マナ加速を挟むタイミングも捻出しやすく、【アグロ】に咎められにくくなることは大きな利点と言える。
問題は0ターン目に出せなかった場合。「緑ダブルシンボル4マナ」を要求してくるため、5色揃わないと使えない能力の相性が尋常じゃなく悪い。
その上出たターン何もしない性質が大きく響く。0ターン目に出せなければ逆に高速環境に対して滅茶苦茶弱くなる。
同じ能力を持った《太陽の拳》や《永遠の大魔道師、ジョダー》の方が安定性と汎用性は上がるので、かなりロマン寄りのカードと言えるだろう。
なお《限りないもの、モロフォン》が出ていると、指定したクリーチャー・タイプのカードを0マナで唱え放題になる。
現在ではほとんどこのコンボのために使われる。
随分と変なカードになってしまったが、最近は《忍耐》など緑のピッチスペルが強いことや《豊穣の力線》がやりすぎたことの反動なのかもしれない。
力線の斧/Leyline Axe (4)
アーティファクト — 装備品
このカードがあなたのゲーム開始時の手札にあるなら、これが戦場に出ている状態でゲームを開始してもよい。
装備しているクリーチャーは+1/+1の修整を受け、二段攻撃とトランプルを持つ。
装備(3)((3):あなたがコントロールしているクリーチャー1体を対象とする。これをそれにつける。装備はソーサリーとしてのみ行う。)
「ファウンデーション(FND)」で登場したまさかのアーティファクトの力線。効果は+1/+1修正と二段攻撃&トランプルを付与する装備品。
力線の性質をエンチャント以外に持たせた期待の新星。
通常装備品は「出す」「装備する」の2回でコストを支払わなければならないが、これは力線効果で0ターン目に出せれば「装備する」の1回だけでOK。
他の力線と異なり0ターン目から効果を発揮してくれるわけではないものの、3ターン目にこの水準の強化ができるのは非常に強力。
登場当時のスタンダードでも【白青ビートダウン】などで試されている。
余談
ley lineとは「古代の遺跡には直線的に並ぶよう建造されたものがある」という仮説、およびそれが描く直線のこと。
たびたびオカルト界隈でパワースポットとして話題になる。
日本のオカルトだと「龍脈」などのイメージが分かりやすいイメージかもしれない。
つまり最初からそういう奇妙な力を持つ場所で戦うので、そのパワースポットから利潤を得られるというイメージ。
ストーリー上ではニッサ・レヴェインがこの力線の専門家として登場している他たびたびシナリオのメインに据えられる。
たとえば「戦乱のゼンディカー・ブロック」のストーリーでは、エルドラージの封印のためにゼンディカーの力線を利用してマナを大量に汲み出した。
力線の亜種として、初手にあるときに手札から見せることで能力を発揮するカードが存在する。
その中でも有名なものが、「新たなるファイレクシア」に登場した「大長」というサイクル。
Type0の0ターンキル議論が好きな人には、《ドロスの大長》という名前に聞き覚えがあるかもしれない。
どれも重いクリーチャーかつ素出ししても弱いのだが、初手に見せた際に様々な能力を発揮する。
そして5枚すべてが様々なデッキにおいて真面目な用途で用いられた。
0マナで動けるというのはそれだけヤバいのである。
力線は主にその効果が注目されるのがほとんどだが、「0ターン目にエンチャントを展開できる」という点に着目される場合がある。
たとえば緑単信心で使われた《豊穣の力線》のケースだが、これは「ゲーム開始時に0マナで既に信心を2つ得ている」という点も強力だった。
現在でも《ギルドパクトの力線》がその用途で用いられている。
さらにネタデッキの域を出ないが、【レイラインズ】というデッキがエターナルに存在する。
デッキに大量の力線を投入し、0ターン目にバラ撒いた後に《オパール色の輝き》でクリーチャー化することで殴り倒すという動きをする。
エンチャントの数だけ白マナを出せる土地《セラの聖域》と合わせると1ターンキルも可能なネタデッキである。
ただ勝ち筋である《セラの聖域》《オパール色の輝き》の2枚をほぼ初手に求められる上に、これらのカードには亜種がほぼ存在しない。
これに加えて力線も引かなければならないし、しかもデッキは全体的に重くなりがち。
そして使用できる環境はレガシーかヴィンテージ。つまり初手が理想的でなければ間違いなく負ける。
そもそも初手7枚が限定される都合上カウンターを握れないので、《オパール色の輝き》だけ狙って対処というか《意志の力》されれば絶対負けてしまう。
一応【白単エルドラージ】とか【赤単プリズン】とか諦めて1キル喰らうデッキもなくはない。
ただ、遊戯王のテーマデッキばりに《○○の力線》という似たような名前ががずらずらと並ぶ異様なデッキリストは一見の価値あり。
なお《不同の力線》だけは効果とデッキの性質の関係上まずハブられる。
最近では《不同の力線》を採用せずに60枚デッキを組めるようになったが、それ以前の場合はその採用枚数もデッキリストの見どころだった。
4枚投入が基本となる上にレアリティがレアなので、実用的な力線はどうしても値段が高くなりやすい。
かつてはこれが参入の障壁になることもしばしばあった。
現在では高い力線も500円もせずに買えるのだが、《虚空の力線》はモダン制定前は《血染めの月》よりも高いのが当然だった。
追記と余談の集まるところ。
- レイラインズ みたいなデッキが組めるのはMtGならではって感じで好き -- 名無しさん (2024-12-04 17:42:47)
- 「7ナメクジ!!!!!」「なんの《不同の力線》!!!!」「な…力線だと!? じゃぁこのナメクジは使えない!!」 -- 名無しさん (2024-12-04 18:22:50)
- 基本的にアドを取ったらアカンと思う。虚空の力線はほんとバランスいいな -- 名無しさん (2024-12-04 20:30:29)
- 虚空の完成度の高さゆえに後続が作られないというのは良いことなのか悪いことなのか -- 名無しさん (2024-12-04 23:02:08)
- 今となってはたぶん悪い 誰だって新しい玩具は欲しいのに、黒ちゃんだけいつもいつも前に良いやつ買ってあげたでしょって言われていつまでも新しいのを買ってもらえない -- 名無しさん (2024-12-06 19:47:45)
- 力線上のギルド門 -- 名無しさん (2024-12-06 21:30:12)
- 2024-12-06 20:13:37のコメントを相談所に報告。 -- 名無しさん (2024-12-06 23:29:33)
- レイラインズとかいうお馬鹿デッキすき -- 名無しさん (2024-12-07 11:45:14)
- hiicさんの意見ですが、そもそも実戦をまったく想定できていないというか、MTGをまともにやっていたら思い付かないシチュエーションなんですよ。1マナの圧服とかならあなたの理論は成り立ちますが、4マナかつ単体で影響もなければ爆発力もないカードを素打ちして「ブラフ」って。 -- 名無しさん (2024-12-09 03:14:14)
- スタンしか触ってないので無知だとは思うけど、少なくともスタンならパーミッションとでもリソース削り合いになる場面はあるし(それが前提として有り得ないということ?)、長期戦でカツカツな時「ここでこのクリーチャーさえ通せれば」という状況は普通に想像できる。 というか、ブラフ/本命という基準「ではない」(無視されても本命を打ち消しから守れるのだから)と言ってるんですけども -- 名無しさん (2024-12-09 05:27:31)
- 「素出しに堪えない」を否定する気は記述した通り全く無いので、拘りたいわけではないですが、力線全般そう(と冒頭から言われている)ですし、後から出す意味が殊更無い的なニュアンスで特別叩かれる必要があるのか?というのが主張で、とりあえず他の部分も含めて全消しされる謂れはないかと思いますが。 -- 名無しさん (2024-12-09 05:36:44)
- モダンやってないから昔の虚空は(昔の)血染めの月より高いと言われてもピンとこない いくらぐらいだったんだろう -- 名無しさん (2024-12-09 10:08:56)
- 素出しでもある程度仕事してくれるよう、「〜が戦場に出た時、それがあなたの手札からマナ・コストを支払う形で唱えられているのならば〜」みたいな効果を追加すればバランスを取りやすくなるんじゃないかと思ったけど、それだともう力線とは別物のカードになりそう -- 名無しさん (2024-12-11 10:06:31)
- 報告されていたコメントを削除しました -- 名無しさん (2024-12-18 09:47:00)
最終更新:2025年01月18日 14:21