デッキ破壊(MtG)

登録日:2021/09/13 Mon 05:57:18
更新日:2025/11/11 Tue 16:16:11
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本項目では『Magic the Gathering』におけるデッキ破壊について解説する。
TCGの用語としてのデッキ破壊は「デッキ破壊(TCG)」を参照。

概要

MtGにおいてはゲーム中におけるデッキ(山札)はライブラリーと呼称し、ルール用語ではなく俗語としても明確に区別される*1
そのためMtG内では、他TCG(特に遊戯王)から移ってきたプレイヤーでもない限り「デッキ破壊」という呼称を使うことはほぼない。特にMTGにどっぷり漬かっている人はまず使わない。
では何と呼ぶかといえば、「ライブラリー破壊」「ライブラリーアウト」「LO」と呼ぶ。さらに基本セット2021(2020年夏)からはルール用語として「切削(mill)」が定義されたため、「切削」「ライブラリー切削」「ミル」「削る」などと呼ぶことも増えてきた。
なんて呼ぶのかはそのコミュニティの空気に合わせて自由にすればいいだろうし、「デッキ破壊」と呼ぶのももちろん自由だが、
本項目名の「デッキ破壊」はあまり一般的ではない(なかった)ということだけ覚えておいてほしい。

MTGではライブラリーは記憶や頭脳、心に例えられることが多く、ライブラリー破壊はこれを汚染、改竄、切除するイメージのカード名やイラストがあてがわれる(例:《心の傷跡》《正気破砕》《頭蓋の摘出》《記憶殺し》など)。
色の役割(カラーパイ)の中で「勝つためのライブラリー破壊」を行うのは、「妨害のためのライブラリー破壊」を行うのは(初期は青)の役割となっている。
ラヴニカ次元のギルドで青黒の両色を持つギルドであるディミーア家は戦略的にライブラリーの切削を得意としている他、
青黒が組むとライブラリー切削の能力を持つことは珍しくない(「神々の軍勢」のフィナックス、「ゼンディカーの夜明け」のならず者など)。

ライブラリー枚数がゼロになったことによる敗北*2はライブラリーアウト(LO)と呼ばれるため、それによる勝利を目的とするデッキはそのまま「LO」と呼称されることも多い(例:青黒LO)。
しかし構築においてはデッキの下限枚数が60枚(初期手札が7枚なので53枚スタート)と、ライフの20点に対して妙に多いため、他TCGの多くと比べると勝利までの時間や手間がかかる傾向にある。ボードアドバンテージも稼げないどころか、中途半端に削るとむしろ相手に墓地リソースを与えるという利敵行為になってしまう。

とはいえMtGの場合、ビートダウン特殊勝利(フォーマットによっては更にバーンも)などと並ぶ歴とした勝ち筋に入るほどその手段は豊富なため、差し引きの手間はどっこいかもしれないが。
MTGのライブラリーアウト戦略は他TCGに比べると割と独特の立ち位置を占めている。
そもそもLOを勝ち手段に据える理由は、他TCGでデッキ破壊戦略を取る理由である「かっこいいから」「このカードを使いたいから」「周りが組んでいないから」「立派な戦術のひとつだから」ではなく、「相手のライフを攻めるよりも効率がいい」「デッキ構築に無理が生じない」「即死コンボが偶然LOだった」といった極めて合理的なもの。
バーンや即死コンボはもちろんのこと、無限ターンも特殊勝利もLOも毒殺も、MTGではごく平凡な勝ち手段のひとつとしてみなされる*3
環境次第では「ライフの代わりにライブラリーを攻めるデッキ(旧スタンダードのターボフォグやミルストーリー、モダンの青黒LOなど)」「即死コンボの〆の手段がライブラリーアウトというデッキ(モマやヘルムヴォイド、ストームなど)」に加え、
「基本はライフやリソース勝負による勝利を狙うが、長丁場になった際にライブラリー狙いに切り替えるデッキ」という他TCGではほぼ見られない戦略がいまだに現役(旧スタンダードの青白コンや鋭感コン、青黒ローグなど)。

デッキ破壊も立派な戦術のひとつ あなたも始めてみませんか?」なんてMTGプレイヤーに言おうものなら、「明日またここに来てください。本物のLOを教えてあげますよ」と言われて後述の多彩なLOデッキを見せられかねない。
現在のMTGではそうでもないかもしれないが、タルキール・ブロックの頃まではスタンダードの環境内に1~3種類LOデッキがあるなんてまったく珍しいことではなかった*4
少なくともターボフォグやヘルムヴォイド程度でドヤると「百姓貴族」に出てくるときの荒川弘のような目で見られる。そういう大らかというかシビアというか、「そんなことで自慢しとらんと、互いに無法なことやって殴り合おうや」という要素が色濃い文化のゲームなのである。
これはネクサスや鋭感コン、青黒ローグがメタ内に存在していた時代のスタンダードを経験しているプレイヤーならなんとなく分かるのではないだろうか。

といっても結局のところ環境次第。
現在のスタンダードではカードの性能がインフレしたので「殴った方が早い」という結論が出やすく、ライブラリーをわざわざ攻める合理性に欠け、あまり見ることはなくなった。
そもそもライブラリーを攻めるカードは応用性がないことも多く、デッキが成立するほどの質・量に恵まれないと単に枠をつぶすだけだと酷評されることも多い。青黒の愛好家を中心に批判的な声が上がることもしばしば。
つまり熱心な愛好家こそいるが、別段人気というわけではない。「戦術のひとつ!(単なるファンデッキ)」となるゲームよりは全然マシな方だが。

さらに開発部のデザイン的にもあんまりよろしいものとはされていないようで、特にターボフォグやライブラリーアウトが暴れそうな環境ではそれをとがめるためのカードが必ず印刷される。
実際に《乱撃斬》や《引き裂かれし永劫、エムラクール》がこれらのデッキを否定するテキストを持たされ、これらのデッキをメタからはじき出してしまった。
この安全弁としてのカードは、MTGのデザイン論を語る際によく用いられる。

LO愛好家のプレインズウォーカーとしてはジェイスとアショクが代表的。
特に《悪夢の織り手、アショク》は当時のスタンダードでもライブラリーアウト狙いにシフトすることがあった。
神ジェイスは「相手は死ぬ」って書いてあるテキストが偶然LOってだけだもんねぇ
LO愛好家っていうとなんか別の意味に見えるが、実際に例の雑誌の表紙風のパロディ絵とかも存在する。


デッキタイプ

ライブラリーアウトをメインの勝ち筋とするデッキを例示する。これらはおおむね
  1. 「ガチガチにコントロールを固め、パーマネントの能力や既定のドローなどで毎ターン削っていく」
  2. 「即死コンボのフィニッシャーがライブラリーを攻めるカード」
  3. 「長丁場になった際にライブラリーを攻めるプランに切り替える」
  4. 「がちがちなロックで自分の敗北を完全に防ぎ、対戦相手を規定ドローだけで倒す」
  5. 「自分のライブラリーを削っての特殊勝利」
の5つに分かれる。最後のはライブラリーアウトと呼ぶにはあまりふさわしくないのだが、「デッキ破壊にはこんなのもあるんだ!」と語りたくなるんだ、許してくれるね。
以降は便宜上の分類を行うが、複数にまたがる場合もあるし人によっては相応しくないと判断する人もいるので、話半分に読んでほしい。

ライブラリー破壊を勝ち筋とするコントロールデッキの典型的構造であり、「環境の中で活躍したLOデッキ」といえば真っ先に名前が出てくるほど有名なもの。
クリーチャーを出さないため全体除去が使いやすく、コントロールを行いながら《石臼》を使ってゆっくりとライブラリー破壊を行う。
ノンクリーチャーにすることで対戦相手の除去を腐らせ、対戦相手の展開したクリーチャーを《物語の円》で少しずつ防いでいき、その《物語の円》で防ぎきれなくなったところで《神の怒り》を使ってリソース勝負を制するというもの。
さらにサイドボードからはミルストーリーセットを全部抜いてビートダウンプランに切り替えることもでき、対戦相手は「腐るかもしれない除去を残しておくか、除去を切って殴り殺されるリスクを取るか」という厳しい選択を迫られるというもの。
当時は青全盛期、肝心のパーミッションに弱かったことが災いして、知名度に対して結果はあまり残せなかった。

  • ターボフォグ 1、3
お互いに1枚追加ドローが発生する《吠えたける鉱山》を軸にしたデッキで、鉱山がリソースの補充と対戦相手のライブラリー破壊を兼ねている。
ただし鉱山の追加ドローはそのままでは単なる利敵行為になってしまうため、対戦相手の戦略を妨害する必要が出てくる。この代表例がクリーチャーからの攻撃を1ターンシャットアウトする《濃霧》、つまりフォグである。
これによって対戦相手は、使いきれないリソースを抱えながらLO死に近づいていくというわけ。かなり古くからある戦術であり、かつてはその亜種ともども結構頻繁に見かけた戦術。
大会ではあまりいい結果を残さないため、MTG wikiなどの解説サイトでは特筆に値しないとして紹介されず、時代の中にうずもれていくという悲しいやつ。
そしてタルキール覇王譚の頃にはそもそも鉱山互換のカード自体が収録されなくなってすっかり見なくなった。正直あんまり楽しいデッキじゃないのでこんな扱いでいいと思う
パウパーでは《ジェイスの消去》によってLOまでの速度を上げた型があり、2010年ごろに話題になった。コモンしかない環境でもジェイスが強いんだぜ!

  • 【青黒ライブラリーアウト(青黒LO)】 1
シンプルなライブラリー破壊呪文《不可思の一瞥》に始まり、《面晶体のカニ》《遺跡ガニ》からのフェッチランド連打、
《幽霊街》+《書庫の罠》による大量切削等々、ありとあらゆる手段を以て全身全霊で相手のライブラリーを削りきる非常に尖ったデッキ。即死系コンボデッキや重めのコントロールデッキではないLO特化型という点でLOデッキ界でも異彩を放つ。
コントロール要素も持つがそれすら《外科的摘出》等の墓地のカードピンポイント指定によるキーカード破壊、墓地枚数を参照する《湖での水難》による打消しor破壊、《墓所への乱入》の墓地除外&大量ライフゲインといったライブラリー破壊を前提としたものが使われている。
「デッキ破壊に全てを捧げる姿はもはやバーンデッキのそれ」、「初見殺し性能においては最強クラス」等と評されるほど。

ちなみに原型は「アラーラの断片~ゼンディカー」の頃のスタンダードに存在した青黒LOデッキ。《面晶体のカニ》《書庫の罠》《精神の葬送》《秘本掃き》《テレミンの演技》といった軸のずれたカードで対戦相手のライブラリーを高速で削っていくというもの。
環境内でも結構な存在感を発揮していたデッキで、警戒のために61~63枚にしたデッキもたびたび見かけたものだが、「エルドラージ覚醒」でライブラリー修復能力を持つ伝説のエルドラージが登場したことでメタからはじき出されてしまった。
なお「部族モダン」のような特殊なルールだとカニは結構なやり手。カニ8枚体制でLOができるぞ。昔のZooの猫みたいで心和む話じゃないか。

  • 【青白コントロール】 1、3
時代によりけりだが、青白コントロールは長丁場になった際にライブラリーを狙う方向にシフトしてくることがある。代表的なものをいくつか挙げてみよう。
《精神を刻む者、ジェイス》をフィニッシャーに据えた青系のデッキ。神ジェイスは奥義がLOであり、ライフを攻めきれないと判断した場合は守勢を固めて神ジェイスを守って奥義につなぐ。
ラヴニカへの回帰ブロック時代の青白コン。《記憶の熟達者、ジェイス》《狂乱病の砂》などをフィニッシュ手段に据えることで《スフィンクスの啓示》《不死の霊薬》によるライフ回復プランや互いにグダった場合のプランBとした。
ラヴニカのギルドブロック時代、《ドビンの鋭感》という回復とドローを同時に行うカードを軸にした耐久戦術。これに《ドミナリアの英雄、テフェリー》などが入ると、テフェリーが自身のLOを防ぐため対戦相手のLO死(=投了)が見えてくる。
ミルストーリーとは思想がよく似ている。ミルストーリーが最初から腰を据えてライブラリーを削ってくるなら、こちらは別の手段を取りつつ必要になったらLOに切り替えるというもの。

  • 【青黒ローグ】 3
「対戦相手の墓地が肥えていると強化されるカード」を中心にした、コントロール寄りライブラリーアウトとクロックパーミッションの二段構えデッキ。
《盗賊ギルドの処罰者》のように、対戦相手の墓地を肥やしつつ、対戦相手の墓地の枚数が多いと強化されるという2つの役割を遂行できるカードを複数枚携えたことで成立し、ゼンディカーの夜明け(ZNR)期のスタンダードで活躍した。
クリーチャー除去やライフ回復でなんとか耐えることに成功しても、ライブラリーを狙うプランに切り替えられるという多角的な柔軟さが売り。

LOコンボの代表格。青マナを複数枚生み出せる《トレイリアのアカデミー》を何度も再利用して大量の青マナを生み出し、X=60くらいの《天才のひらめき》を相手に撃って勝利。
《天才のひらめき》が自身の息切れ防止のドローソースとフィニッシュ手段を兼ねているというかなり合理的な戦略。
ちなみに「バベルでモマをメタった」という都市伝説があるが、息切れ対策も兼ねて採用されている《火の玉》をX=20で撃てば単なるカモなので信憑性は非常に怪しい。
もっともMagic Onlineのキューブ・ドラフトではリミテッド形式でモマのパーツが流れてくる。そのためモマを組むプレイヤーも多く、それに対して基本土地を各500枚ずつ積んで投了に追い込むという荒技はあった模様。
大半のプレイヤー、特にMO廃人は絶対に忘れているルールで都市伝説を実現して勝利する姿は、当時大いに話題となった。

基本的には10ストームで済む《苦悶の触手》でライフを吸いきるのだが、「相手が無限ライフだと勝てなくなる」「黒をタッチしなければならない」という点が少し使いづらい。
かつてはプランBとして、ストームがもう少し必要になるが青単でコンボが可能で安定感がある《思考停止》でライブラリーを切削して勝利するという手段が好まれた。
ちなみに《引き裂かれし永劫、エムラクール》が登場した現在ではほぼ使われない。ライブラリーを修復されてしまうからだ。自分に打つことを前提に使う人はいるようだが。

デッキトップを常に確認し、切削でお互いのドローするカードをコントロールし、対戦相手を徹底的に事故らせていくというデッキ。
ロック形式の「ライブラリー切削」という戦術の一つの到達点だが、《悪ふざけ》をはじめとしたランタンミルに何かうらみでもあるのかと言うほどひどいメタカードが印刷されたことや、
カード自体がインフレしてしまい序盤の鍔迫り合いを制せなくなって命脈を断たれた。
ちなみに持ち時間などの関係からLO死を狙うことは案外少なく、「対戦相手に投了を迫る」「《ギラプールの格子》などでダメージを稼ぐ」などの手段が好まれる。

  • 【ペインターグラインドストーン】 2
《絵描きの召使い》で相手のデッキのカード全てに特定の色を付与した後に「同じ色のカードが落ち続ける限り切削」の《丸砥石》でライブラリーをすべて吹き飛ばす。
通常《丸砥石》は単色相手だったとしても土地(無色のカード)を切削した時点で止まるのだが、《絵描きの召使い》で土地にも色が付与されているので全部吹き飛ぶ。
コンボパーツが軽くて無色なのでお手軽に使用できるのが強みで、この手のデッキとしては珍しく赤単や赤白といった青黒が絡まないデッキが結果を出している。
また、コンボパーツが少ない上にどちらもアーティファクトということから他の即死コンボとのハイブリッドも可能。《悟りの教示者》あたりでパーツをサーチできるヘルムピースあたりと組むことが多い。

  • 【ヘルムヴォイド】【ヘルムピース】 2
こちらも2枚コンボで相手のデッキを吹っ飛ばすコンボデッキ。《Helm of Obedience》+《虚空の力線》または《安らかなる眠り》を使用する。単に「ヘルム」とも。
《Helm of Obedience》は墓地にクリーチャーor特定枚数カードが落ちるまで切削する効果なのだが、《虚空の力線》か《安らかなる眠り》があるとカードが墓地に落ちなくなるため、「墓地に落ちた」という判定自体がなくなり相手のライブラリーが全て追放されるというバグみたいな挙動。
《虚空の力線》・《安らかなる眠り》が単純に墓地対策カードとして強力で、コンボパーツが対戦相手への妨害手段を兼ねるためコンボがなくとも戦えるのが強み。
コンボパーツが少ないので墓地対策ついでに採用されることもあり、他のLO系デッキとハイブリットしたデッキも存在する。

  • 【エターナルウインド】 2
エンチャントレスデッキのひとつ、エンチャントレスによるマナと手札の増幅システムで《気流の言葉》を駆動して相手のパーマネントを全て戻してしまう地雷デッキ。
最終的に無限マナが出るので、これを《生ける願い/Living Wish》経由で呼び出した《ラクァタス大使/Ambassador Laquatus》に流し込んで相手のライブラリーを消し去るのをトドメ手段にしていた。

  • スフィンクスの後見 1、2
自分が1枚ドローするたびに対戦相手のライブラリーを2枚切削し、それが共通の色を持つカードの場合手順を繰り返す《スフィンクスの後見》というカードを軸にしたデッキ。
元々はリミテッドでの強さを見込まれたものだったが、構築でも当時増えてきた赤の「手札を捨てる代わりに軽いコストで複数枚ドローができる」というカードを組み合わせ、
《苦しめる声》を「たった2マナで4~8枚のカードを削り、かつ自分の手札が潤う」というカードにしてしまうという【青赤後見】が成立した。

2025年に入って登場した、切削枚数を増やす《水のクリスタル》との相性は抜群で、切削した2+4枚のうち2枚が同じ色だったら処理を繰り返す。土地53枚のようなよほど変なデッキでもない限りほぼLO死が約束される即死コンボ。
FFコラボで入ったプレイヤーが、LOや即死コンボの物珍しさもあってパイオニアなんかで愛用しているらしい。

  • カウンターポスト 4
徹底的に耐え抜く「守」のデッキ。自分から攻めると対戦相手に除去を切られてしまいリソース損を起こすので徹底的に防御に回るというもの。
そして《フェルドンの杖》による自身のライブラリーアウト対策を行うことで対戦相手を先にLOに追い込む。
環境の隙間を縫って誕生し、その徹底的な防御っぷりから神話化した。現在ではマナー違反や非紳士的行為に該当しそうな武勇伝が多く、時代のおおらかさを感じさせる。

  • ドロー・ゴー 4
敗着につながりそうな部分だけを《対抗呪文》とその亜種で徹底的に弾いて戦う、現代のTCGでは死に絶えて久しい「パーミッション」というアーキタイプのデッキ。
その中でも「ドロー・ゴー」は、クリーチャーやダメージソースを一切採用せずにひたすら耐えて規定ドローだけで相手を倒すという非常に極端な構築のものを指す場合がある*5
ちなみにクリーチャーを採用せずにLO死を狙うのは、単に陰険陰湿なのではなく「対戦相手の除去をはじめとしたカードを腐らせ、マストカウンターとなる呪文を減らすため」という非常に合理的な理由がある。

  • ランドスティル 4
レガシー版ドロー・ゴー。《行き詰まり》というカードを使って対戦相手の行動を縛り上げながらリソースを稼ぎ、規定ドローで相手のLO死を狙うというドロー・ゴーの最終進化系。
ちなみにたいていの場合はLO死する前に対戦相手が投了したり、試合時間を全部使いきって判定勝ちに持ち込んだりという遅延行為スレスレの方法で勝利をもぎ取る。
ただしこれらはLO死というルールがあるからこそ相手が投了するため、そういう意味では立派なLOデッキなのだ。いいのかこれで。

  • 【ステイシス】 4
アンタップを不能にする《停滞》を軸にしたロックデッキ。自分から行動を起こさないタイプは対戦相手のLO死を狙う。
特にクロノステイシスのえげつなさはすさまじく、通称「ずっとお前のターン」。
ほぼすべてのカードをタップインにする《宿命》で相手の動きを封じ込め、《停滞》は自分のターンの最初に(青)を支払わなければ墓地送りになってしまうが、それを《時エイトグ》の「自分の次のターンを飛ばす」能力を起動して回避*6
相手に使えないターンを延々押し付け最終的にライブラリーアウトさせるという、他のTCGではまず見ない、見たとしても即座にルールレベルでメスが入るレベルの嫌がらせデッキ。

  • The Spy】【Doomsday Combo】【オラクルコンボ】 5
自分のライブラリーをすべてぶっ壊して、《研究室の偏執狂》の能力である「自分がライブラリアウトすると勝利」や《タッサの神託者》(通称オラクル)の能力「戦場に出たときに青の信心(自分のコントロールするパーマネントの有色マナコストの合計)だけライブラリーを見て、この時ライブラリー内すべてのカードを見ることができれば勝利」で勝ちを狙うという自己デッキ破壊デッキ。セルフライブラリーアウト(セルフLO)とも
これ以外にも複数の勝ち手段を備えているのだが、サルベージもリアニメイトもついでへ押しやり、ひたすら自分のライブラリーを破壊するというのは変態的な勝ち方である。
《タッサの神託者》は信心が十分ならデッキを引き切る必要がないのもポイントで、実際、タッサの神託者の初出となるテーロス還魂記(THB)期のスタンダードには既に 青単信心 の1種として登場している。
同期の《ニクスの睡蓮》から《通路の監視者》や《ビヒモスを招く者、キオーラ》などでアンタップしながらマナを出し、《啓示の終焉》や《老いたる者、ガドウィック》などでの大量ドローでライブラリーを削った後、タッサの神託者の先述した戦場に出た時の能力で特殊勝利するデッキだが、回り出してからのそのソリティアぶりは紛う事無き変態
エターナル環境では上記ヘルムピースとハイブリッドし、自分のデッキも相手のデッキもLOさせることを狙うデッキ破壊よくばりセットのような構築も存在している。


この他にも《無限の苦悩》《秘密の王、ザデック》《正気の削り落とし》《ジェイスの消去》《高まる混乱》【ブラッドクランク】【みのむしぶらりんしゃん】【歎願者バベル】【奇魔ストーム】【モマベル】など、カジュアルからガチに至るまでLOと言えるような言えないようなデッキは枚挙にいとまがなかった。
ただしあまりウケがいいとも言えないようで、対戦相手がLOを起こすまで切削して攻めるデッキは青黒ローグを最後に「単なる地雷」という立ち位置になっている。
ライブラリーを攻める「嚥下」というキーワード能力は、そのあまりの弱さからたいへん不評だったことでも知られる。

ちなみにリミテッドではライブラリーの下限枚数が40枚、さらにその遊び方の都合上1枚でも下限枚数をオーバーするとデッキの質が極めて下がるという性質から、
ライブラリーアウト系のカードの強さは構築の比ではない。中にはここから研究が始まったことでTier1に躍り出たデッキも存在する。
再度言うがMTGにおいては「デッキ破壊」とは「限られたルールの中で勝利条件を満たしただけ」の行為。
別にギャラリーは拍手しないし、顔を真っ赤にして剣の先から氷を出さないようにしよう。



個別カード

「勝つためのデッキ破壊」系

  • 《石臼/Millstone》
MtG黎明期から存在する、シンプルで癖がない効果の継続してライブラリー破壊を行うアーティファクト。
前述のミルストーリーではフィニッシャーを務める。ルール用語の切削(mill)はこいつが語源。
構築で活躍したものにはコンボパーツになった《丸砥石》や、正統派フィニッシャーになった《狂乱病の砂》などがある。

  • 《不可思の一瞥/Glimpse the Unthinkable》
2マナで10枚ライブラリー破壊するソーサリー。相手の山札枚数がライフも同然である青黒ライブラリーではまさしくバーンカードのような役割を果たす。ライブラリー破壊以外に効果を持たないシンプルなカードだが、4~5枚撃ち込めば相手が死ぬという効率は、赤の火力と比べても決して低効率ではないことが見て取れよう。

  • 《書庫の罠/Archive Trap》
5マナという重めのコストでライブラリーを13枚削るが、対戦相手がサーチ(山札からカードを探すこと)をするとなんとタダで唱えることができる。
これ1枚ではあまり効果がないが、連発したり下記の《消えないこだま》と組み合わせると効果抜群。
下環境では、というかこのカードが存在していたスタンダードがそもそもフェッチランドが幅を利かせていることもあり唱える機会が多い。
青黒LO以外にはほぼ採用されないカードということもあり再録回数が少なく、妙に高止まりする傾向にある。

  • 《面晶体のカニ/Hedron Crab》《遺跡ガニ/Ruin Crab》
いずれも土地が1枚出る度に3枚削るカニ。追加のコストなしで継続して使える上、複数体並んだりフェッチランドが絡むとバカにならない勢いで削れていく。
《面晶体~》の方は自分のライブラリーに向けても使えるので、墓地利用デッキでも使われている。《遺跡~》の方は後発で出たリメイクで、自分に対しては使えなくなった一方でタフネスが上がり対象を取らなくなったため純粋なLO目的ではやや強化されている。

みんなのトラウマ。墓地対策を兼用するライブラリー破壊カード。
コンボデッキへの強力な圧力となるが、これ自体は結構重い上に盤面には影響がないため、唱える頃にはどうしようもない状況になってしまうこともあるのが弱点。
リアニメイトデッキが墓地を肥やしたらこだまで持って行かれた。というのはよくある話。
中村修平がFinalsで決めたブラフからの消えないこだまは、「しゃみしゅー(三味線野郎の中村修平)」を象徴するエピソード。

10/10というとんでもないサイズに攻撃するだけで20枚が吹き飛ぶ。しかも追放なので再利用も不可能。
破壊不能を持つため除去にも強く、ライブラリー破壊相手にはブロックも意味をなさない。2回攻撃したらだいたい死ぬ。
相手はライフによる死、LOによる死に加えて「デッキ内容が明らかにされてしまう前に投了」という3つ目の手段を取ることができるという、たいへん温情的(皮肉)なカード。

  • 《思考停止/Brain Freeze》
ストーム付きデッキ破壊。3枚のライブラリー削りをそのターン中に唱えられた呪文の回数分コピーする。
ストームデッキにおける追加の勝ち筋として使われていたが、メタカードが蔓延したせいで姿を消した。

  • 《心の傷跡/Traumatize》
デッキ枚数の半分を切削。
シンプルながらも効果的なライブラリー破壊カードであり、特に遊戯王あたりからMTGに移ってきたプレイヤーには「こ...こんなことが許されていいのか」と驚くカードの代表例。
だが5マナとやや重いくせにボード・アドバンテージが稼げないことに加え、後半になると切削枚数が減ること、何回使ってもライブラリーアウトに追い込めないため、
LO狙いのデッキではほぼ採用されず、もっぱら「自分に向けて撃って墓地肥やし」「他のカードとのコンボを前提に相手に向けて撃つ」「バベル相手に嫌がらせ」などの理由で採用される。

  • 《正気減らし/Fraying Sanity》
ターン終了時にそのターンに墓地へ落ちたカード枚数と同数のカードをデッキ破壊。
ライブラリー破壊カードの効果が単純に2倍になる置き物で、デッキ以外から落ちたカードもカウントするため除去や打消しとも相性が良い。
前述の心の傷跡とは相性がとてもよく、偶数枚のデッキ相手なら即座に0枚に、奇数枚のデッキでも残り1枚まで減らせる。バベルへの対抗策にもちょうど良い。

  • 《しつこい請願者/Persistent Petitioners》
4枚制限を無視して何枚でも入れられるクリーチャーで、1マナ+タップで1枚、アドバイザー4体タップで12枚デッキを削る。
MTGアリーナでは4枚手に入れた時点で無限にデッキに入れられるようになるため、初期のパウパーやシングルトンのイベントでは無数の請願者で構成された請願者バベルが貧乏デッキとして猛威を振るい、同様のイベントにおいては禁止カードとなった。
現在でもヒストリックブロールにおいて切削の効果を倍増させる《文飾衒才のブルバック》を統率者とした請願者デッキがたまに出てくる。

  • 《夢を引き裂く者、アショク/Ashiok, Dream Render》
起動型能力で4枚ライブラリーを削った後墓地を追放するプレインズウォーカー。
そもそも墓地対策が可能な上、「自分のライブラリーを削った後に相手の墓地を追放」という動きもできるのが特徴で、メタカードでありながら他のことができる柔軟性から青のデッキが好んで採用していた。
しかもアンコモンなのでリミテッドでも遭遇しやすく、40枚デッキのリミテッドではきわめて強力。
だが、なまじこのカードが強力すぎた為に後の青黒ローグのキーカードである《湖での水難》*7が見過ごされていた側面もある。

  • 《盗賊ギルドの処罰者/Thieves' Guild Enforcer》《マーフォークの風泥棒/Merfolk Windrobber》《空飛ぶ思考盗み/Soaring Thought-Thief》
青黒ローグの中核となるクリーチャー達。
それぞれ切削能力と、相手の墓地が8枚以上なら強化される能力を持ち、長期戦になれば切削、そうでなければ本来の強化された後の能力で戦えばいい。

  • 《正気破砕/Fractured Sanity》
青青青で14枚切削、1青で4枚切削付きサイクリングというライブラリー破壊特化呪文の一つ。
いずれもシンプルだが単純に削る枚数が多く、切削付きサイクリングにより序盤の安定性も高めつつデッキ破壊も行えるという潤滑油も兼ねた一枚。
後述の《ターシャズ・ヒディアス・ラフター》や《完成化した精神、ジェイス》と合わせて青単色で大量デッキ破壊を狙えるようになったためこれまで青黒中心だったモダンLO界に黒以外を採用するという風を呼び込んだ。

  • 《ターシャズ・ヒディアス・ラフター/Tasha's Hideous Laughter》
マナ総量の合計が20以上になるまでライブラリーを上から追放する。
追放するので墓地利用を許さず、軽いデッキや土地の多いデッキほど削る枚数が増えていく。
モダンLOガチ勢にもなると環境デッキのデッキ全体マナ総量数を覚えて運用しているとか。
これまで主流だった《精神の葬送》とは削る枚数を増やすためのテクが正反対になるため、《精神の葬送》をデッキから追い出してしまった。

  • 《完成化した精神、ジェイス/Jace, the Perfected Mind》
意外にもありそうでなかったライブラリー破壊特化型ジェイス。4マナだが1つはφマナで、初期忠誠度-2&ライフ2と引き換えに3マナで出すことも出来るプレインズウォーカー。
効果は+1で相手クリーチャーのパワーマイナス修正、-2で3枚切削+ドロー、-XでXの3倍を切削。初期忠誠値は3か5なので即X起動で9~15枚吹っ飛ばせる。
プラスで足止めも可能でPWならではの選択肢の多さとφマナによる柔軟性もあり、スタンダードのコントロール系デッキで時間稼ぎ兼アド稼ぎ兼勝ち手段として採用された。
また当時の環境上位に存在した【ドメインランプ】がミラー対策としてデッキ消費が激しい点を突き、サイドから完成ジェイスを仕込んでLOを狙うという採用もあった。
単純にLOカードとしての性能が良く、アド稼ぎにも転用できるのでモダンの青黒LOで採用されている。

  • 《終末の加虐者/Doomsday Excruciator》
黒シンボル6つ、6/6飛行、唱えて場に出したとき全プレイヤーのデッキ6枚を残して残りを追放するという6まみれデーモン。
黒セクスタプルシンボルという異様な出しにくさこそあるが、これを着地させた後に完成ジェイス等でLOを狙うデッキが登場した。
またコンボパーツが少なく本体も6/6飛行で普通に人を殴り倒せるサイズのため、ビートダウンを兼ねつつ(ジェイスと合わせて)軸をずらした勝ち筋として搭載されていることもある。
実際このコンボとビートダウンハイブリットの【ディミーア・デーモン】が世界選手権24で優勝した。

  • 《水のクリスタル》
FFコラボで登場したカード。青の呪文を軽くする能力に加え、「切削」というキーワード処理1回につきその枚数を+4枚させるという能力を持つ。
《心の傷跡》で30枚切削する場合は、それが1回の処理なので34枚。一方《ジェイスの消去》が出ている状態で《苦しめる声》を使えば、本来は1枚切削×2回なので2枚のところが、それぞれ+4枚になるので10枚。
悪用こそ難しいが可能性の広がるカードであり、MTGでもなかなか見なくなってきた「ライブラリーアウトに露骨に関係するカード」ということで割かし人気が高い模様。

  • 《ラクァタス大使/Ambassador Laquatus》
無色3マナで対象のライブラリーを3枚削る。タップ不要。
効率は悪いが無色マナのみでよく、出してすぐ動かせる。60マナ揃えば対象のライブラリーがすぐになくなるコンボデッキ向けのライブラリー破壊。この早さと単純さは意外に代わりになるカードがない。

  • 《地ならし屋/Leveler》
戦場に出るだけでライブラリー全てを追放する最強のデッキ破壊カード。ただし自分のライブラリーを。しかも速攻すら持っていない実質バニラであるため、ただ出しただけでは次のターンに負けてしまう。
まともにクリーチャーとして運用するには多大な工夫が必要なため、デッキを消し飛ばすデメリットを活かす方が有効活用できる。
当時のスタンダードでは《明日の標》で無限ターンに利用され、後々のエターナル環境では《タッサの信託者》などの特殊勝利カードが相棒となった。
《終わりなき囁き》《泥棒の競り》などと組み合わせて対戦相手に無理やり出させてライブラリーアウトをさせるコンボが存在する。

  • 《無理強いた成果》
対戦相手が呪文をプレイするたび、そのプレイヤーが7枚ドローするというデメリットしか書いてないカード。敵に塩のギフトセットを贈るようなものである。
しかも6マナ。自分はドロー不可。とんだクソカードじゃねぇか。
しかし強制で7枚ドローなので、60枚デッキ対戦なら3,4回呪文を唱えたらLO死が見えてくる。遠慮なく食え……
実用的とは到底言えないカードだが、こんな変わり種も存在するのだ。


「妨害のためのデッキ破壊」系

  • 《頭蓋の摘出/Cranial Extraction》、《記憶殺し/Memoricide》、《殺戮遊戯/Slaughter Games》ほか
実は元ネタはジョークカードだったりする。
カード名を指定し、その名前のカードを全て対戦相手のライブラリー・手札・墓地から根こそぎ消してしまう。サイド戦以降に心強いピンポイント対策のデッキ破壊。
1回目の処理の際に相手のライブラリーを覗いて2回目以降の宣言に役立てるのは基本中の基本。この手のカードを4,5回唱えると対戦相手は機能不全を起こすため、これを狙った超陰険な戦略も存在する。
ゆえにこの手の実用的なカードが存在すると、コントロール系のデッキはカードを「散らす」ようになるためデッキリストが長くなる。

なお「メインデッキから入れるとマナー違反」のような議論が存在するのでくれぐれも注意すること。下手をするとこの話題を出すだけで荒らし扱いされることもある。不当な対人メタとかにつながるしね。
プロシーンなら「言う側が甘ったれてる」で終わることだが、別にMTGで遊ぶプレイヤーはプロばかりではないのだ。
ところでそんなトラブルと無縁の遊び方がありましてね、ハイランダー形式で素朴な遊び方ができるとっても楽しいフォーマットでして……

  • 《摘出/Extract》
たった1マナで使えるライブラリー破壊カード。ただし破壊できるのは指定したカード名のカードを1枚だけ。
それでもピンポイント対策としてはそれなりに機能するため、よく使用されていた。

  • 《根絶/Extirpate》《外科的摘出/Surgical Extraction》
1マナで使えるライブラリー破壊。墓地のカードしか指定できないが、その名前のカードを全て対戦相手のライブラリー・手札・墓地から消せる。
《根絶》は「刹那」により妨害手段が限られ、《外科的摘出》はライフ2点の代替コストがある。
ちなみに《根絶》は遊戯王の「巻き戻しマイクラ」のような行為がたびたび問題となった。「刹那」が再録されない理由のひとつ。

  • 《ルートウォーターの泥棒/Rootwater Thief》
攻撃が通るたびに《摘出》。1枚ずつしか消せないとはいえ繰り返し使えば問題ない。カードとしては摘出より先に存在していたりする。
マイク・ロングがデザインしたインビテーショナルカードであり、彼の出した案が割とすんなり通っているが、別途マナがかかる仕様に修正されてカード化された。
ちなみに、このカードをデザインしたマイク・ロングにサインを求めると、テキスト内のマナ・コスト部分を塗りつぶした上でサインしてくれるそうな。
さらなる余談として、マイク・ロング自身がカードイラストに登場していたりもする。…マーフォークに襲われる人間の役で…

相手のライブラリーをすべて破壊し、代わりに手札をライブラリーにするという豪快な奥義(大マイナス能力)を持つ1万円札。
と、これだけだと「勝つためのデッキ破壊」系カードに見えるが、デッキ破壊としての本質はむしろ「妨害のためのデッキ破壊」に分類されるカード。
プラス能力により対戦相手のライブラリーの一番上のカードを確認し、有効牌ならライブラリーの底へ送り、引いても意味のないカードならそのままにする。
対戦相手にしてみれば、毎ターンドローするカードを確認された上でマズイと思われたものは消されてしまうに等しく、不利な状況をひっくり返すのが極めて困難になる。
そのまままごついていればもちろん奥義でライブラリーそのものが消し飛ばされてゲームセット。
おまけに強力なドロー能力とこれ自身を守るための除去能力まで持っている。
あまりにも凶悪なその性能のため、スタンダードで禁止カードとなった。
モダンでもその凶悪な性能を危惧され長い間禁止カードであったが2018/1/19を持って解禁に。
高速化の進んでいたモダン環境に一石を投じるカードとなる。

対策

  • 《ガイアの祝福/Gaea's Blessing》
LOデッキの天敵その1。
普通に使っても墓地のカード3枚をライブラリーに戻して1枚引くと中々便利な能力なのだが、
ライブラリーから直接落ちると 墓地のカード全てをライブラリーに戻す という効果もある。
無論自身もデッキに戻るためこのカードが1枚いるだけでLOという勝ち筋はなくなる。
対策として上述の《頭蓋の摘出》などでゲームから取り除く必要がある。
ライブラリーが勝手に削れまくる【オース】系デッキの自殺回避としてよく併用されていた。
逆に、コントロールしながらこれを撃てば相手のライブラリーだけが削れることになるので、
能動的なライブラリー破壊手段を一切持たずに相手をライブラリーアウトさせて勝つことも出来る。

LOデッキの天敵その2。
15マナという激重コストと引き換えに 出せれば勝てる といっても過言ではないフィニッシャー。
15/15というスペックに出しただけで追加ターン、有色プロテクション、飛行、滅殺6とふざけた能力をゴロゴロ持つ。
もちろんこんなコストを正直に払うようなプレイヤーがいるはずもなく、ウルザランドなどを用いた高速マナ稼ぎや
《実物提示教育》などを使ったコスト踏み倒しによって戦場を荒らしまわっている。

が、LOデッキにとって一番問題なのは 墓地に落ちたら墓地のカード全てをデッキに戻す というとってつけたような効果*8
ガイアの祝福と異なりどこから落ちても問題ないというのがより厄介で、手札から雑に捨てるだけでライブラリーが修復されるのでマジでやってられない
同時に登場した《真実の解体者、コジレック》と《無限に廻るもの、ウラモグ》の残り2柱も同じ能力を持っている。
対策としては「LOを諦める」というのが正道だが、《テレミンの演技》《強硬+突入》《袖の下》などでエムラを奪うというプランがある。
現実的なのかって?……ら、ランタンミルだと《伏魔殿のピュクシス》とか《罠の橋》で対処できるらしいよ!

面白いところではモダン青黒LOが同型対策として採用している場合がある。普通に落ちれば有利を取れるし、《ターシャズ・ヒディアス・ラフター》で追放されたとしても15ものマナ総量により確実にその時点でストップさせられるため非常に刺さりが良い。

  • 《忍耐/Endurance》
LOデッキの天敵その3。
戦場に出た際に プレイヤー1人の墓地のカード全てをライブラリーに戻す 能力を持つ。
その上、瞬速とマナを必要としない想起を持つので奇襲性が非常に強く、おまけに3マナ3/4到達と出た後の戦闘能力も高いので 対策能力持ちのくせにメイン採用に耐え得るボディを誇る
モダン以下に直接カードをぶち込むモダンホライゾン2が送り出したLO・墓地対策カードだけあってメタ能力は上記2枚を凌駕する。
このカードの存在が素朴な墓地利用デッキを完全に放逐してしまい、モダンの景色を完全に塗り替えてしまった。
発掘持ちのカードが「発掘4の黒単から発掘3で黒緑の方が強い」という評価に変わったりなど、影に日向にモダンの景色を永久に変えてしまったのである。

250枚前後のカードで構成されるデッキ。60枚削りきるのですら大変なのに、その4倍以上なんてやってられるか!
…と思いきや自分で自分に《心の傷跡》(ライブラリーの枚数を半分にする、豪快極まるデッキ破壊カード)を打ち込んで《サイカトグ》で殴るなんてこともしてくる*9
…もっとも、それでもまだ100枚前後のカードが残るが。
デッキ破壊対策として作られたわけではないが、構造上デッキ破壊デッキに突き刺さるデッキ。ラヴニカのギルド期のMTGAのパウパーイベントでは、LO戦略が猛威を振るった関係でバベル同士のミラーマッチというクソみたいな光景がたびたび見られ、《しつこい歎願者》が禁止カードになった。残念でもないし当たり前である。

  • 探査/Delve、脱出/Escape
墓地にあるカードを追放することで利潤を得られるキーワード能力。
探査は墓地のカード1枚につき1マナを支払い、脱出は墓地から唱えるためのコストとして墓地のカードを何枚か追放するというもの。
《宝船の巡行》《時を超えた探索》あたりは当時の青黒LOにとっては利敵行為もいいところだったし、
クリーチャーは脱出で出る方が強化されるのでライブラリーアウトは強力クリーチャーを早期に出す友情コンボになりかねない。
任意の墓地のカードを追放できるため、墓地の枚数や種類を参照するタイプの能力にも強い。
自然の怒りのタイタン、ウーロ》は禁止されるほどに暴れまわった他、本来は脱出を含む墓地対策カードである《塵へのしがみつき》や墓地肥やしギミックをがないと使いづらい《アゴナスの雄牛》《灰のフェニックス》が【青黒ローグ】対策として採用されるようになった。


余談・「直接ライブラリーを狙って削るカード」

かつて《ディミーアの脳外科医、シアクー》というカードは「いずれかのライブラリー」を直接対象に取ってカードを追放する能力を持っていた。
これはテキスト欄の関係によって生まれたものだが、実に奇妙な挙動だった。たとえば《象牙の仮面》でプレイヤーが対象に取られないようにしても、ライブラリーが対象なので問題なく機能したのだ。
現在では「プレイヤー1人」を対象にしてライブラリーを追放するようになっているため、実に凡庸なカードに成り果てた。



ひとりならぬアニヲタが、時間を無駄にする追記修正によって喪失感に追いやられた。

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最終更新:2025年11月11日 16:16

*1 遊戯王をはじめ一部の他TCGの場合は「デッキ」と言うので、その流れでMTGでも「デッキ」と言ってしまう人も多いしそれで十分通じる。そのため「MTGでデッキと呼ばないというのは江戸しぐさだ」と思う人も多いだろうが、例えばガンダムウォーの場合は山札は「本国」と称してライフを兼ねるためデッキと明確に区別される。つまりデッキと山札を別概念として扱うのはまったく珍しい概念ではない。ちなみに明確に区別するTCGの場合、デッキはアーキタイプを称する際に使われ、戦略記事を書く際には間違いなく「山札」「ライブラリー」のようにデッキとは違う言葉を使うことが多い。

*2 厳密にはデッキ枚数0でドローを行おうとしたタイミングで敗北

*3 ただし《不毛の栄光》のように満たすのが難しい特殊勝利も存在する。ここでは《タッサの神託者》《機智の戦い》のように環境内でTier1レベルで活躍したもののことを指す。

*4 wikiなどが主な情報源になる人々だとLOデッキというとミルストーリーくらいしかないような印象があるだろうが、実際には一発ネタ程度のものからTier2程度のものまで多種多様なものがあり、環境内で対策をされていたこともあったほど。何度も言うが、今は分からないが昔は別段珍しいアーキタイプというわけではなかったのだ。下に挙げた分類を行うんだったら珍しいものも出てくるかもしれないが。

*5 ただしこの辺の分類名は人によってかなり異なる

*6 この状況下では自分の土地もアンタップしないし、島を出してもタップ状態で出るため、そのうち維持コストを支払えなくなる。

*7 相手の墓地の枚数以下のマナ総量の呪文打ち消し、または同条件のクリーチャー破壊を選んで行うインスタント。墓地を消し去るこのカードとの相性は最悪

*8 きわめて強力な大型エルドラージを一番手ごろなコスト踏み倒しであるリアニメイトで出すのを封じるための効果だが、フレーバー的にも「本体は別にあるので、クリーチャーとしての姿を殺されても何度でも出てこれる」の表現となっている。

*9 《サイカトグ》の能力が「墓地から2枚追放するとP/Tを+1/+1する」なので、100枚墓地から追放すると50/51になる。普通のプレインズウォーカー(プレイヤー)は20ライフしか無いので豪快なオーバーキルとなる。