お賽銭

登録日:2025/01/01 Wed 00:00:01
更新日:2025/04/30 Wed 22:17:12
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\コイーン♪/
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[【賽銭】]


お賽銭とは、神社・寺院への参拝の際に納めるお金のことである。




そもそもお賽銭とは?

お賽銭は神仏に対する感謝の気持ちである。
お金といっても大それたものではない。金額は問わず、むしろ日本の一般的感覚では5円や10円程度の小銭を指している。

お賽銭は日本の神社・寺院で広く親しまれている風習である。
大昔からある農作物・織物を神々にお供えする文化が、貨幣経済の発展に伴い金銭に変わっていったものであり、お賽銭という文化そのものは比較的近年に生まれたものだったりする。

日本では神社や寺院の本殿正面、参拝する場所に賽銭箱と呼ばれる専用の箱が用意されており、ここにお金を投げ入れる。
ここに硬貨を投げ入れるとカランカランと、また良い音が鳴るのである。ちなみに硬貨でなく紙幣を入れても問題ない。


お賽銭は何に使われる?

神社や寺院に納められたお賽銭は以下の用途に活用される。
  • 施設の修繕や保全
  • おみくじ・御札・お守りなどの調達・製作費
  • 神職の生活費、または巫女・警備員など神社で務める人への給与
要は神社や寺院を運営するための費用にされるのである。
つまりきちんと神様の存在と沽券を維持するのに使われているので、お賽銭は神様へのお礼に直結している。
もちろん、よほど人が集まる神社や寺院でなければお賽銭だけでこれらを賄うことは不可能なので、祈祷料(玉串料や初穂料、戒名料など)や別口の寄付なども兼ねて運営されているのが一般的である。

ちなみにこれらは「信仰に基づく寄付」であることから「収益事業」にあてはまらないとされており、非課税で取り扱われる金銭である。


他文化でのお賽銭にあたるシステム

お賽銭は日本人の「神様に対する信仰心」の最も分かりやすい現れであるが、もちろん諸外国でも同様のシステムは散見される。
日本のお賽銭と同じく、宗教の活動資金源となっていることが一般的。

  • アジア諸国の寺院等でも賽銭と似たようなシステムは多くみられるが、線香や蝋燭代という名目であることが多い。
  • お隣の韓国でも似たような「복전함(福田函)」という賽銭箱と似たようなシステムがある。ただし、これは日本のように参拝の作法には組み込まれておらず、本当に「お気持ちがあれば」として設置されているらしい。みんなで賽銭箱の前に列を作って順番にお金を入れるということは韓国ではあまりない景色であるそうな。
  • キリスト教では礼拝の際に献金を集う活動があり、これも「神への感謝の気持ち」を金銭で表していることから、賽銭に近いシステムといえる。
  • 方向性は違うが、イタリアのトレヴィの泉はコインを投げ入れることで願いが叶うとされている。これまたお賽銭と似たシステムといえるかもしれない。

諸外国のお賽銭にあたるシステムは、「具体的な活動資金としての名目」であることも多く、日本のように純粋な信仰で小さい子供まで皆がお金を納める、というのは実は比較的珍しいことであるらしい。


正しいお賽銭の納め方

日本における神社や寺院でのお賽銭の納め方、ついでに参拝の仕方も紹介。
神社や寺院などでは親切に説明を用意してくれていることが多く、また、宗派によって作法が微妙に異なる場合もある。
だが、作法として身に着けておくとスムーズなので覚えておこう。

神社の場合

1.お賽銭を納める。
2.鈴がある場合は鳴らす。
3.二礼二拍手一礼でお参り

寺院の場合

1.お賽銭を納める。
2.1礼して手を合わせる。お寺では拍手しちゃダメだぞ。
3.焼香台があれば焼香。
4.一礼

注意点

  • 神様にお願いごとをするときは、きちんと挨拶を済ませてからすること。いきなりお願い事を念じだすのは失礼にあたる。それはもう、誰だって挨拶もなしに要件から入って来られたら普通ビビるだろう。神様も同じである。
  • お祈りの際には願い事や神様への感謝などを、頭の中できちんと念じよう。人が並んでいるときはあまりモタモタしすぎないように注意。
  • お願い事をするときには「自分の身分を神様に伝える事」を忘れてはならない。つまり神様にお願いごとをする際には一緒に「自分は何県何市に住む〇〇です」というのを唱えなければ神様も誰だか分からなくて困ってしまうとされているのである(宗派によって諸説あり)。
  • お礼参りといって、神社や寺院に託した願い事が叶った際には、後日、きちんとお礼を言いに行くことも大事。ルールはないのだが願が叶った年のうちが良いとされている。祈願した場所と同じ場所でするのが一番良いが、難しい場合は近くの神社やお寺でも良いとされている。その時にもお礼のお賽銭を納めるのが良い。
  • 神社によっては小さな社と賽銭箱がいくつも置いてある場合があるが、基本的には本殿に参拝すればOK。もちろん全ての社を回って挨拶するのも良いことである。


金額

お賽銭の話になるとお約束のように話題に挙がるのが「結局いくら納めれば良いのか」問題である。
縁起が良い金額、悪い金額というのは年の瀬になるたびに話題に挙がる。

特に有名なのは「10円は『遠縁』と読めて縁起が悪いのでお賽銭に使ってはいけない」という話。
これは近頃流行りだした迷信などではなく、大昔から本気で信じて従っているご老人も少なくないという。
また、風水的に一番良いのは「115円」とされている。※1150円など、「115」という数字が入っていれば良いとのこと。

……それで結局何が正しいのかというと、結論から言えば、日本では金額に関して作法や決まりなどは存在していないというのが正解であるらしい。
語呂合わせによる縁起の良し悪しというのもほとんどは誰かが勝手に唱え出したものであるとされている。
最初に挙げた10円の話も、場合によっては「神様に頼んで悪い縁を引き取ってもらう」という意味で意図して用いてよいという考え方もあるくらいである。

ただし、だったら何円でも変わりないのか、語呂合わせは意味ないのかといえばそれも決してそんなことはない。
お賽銭とは気の持ちようである。「5円納めれば良いご縁がありそうだから」など、語呂合わせによるゲン担ぎを信じてお賽銭を入れれば、それはそれで、もちろん正解である。
要は、うっかり誤っているとされる金額を納めてしまったからといってガッカリしたり効かないと後悔したりする必要はないということである。神様は純粋に参拝した貴方の気持ちをちゃんと見て下さっているはずだ!

また、1円も絞り出せないほど厳しい生活をしている時に、無理に神様にお金を納める必要はない。
確かに神様へのお賽銭は大事だが、大切なのはお金よりも信心である。日本の神様はお金がなくてお賽銭を入れられない人を冷たく突き放すほど辛辣な存在ではないという認識が一般的である。信仰は重要だが、やはり生活ありきということは忘れないように。
このあたりは割とドライなところもあるキリスト教とは異なる部分である*1


賽銭泥棒

お賽銭を神社やお寺から盗む行為当たり前だが、絶対にやってはいけない。

ぶっちゃけ賽銭箱というのは防犯性が低く、賽銭泥棒をする不届き者はいつの時代も存在していた。
だが、人々の善意や信仰で神様に納められた金を盗るなど罰当たりにも限度がある。きっと相応の罰は当たるだろう。もし地獄があるとしたら地獄行き決定である。

なお、もし賽銭泥棒で逮捕された場合、犯罪として特別な罪状があるわけではなく、通常の窃盗罪が成立する。
10円だろうが1円だろうが初犯だろうが子供だろうが、盗んだ時点で窃盗罪が成立し「10年以下の懲役または50万円以下の罰金」となる。

とにかく、絶対にやってはいけない。文字通り、神様・仏様の御前なのだから。


賽銭の悩み

昨今の神社や寺院が悩んでいるのが、小銭の扱いである。

お賽銭はそのほとんどが小銭として納められるわけだが、これらを集金し金融機関に納める際に、硬貨の入金に対し入金手数料が発生するため利益とならず赤字となる場合があるのである。
(例えば、ゆうちょ銀行の場合、51枚以上の硬貨は手数料がかかるようになったので、51枚の1円玉を入金すると550円の手数料が生じて499円の赤字になる)

これらは神社や寺院にとっては死活問題で、地域によっては小銭が必要な商店などが両替を請け負うなど様々な対策を考案されている。
だが、それら助け合い以上の対策などはまだ取られておらず、目下課題となっているそうである。


キャッシュレスお賽銭

小切手でお賽銭をする粋な人は昔からいたそうだし、お守りなどの初穂料であれば京都下鴨神社が令和になると同時にキャッシュレス対応するなど事例はいくつかあるが、近頃は賽銭でも「PayPay」などキャッシュレスでお賽銭を納めるシステムを導入する神社・寺院が現れ始めた。
先述の通りお賽銭は気持ちであるので、現金でなければお賽銭の効果がないということはないようである。上述した賽銭泥棒対策や入金手数料対策としても効果があるとか。外国人旅行者も扱いやすいのも利点であるそうだ。

ただ、決済音が神社やお寺に馴染まないというクレームや、「宗教活動」を超えて「収益事業」に当てはまり、課税の対象となるのでは? という懸念もあるようで、試行錯誤している最中であるとのこと。


創作におけるお賽銭と関わりのある作品

東方Project」の主人公。巫女であるため、神社ひいては賽銭箱と何かと関りを描かれることがある。博麗神社(東方Project)も参照されたし。お賽銭はあまり得られていないようである。そのせいか2次創作ではお賽銭を催促する姿がよく描かれている。たまに脅迫じみたものも

  • 1/8192
確率運試しの極致である一人称視点のアドベンチャーゲーム。ただ1/2を引き続けるだけのゲームなのだが、道中に賽銭箱がおかれている。これは別に使用してもお金がかかるなどではなく、ただのオブジェクトである。勿論、ここで祈ったところで確率が変わるわけでもない。が、不毛に1/8192を目指しているうちに、これに縋りだすプレイヤーが後を絶たないという……

現代でおじゃる丸を引き取り世話をしている カズマ は、幼いころからお年玉を全てお賽銭として納め「弟が欲しい」という願いを込め続けていたという逸話がある。

  • かしこみかしこみ
神主や巫女の代わりに動物が神社に仕えている世界観の四コマ漫画。
初葉神社ではお賽銭を増やすべく、タヌキのムクとキツネの山椒がお賽銭程度の金額で留守番、犬の散歩、祭の余興などちょっとしたお願い事を叶える…というか請け負う「プチ祈願」という低価格の便利屋業サービスを設けている。

最後に

冒頭で「お賽銭は気持ち」という話をしたが、究極「納めたら納めた分だけ損するんだから納めないのが正解では?」などというドライな考えを持つのもその人の勝手である。
(というか、そんな人がもしいたとして、その人がこの項目を最後まで読んで得たものがあったのかどうか甚だ疑問であるが)

だが「自分の事を見守ってくれている神様がいる」という心の拠り所の価値を、日本人は今日まで理解し守り続けてきたのである。
毎年年始になる度、寒空の下、人混みのできる神社に列を作ってお賽銭を納める。
そういったことに、投げ入れたお金以上の価値を見出すことが出来る……お賽銭とは、そういう不思議な文化なのである。


お正月のお参りとお賽銭を欠かさない皆さん、追記・修正をよろしくお願いいたします。よいお年を。


この項目が面白かったなら……\チャリンと/

最終更新:2025年04月30日 22:17

*1 収入の10%を献金する制度がある。どんなに生活が苦しくても、そんなときこそ神によって試されていると考える。