めぐちゃんはね、ルリの幼馴染なんだよ。
前からね、誘ってもらってたんだ。
スクールアイドル楽しいから、一緒にやろうよ、って。
……。
でもね、いつからかな、急に自分の話をしなくなって。
聞いてもはぐらかされるようになって。
ルリもちょっとおかしいな、って思ってたんだ。
それが、まさかクラブにも顔を出してないなんて。
めぐちゃん、どうしたんだろ……。
慈と一緒にスクールアイドルをやるため、帰国後の入学先は蓮ノ空と決めていた瑠璃乃。
しかし、いざ彼女がスクールアイドルクラブに入部できた時には、慈は既に活動から退いてしまっていた。
瑠璃乃は、慈が怪我をしたことも、それによるイップスで活動出来なくなってしまったことも知らされていなかったのだ。
一連の事情を梢と綴理から聞いた瑠璃乃は、いてもたってもいられず慈に会おうとする。
しかし、久々の再会だというのに慈の態度は冷たげで、遠回しに彼女を拒絶していた。……昔のことを、掘り返されたくないと言うかのように。
後日のこと。
慈は、クラブの練習風景を、遠くから眺めていた。
やはり、活動ができないことは慈にとっても大きな未練だったのだ。
そこへ、梢と綴理……かつて苦楽を共にした同期達が声をかける。
気になる?瑠璃乃さんのこと。
……ぜんぜん。
私はもうスクールアイドルクラブとは関係ないし。
あの子がやることに、いちいち口出す筋合いもないし。
るり、今度ひとりでライブをするんだよ。
えっ!?早くない!?
さすがにまだ体できてないんだし、もうちょっと基礎練に力を入れたほうが!
そんな彼女の心境を見抜いてか、梢はひとつ誘いをかける。
瑠璃乃の身体づくりも兼ねた夏合宿に、慈を同行させるのだ。
……「瑠璃乃の練習を見てもらうため」という真の目的はあえて隠して、ついでに逃げられないようにと茶番まで打って。
ともあれ大事な幼馴染で、今は後輩でもある瑠璃乃のためということもあって今さら退くわけにもいかなくなった慈は腹を括る。
先に言っておくけど!
え……?な、なに?
……こないだは、あんな言い方して、ごめん。
それと、蓮ノ空入学、おめでと。
うんっ!
それからの慈は、約束通りきちんと瑠璃乃の面倒を見る傍ら、
先述の再会時の対応から不信感を持たれてしまっていた花帆・さやかとも打ち解けてゆく。
それと同時に、自らが抱えている事情……去年の怪我と、クラブに復帰できない理由も改めてみんなに話した。
……慈はもう活動復帰は諦め、クラブには戻らないつもりであることも。
そんなこんなで合宿も終わり、瑠璃乃が計画していたライブの日程も迫りつつある頃。
慈は件のライブについて、ひとつ大きな気掛かりがあった。
ルリのスペシャルでマーベラスなステージを見せて、
めぐちゃんに元気になってもらうんだから!
それなんだけど……。
私のためにライブを開きたいっていうんだったら、やめたほうがいいよ。
気持ちは嬉しいし、るりちゃんのステージは、私も楽しみだけど……。
でもね、それを見ても、
私がまたステージで踊れるようになるとは、思えないから。ごめんね。
無理もない。
今なおクラブへの未練を完全には断ち切れていない慈だ。
活動復帰しようとしたことなど、一度や二度ではないだろう。
そんな彼女が、仲間の手を借りながら試行錯誤しても、半年以上の時を経て尚良くなることはなかった……
その事実だけでも、慈自身に復帰を絶望視させるには充分だった。
私のためとかじゃなくて、ちゃんと、
自分のためにスクールアイドルをしてほしいの。
瑠璃乃のスクールアイドル活動は、慈も心から応援している。
だからこそ、なのだ。
瑠璃乃が自分1人のためだけにスクールアイドルをやって、もしそれが上手くいかなかったら。
ライブがどれだけ成功を収めても、それで慈を変えることができないのなら、そのライブは瑠璃乃にとって「失敗」になってしまう。
それでは、瑠璃乃まで救われない。
しかし「慈と一緒にステージに立つ」ことが約束であり夢でもあった瑠璃乃は諦めない。
強情とすら言える瑠璃乃の姿勢に、慈もついに堪忍袋の緒が切れてしまう。
うるさいなあ!だったら、言ってあげるよ!
スクールアイドルなんて、もう飽きたの!
どうせ、ただの暇つぶしで始めただけだし!
ねえ、これでいいの?こう言えば満足!?
瑠璃乃のためを想ってとはいえ、結果的に喧嘩になってしまった二人。
ちょうど瑠璃乃が部室を飛び出していったところを目撃した梢と綴理の心配する声に、慈は同期である2人にだからこそ打ち明けられる本音を零した。
こずえ、つづり……
私、くやしい……
るりちゃんに、あんなに言ってもらっているのに、
目を閉じるといつだって、
スポットライトの中で立ちすくんでいる自分が、浮かぶんだ……
こんなの、もうやめようって。
諦めたはずなのに……
ずっと悔しいんだ……。
もう……どうすれば、いいのかな……
やっぱり、諦めるしか、ないのかなぁ……
その言葉を影で聞いていた瑠璃乃は、決意を固めるのだった。
その次の日のこと。
1年生みんなで練習していた瑠璃乃を、慈が呼び出す。
その声色には、静かな剣幕が込められていた。
瑠璃乃は、慈に無断で「瑠璃乃と慈の2人でライブを開催する」という旨の告知ポスターを作り、貼って回っていたのだ。
……冗談じゃ、ないんだよ。
私は怪我して、踊れなくなったの。
それなのに……悪趣味だよ、るりちゃん。
出るし……ルリは、めぐちゃんと一緒に、
ライブに出るんだし!そう決めた!
そんなに簡単なことじゃないの!
だって、めぐちゃんも出たいんでしょ……?
だったらやろうよ、一緒に、やろうよ!
ルリだって、失敗するかもしれないって不安だけど……。
でも、めぐちゃんと一緒なら、きっとできるって思うから!
だから、めぐちゃん!
待ってるから!
……!それは。
その言葉で、かつて2人で交わした”約束”を思い出す。
そうして、とうとう迎えたライブ当日。
観客席から、ステージに立つ瑠璃乃を見つめる慈は……。
るりちゃん……。
私だって。
私だって!
何度つまづいたって、転んだって!
やっぱり、諦めるのなんて、ムリ!
だって───。
るりちゃんが、待っているんだから!
んー……やっぱり、こうでなくっちゃ。
私ってば、かわいくて、かっこよくて、ほんと完璧⭐︎
……スクールアイドルに復帰できて、ほんとによかった。
……嬉しいな。
た・だ・し、ここで満足してちゃ意味ないからね。
もっともっと、がんばらなくっちゃ!
様々な苦労や困難を伴いながらも、やっとの思いでスクールアイドルへの復帰が叶った慈。
それだけに、彼女は今やる気に満ち溢れていた。
その勢いのまま、彼女は仲間達に無断で温泉旅館「ゆのくに天祥」のお手伝いという仕事を取り付ける。
さっすがめぐちゃん!自己チューギリギリ3ミリ手前!
……が、そんな慈の意気込みとは真逆に、ひと夏終わったせいかクラブの空気はたるみ切っていた。
甘いよみんな、甘い、甘すぎる……。
夏休みボケか!?ひがし茶屋街の抹茶スイーツより甘い!
ボクは好きだよ。
あ、わたしも……。
実はスケートの練習帰りに、時々こっそりと。
ええっ、いいなー!
梢センパイ、あたしたちも今度、一緒に───。
ええい!スイーツの話を膨らませるな!
くっ……。
だめだこいつら、私が空気を引き締めてやらないと……。
そんな空気感に痺れを切らした慈は、件の温泉旅館での仕事をするにあたり一策を講じることに。
旅館の方が厚意で用意してくれた豪華な夕食に、今回のお手伝いの後に開催するミニライブのステージ枠……しかしそのどちらも、得られるのは3ユニット中1組だけ。すなわち、誰が最も旅館に貢献できたかというユニット間競争に仕立て上げたのだ。
何はともあれ、ポイント競争という点を差し引いてもお手伝いはきっちりとこなすみらくらぱーく!。
……というより慈は元々旅館の女将を体験したことがあり、そもそも今回のお手伝いは彼女が持ってきた仕事。そのため慈にとっては圧倒的有利を通り越してもはや「出来レース」、絶対に負けるはずはない……そう、本人は確信していたのだが。
この調子で、あと40皿お願いだって。
お互い頑張ろうね。
わ、わかりました!
旅館のため、そして優勝のためにがんばりましょう!
普段から、衣装やステージのことばかり考えているのが役に立ったかしらね。
旅館の方にも、お客様にも、あんなに喜んでもらえるなんて思わなかったわ。
これで、国産牛はあたしたちのもの……
ですね!
どうしよ、めぐちゃん!
2ユニットともめちゃめちゃポイント稼いでるよ!
綴理たちも、梢たちも活躍しすぎだよ……!
がんばらせるつもりが、ここまでがんばるとは!
しかし「自分達が勝つこと」を前提に組んだシナリオと言い出しっぺのプライドもあって引き下がるという選択肢はなかった慈は、強引に結果を「全員引き分け」ということにして作戦を練るため時間を取る。
そんなわけで、仲間達より一足先に温泉に入ったみらくらぱーく!の2人。
ここまで事情は知らないながらも慈を信じて合わせていた瑠璃乃からも、そろそろタネ明かしをして欲しいと頼まれ、2人っきりのうちにと慈もすべてを明かす。
本当はミニライブの枠も夕食も、きちんと全員分用意してもらえること。
しかしユニット活動という蓮ノ空の仕組みを活かして皆の成長に繋げるために競争させようと考えたこと。
今のグループには最近入ったばかりである慈が直接最近の空気感を変えようとするのは気が引けたため、まずは実力勝負で梢たちを打ち負かすことで「そういうことが言える流れ」を作ろうとしたこと。
と、とにかく!私のいるスクールアイドルクラブなんだから、
世界一を目指してがんばってもらわなきゃ困るの!
だって私の夢は、ここで世界を夢中にさせることなんだから!
これで今度こそ瑠璃乃からも全面的に理解を得られ、計画の軌道修正もうまくいきそう、だったのだが……ばったり会った仲間達がなぜか皆一様に気まずそうな顔をしている。
花帆さん、あまりはしゃいではダメよ。
特に『露天風呂』では。
は、はい。
……ん?
うん。
声が、お部屋に筒抜けになっちゃうからね。
そ、そうですね。
気を付けないとですね!
なっ───!?
そう。
作戦会議に『露天風呂』という場所を選んでしまったせいで、全部筒抜けになっていたのだった。
……そんなひと騒動もありつつも、ミニライブは大成功。
慈も旅館との約束であった「ミニライブの映像を用いた宣伝動画の作成」を終え、次に控える市内ライブのため旅館を後にする───はずだったのだが……!?
ラブライブ!も終わったことで、活動にも一つの区切りがついたスクールアイドルクラブ。
決勝大会は苦い結果に終わったものの、逆に課題もハッキリしたことでむしろモチベーションは上向いていた。
みらくらぱーく!の2人も「むしろみんなが一息つく今こそチャンス!」と攻勢をかけるべく、様々な企画案を持ち寄っていた。
しかし、「明るく騒がしく『元気に盛り上がれる場所』」を目指す慈と「『盛り上がる元気がない人』に寄り添えるような活動」がしたいという瑠璃乃の方針はどうにも一致しておらず、話がなかなかまとまらない。
経験的にも年長者である慈は、その自負もあってか一旦は自分に任せるようにと瑠璃乃をリードしようとするが───
なに言ってるの?るりちゃん。全部任せてくれていいんだよ。
私はこういうの考えるの好きだし、それに───。
───るりちゃんがスクールアイドルに付き合ってくれてるだけで、
じゅうぶん意味はあるんだからさ。
!!
めぐちゃんは、ルリがめぐちゃんに付き合って
スクールアイドルをやってるだけだと思ってたんだ!
その失言がきっかけで、ついに大喧嘩に発展してしまった。
後日、瑠璃乃は『ごちゃまぜユニット』の企画を提案。
なに、るりちゃん!
スクールアイドル性の違いで解散ってこと!?
そーゆーことじゃないけど!
……”証明”するためには必要なの。
数学の方じゃないからね。
??
なんで証明と数学が関係あるの?
あっ……。
昨日の今日ということもあって、すんなりと企画が通ったことに対し慈は面白くなさげではあった。
しかしひとまずはなにやら考えがありそうな瑠璃乃のことは気がかりながらも、当面の相方となった花帆との活動に専念することとなる。
その花帆と組んだユニット「かほめぐ♡じぇらーと」は2人の波長がピッタリ合っていたこともあり、活動は至って絶好調だった。
それと同時に、花帆を通して瑠璃乃が今回の企画を考えた理由についてもある程度聞くことができた。それと同時に、慈も自身の考えを花帆に打ち明ける。
慈が瑠璃乃の企画案を蹴ったのは、なにも頭ごなしにというわけではない。
瑠璃乃がやろうとしていることは、うまくいかないという確信があったからでもあったのだ。それはかつて自分も通った道だと。
……経験あるんです?
ま、ね。失敗して初めてわかることがあるって、知ってるけどさ。
それでも私は、るりちゃんに失敗してほしくない、だけ。
一方の瑠璃乃はというと、綴理と組んで活動することになっていたのだが……そちらの活動は順調とは言い難いものだった。
そのことを当人達から知ると表向きは瑠璃乃を煽ってはいたが、やはり内心では彼女を心配していた。
果たして訪れた、シャッフルユニットでのライブ開催日。
慈は変わらず、心配に思う気持ちはありつつも瑠璃乃達のユニットを見守るが、そこにいたのは───
ほいじゃあ最後に───
っと、ちょっと待って綴理先輩。
ん?……あ、今ペンライトの色変えてる子、まだいるね。
ちょっと待ってあげて……よし。みんなだいじょぶそー。
……2人のユニット「るりのとゆかいなつづりたち」が披露したのは、瑠璃乃の伝えたい想いをカタチにした楽曲、『Colorfulness』。
その楽曲だけでなく、MCで彼女が見せた「優しさ」にも、瑠璃乃の理想が体現されていた。
ライブは、文句のつけようもないほどの大成功だった。
これが、るりちゃんのやりたかったこと。
……凄いね。間違ってたのは、私みたい。
そうしてシャッフルユニット活動は終わり、各々も元の活動に戻っていった。
スリーズブーケも、DOLLCHESTRAも、それぞれに得た経験や発見を活かして新たな方向性を見出していた。……肝心のみらくらぱーく!だけが、うまくいっていなかった。
その事実を前に、慈はひとつの結論に至る。
見て分かんない?私が出来てないの!
私がるりちゃんに遅れてんの!もう見せたくないの!
るりちゃんの言ってたことは、正しかった。
世界中を夢中にするって、私は口だけで。
いっぱい取りこぼしてたんだね。
私は……るりちゃんの魅力を、この先ずっと潰すところだったんだ。
───決めた。
そうして、慈が下した決断。
それは、瑠璃乃と再び肩を並べられるようになるため、瑠璃乃がそうしたようにカリフォルニアで武者修行するというもので……!?
私たちから、沙知先輩に贈る曲……あの余裕たっぷりなちっちゃいのを、
感動でズタボロに泣かしてやるんだから!
卒業してゆく沙知に向けて何かできないか、と102期生仲間2人に相談を持ち掛けた梢。
そんな彼女に、綴理は「102期生3人の合作で最後の文化祭・蓮華祭で披露する曲を作る」ことを提案。もちろん断る理由などなく、各々で制作を分担することに。
そうして慈は作詞を担当することとなった……のだが、早速慈は瑠璃乃の部屋で頭を抱えていた。
……実は作詞がまったく進んでいないというわけではない。それどころか、既に3つも草案が仕上がっていた。
作詞にもセオリーがある。卒業がテーマともなればある程度パターンも決まってくるから、それに沿って仕上げる?それとも、「3人での合作」らしく梢や綴理とも相談して、3人の気持ちを全部込めた歌詞にする?
正解は、そんな小手先のパターンとか関係ないから、
私の考える最強の歌詞をぶつける!です。
だってこれは、みんなが私を信じて任せてくれたんだよ。
それなら120点のものをぶつけて、
その完成度で梢と綴理を納得させてやらなくっちゃ。
というわけで。
ここに100点の3案があるのに!
そのどれかひとつを120点にしなくちゃいけないんだよ……!
パワーが足りない……。
大賀美沙知をズタボロに泣かせてやるような、そんなパワーが……。
そんな殺意込めて歌詞作ってたの!?
そんなある種贅沢な悩みで二進も三進もいかなくなっていた慈は、瑠璃乃のアドバイスも受けて「ある物」からヒントを得ようと思いつく。……「それだけはやりたくなかった」とでも言うかのような腹のくくりようで。
そう言って瑠璃乃と訪れたのは映画館。
なんと今回のためだけに、2人で1スクリーン貸し切るという異様な力の入りよう。
後々改めて判明する金銭感覚のバグりっぷりの発露である
ここで観るのはもちろん、
スクールアイドルの映画……ではなく。
葬り去った黒歴史……。
藤島慈の、第1回配信を見る……よ!!
先述の通り、慈が1年の頃に行った配信はほとんどアーカイブが残っていない。
慈が怪我をきっかけに引退を決めた際、そのあまりの出来の悪さに慈自身が封印したためだ。
しかしそれは単に非公開設定にしてあるだけなので───
映画館まで来なくても、家のパソコンで見ればよくね!?
パソコン叩き割っちゃうかもしれないじゃん!
だから、覚悟を決めるためにスクリーンを貸し切ったんだよ!
お金の使い方ぁ!
そうして、あまりの痛々しさへの時間差セルフツッコミで想定以上に精神を磨り減らしながらも、沙知が何を思って自分にスクールアイドルを勧めてくれたのか、その真意を……そして、自らの初心を改めて悟る。
スクリーンに映るかつての自分は、タレント時代に培ったトーク力や自身の美貌を買ってくれたのだと思っていたようだが……。
……違うよ。
沙知先輩が、私に向いてるって言ってくれたのは、そういうことじゃない。
私は確かに、みんなを夢中にさせたくて、タレントにもなった。
なったからには、とにかくかわいさを振りまけばいいと思ってたけど……。
でも、配信をやってみて初めてわかった。
私はみんなの『楽しい』って声を近くで浴びたかったんだ、って。
スクールアイドルも同じだよ。
レスポンスをリアルタイムでくれる。
相思相愛なんだって、ちゃんとわかる。
それが本当に楽しかったから。
スクールアイドルは新しい、私の"夢"になったんだ。
今は配信ナメてるかもしんないけど。あんただって、すぐに気づくからね。
沙知先輩が教えてくれたんだよ。私に、新しい夢を。
過去の自分にそう言い渡し、自らのすべきことを見定めた慈は、配信を最後まで見終えることなく劇場を後にする。
よっしゃ!帰るよ、るりちゃん!
もうその雑魚に用はない!
せっかく2時間も貸し切ったのに!?
……ちょうどその頃、スクリーン越しの過去には沙知が現れていた。
彼女の"夢"は、ここから始まったのだ。