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更新日:2025/04/10 Thu 07:33:57
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「同胞団はみな平等だ! そのまま座ってくれ。立って出迎える必要はない」
スケア・カーン(Skere Kaan)とは、
スターウォーズ・シリーズの登場人物。
映画本編から千年前の「新シス戦争」の時代に活躍した
シスの暗黒卿で、自らの派閥
「暗黒同胞団」を創設してシス帝国の最後の十年間を支配した。
しかし新参のシス卿
ダース・ベインとの内紛と
ジェダイ騎士団との戦いを繰り返すうちに追い込まれ、最終的に
「ルーサンの戦い」で滅亡する。
彼の死後、「二人の掟」を擁する
ダース・ベインがシス教団を維持する。
【性格】
「奴らが言うところの『民主主義』とは、無秩序のことではないのか!? 理性だと? ならば尚更、強者が支配するべきなのだ。それが自然の在り方だ!」
多くのシス卿が唯我独尊を地で行くのに対して、カーンは
仲間たちはすべて平等・対等の立場だと主張したことに大きな特徴があった。実際、彼の魅力・カリスマに惹かれるシスも多かった模様。
一方、そういう割に本人は
フォースのマインドトリックを同胞たちにも使用し、
忠誠心をほとんど強制しているという側面もあった。
また
猜疑心の深い面もあり、ベインに対してはしつこく排斥を狙っていた。
ベインは確かに「同胞団は滅びるべきだ」と考えてはいたものの、一方では同胞団によく接触し、礼を尽くし、場合によっては下手に出てまで手助けしていたので、そんな彼に対してのカーンの態度は
極めて狭量といわざるを得ないものだった。
一応、シスの同胞たち全員が操られていたわけではなく、
ベイン、コペッツ、ギサニーの三名にはマインドトリックが利かなかった。にもかかわらずコペッツとギサニーは終盤までカーンに従っていたので、まったくの無能ではなかったことは確かである。
ただ、カーンの精神面には、とても脆い一面があった。
それも、順境においては露呈しなかったが、戦争が不利になり自分も死にかけるという逆境に陥った際に、この弱さが一気に露呈。
ダース・ベインにいいように操られた挙句、ペインから授けられた秘術を疑いもせずに実行し、破滅的な最期を迎えてしまった。
この際にはそれまでカーンに従っていたコペッツとギサニーも「もうダメだ」と見限っており、精神的な強さはベインはもとより、この両名にも劣っていた模様。
【能力】
「我らは一だ。我らはダークサイドだ。ダークサイドは我らだ。暗黒面の力を感じるのだ。そこに身を委ねよ。統一された全に身を委ねるのだ。一つになるのだ……」
多くの人材がいた「暗黒同胞団」のリーダーとなっただけあって、相当以上の実力者。
特にマインドトリックの達人で、配下のシス卿たちを支配・管理するのにもこの術を多用した。他のシスたちは自分たちがその影響を受けていることにさえ気付かなかったという。
当時、この技に対抗し、影響を免れたのはベインとコペッツ、ギサニーの三名ぐらいだった。
また、マインドトリックに加えて「戦闘瞑想」にも熟達していた。
これは、複数人のフォース使いが一心に瞑想し、一体となってフォースを操るという技法で、一人一人で行う場合に比べてはるかに巨大なエネルギーを動かすことができる。
ジェダイではジョラス・シボースがこれを得意としていたが、スケア・カーンもこの技をよく知っていた。
最終的に同胞団滅亡の直接原因となった「思念爆弾」も、この系統に位置する技術である。
後年、ダース・ベインとダース・ザナーの師弟がスケア・カーンを論評した。
この際にザナーは「確かに彼は多くの過ちを犯したが、弱いというのは当たらない」と評している。
【経歴】
◆前歴
銀河共和国の暗黒時代といわれた
「新シス戦争」の時代に、
首都惑星コルサントに生まれた。種族は人間。一般市民の子であったというが、生年・家族構成など詳しいことは不明である。
フォース感応者として
ジェダイ騎士団に見いだされ、ジェダイ聖堂で
フォースや
ライトセーバーの訓練を受ける。
パダワンからナイトへと順調に昇進するうち、フォースの才能に加えて経済政策や艦隊の指揮にも明るく、
期待の若手としてジェダイ最高評議会にも注目された。
それでなくても千年近く銀河共和国を圧倒してきた新シス帝国との決着をつけたいとジェダイ最高評議会は望んでおり、戦略眼のみならず政略眼まで備えた彼への期待はますます高まった。
しかし、成長したジェダイ・カーンは、銀河共和国とジェダイ騎士団への
強力な批判者になってしまった。近年の苦戦や混沌の原因は、銀河共和国とジェダイ騎士団にこそあると糾弾していたのである。
最高評議会は懐柔するべくカーンにジェダイマスターの称号を与えたが、彼はこの最高評議会の態度をかえって弱腰と見限り、自分に同調するものたちを糾合してコルサントから離れ、
あっさりとシス帝国に鞍替えしてしまう。
◆シス帝国と暗黒同胞団
1010 BBY 、スケア・カーンは自ら「
シスの暗黒卿」を名乗り、また自分に賛同する同志を
暗黒同胞団と称して自立した。
カーンが台頭した当時、シス帝国は崩壊寸前の状態だった。何十人もの有力なシス卿が「我こそ正統な暗黒卿」と主張し、銀河共和国を倒すために団結するのではなく、終わりのない内紛を繰り広げていた。しかも銀河共和国とジェダイ騎士団への戦争・外征も続けていたため、内憂外患で崩壊も近いかといわれていた。
そんな状態をつぶさに見て取ったカーンは、覇権と権力を求める果てしない欲求がシスを滅ぼすことになると感じ、一大改革を実行する。
それが、まず彼の暗黒同胞団を頂点におき、一方で「全てのシス卿は平等かつ対等である」「共和国と戦うまえに、同士討ちをしてはならない」という理論を提唱した。
ここで独特なのは、同胞団のメンバーが対等なのであり、敵対すれば滅ぼすとしたこと。カーンが突出した権威を持つわけではないが、同胞団には強い権威がある。よって、野心のあるシス卿は同胞団に加わることを望み、また一度加われば十分な権威が認められるので、その頂点を求めて争うことはなくなった。なにせ、同胞団に加わった時点である意味で「頂点」にいるからである。
カーンは自身を含めた同胞団のメンバー全員に「シスの暗黒卿」の名乗りを許した。ただ、「ダース」の称号だけは争いの種になるとして禁じている。
これらの動きに、多くのシスが続いた。
まず、当時のシス卿でも特に有力といわれていた青い肌のトワイレック・
コペッツ(Kopecz)と、後進の指導力に長ける人間
クォーディス(Qordis)が支持を表明して同盟団に加盟。
続いて、「ブレードマスター」の異名をとる剣豪
カシム(Kas'im)、人間の
ラトア(LaTor)、激しい憎悪で暴れまわり百人以上のジェダイを倒した狂戦士
カオックス・クルール(Kaox Krul)などの有力者も続いた。
一方、カーンの同胞団に所属するか傘下に収まることを拒否したシスの派閥に対しては、その武力を用いて滅ぼした。
◆ジェダイ騎士団との闘い
「この勝利はすぐに共和国とジェダイにも伝わる。今や同胞団は恐怖とともに彼らに記憶されるだろう」
この、カーンのジェダイ離反とシス帝国再編運動に対し、共和国とジェダイ騎士団は手をこまねいていた。
というのも、共和国側も千年続いたシス帝国との戦争で国力や戦力が枯渇しており、さらに各所で政治的な内紛も引き起こしまくっていて、いわばシス帝国と同じぐらい衰えていたのである。
そのため「元ジェダイがシス帝国をまとめるなら、それでいいのではないか、カーンとも話し合いで共存できるかもしれない」という風潮が蔓延っていた。
だが結果として、カーンたちはシス帝国に勢いを取り戻させ、他方ジェダイと共和国は熱意を失っていた。
この騎士団と共和国の状況に、一部のジェダイが猛烈に反発。
彼ら強硬派ジェダイはホス卿と呼ばれる猪突猛進型のジェダイを旗頭として合流し、「光明軍団」を名乗ってジェダイ騎士団からも離反。有志を募って暗黒同胞団に戦いを挑んだ。
やがて共和国とジェダイ騎士団も、光明軍団に引きずられる形でシス帝国に全面戦争を挑むこととなるが、このホス卿という人物がなかなか苛烈な性格で、怒りのままに敵と戦い、味方に対しても罵詈雑言を浴びせるような性格だったため、ジェダイ側はなかなか連携が取れなかった。
しかもジェダイ・共和国ともに国力が落ち、少年兵・少女兵まで最前線に送り込む状況下であった。
しかし、ホス卿の光明軍団だけが突出して戦い、ほかの部隊と連携が取れていない状況では、暗黒同胞団を頂点に統制が取れた新シス帝国には到底かなわない。
戦争序盤の「惑星コリバンの戦い」でシス帝国は大勝利をおさめ、シスは教団の故郷コリバンを見事奪回。
シスアカデミーを再建し、シス卿クォーディスにシス卿候補たちの教育・訓練を開始させた。
カーンはその後も軍略の才能を開花させ、ジェダイ軍を幾度も破り、また数多くのジェダイをシスへと転向させていった。
シス帝国はベスピン、サラスト、ターナブ、そしてキャッシークといった惑星を次々と占領。
特にキャッシークを得たのは大きく、そこを拠点としてミッドリム、ひいてはコアワールドへと進出する足掛かりを得た。
シス帝国を短期間でまとめたカリスマ性と、常勝不敗の戦歴は、カーンの帝国を団結させる強大な求心力となった。
ただしその求心力は、彼が勝ち続けることによって得られるものであったことに、彼は気づいていなかった。
◆ルーサンの戦い
「ホスとて分かっているだろう、ジェダイには我らが大軍を倒す能力などないと。不可能だ。共和国は滅びる運命にある。だからこそ今、彼は我々、つまりシス帝国のリーダーたちだけに集中している。頭を切り落とせば、体は死ぬからな」
カーンの次の目標は、キャッシークの近くにある惑星ルーサンだった。
ルーサンには共和国軍の基地があり、そこからキャッシークを攻撃していた。このキャッシークを奪還されればシス側からの侵攻は難しくなるので、予防的に落とす必要があるとみていた。
共和国軍も激しく反撃したが、シス艦隊はカーン自らも参戦。またコペッツが優れた指揮を見せたことで、見事共和国軍を撃破、ルーサンを制圧した。
これが「第一次ルーサンの戦い」だった。
「第二次ルーサンの戦い」は共和国軍がルーサン奪回のため仕掛けたが、カーンはこれをたやすく撃退。
さらに追撃の余勢を駆って、ボーメア宙域(シャンドリラ、コルラグ、ブレンタールIVなどの惑星を擁する)に進出した。
シスのコルサント進行もまもなくかと見られており、この期に及んでも共和国とジェダイには交戦の準備ができていなかった。
「第三次ルーサンの戦い」は、ホス卿が率いる光明軍団の主力部隊によって行われた。
こちらは第二次で攻め寄せた共和国艦隊よりもはるかに強く、多人数のジェダイによって構成された精鋭部隊だった。
彼らはシス艦隊の防衛線を突破し、惑星ルーサンへの上陸に成功。橋頭保を築き、シス帝国の主力軍に対して激しく戦った。
しかし光明軍団に続く共和国軍は現れず、光明軍団も数こそかなりのものだったが、それでもシス帝国主力を一気に覆すほどの力はなく、ほどなくして膠着状態に陥った。
「第四次ルーサンの戦い」は、宇宙艦隊に加えて光明軍団との地上戦となった。
数では光明軍団が優位だったが、地の利はシス側にあり、しかも光明軍団に属していた女性ジェダイ・
ギサニーがシス側に寝返り、ジェダイの戦闘計画に関する重要な機密情報を多数もたらしたことで、シス側が大いに有利となった。
ギサニーはジェダイの軍事機密だけでなく、フォースの技術などももたらした。彼女の技術や知見は、当時シス帝国にて頭角を現しつつあった
ベインに大きな影響を与え、間もなく二人は男女の仲にもなる。
「第五次」「第六次」は、あまり目立った戦いではなかったようである。
◆ベインとの対立と「第七次ルーサンの戦い」
「大ニュースだ! わ……我々は、あなたが死んだとばかり……どうやって……」
ここまで彼の権威は高かったが、ルーサンの戦いが膠着するにつれ、彼の指導力に疑問の声も上がり始めた。
代表者は、ジェダイから離反したばかりのギサニー、カーン旗揚げ時からの同僚コペッツ、そしてベインである。
特にベインは、カーン卿がシスの暗黒卿というよりも普通の軍司令官のように振る舞っていて、フォースの暗黒面を適切に使っていないと批判していた。
これに対してカーン卿はベインを追放し、さらにジェダイが動かないと見るや、追っ手を放って殺そうとした。
最初は「ブレードマスター」の異名をとる同胞団随一の剣士カシムを送って直接攻撃するが、ベインは苦戦しながらもカシムを返り討ちにする。
カーンは今度はギサニーに毒殺を命じた。彼女の毒はベインを死の淵まで追い込んだが、ベインは激しく悶絶しながらも、ギリギリで死地を脱した。
ベインがルーサンに生還してくると、カーンはさすがに顔色を変えたが、ベインは戦う意思はないと示し、詫びの印として彼が追放・修行中に発見した、古代シスの呪法が記された資料を譲渡した。
そこにはやがてカーンらを滅ぼす思念爆弾の作り方も記されていたが、ベインが最初からこれを使わせる意図で送ったかは定かではない。
カーン卿もさすがに遠慮したようで、「第七次ルーサンの戦い」を始めるにあたって、ダース・ベインの提唱する作戦案を受け入れた。
ベインの作戦とは、同胞団のメンバー全員が一心に瞑想してフォースを総動員し、かき集めた強大な闇のエネルギーをベイン一人に集中させ、さらにベインが操って敵に叩き付ける、というものである。
これは「戦闘瞑想」というもので、ジェダイにも存在する技法であり、カーンはこれが得意だった。
作戦は実行に移された。シス卿十数人がかき集めたすさまじい闇のエネルギーをベインは炎に変換し、光明軍団が築いていた橋頭保へと押し流した。
ジェダイは不意を突かれた。野営地は一撃で壊滅し、ホス卿を含むジェダイ部隊は逃げ惑うしかなかった。
このまま一気に押せば、ジェダイ部隊は全滅しただろう。
しかしカーンは、突然瞑想から覚めてしまった。カーンの仲間たちも彼とともに瞑想をやめてしまう。
ベインは驚いた。何のつもりだと詰め寄る彼に対して、カーンは「もう十分だ。あとは我々が個別にジェダイを駆逐する」と言い放った。
しかし、カーンの本心はそうではなかった。彼と仲間たちは、ベインのあまりの力量に嫉妬し、またベインは自分たちのエネルギーをベイン自身の利益のために利用していると懸念したのである。
「仲間同士は平等である」という同胞団の限界がここにきて現れた。平等であるという意識が強すぎて、突出した一人を許容できなかったのである。
ベインはここに至り、ついにスケア・カーンと暗黒同胞団を完全に見限る。
翌朝、カーンはジェダイ残存兵力を掃討するべく、配下のシスたちを総動員した。自らも陣頭に立っての総攻撃である。
もともとジェダイの光明軍団は、ルーサンで孤立している。当初の計画では、光明軍団が橋頭保を築き、後続の共和国艦隊が揚陸するはずだったが、光明軍団が橋頭保を築いた直後にシス艦隊が惑星を封鎖し、光明軍団と共和国艦隊の連携を遮断していた。
そこに昨夜の敗戦で、ついに光明軍団の兵力が尽きたのである。カーンが逸るのも無理はなかった。
しかし、ジェダイを追いまくっていたカーンは、突如現れた新しいジェダイ部隊に奇襲を受けた。ジェダイの増援が到着したのである。
これはダース・ベインの策略だった。ベインはカーンが総出撃して留守になった司令部に入り込むと、惑星を封鎖していたシス艦隊提督に「ルーサンを狙って展開している共和国艦隊を攻撃せよ」と命じていた。
しかし封鎖艦隊が攻撃に転じれば、封鎖線はどうしてもほころびる。共和国艦隊はシス艦隊が攻勢に出たのを知ると、光明軍団を救うのは今しかないと考えて、こちらも総攻撃をかけた。
まず主力艦隊がシス艦隊に正面から猛攻をかけ、その隙にジェダイ部隊を乗せた揚陸艦がほころんだ封鎖線を一点突破、ついにジェダイ部隊の増援を光明軍団に合流させることに成功したのである。
大量の増援を得たジェダイ部隊と、突撃した形のシス部隊は、ついに会戦した。「ルーサンの戦い」のハイライトである。
シスもジェダイも次々死んでいく激戦となったが、直前に大規模な増援を迎えたジェダイが数の上で優位であり、ついにシス側は多くの死者を出して敗退した。
◆思念爆弾
「最終作戦を実行する。強力な武器を作成して、一気に起爆させることで戦況を逆転させる。敗者は歴史のページから一掃されるだろう」
わずかな敗残兵とともに命からがら本陣へと帰還したカーンは、ベインが封鎖戦を崩したと知って激怒した。
ベインもまたカーンの無能さを糾弾し、両者は激しい口論を展開したが、ついにベインが負けてルーサンからの追放を受け入れた。
そして、ジェダイに殺されかけて精神の均衡を失ったカーンは、ついにとっておきの切り札「思念爆弾」を動員することにした。
シス卿が切り札とするものである。普通の爆弾ではない。古代のシスが研究した、暗黒面のフォースの技術の結晶だ。
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思念爆弾とは |
まず大勢のシス卿が円形に陣を組み、全員が意志を一致団結させて暗黒面のフォースを操り、中央の一点に向けて渦を巻くように収束させる。それをしばらく続けていくと、参加したシス卿たちの精神や意識が混ざって「一つ」となる。
さらに続けるうちにシスたちの肉体もフォースと溶け合い、最終的に参加したシスたち全員が一つの「暗黒面のフォースの結晶」となる。これが「思念爆弾」である。
これを炸裂させれば、作成時に集中させた莫大な暗黒面のフォースが爆発し、まずは一定範囲内に拡散。範囲内にいる全生物の生命エネルギーや魂を肉体から引き剥がす。
そしてしばらくすると、放出された「爆風」は爆心地へと逆戻りする。この際に、犠牲者の肉体や生命エネルギー、魂などは吸い寄せられ、バラバラになる。
作品によって描写や設定が異なる場合もあり、青白い光が発生する描写もある。
起動した後には「残骸」と言うべきものが残る。
見た目は、高さ3~4メートルほどの卵のような球体で、色は銀、地面から一メートルほどの高さに浮き、鼓動音のような一定の音を立てている。
この球体には、暗黒面のフォースにより引き剥がされ、吸い寄せられてしまった犠牲者の魂が閉じ込められ、永遠に反響している。
なお、この思念爆弾の作り方は当時失伝していた。最後にそれをホロクロンに記録したのは、当時から三千年前の人物、ダース・レヴァンであった。
その思念爆弾の製法をカーンに教えたのは、先にレヴァンの霊廟で修行したベインである。
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カーンは、残ったシスたち全員でこの思念爆弾を作り、ジェダイをおびき寄せたうえでこれを爆破、光明軍団を殲滅するとした。
もちろん、至近距離でその爆発を食らうのはシス卿たちである。しかしカーンは「暗黒面のフォースに通暁していれば、暗黒面のフォースの破壊力から身を守れる」と説明していた。それがベインの策略だとは知らず。
ベインは、カーンの精神状態を正確に読み取っていた。ジェダイに大敗して重傷を負い、死の恐怖を味わったスケア・カーンは、精神の均衡を失い暴走状態に陥っていた。そうでもなければ、思念爆弾を自ら使うなどとは言いださない。
さらに、先の口論の時にベインとカーンは、フォースのマインドトリックで戦っていた。
まずベインが、カーンに「思念爆弾でジェダイを殲滅するべきだ」「ベインは同胞団を支配するつもりだ」と思い込ませるようマインドトリックをかけた。
カーンの側はベインに「このベインは他のシスたちから信頼されていないようだ。自分は同胞団の支配者にはなれない。諦めなければ」と暗示を吹き込んだ。
そして上述した通り、カーンは敗戦のショックで過剰なストレスを抱え、その精神は乱れ切っていた。
ベインはカーンのマインドトリックに引っかかったふりをして、さりげなく同胞団から離れ、思念爆弾の爆破圏からも離脱。
ベインを追放したと思いこんだカーンは、まず思念爆弾でジェダイを滅ぼし、残ったシスたちでベインを討つと考えていた。
ところで、実はベインのほかにもう二人、カーンの精神異変と敗北、そして思念爆弾の正体に気付いていたシスがいた。シス卿コペッツと、ギサニーである。
ギサニーはベインを追って同胞団から抜け出した。
コペッツはシスの暗黒卿としてジェダイ相手に戦い続ける道を選ぶが、ついには致命傷を負って倒れる。
しかし「ライトセーバーによる名誉の戦死」を求めるのと引き換えに、コペッツはカーンが発狂し、思念爆弾を使うつもりだとジェダイに言い残す。
最悪の事態を察したジェダイは、ホス卿を先頭としてカーンが立てこもる洞窟に殺到した。しかし、洞窟を守るシスたち、そして狭い洞窟という地理が災いして、ジェダイたちが踏み込む前に思念爆弾は完成。
そのまま、スケア・カーンはそれを起動させた。
洞窟一帯が揺れる。
効果範囲内にいたものは、シスもジェダイも問わずその肉体を引き寄せられ、生命エネルギーを引き剥がされ、「思念」=魂までも捕らわれた。
数秒後、「爆風」は爆心地へと凝縮。吸い込まれた「思念」は、爆心地に残る銀色の球体の中に閉じ込められた。地上に残されたのは一部の骨だけだった。
カーンのもとから逃げたギサニーもあと一歩間に合わず、いくらかの骨を残して、その魂は銀色の球体に吸い込まれてしまった。
さらに思念爆弾の影響はこの惑星ルーサンのフォースの流れを決定的に変えてしまった。
度重なる戦争のダメージに加え、この一件によるフォースの変調によって、元は豊かな星だったルーサンは荒れた地肌をむき出しにした、荒廃した惑星へと姿を変えた。
思念爆弾の炸裂による、暗黒同胞団の全滅。これはシス帝国の壊滅をも意味した。
この「ルーサンの戦い」を以って、千年に及ぶ新シス戦争は集結した。
以後、銀河共和国は平和の時代が訪れたとして、軍縮の時代を歩むこととなる。
銀色の球体だけが残されたこの洞窟は、後年「ジェダイの谷」と呼ばれたが、あまりにも凄惨な戦争をジェダイ側も忘れたいと思ったようで、その謂れはほとんど知られなくなったという。
◆死後
シスのうち、この爆発から生き残ったのはダース・ベインと、爆発直後にベインが新しく弟子に取ったダース・ザナーだけだった。
ベインは以後「二人の掟」を提唱し、何世代にもわたって闇に潜り力を蓄えるという長期的なプランを立てて、静かにシスの法系を残していった。
ベインはこのカーンの自爆について皮肉交じりに「あれがカーンの選べる最も賢明な選択だった」と述べた。「もしカーンがああしていなければ、今度はこのベインがカーンを滅ぼしただろう」とも。
ベインの法系を継ぐシスたちも、基本的にカーンを「土壇場で心の弱さを見せた、シスとして不適格な男」と批判的に見続けていた。
ただ、ベインの系譜から離反したダース・ミレニアルだけは、カーンの理論がベインの「二人の掟」よりも優れているとみなしていた。ダース・ミレニアルがベインの系譜から離脱して独自のシス教団を作ったのはそのせいである。
一方、思念爆弾に巻き込まれたカーンたちだが、彼らは厳密には死んでいなかった。
いや肉体的には死んでいるのだが、彼らの魂・精神は思念爆弾にずっと囚われて、苦しみの声を上げ続けていた。思念爆弾に囚われることは死よりも忌まわしい、とコペッツの遺言の通りにである。
そして、爆心地に建てられた霊廟「ジェダイの谷」はフォースの流れが変わったことにより「フォース・ネクサス」と呼ばれる絶え間なくエネルギーの迸る源泉に変容していた。
しかし、環境の変動や荒廃によってルーサンは忘れ去られ、谷の遺構もまた地中深くへと消えていった。
彼らの魂の眠る霊廟は千年後の銀河帝国の時代、何かに導かれるかのようにルーサンにやってきたフォース感応者モーガン・カターンにより偶然再発見される。
モーガンは幻視に導かれてやってきたジェダイの生き残りと出会い、話し合いの末にシスに見つからぬようその星図は厳重に隠されたが、フォース・ネクサスを浴びて力を得んとする帝国の尋問官
ジェレクによってモーガンは殺され、調査の末に星図も奪われてしまう。
しかし、モーガンの息子であり傭兵の
カイル・カターンがジェレクを追撃。力場によって強化された彼を死闘の末に屠り、球体の封印を解除したことで囚われた魂は無事解放された。
カイルはその後、ジェダイ・オーダー再建を試みる
ルーク・スカイウォーカーの弟子のひとりとなった。
ただ、なぜかカーンの魂が、球体から出たらしい描写もある。
ベインが新たな修行の旅に出ていた時、カーンの霊がベインの前に現れたというのである。
カーンは生前「暗黒面のフォースに通暁していれば、思念爆弾の影響もやり過ごせる」と語っていたが、全部ではないにせよ一部の真実があったのかもしれない。
思考爆弾の爆心地はカイル・カターンによって魂が解放された後も上質なフォースの力場として存在し続けており、後の時代には離反したパダワンと銀河帝国残党が手を組んだ軍事組織「エンパイア・リボーン」において
フォース非感応者のダークジェダイ向けに用意されたバッテリー(的なもの)の充電用施設にされたりと雑な扱いを受けている。
【余談】
「スケア・カーン」という名前は、イギリスの小説で映画にもなった『ジャングル・ブック』の悪役、虎のシア・カーンだとのこと。
上品なヒゲを誇り、部下たちを(強権や威圧ではなく)魅惑するように誘導する辺りもそこからだそうだ。
「我々はみな平等だ! そのまま追記・修正してくれ。立って出迎える必要はない」
- よくシスは数を増やしたほうがいい、仲良くやれと言う意見がファンから出るけど、映画のシスの暗黒卿以前に試して失敗してたんだな -- 名無しさん (2025-04-09 13:39:27)
最終更新:2025年04月10日 07:33