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アシタカ

登録日:2025/11/27 Thu 12:03:45
更新日:2026/04/22 Wed 22:05:09
所要時間:約 6 分で読んでくれ





我が名はアシタカ! 東の果てよりこの地へ来た!

そなたたちはシシ神の森に住むと聞く古い神か!


アシタカとは、スタジオジブリアニメ映画『もののけ姫』の登場人物であり主人公である。

CV:松田洋治


【概要】

本編より500年あまり前に大和朝廷との争いに敗れた蝦夷(エミシ)一族の末裔の17歳の少年。
相棒にアカシシ(オオカモシカ)*1ヤックルがいる。
一族の次代を担う長となるべく育てられ、占い師のヒイ様からは「アシタカヒコ」(ヒコは古代日本で首長や貴族など高貴な身分の男性の尊称の一つ)と呼ばれており、王家の血を引く由緒ある血統*2の持ち主(もののけ姫と称されるサンとのある種の対比ともいえる)。

しかし、ある日を境に彼の運命は一変する。
アシタカ達の住まう集落を突如タタリ神と化した巨大な猪神が襲撃。
村を守るためやむを得ず討ち取るもタタリ神の攻撃を右腕に受け、いずれ死に至る呪いを受けてしまう。
掟により髷を切り村を去る*3こととなり、呪いを解く方法を探してヤックルと共に西方へ旅立つところから物語は始まる。


【人物】

感情をあまり表に出すタイプではないが、正義感に溢れ誰に対しても分け隔てなく接する温厚篤実な人物。
次期族長として育てられたこともあってか立ち振る舞いにも気品があり、おトキたちタタラ場の女衆にはたちまち人気者となり、牛飼いたちも仲間の甲六を助けてくれた彼を年下ながら「旦那」と呼んで慕っていた。
青を基調とした着物の下に藍色の産籠手を身に付け頭部には朱色の頭巾を被っている。
左目の下には中盤タタラ場でサンとエボシに付けられた刀傷がある*4
自然や森の神々にも敬意を忘れず礼儀正しく接したことから、人間を敵視するモロや乙事主も彼には一目置いていた。
そして何よりも、森のため人間を憎み命を散らすような生き方しか知らなかったサンの運命を大きく変えていった。

一方、外界を知らず限られた一族の者と暮らしてきたため世間知らずともとれるところがあり、自給自足や交易が主だったためか市場で米を買うのに砂金の大粒*5を出したせいで危うく追い剝ぎにあいかけたほか、天然ともとれる発言が所々である。
故郷の許嫁だったカヤから貰った玉の小刀をその後看病してくれた礼にサンに渡したのはしばしば議論のタネになり、人によって様々に解釈が分かれる。
向かってくる者には容赦が無いが、本来は争いを好まず、戦うに際してもギリギリまで相手への警告は行っている。
それでも争いが避けられなければ躊躇無く押し通り武器を抜く決断力も備えているが、故に独りで苦悩や葛藤を抱え込みがちになることも多い。
モロとのサンの身の上を巡っての問答では、彼女の悲劇的な生い立ちも知らず「あの子を解き放て!あの子は人間だぞ!」(=「人の手に返せ」)と言ったことで「黙れ小僧!」と一喝され、続けての「お前にサンを救えるか!?」との問いに「わからぬ…。だが共に生きることはできる。」と答え失笑されるなど、悪く言えば独り善がりともとれる発言や行動もある。
とはいえ、この時のモロはムキになっているわけではなくアシタカを試す意図もあり(ゆえに真面目に全て抱え込もうとする彼が滑稽に映ったともいえる)、その後戦いに赴くサンに「お前にはあの若者と生きる道もあるのだが…」と語っていることからとうに彼を認めていたともとれる。
というかサンとの初邂逅からしてアシタカの一目惚れであり問答の答えが実質「お義母さん、娘さんを僕にください!」と言っているのと同義である。

卓越した身体能力と武術の持ち主で、得物は蕨手刀(わらびてがたな)*6と黒曜石の矢尻の矢。
特に弓術は騎射――ヤックルに乗って移動しながらの不安定な状態でもタタリ神に目→眉間へ2発を射ち込み仕留めるなど名手*7ではあったが、タタリ神の呪いを受けてからはアシタカ自身の殺意や憎悪に呼応して呪いの痣が広がる=死期が早まるのと引き換えに超人的な力を得るようになった。
作中でもその戦いぶりは鬼神のごときと評され、その描写たるや、
  • 足軽の両腕を矢が命中した刀ごと引きちぎる*8
  • 移動中の騎馬武者の首を兜ごと吹き飛ばす
  • 屋根の梁を引っこ抜いてぶん投げる
  • 自分に向けられた大太刀の剣先を素手で掴み、そのまま逆方向へ針金のように捻じ曲げる*9
  • 10人がかりで開閉する城門を、気絶したサンを担ぎ左胸部に銃創が空き大量出血した状態で押し開ける
  • 水面を泳ぐヤックルに騎乗したまま、自分に向けて飛んで来る矢を刀ではたき落とす
  • 突進してくる騎馬武者の腕を甲冑ごと叩き切る
  • 至近距離で放たれた矢を素手で掴む
  • その矢で甲冑ごと武者を射抜き絶命させる
  • 曲射した矢で武者の首を跳ね飛ばす
  • 触れるだけで焼けるような瘴気を放つタタリ神の触手の渦に飛び込む
など、物語が進むにつれてどんどん人間離れしていく。
中盤では自分の意思で幻影をみせるなどある程度呪いをコントロールできるようになっていたが、単に呪いの力に限らず彼自身の大切なものを守ろうとする想いや生きようとするとする意志が力の根源であると言えるだろう。
一連の戦闘描写から人間の範疇ではあるが、歴代ジブリキャラの中でも最強格に数えられることも*10


【本編での活躍】

西方への旅の最中、偶然戦場で助けたジコ坊からの情報でシシ神の森へと辿り着き、そこで生活のために森を破壊するタタラ場の人間たちとそれを防ごうとする獣たち、自分が殺めたタタリ神の正体がその争いに敗れたナゴの守の成れの果てであったこと、そして山犬と共に戦う「もののけ姫」と呼ばれる少女・サンの存在を知る。

タタラ場を訪れた日の夜、単身で乗り込んできたサンとエボシとの戦いを強引に収めるが、石火矢の流れ弾を胸部に受け瀕死の傷を負う。
そのままサンを連れてタタラ場を後にするも途中で力尽きてしまう。
シシ神の助けと彼に心を開いたサンの献身的な看病により命を取り留めるも、この時には痣が消えることはなかった(この時点でシシ神は呪いを「解けなかった」のか「解かなかった」のかは不明だが、アシタカ自身は後者だと解釈していた)。

サンと過ごすうちに互いに心惹かれ合っていくが、アシタカが眠っていた間*11に森と人間たちとの衝突は避けられなくなっており、とうとうエボシたちシシ神の討伐隊とナゴの守の仇討に集まった乙事主たち猪神の間で開戦の火蓋が切られてしまう。
なんとか共存の道を探り戦いを鎮めようと奔走し、モロやその子らの助力を得てタタリ神へと変貌しかけた乙事主からサンを救い出すが、その合間を縫ってエボシがシシ神の首を討ち取る。

デイダラボッチと化し首を探して周囲の命を次々吸い上げ続け暴走したシシ神を止めるため、サンと協力してジコ坊から首を取り戻しこれを返還。
直後にシシ神の体液の奔流に飲まれるが生還し、多少の傷は残ったものの一時は全身にまで迫っていた呪いの痣も消えかけており、シシ神からの「生きろ。」との言葉だと受け止めた。
全てが終わった後はタタラ場に定住していく事を決め、サンとの別れ際にはお互いの居場所が森とタタラ場という違う場所であっても共に生きていこうと告げたのだった。


【余談】

声を担当した松田氏はジブリシリーズでは他に『風の谷のナウシカ』でアスベルを担当した*12
また、ラジオドラマ版『シュナの旅』ではシュナを演じている。

名前の由来は日本神話に登場する長髄彦(ナガスネヒコ)だとされている。

当初は宮崎監督が彼をメインに据え『アシタカせっ記』というタイトルにするするつもりだったが、プロデューサーの鈴木敏夫が特報で現在のタイトルのまま発表したため実現はせず、現在はメインテーマなどに名を残すにとどまっている*13

自然と生きるヒロインとして何かと比較対象になるサンとナウシカだが、人物背景はどちらかというとアシタカの方が似通っている(トルメキアをタタラ場、森の神々(主に猪)をペジテで置き換えると分かりやすいだろう)。

本項冒頭のセリフは川を挟んでサンやモロ達と初めて対峙した時のものだが、2020年頃からネット上(主にX)ではしばしばこの場面の画像にセリフを改変したものを加えて大喜利として投稿されるようになった。
なお、この年は劇場で初めて再上映が行われた年であるが金曜ロードショーでの放送はなかった。

宮崎監督曰く「究極の美青年」がコンセプト。制作当時は「オレはいま一世一代の美形を描いてるんだ!」という言葉まで残している。
しかし収録の段階になって「こんなに根暗でいいのかな」と苦笑いしたそうな。
また、最後のサンとの別れ際のセリフは実質プロポーズであり、(あの後)2人はしょっちゅう会っている」らしい。




追記・修正は曇りなき眼で見定めて判断してください。

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最終更新:2026年04月22日 22:05

*1 絶滅したとされる架空の動物。身体は人が騎乗できる程に大きく、ヤギやアンテロープ類のような枝分かれしていない二本の角が頭部の後方に向かって大きく伸びているのが特徴。

*2 設定では阿弖流為(アテルイ)の系譜とされている。また、エミシの一部がアイヌの祖先だとする学説もある。

*3 村を守るためとはいえ神を殺し穢れを被ったため、形式上では人ではなくなったものとして追放扱いということになる。一方、この際の寄合の場にはアシタカ以外若い男衆がいないことから、この村もいずれ衰亡していくことが示唆されている。

*4 この傷は二度に渡ってシシ神に身体を癒されても消えることはなかった。

*5 ジコ坊の見立で米約3俵相当。当時は細かな単位が統一されていなかったため地域によって差違が多かったが現代基準だと約180㎏となる。

*6 奈良〜平安時代にかけて東北の蝦夷の間で使われた短刀。柄の先端がワラビの芽のように丸い形状をしているのが特徴。

*7 左右どちらの腕でも引いている。

*8 一瞬なので分かりにくいが、あくまで刀を弾くため柄を狙って命中させている。

*9 空想科学読本で検証ネタに取り上げられたこともある。これに関しては呪いの力で物理法則が歪められているのでもなければ大太刀の柄を握っていたゴンザも同じ力が必要なので、「呪いの力に拮抗できるゴンザやばい」と言われることもある。

*10 上述の寿命を蝕む呪いの存在から、持久戦や長期戦を強いられた場合はさすがに分が悪いと思われるが…。

*11 月の満ち欠けが満月→三日月へと変わっていることから凡そ半月は寝たきりだったと推測される。

*12 ちなみにナウシカを担当した島本須美氏はトキ役で出演している。

*13 せっ記のせつは宮崎監督の造語で、旧字体の草冠が二つで「草に埋もれながら耳から耳へと語り継がれていく物語」という意味。