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サン(もののけ姫)

登録日:2025/12/09 Tue 00:35:35
更新日:2026/04/22 Wed 22:26:22
所要時間:約 6 分で読め…!




アシタカは好きだ。

でも人間を許すことはできない。



それでもいい。

サンは森で、私はタタラ場で暮らそう。

共に生きよう。

会いに行くよ、ヤックルに乗って。


サンとはスタジオジブリアニメ映画『もののけ姫』の登場人物。
本作のヒロインであり、アシタカと並ぶもう一人の主人公である。

CV:石田ゆり子


【概要】

犬神のモロ一族と共にシシ神の森を護りながら暮らす15歳の少女。
タイトルにもなっている「もののけ姫」はタタラ場をはじめシシ神の森を狙う人間達から山犬に心を奪われた娘という意味でつけられた呼び名で、他の獣たちや本名を知られる前のアシタカからは「山犬の姫」と呼ばれていた。

かつて森を侵した人間たち*1がモロ一族の牙を恐れ身代わりの生贄として捨てられた赤ん坊だったが、境遇を憐れんだモロに拾われ彼女の子として育てられた。
森を護るため一族と共に人間と戦う日々を送っていたが、来訪者アシタカとの出会いが彼女の運命を大きく変えていく。


【人物】

凛とした雰囲気をまとった女戦士で、主題歌の一節を引用するなら研ぎ澄まされた刃のような気高さと美しさにアシタカが一目見て心奪われたほど。
いわゆる野生児ではあるが、縄文人のような出で立ちをしており、人の言葉を普通に理解し話せる。
ノースリーブの藍色のワンピース服の上に白い服を重ね着し、山犬の牙や骨、毛皮でできた首飾りにイヤリング*2、外套を身につけているほか、頭部と両腕にバンド状の飾り紐をはめている。
額と両頬に紅い逆三角形の刺青があり*3、戦闘の際は山犬の顔を模したような朱色の仮面を被っている。ちゃんとケモ耳のパーツも作ってあるよ。
作中では2種類の仮面が登場しており、最初は顔の全面を覆う形のものを被っていたが、これはエボシとの戦いの中で破壊される。
後の戦いでは口元を露出させたタイプの仮面を新たに身に付ける。こちらは猪神たちと共に特攻をしかけた最中に失った模様。

ちなみに、最初期のTVスポットや特報映像ではシルエットや仮面姿で素顔が隠されており、その後のメインビジュアルで口元を血で赤く染めた素顔が公開された。
この場面自体は劇中ではモロから鉛玉の毒を吸い出すシーンで見られるのみだが、公開後たちまち大きな反響を呼んだ。

森を護る戦士として育ったため勇猛で苛烈な気性をしており、森を破壊する人間たちに激しい憎しみを抱いてる。
特に人間側の首領でモロに死に至る傷を与えたエボシにはとりわけ強い殺意を向けていた。
森と共に生き共に死ぬのを信条としており、当初は「死など怖いもんか!人間を追い払うためなら命など要らぬ!」と言い切るほど時に極端で刹那的だった。
ただし、戦いの上で殺すことにはなっても人喰いは忌避しており*4、猩々たちが復讐のための力を得ようと人喰いに走ろうとした時には諫言している。
また、タタリ神のことは知っていたが現物を見たことはなかったようで、アシタカの右腕が幻影を見せた時には怯え、痣を見た際には目を丸くしている*5。同場面のモロが痛ましいものを見るように目を眇めたのとはある意味対照的。

一方で、仲間と認めた者や心を開いた相手には柔らかい表情を見せたり親身に接し年相応の少女らしい面も見せるなど本質的には優しい心の持ち主であり、その献身的な振る舞いはどこか母性を感じさせるものがある*6
種族は違えどもモロやその子供たちとの絆は深く、母であるモロへの思慕は強い。また、長距離の移動ではモロの子の背中に乗っているほか、姉弟間では彼女の方が序列が高いことが劇中のやりとりからわかる。
なおそのモロの子供もアシタカに「遅い!」と言いながらも背中に乗ることを許したりする為、そういう意味では他者に優しく協力しろというのはモロの教育方針なのかもしれない。

自然の中で育ったため高い身体能力と鋭い五感を持ち、牙を加工した短剣を武器にしている。
見かけは華奢だが、普段から野山を駆け回っているのもあってか、アップで映るシーン等では筋肉もしっかり付いているのがわかる。
塀や屋根伝いを俊敏に駆け回り数mの高さを軽々と跳躍するなど、人間キャラのスペックで言えばそれこそナウシカに匹敵すると視聴者に評される。
ただし、白兵戦はともかく敵対する人間たちが石火矢をはじめとした銃火器で武装していることや、敵将のエボシ御前と一騎打ちをしながら倒せなかったこともあって、ナウシカやアシタカのような無双ぶりの印象は薄い。
言葉を話さない生き物とも意思疎通ができ、アシタカを助ける過程でヤックルとも心を通わせ、彼らやその故郷のことを教えてもらっていた*7

自分を山犬と思い込んでいると評されることが少なくないが、猩々たちに人間呼ばわりされた時に動揺した表情を見せたことなどから、実際は人間であることを自覚していると思われる。
これについては宮崎監督も収録時の演技指導でサン役の石田ゆり子に対し、「山犬になりたいと思っている」「山犬は美しく人間は醜いと考えている」「モロも明け透けにお前は醜いと言っている」と語っているほか、劇中でモロも「人間にもなれず、山犬にもなりきれぬ、哀れで醜い可愛い我が娘だ」と憐憫と愛情が入り混じった胸中を吐露している。
猩々たちをはじめ森の獣全てが彼女に寛容というわけではないようで、九州より参集した猪神たちとも森にアシタカを連れ込んだこととナゴの守の最期について「ナゴの守はお前ら山犬が喰っちまったんだろ!」と言い掛かりをつけられ悶着になっている*8
普段身に付けている装飾品や毛皮、戦闘時の仮面も彼女なりに山犬になりきろうとする現れなのだろう。
(ネイティブアメリカンやモンゴルの一部の民族では狩りや戦いに際してなどの毛皮や牙を纏いその力を宿そうとする風習があり、そのオマージュと思われる。北欧神話のバーサーカーも有名だろう。)
だからこそ自分を「美しい」と肯定してくれたアシタカの言葉に心動かされたのかもしれない。

前述の通り、野生児であるが人の言葉を理解し、武器や道具を扱う。
無論高度な知能を有するモロに育てられたというのもあるが、言葉はともかく本来野生の獣には必要ない人間の文化をなぜ身に付けさせたのかというと、おそらくはモロはサンが人間のもとに帰ったとしても生きられるようにと教えたのだろうと考えられ、終盤にも猪神たちと共に戦う道を選んだ彼女の意志を尊重しつつも、「お前にはあの若者と生きる道もあるのだが…」と別の生き方を示している。
彼女たちが住んでいる岩穴も岩を積み重ねた祠のような形状をしており、かつては人間と交流があり崇められていたことが示唆されており、その時人間から学んだ知識や技術を教えたのかもしれない*9
ちなみに、裁縫や(干し肉も含めて料理とはいえないまでも)食料の調理法も身に付けており、アシタカを看病する傍ら戦いで破れた彼の着物や頭巾を直していたり森を発つ彼に預かっていた物と一緒に愛妻弁当弁当*10を置いていっており、意外にも嫁力高めなところを見せている。
終盤にはアシタカから命を救われた礼として贈られた玉の小刀を身に付けるようになる。
凄惨な戦いで武器や装飾品を次々失っていくなか、彼の想いがずっと守り続けていたかのように最後まで小刀が彼女の身を離れることはなかった。


【本編での活躍】

エボシの襲撃に失敗し谷川へ転落したモロを助けている最中に対岸で甲六たちを助けていたアシタカと対面。
この時は敵意を感じなかったためか「去れ」と促し場をあとにした。

その夜、単身タタラ場に乗り込みエボシを討とうとするが、アシタカに阻まれ当身を喰らわされそのまま連れ出される。
途中で目を覚まし、石火矢の流れ弾を喰らい虫の息のアシタカを邪魔をしたと怒り殺そうとするが、彼に「生きろ。」「そなたは美しい。」と言われたことで心が揺らぎ、他の人間とは違う何かを感じたサンは森の泉まで彼を運び裁量をシシ神に委ねる。
シシ神がアシタカを助けると、以降は寝たきりのアシタカを献身的に看病し続けた。シシ神の意志を尊重してのことはもちろんだが、二人の間に心惹かれ合う想いが生まれつつあったのも事実であった。
口移しで干し肉を食べさせるシーンや岩穴でアシタカに寄り添って眠るシーンは大っぴらにラブシーンを入れられない代わりと言われているが、だからって既に男女の仲とかそういうんじゃないと思うからな!*11

しかし、その間にも森と人間たちとの対立は深まり、とうとうエボシたちによる大規模なシシ神退治の部隊とナゴの守の仇討に集まった乙事主たち猪神たちの戦いが勃発してしまう。
乙事主を手助けするため兄弟たちと加勢するも人間の兵器の前に猪たちは全滅。
深手の乙事主を守りながら撤退するも、兄弟たちと離散した直後にタタリ神に変貌し始めた乙事主に巻き込まれてしまう。
なんとかアシタカとモロによって助け出されるも、モロはここで力尽きてしまい、さらにエボシに首を取られたシシ神が暴走し、森の崩壊が始まってしまう。

モロの死に際の攻撃で瀕死の傷を負ったエボシをあくまで生かして返そうとするアシタカを一度は殺さんばかりの剣幕で拒絶するも結局殺せず、護ってきたものを喪った失意に打ちひしがれそうになるもアシタカに鼓舞されシシ神の首を取り戻すため共に奔走。
ジコ坊から首を取り戻しこれを返還し、暴走したシシ神を鎮めた。
その後、アシタカの好意に応えつつも、それでも人間を許すことはできないとシシ神が去り一から再生を始めた森で引き続き生きていく道を選び、また会う日を誓って兄弟たちと森へと帰っていった。
人間と山犬の狭間で揺れ続けていた少女は、ようやく未来に向けて歩み出したのだ。


【余談】

声を担当した石田氏はジブリシリーズでは他に『平成狸合戦ぽんぽこ』のおキヨ、『コクリコ坂から』の北斗美樹役を担当。
今作ではカヤ役も兼任しているが、度々議論のタネになる玉の小刀のくだりは(諸々の背景も含めたとしても)兼役ということで本人も余計に色々思うところがありパヤオに尋ねたところ、「男なんてみんなそんなもん。」とバッサリ言われたそうな(笑)。
その玉の小刀も、ジブリパークにてグッズとしてペンダントが販売されている(ただし、実際の黒曜石は扱いに注意が必要なためこちらはソーダライトが使用されている)。

自然と生きるヒロインとしてナウシカとは何かと比較対象にあげられるが、人物背景はどちらかというとアシタカの方が似通っている。
ナウシカの要素を二つに割った結果がアシタカとサンというべきか。

名前の由来は初期プロットの絵本のヒロインの名前が「三の姫」(三番目の姫)だったことから。
一応彼女もモロの三番目の子という扱いではある。

本編では何かと張り詰めた表情が多かったサンだが、公式ムック本『もののけ姫を読み解く』の裏表紙ではモロの傍らで屈託なく笑う姿を見せている*12
もしかしたら一族が平和な時はこんな表情も見せたのかもしれないし或いは物語後のこれから見せてくれるのかもしれない。

千と千尋の神隠し』の設定資料集にて荻野千尋はサンの子孫であるとする記述がある。
それがどの程度反映されているかは不明だが、神に拾われ育てられた彼女の末裔が今度は神を救う側になるとは数奇なものである。
その場合相手は間違いなく彼なわけだが……わからんか、愛だ。愛。
また、アシタカとは(あの後)しょっちゅう会っているらしい。末永く爆発しろ





追記・修正は森を大切にできる人にお願いします。

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最終更新:2026年04月22日 22:26

*1 エボシたちのタタラ場の人間と混同されることがあるが、タタラ場成立時期とサンの年齢を逆算すると辻褄が合わないので、別の一団であると思われる。また、昔から囁かれているエボシとの親子説も、合理主義者で無神論者のエボシがわざわざ「神々への生贄を捧げる」かと考えると大分怪しいものがある。

*2 設定資料によればこちらは翡翠。

*3 生贄に出される時の儀式で彫られた、自分で刻んだなど諸説あるが、現在まで真相は不明。

*4 タタラ場では山犬に襲われ死んだ者を山犬に食われたと囃し立てていたが、劇中を見る限りモロたちも食料として人間を狩ることはしていなかったようである。

*5 尤もヒィ様のセリフにあるように、神獣クラスの獣がタタリ神になること自体極めて稀である。また、ヤックルからアシタカの人となりを聞かされた矢先だったため、彼のような人物が神殺しを行ったとはにわかには信じがたかったのかもしれない。

*6 咀嚼した干し肉を口移しで与えるのも狼が子供や弱った仲間に獲物を分ける時に見られる行動と同じで、彼女も小さい時にモロにやってもらったものと思われる。

*7 ちなみにモロたち言葉を話す神獣たちは口の動きとセリフが一致しておらず、これはサンやアシタカたちエミシ一族など自然への信仰を持つものにしか声が聞こえていないからという説がある。

*8 猪神たちとは乙事主とモロがその場を取り修めたため最終的に共同戦線を張るまでに信頼を得たが、猩々たちには敗走時に戦犯とばかりに糾弾された。

*9 サンが身に付けている耳飾りや飾り紐、寝床にあった皿など自然界では手に入らないであろう品もいくつかあるので、代々残されていた物や牛飼いたちを襲撃した際に荷駄から拝借した物もあるかもしれない。

*10 絵コンテによればトチもちと栗の実。

*11 この辺は一連の流れを見た鈴木Pが「この二人デキてるんじゃないの?」と発言したのに対し宮崎監督が「そんなの見ればわかるでしょ!」と返答したとの話が飛躍したもので、それ以上も以下の意味もないと思われる。

*12 元々は設定資料用に書き下ろされたもので、ジブリパークで販売しているグッズのminiatuartにも採用されている。