登録日:2026/03/12 Thu 23:50:38
更新日:2026/08/09 Sun 16:11:10
所要時間:約 10 分で読めます
概要
SCP-2180-JPは、
東京都のたい焼き専門店「鯛福」の店主・立川秀治郎さんである。
年齢については記事内で言及されていないものの、著者であるTeahermitcrab_001氏が自身の著者ページで「青年」と表記しているため、高く見積もっても30代前半。
ガンで亡くなった父親に代わり、曾祖父の代から続く店を継いだばかりであった。
なお、「鯛福」は立川氏が自らの異常性が原因でノイローゼになってしまったうえ、財団に収容されたことで、現在は閉店している。
彼が
たい焼きを作ると、その内1つだけが成人並みの発話能力と魚類並みの運動能力を持つ、生きたたい焼きとなる。
餡は臓器、皮は皮膚、生地は筋線維として機能する。
SCP-2180-JP-Aに指定されているそのたい焼きは、原料・形状に多少の誤差があっても、同一の人格と記憶を持っている。
生命を得るのは同時に1個のみのようで、崩れたり食べられたりして死ぬまでは異常性を保ち続ける。
仮に異常性を喪失した場合、立川氏が新しく作ったたい焼きのどれか1つに、また同じ人格が発生する仕組みである。
このたい焼きだが、鯛としての自意識が非常に強く、不快極まりない陸上を嫌い、入水と遊泳を積極的に試みる。
しかし体がたい焼きなせいで水中ではまともに動けず、意識も途切れ、そのまま徐々に体が崩れて死んでしまう。よって、水中での生活はまず不可能である。
心は魚なのに、菓子の体のせいで水中では生きられない事実は当人(?)にとってはストレスでしかなく、そのせいなのか、インタビューでも声を荒らげたり舌打ちをしたりといった様子が見られる。
そのため、生みの親である立川氏への態度はそこそこ乱暴。
そもそも自分が動いたり喋ったりできると気付いたのも、父を亡くした寂しさを引きずったままの、辛気臭い顔の立川氏に食べられるのが我慢ならずに抗議したことがきっかけである。
ちなみに財団が発見に至った経緯は、「店主がたい焼きと話している」という通報から。
発見時の立川氏はたい焼きを水槽で水没させていたようだが、通報までされたあたり、よほど錯乱していたと思われたのだろうか……?
立川氏とたい焼きの関係
このたい焼きが抱えるストレスは、立川氏の精神にダイレクトに悪影響を与えることが分かっている。
特にたい焼きを作りさえしなかった場合はストレスの上昇が著しく、ほんの数日でも頭がまともに働かない状態になってしまうという。
そのため立川氏の精神を守るためには定期的なたい焼き作りが不可欠であり、特別収容プロトコルでも、原料と調理器具を提供するよう記載されている。
なお、反対に立川氏がたい焼きの精神に影響を及ぼすことはない。
お互いにストレスを倍増させあい、どちらか、あるいは両方の心が壊れる……なんて事態はこの性質により起こり得ないと思われるが、なんとも不平等な話である。
不幸中の幸いか、立川氏はストレスを抱えさせられる日々にうんざりしてこそいるが、かろうじてメンタルまで折れてはいない。
ストレスの根源であるたい焼き自身には何の非もないと認識していて、現状をどうにかして大切な店を再び営業したいという強い意欲を持ちつつも、財団に対して食って掛かるようなこともしていない。
とはいえたい焼きが置かれている状況は、陸でも水中でも苦しみ続ける、終わりの見えない地獄めいたもの。
その苦しみを味わわされる立川氏の精神状況は、着実に悪化している。
そこで財団は、たい焼きの安定した「収容」と立川氏の「保護」を確実なものとするために、たい焼きの望みを叶えてやるための実験を提案。
実験失敗=死であるたい焼きは、最初こそ「何回も死ぬなんてごめんだ」と反発していたが、最終的には「勝手にしやがれ」と折れ、形を多少変え得ることへの了承も得られた。
こうして、たい焼きを水中で生き延びさせるための試行錯誤が始まるのだった。
……遅ればせながら、ここでこの作品のタイトルを。
SCP-2180-JP - およげ(るのか?)!たいやきくん(?)
実験記録
たい焼き、もといSCP-2180-JP-Aは自己認識こそ魚だが、先述どおり体は餡や生地であり、解剖したとて本物の臓器なんて出てこない。
そのため、生存に何が必要なのかすら厳密には分からない、手探りの状態で実験がスタートしている。
対象: SCP-2180-JP-A
実施方法: SCP-2180-JP-Aをビニールの真空パックに入れた後、水中に投入する。
結果: 真空パックされた時点でSCP-2180-JP-Aは生命活動を停止し異常性を喪失した。
どうやら真空状態では生きられないらしい。
対象: SCP-2180-JP-A
実施方法: SCP-2180-JP-Aに撥水剤を塗布し水中に投入する。
結果: 数分間は問題なく遊泳していたものの、徐々に隙間から水が侵入し重量で沈み、やがて崩壊した。
残念ながら命を落としたものの、数分とはいえ生存したのは進歩と言える。
たい焼きは一般的に、半分ずつの型に生地を流し込み、その2つを合わせて作られるが、その時に生じた撥水剤を塗布できない隙間から水が入ってしまったらしい。
対象: SCP-2180-JP、SCP-2180-JP-A
実施方法: SCP-2180-JPに従来の二枚の型ではなく、一枚のたい焼きの型を用いてSCP-2180-JP-Aを作製させ、実験記録2180-4と同様の手順の後僅かな隙間を樹脂で埋めて水中に投入する。
結果: SCP-2180-JP-Aが問題なく生成される。水分の浸透の大半が抑えられたものの、重量によってSCP-2180-JP-Aは沈んだまま一切の行動が不可能になった。SCP-2180-JP-Aは強い不快感を示した。
1枚だけの型と樹脂により、-4の失敗の原因である隙間の問題は概ね解消できた。
しかし生地と餡の密度が増したことで、自分の体を動かせないほど重くなってしまったようだ。
対象: SCP-2180-JP、SCP-2180-JP-A
実施方法: 実験記録2180-6と同様の手順の後、強力モーターを内蔵するスクリューをSCP-2180-JP-Aの尾部に接着し水中に投入する。
結果: スクリューの回転とともにSCP-2180-JP-Aは遊泳を開始するが、水流によって尾部が引き伸ばされそこから水分が侵入し、最終的にスクリューが外れ崩壊した。
重くなった体をたい焼き自身に動かしてもらうのではなく、モーターとスクリューで動かすことに。
上手くいくかと思った矢先、動けるだけの強さの水流に生地が耐えられないことが判明し失敗。
生地の耐久性を改善しようとしても、実行すればたい焼きの重量も遊泳に必要な水流の強さも上がり、結局その勢いに耐えられず再び自壊……という結果になってしまうだろう。
ご覧のように、「生きたたい焼きが水中で安定して生きられるようにする」というのは、財団でも手こずるほどの難題だった。
そんなこんなで失敗が続き、やがて立川氏も音を上げてしまう。
たい焼きを説得すれば諦めてもらえるかもと考えるも、担当研究員の藻川博士は、
- SCP-2180-JP-Aは内部構造まで魚類に近しくなっており、実際の魚と同じく、陸上では決してストレスは解消されない。
- だからと言って魚以外の形にしただけでは、魚としての自意識・タイとしての本能は消えない。
- ゆえに、SCP-2180-JP-Aは、たい焼きである限り常にストレスを抱え続ける。
と、変形や説得のようなアプローチでは、現状は改善できないと分析していた。
SCP-2180-JP: たい焼きで、ある限り……
藻川博士: [沈黙]思いつきました。
SCP-2180-JP: え?
藻川博士: SCP-2180-JP-Aの収容方法。思いつきました。あなたの協力も必要です。少し話しましょう。
SCP-2180-JP: え、ええ分かりました。僕にできることなら。
実験開始から約5か月後の、2025年8月15日。
藻川博士が立川氏と数名の研究員を連れて訪れたのは、「鯛福」の調理場だった。
- 実験記録2180-28 - 日付2025/8/15
対象: SCP-2180-JP、SCP-2180-JP-A
実施方法: SCP-2180-JPにたい焼きではない型を用いて、閉店した「鯛福」の調理場でSCP-2180-JP-Aを調理させ、数名の研究員に複数の名称で呼称させることにより「たい焼き」としての自意識を中和させる。
たい焼きが泳ぎたがるのは、鯛を象った型で「たい焼き」として作られたため。
なら、形も呼び方も「たい焼き」から遠ざけ、別の概念を混ぜたとしたら?
「たい焼き」としてのアイデンティティを適度に揺るがせば、鯛としての自意識に由来していた水中への執着も、立川氏を悩ます強いストレスも抑えられるのでは?
それこそが藻川博士の狙いだった。
SCP-2180-JP-Aの「水中で生きたい」という望みを叶えるプランは、もう何度も失敗した。
ならばそのような望みを抱かないよう誘導する方向に舵を切るのは、理に適っていると言えよう。
当然、魚類とは程遠い形状にされたことについてSCP-2180-JP-Aからは猛抗議を受けたが、
- たい焼きはこの菓子の亜種
- たい焼き専門店の調理場で作られたのだから、たい焼きなのは間違いない
と、言葉を尽くして説得。
その上で複数の呼び名で自意識を揺るがすことで、抵抗の意思を喪失した。
博士の狙い通り、新たな姿となったかつての「たい焼き」は、複数の概念が混ざり合ったことで情報の処理が不可能になった。
発話能力は失われ、残ったのは僅かな運動能力のみ。
以降、立川氏が正真正銘のたい焼きを調理しても異常性が芽生えることはなく、立川氏の精神も改善。実験は見事大成功に終わった。
無力化したわけではないため、解放も鯛福の営業再開も叶わないだろうが、Anomalousアイテムへの再指定が検討されており、何かしらの処遇の変化は起こるだろう。
もしかしたら財団に雇用され、サイトの調理師として厨房に立ち、たい焼きを振る舞う日も来るのかもしれない。
……まあ、この見た目なら、自分が何なのか曖昧になるのも納得である。
余談
この作品は2025年に開催された「オブジェクトクラス最強決定戦」に、Euclidチームの作品として参加している。
その名の通り、Safe・Euclid・Keter・その他の4陣営に分かれて、投稿作品のRateの合計を競う
コンテストである。
著者ページでの裏話によると、本来出す予定だった下書きがボツになり追い詰められた中、このアイデアを土壇場で思いついたとのこと。
本格的な
批評を受ける時間もなかったようで、投稿時間は締め切りの僅か42分前と、かなりギリギリであった。
追記・修正は和菓子を味わいながらお願いします。
- 地域によって名前が違いすぎて毎回論争が起きる、丸くて中にあんことかが入ったホカホカの和菓子!地域によって名前が違いすぎて毎回論争が起きる、丸くて中にあんことかが入ったホカホカの和菓子じゃないか! -- 名無しさん (2026-03-13 00:05:39)
- バックアップから初稿者を確認しようと思ったが、向こうの最初はもう流れちゃったか -- 名無しさん (2026-03-13 00:10:57)
- ↑2 多分これはパンジャンドラム化して名称ごとの代理戦争起こりそうだな。 -- 名無しさん (2026-03-13 03:34:27)
- ハイハイどどうせあの歌なんでしょからのウルトラCの展開に草 -- 名無しさん (2026-03-13 07:50:32)
- これはオブジェクト側からしたら、問題解決ではなく尊厳破壊されてるだけなのでは…? -- 名無しさん (2026-03-13 07:56:19)
- 自我は1つしかないのがポイントだな。複数自我があると地域によって名前が違いすぎて毎回論争が起きる、丸くて中にあんことかが入ったホカホカの和菓子の地域名ごとの自我になり得たかもしれない -- 名無しさん (2026-03-13 08:21:32)
- ↑2 オブジェクト指定が入ってるのが職人さんの方だから、保護すべきオブジェクトはたい焼きじゃなくて職人さんなんだろう -- 名無しさん (2026-03-13 08:40:17)
- 途中からうっすらそうなるんじゃないかな…と思ってたけど分かっててもオチで笑ってしまった -- 名無しさん (2026-03-13 08:53:44)
- 大丈夫?SCP−1210−JP−Jみたいにならない? -- 名無しさん (2026-03-13 12:44:45)
- 名前が混沌を極めるのは収容プロトコルとしては狙い通りだろう。その混沌とした呼称のおかげで元たい焼きがアイデンティティの崩壊に至ったのだから。…たい焼きと職人さんのストレスが連動しているのなら、考えるのを辞めさせられた元たい焼きの状態が後々悪影響にならないことを祈る -- 名無しさん (2026-03-13 13:53:55)
- この焼き菓子の名前が決まらないのも一種のSCPだろって -- 名無しさん (2026-03-13 17:20:57)
- 声にならないだけで鯛焼き君の自我がバラバラに溶けてしまってないかこれ?w -- 名無しさん (2026-03-13 17:56:55)
- SCP-2180-JP「おい貴様!俺の名前を言ってみろ!」 -- 名無しさん (2026-03-13 20:48:20)
- 知的存在のアイデンティティを破壊している辺り、やはり財団は冷酷……モノはホッカホカだけどな -- 名無しさん (2026-03-14 01:43:24)
- ↑13 立ててほしい項目提案ページから追えました。hellls氏です -- 名無しさん (2026-03-14 11:58:00)
- ↑調査おつです。別の方か。それはそれで複数人がこんな記事を!w -- 名無しさん (2026-03-14 15:27:21)
- 好きだわぁ、こういうタイプのSCP -- 名無しさん (2026-03-15 18:31:01)
最終更新:2026年08月09日 16:11