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叫び(絵画)

登録日:2026/10/12 Mon 02:26:32
更新日:2026/10/12 Mon 02:30:29NEW!
所要時間:約 5 分で読めます







「叫び」とは、ノルウェーの画家、エドヴァルト・ムンクによって製作された絵画である。

作者の名前とセットにした、「ムンクの叫び」と言う名前で紹介されたり名前を憶えている人もいるかもしれないが、こちらは厳密には正式名称ではないので注意。






絵画の紹介


作成されたのは1893年であり、テンペラ・クレヨンによって描写がなされている。

まず初めに真っ赤に染まった夕暮れのフィヨルドが背景として描かれているのだが、何故かそれらがグニャグニャと歪んだ形状になっており、この時点で異様さを感じられるものになっている。

そこから視点を手前側に寄せていくと、中心に1人、奥側に2人の計3人の人物が描かれているのだが、この内、中心の人物が両手を顔に当てつつ、凄まじい形相を浮かべた状態を極度にデフォルメした姿で描かれており、見た人に強烈なインパクトを残してくる内容になっている。


この中心の人物の表情が強く印象に残るものである事から、(絵全体か、この人物単体かを問わず)パロディの絵などが大量に作成されており、他にもこの絵を元としたネタなども存在する。


作成当初は周囲からの評価は散々なものになっていたが、今日では評価が変わり、(上述したパロディ作品が数多く作られている点も含め)彼の代表作の1つとして紹介される程になっている。

この絵は現在、ノルウェーのであるオスロにあるオスロ国立美術館が所蔵しており、そこで実物を見ることが出来る。






描かれている人物と「叫び」の真相



タイトルが「叫び」であること、そして作品を見た時に自然と目に行くであろう、凄まじい形相の人物の姿から、「(描かれている)人物が絶叫している瞬間」を絵にした物だと思われることが多い。
また、「ムンクの叫び」と言う俗称から、描かれている人物はムンク本人で、「ムンクが叫んでいる」と思っている人もいるかもしれない。




だが結論から言うと「中心に描かれている人物はムンク本人」言う部分は(後述する)彼自身の体験を元にしている、と考えればモデルであると言ってもあながち間違いでもないのだが、「叫び」のタイトルが差しているのはこの人物という訳ではない。


ムンク本人がこの絵の元となる状況について、「友人2人と外出していた際に、血のように赤く染まった空を見たことで、凄まじい疲労感に襲われて(友人達が先の方へ歩いて行く横で)その場に立ち尽くし、強い不安を感じた。その際に自然を貫く果てしない叫びを聞いた。」と言う旨の内容を自身の日記に記している。


つまり、中心にいる人物は叫んではおらず、むしろ「自然」に叫ばれている側であり、「自然の叫びに対して耳を塞ぎながら凄まじい不安に打ち震えている」状態が絵になっている、というのが真相になっている。
(更に言うと、奥側に描かれているのが、「ムンクの状態に気付かずに先を歩く友人2人」がモデルであるという事も分かる。)



類似する絵画の存在



赤く染まったフィヨルドの夕景を元に展開されるこの絵だが、実は「叫び」の前後に描かれた絵画作品でもこのフィヨルドの夕景が同じ様に使用された絵が存在する。



それが「絶望」と「不安」の2作品で、両者は「叫び」と背景描写が酷似した物になっている。
また、絵画の舞台とされている「エーケベルクの丘」から、「エーケベルク3部作」等の俗称でひとくくりにされることもある。



まず「絶望」については、フィヨルドの夕景を背に背景に2人、中心に1人、人物が配置されており、背景以外のシチュエーションも「叫び」と類似しているのだが、「叫び」にはあった、中心の人物の描写が異なっており、デフォルメ等も特に見られないのが特徴になっている。
因みに本作は「叫び」作成前の1892年と、「叫び」作成後の1894年にそれぞれ同名の絵が描かれているのだが、それぞれ中心の人物の描写が異なり、前者は帽子をかぶった男が右の方を向いており表情等が読み取れないのだが、後者は男が背中を沈んだ面持ちで背中を丸めながら正面側を向いており、帽子等も身につけていない状態になっている等の違いが見られる。

次に「不安」についてだが、こちらはフィヨルドを背に、大勢の人物がこちらに目線を向けているのが特徴。
しかし、その全員が無表情であり意図も読めないため、タイトルの通りうっすらとした不安感を掻き立てられ、前2作にも劣らない狂気を感じられる作品に仕上がっている。
「大勢の人物がこちらを見ている」と言う構図が用いられたムンクの作品は、他にも「カール・ヨハン通りの夕べ」があり、作成時期も近い。



5つの「叫び」



「叫び」は様々なパロディ絵などが存在すると上述したが、実はムンク本人も同じ題材で幾つか絵を描いており、彼自身が作成した「叫び」は計5種類存在している。
(他にも素描なども残されている。)


5つの内最も有名な絵画はこれまで触れてきた1893年のテンペラ・クレヨン製の絵になっており、これが1作目の「叫び」になっている。


残りの2作目から5作目の「叫び」についてだが、制作年や特徴は以下の通りになっている。


2作目:1893年作成(1作目と同じ)。パステル画。1作目に比べると色味が薄く、また1作目にあった、湾内の船が描かれていない。

3作目:1895年作成。パステル画。青色で描かれている部分が多くなっており、また、1作目では背景で歩いている人物2人がどちらも背を向けているのに対し、本作では片方が悲嘆にくれているかのように丘の手すりにもたれている。

4作目:1895年作成。リトグラフ(石版画)。他作品と異なり版画であり、黒単色の絵になっている。白黒の絵になって線が強調されるようになった関係か、中心の人物の表情が克明になっており、他作品とは異なる印象を抱く作品になっている。

5作目:1910年頃作成。テンペラ画。構図は1作目と大差ないが、中心に据えられた人物が他作品のものと異なり白目をむいており、結果として不気味さが大きく増している。



構図自体は5作とも同じではあるのだが、上述した通りそれぞれディテールが微妙に異なっている事で、受ける印象などにも違いが出てくるため、気になった人は見比べてみるのも面白いかもしれない。



余談


  • 本作は何度か盗難に遭っており、1度目は1994年のリレハンメル冬季オリンピックの開会式の際にオスロ国立美術館所蔵のものが盗難に遭い、2度目は2004年にムンク美術館からテンペラ画版が「マドンナ」と共に盗難されており、どちらもその後犯人が捕まり、絵自体も見つかっている。

  • オスロ国立美術館に所蔵されている1作目の「叫び」には左上にノルウェー語で「凶刃にしか描けない」と言う鉛筆の落書きが記されている。これは作成からおよそ10年後に判明し、当初は客の手によるいたずら書きかとされていたが、後にムンク本人が自ら書いたものだと判明した。




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最終更新:2026年10月12日 02:30