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勇者のクズ

勇者の登録日:2026/11/01 Sun 01:40:46
勇者の更新日:2026/11/01 Sun 23:28:58NEW!
勇者の所要時間:約 5 分で読めます




勇者なんて、最低のクズがやる商売だ。

しかし、たとえ俺たちが殺人を商売にするような最底辺のクズだとしても、
ささやかな良心すら失ったら、それこそ本当に『最低のクズ以下』の何かに違いない。


『勇者のクズ』は、ロケット商会によるライトノベル、およびそのコミカライズ作品。

原作者:ロケット商会
漫画版作者:ナカシマ723
小説版イラスト:草河遊也(カドカワBOOKS版)、toi8(ダッシュエックス文庫版)
ダッシュエックス文庫版キャラクターデザイン:ナカシマ723


【勇者の概要】

ジャンルは異世界ファンタジー……ではなく、強いて言えば任侠もの。
現代日本で殺し屋とマフィアが抗争を行う異色の勇者小説である。

人体改造によって異能を得た犯罪者「魔王」と、薬物で身体を強化して彼らを殺す「勇者」が存在する現代日本。
「魔王・勇者」の概念を露悪的に現代へ落とし込んだような世界で、金欠の「勇者」ヤシロと、彼に弟子入りを迫る女子高生たちを中心に描かれる異能アクション。
作者は後に『勇者刑に処す 懲罰勇者9004隊刑務記録』なども手がけるロケット商会。
ダークで殺伐とした設定や描写が飛び交うが、コミカルな描写も多く、冒頭の独白が象徴するように主人公たちはなんだかんだで善良サイドではある。

第1回カクヨムWeb小説コンテストの現代アクション部門で大賞を受賞し、カドカワBOOKSから書籍化されたが、1巻で打ち切りに。
しかし、もともと本作のファンだった漫画家・ナカシマ723が原作者と相談してコミカライズの権利を確保し、自ら漫画化に乗り出した。
その制作資金には、自身の作品の無断転載に対する訴訟で得た賠償金が投入されたとのこと。

こうして始まった同人版が支持を集め、リイド社「COMIC BORDER」での商業連載へと発展。
2026年にはOLM制作で加藤陽一がシリーズ構成、ウシロシンジが監督を担当しテレビアニメ化され、1月から6月まで連続2クールで放送。
また、原作小説も集英社のダッシュエックス文庫から復刊した。
小説の打ち切りから、ファンによる自主コミカライズを経て、商業連載・アニメ化・小説復刊まで辿り着いたという、なかなか類を見ない経歴を持つ作品である。
アニメ版のキャラクターデザインも書籍版ではなく漫画版のものをハッキリと踏襲している。


【勇者の用語】

  • 勇者
魔王の討伐を生業とする者たち。
免許を得て薬物と武器を扱い、報酬と引き換えに魔王を殺す職業であり、人格の高潔さを保証する肩書ではない。
いわば法で殺人を認められた傭兵である。
なので作中における「勇者」は犯罪者スレスレの扱いを受ける言わば"夜の住人"という扱いであり、実際に社会的身分の怪しい者も多い。
なんなら、魔王に雇われて敵対勢力を潰すことで糊口を凌ぐ勇者、無免許の勇者、指名手配中の勇者、といった(原義での)勇者の風上にも置けないようなのもいる。
……のだが、それを半ば隠して治安維持を掲げる勇者養成学校《アカデミー》が存在したり、何かと倫理的に怪しい。
一応、《アカデミー》はイメージの悪い"勇者"という職業の民度改善とイメージアップを目的にしているらしいが。


  • 魔王
エーテル強化手術によってE3を内臓として違法に闇移植、恒常的な異能を獲得した者たち。
全員人間だが、E3を直接取り込んだことにより人外のような特徴が出ているものも多い。
要するに薬物で人外の力を手にしたヤクザの親玉と言えばだいたい合っている。
闇社会における集団の頭目≒"魔王"というような立場なので、魔王どうしは基本勢力争いをしているし、一人倒したところで戦いが終わったりもしない。
もちろん言葉も通じはするものの、魔王になるようなのはすべからくマフィア、ヤクザの類であるので基本的に狡猾、かつ強欲であり、対話の余地は皆無である。


  • E3
エーテル・エフェクト・エンハンサー。体内のエーテルを強化、現実を希釈することで破格の身体強化と自己治癒能力を得ることができる違法薬物*1。
小型の銃型注射器に格納された赤い液体を首筋に注射するのが主な使い道だが、注射せずに液体を皮膚から吸い込むだけでも有効。
副作用として暴力衝動や中毒性を有し、闇取引も横行するわ娯楽目的で使う人間も多いわ、その上で非常に高額な上に結構な頻度でヤクザが使用しているわの相当に碌でもない代物。
他作品で例えるなら忍者と極道の地獄への回数券みたいな、明らかに悪役が使う側のアイテム……なのだが、本作では主人公から女子高生までが主要装備として使用する。
効果時間は約10分ほどで、それが切れると身体能力は元に戻るので、勇者はいつでも使えるように携帯しておくのが基本。また常備・携帯しておくために継続的に買い足す必要があるため、勇者にとってはE3の購入費が業務上の経費となる。

さらに、接種後の効果時間が切れるまでの間、固有の異能としてエーテル知覚が使えるようになる。
自分に見えている薬物幻覚が他者にも影響を齎すようになる、という機序の固有能力。幻視、幻聴だけでなく「時間感覚の延長」や「読心」などまでもが事実として出現する。
薬物で得た幻覚を現実化する、という都合、「当人にしか見えていないので対策困難」*2という性質を有する。
能力がどのようなものか、だけでなく射程や攻撃範囲すらも確認困難であり、全般的に初見殺し性能が高い。
発現するエーテル知覚の方向性にはある程度傾向があり、能力者本人が自分に欠けていると思っているものを補うように能力が開花するのだという。
(たとえば、怖がりのセーラが「相手の脅威度を検出するエーテル知覚」、人の気持ちが汲めない亜希が「心を読むエーテル知覚」に開花する等)

E3による肉体面への特徴的な恩恵として、肉体能力の向上に加えて急激な再生能力があり、銃創などものの数秒、骨がバキバキに折れてても数分で戦線復帰できる。
ただし切断された部位の再生は全くできないという欠点がある。これはエーテルキメまくりな魔王でも同じであるため、そんな魔王をブチ殺す必要がある勇者たちは、銃器ではなく刃物を使って戦う者が多い。
これによって本作は武術バトル的な描写も多い。



【勇者の登場人物】


【勇者】


  • 《死神》ヤシロ
CV:鈴木崚汰
勇者。ヤシロは通り名のようなものであり、本名は未詳。
好きなものはビールとピザとカードゲーム《七つのメダリオン》*3。
人となりはチンピラそのもの。勇者のことを「最低のクズの仕事」と自嘲するが、同時に弱きものを守る正義の味方としての願望も捨てきれずにいる。

思考を加速するエーテル知覚を持ち、発動することで全てがスローモーションのように体感される。相手の初見殺しにも十分に観察・思考してから対応できるため、能力バトルの世界においては非常に頼もしい能力。
そして純粋に卓越した剣士でもあるため、エーテル知覚の相性の良さもあってこと近接戦闘では無類の強さを誇る。
相手と鍔迫り合いの状態になった時に力加減を駆使して体勢を崩させ即座にボコる「寄せ」、刃を滑らせてそのまま剣を握った相手の指を削ぎ落とす「指切り」といった主人公にあるまじきえげつない小技を操る。

  • 城ヶ峰亜希
CV:鬼頭明里
本作のヒロイン(?)で、ヤシロのもとに押しかけた勇者見習いの女子高生。
往年の「いまいち萌えない娘」によく似た、美形ではあるが微妙に可愛くはない特徴的なキャラデザが特徴。

他者の思考を読むエーテル知覚を持つ。これは相手のエーテル知覚の正体すら即座に看破できる強力なもの。
……なのだが、本人は異常なほどの正義感と自信を持つと同時に思い込みも激しい人の話を聞かないタイプの性格。
ゆえに人の気持ちを汲めず、そして何より相手の思考を読んでも、尋常ではなく説明が下手なので周囲に情報を共有できないなど、だいぶ扱いきれていない。
本人はほとんどその能力を活かしきれていなかったが、高速で思考したヤシロの脳内を亜希が読むことで二人分の手数を作り出すという戦法を編み出した。

メインヒロインのはずなのだが、その精神的未熟さから、作中登場人物・作者・ファンすべてからウザキャラ扱いされている節がある。


  • 印堂雪音
CV:春海百乃
亜希の同級生で、ヤシロを「教官」と呼ぶ寡黙な勇者見習いの少女。
犬耳のような髪ハネでさながら小動物のような見た目。
口数少ないがヤシロにだけはなついており、事あるごとにひっつく。

二刀の短剣を駆使する戦闘の熟練者。
学生ならざる戦闘技術に加えて「転移ホールが見え、そこに飛び込むことで空間移動できる」エーテル知覚も持ち、近距離間での瞬間移動を織り交ぜることができる。
元は北海道の少年兵上がりであり、社会常識がいろいろ怪しい。
ポテンシャルはあるがとにかく学力がなく、九九すらまともに言えない。

  • セーラ・カシワギ・ペンドラゴン
CV:花守ゆみり
偉大な勇者にして勇者学校《アカデミー》の校長たる《アーサー王》の娘で、亜希や雪音の同級生。
不良めいた態度を取っているが、実際には二人に振り回される面倒見のよい常識人。
本心から勇者(というより父)に憧れているものの、先述の通り勇者とはヤクザ崩れのようなグレーな職業でもあるため、実父アーサーを含めた周囲からは遠ざけられており、すれ違い気味。

基本的なフィジカル・技術面では血統と英才教育により非常に優れている……のだが、
「相手の脅威度を察知する」エーテル知覚と「(身分の高い人物の娘であるが故に)護身を極度に重視して覚えこまされた剣術」の相乗効果で、少しでも自分より強い相手にはビビり散らかして逃げ腰になるか、さもなくば一撃必殺を狙おうとする悪癖を持つ。



  • 《ソルト》ジョー
CV:田所陽向
ヤシロの友人の勇者。好きなものはビールとピザとカードゲーム《七つのメダリオン》。
元ヤクザの殺し屋で、「物体から生える導火線*5が見える」というエーテル知覚を持ち、それを鉈で切り離すことで人間を含むあらゆる物体を強度に関係なく爆破する危険人物。ファンからの通称は「爆死の魔眼」とか「直死のドカン」とか。

  • 《音楽屋》イシノオ
CV:平川大輔
ヤシロの友人の勇者。好きなものはワインとチーズとカードゲーム《七つのメダリオン》。
一見優男のようでいて、趣味は「人を殺して断末魔を録音する」こと。
彼の死後はヤシロ含む「グーニーズ」常連が敵討ちのために立ち上がる。
……言うなれば明らかに裏切りそうな顔なのに全く裏切らず、それどころか快楽殺人鬼の成人男性でありながら故人ヒロインとして扱われることとなる。

  • 《もぐり》のマルタ
CV:高戸靖広
ヤシロの友人の勇者(無免許)。好きなものはビールとピザとカードゲーム《七つのメダリオン》。
善良だが生活能力と社会常識が終わったホームレスであり、強盗殺人をしてはいけないことを知らない程度の倫理観。
どうやら実家から逃げてきたらしい。
本名は柳生捨丸孝宗。他者の記憶に潜るエーテル知覚が直接戦闘には一切寄与しないにもかかわらず、近接戦闘では作中最強の人物。

  • 《神父》綾島聖
CV:杉田智和
ヤシロの特に友人でもない勇者*6。好きなものは金と殺人と婦女暴行。
『勇者温泉』なる胡乱な宿泊施設を経営しており、返り血の付いた神父の格好をしているがその理由は「修道服は信用の証だから」とのこと。
背中を見せた相手を反射的に襲う。金を投げられると反射的に拾う。鳴き声は「ケヒャー」で武器はアフリカ投げナイフ*7。
エーテル知覚の詳細は不明だが、単純強化系らしい。
元ネタは原作者のロケット商会がダンゲロスの企画「ダンゲロスSS4」に投稿、優勝した同名キャラクター。


【魔王】


  • 《嵐の柩》卿
CV:早見沙織
東京西部に勢力を張る大魔王で、見込んだヤシロを配下に迎えようと執拗に勧誘する。
優雅に振る舞う一方で戦闘を好み、物体に動作を仕込むエーテル知覚で多数の武具を操るほか、自身の剣技も強力。

  • 《諸手の楔》卿
CV:梅原裕一郎
《嵐の柩》卿の配下の魔王で、「手の形のものを操る」エーテル知覚を用い、手を模したユニットを操る。
原作小説には登場せず、コミカライズに際して原作者が書き下ろしたキャラクター。
漫画版では出番が少なかったが、アニメ版では序盤から登場し、さらに出番を増やしている出世株。





追記・修正なんて、最低のクズがやる商売だ。

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最終更新:2026年11月01日 23:28

*1 適正な許可を受けた勇者であれば使用は合法

*2 物体の幻視を具現化するタイプは透明ではあれ実体は存在するため、煙幕などで間接的に位置を確認することは可能

*3 作中ではやや流行りは下火であるが、勇者の間では妙に流行っており、世界チャンピオンの「キング・ロブ」が圧倒的な尊敬を集めている

*4 魔王の抗争に巻き込まれ、マシンガンの掃射で内臓が吹き飛んでいた

*5 赤い線と青い線をどっちか切れば爆発するアレ。当然両方切る。

*6 勇者酒場《グーニーズ》に毒入りピザを持ち込んだことで出禁

*7 フンガムンガ。大型の卍手裏剣に取っ手を付けたような見るからに邪悪な武器。