SCP-2360-JP

登録日:2022/02/13 Sun 10:59:35
更新日:2023/07/17 Mon 23:07:30
所要時間:約 22 分で読めます



 


エレベーター部門(Department of Elevator)


エレベーターの研究、利用、発展



SCP-2360-JPとは、怪異創作コミュニティサイト「SCP Foundation」に登場するオブジェクトの一つである。
オブジェクトクラスEuclid。またJPのコードが示す通り日本支部の管轄にある。

項目名は『財団エレベーター部門』。

え?もう一度言ってみろって?「財団エレベーター部門」だ。

…財団の内部部門がメタタイトルになる例は「SCP-3790 - 怪奇部門」や「SCP-CN-001 Veleaferの提言 - 演澤部門」などがあり、特別珍しいものでは無いが…

エレベーター。何かの専門用語でも隠語でもない。駅やビルに設置されている、皆が良く利用しているであろうあのエレベーターだ。

……とりあえず、項目名はスルーして本題に移ろう。


概要

最初に断っておくが、この報告書は旧版の報告書だ。よって、最新の情報を反映していない可能性がある。それをふまえて文章を見ていこう。
SCP-2360-JPとは全世界に存在する全てのエレベーターの総称だ。そう、みんなが日々お世話になっているエレベーターはSCPオブジェクトだったんだよ!
ΩΩΩ<ナ、ナンダッテー

さて、このSCP-2360-JP、何が異常かというと、エレベーターがエレベーターホールについき、扉が開いたときに、エレベーターへの「入口」とエレベーターからの「出口」の間に瞬間移動ポータルが出現する。
いや、エレベーターの出入り口は普通同じだろ?と思うだろうが、実際に「入口」と「出口」のポータルは0.001mmしか離れていない。

我々がエレベーターを出入りするときは、常にこのポータルで瞬間移動しているらしい。まあ、0.001mmの瞬間移動なんて常人には認識できないが。

…とまあ、普通なら絶対に気が付かれない異常性を持つエレベーターだが、本題はここからだ。
SCP-2360-JPに乗った後、エレベーターのボタンで、とある隠しコマンドを入力することで「入口」側のポータルが別の宇宙に出現するのだ。


ちなみに、本家記事にはこの状況の解説図が載っている。上が通常時のSCP-2360-JP、下が隠しコマンド実行時のSCP-2360-JPだ。
注意だが、図内の「P1」はここでいう「出口」側のポータル、「P2」はここでいう「入口」側のポータルを表す。
 

すこし理解できただろうか。
また、これを引き起こす隠しコマンドを手順/SCP-2360-JP、繋がった別宇宙をSCP-2360-JP-Mと表すことにする。

ちなみに、手順/SCP-2360-JPの詳細はこちら。

  • (1)12階以上の建物に設置されているエレベーターに乗る。
  • (2)4階に移動、4階から始めた場合はそのまま次の手順に進む。
  • (3)8階に移動。この時閉ボタンを押す。
  • (4)5階に移動。この時開ボタンは押さない。
  • (5)3階に移動。
  • (6)12階に移動。
  • (7)1階のボタンを押す。扉が閉まった時点で完了。

ちなみに、(7)を完了する前にエレベーターを出た場合は何も起こらない。

さて、無事に手順/SCP-2360-JPが終了した後のことを説明する。

このポータルをくぐれば別宇宙に行くことが出来るのだが、このときエレベーターは破壊耐性を得る。これはエレベーターのカゴだけでなく、照明やボタンにも同様の影響が出る。
また、同時に気密性電磁波遮断性も獲得する。よって、エレベーターの中は完全に誰も干渉できなくなってしまう。
もっとも、別宇宙に行った人が安全に帰ってきて、エレベーターの「閉」ボタンを押すことで破壊耐性などは消える。
逆に言うと、別宇宙に行って死んでしまった場合は破壊耐性が解除されないのだが…どうも、「中」に干渉できないだけで、カゴごと移動させることはできるらしい。

発見経緯

報告書の順番とはすこし逸れるが、先に発見経緯から記載していこう。

SCP-2360-JPの異常性自体は、古くから財団に知られていたらしい。しかし、手順/SCP-2360-JPはまだ発見されておらず、なにより偶然一般人が発見する可能性は低いため、重要性は低いと考えられていた。オブジェクトクラスで言えばTiconderogaが相応しいだろうか。

しかし、ある日手順/SCP-2360-JPの詳細が電子掲示板に投稿された。
どうも、「エレベーターで異世界に行く方法」という感じの都市伝説の形で投稿されていたらしい。
どうも、投稿者はクラスC占術技能保持者*1だったらしい。

良くないことに、財団がこれを発見したころには一般社会に手順/SCP-2360-JPが知れ渡ってしまっており、隠ぺいは困難とされた。
よって、財団は一般社会に虚偽の手順/SCP-2360-JPを拡散させることによって異常現象の発生を抑制。現在では、手順/SCP-2360-JPに関する正しい情報は一般社会に残っていないとされる。
また、手順/SCP-2360-JPを実行して死んでしまったことで、破壊耐性を有したままのエレベーターに関しては財団の低危険度収容コンテナにて収容されている。


宇宙移動三大基礎法則

さて、こんなSCP-2360-JPだが、その動作原理には宇宙移動三大基礎法則というものが関係しているらしい。

これはどういうものかというと、「なぜ宇宙移動系オブジェクトでは、安全な宇宙にだけしか転移することが出来ないのかという疑問への答えとなる、仮説上の存在だ。

「三大」というからには3つあり、それぞれ「L型-多元宇宙判定機構」「宇宙高度検索-座標入力機能」「慣性系適応能力」という。
宇宙移動系オブジェクトは、必ずこのような仕組みを有している。

それぞれの詳細は、上から順に
  • 生命が生活できないような、極端な物理法則を持った宇宙を除外する。
  • 条件に合った宇宙を検索し、正確に転移させる*2
  • 宇宙において、完全に止まっているような天体は存在せず、どの天体も常に動いているが、その動きに合わせてポータルを動かしたり、転移者のスピードを調整する。

だ。2番目のものだけ推測になってしまったがご理解いただきたい。
で、この法則には1つ、大きな利点が存在する。それは人類が生きられるような宇宙に、良い感じで転移することが出来るということだ。
例えば、転移者がいきなり真空状態の空間に放り込まれたり、超高エネルギーの宇宙と繋がってしまってこちら側が焼き払われたり、といった悲惨なことが起きなくなっている。

と同時に欠点も存在する。すなわち「地球と同じような所にしか行けない」点だ。
どうも、財団は宇宙探索の際にこのような宇宙移動系オブジェクトを利用する場合があるのだそうが、せっかく別宇宙に行ってもあまり目新しい情報は得られなかったりするらしい。
これは、宇宙探査という点で言えばかなりの欠点といえるだろう。

SCP-2360-JPによる転移

さて、話をSCP-2360-JPに戻そう。財団は現在、SCP-2360-JPを用いて67個もの、多数の宇宙を捜索することに成功している。報告書には例としてそのうち41個目の宇宙…SCP-2360-JP-M-41についての記載がある。見ていこう。

SCP-2360-JP-M-41 この宇宙と比べた時の差
重力定数 この宇宙の10の89乗倍素粒子は全てブラックホール化する
電磁場 存在しない

…物理について詳しくなくとも、この宇宙がヤバそうなことはおわかりいただけるだろうか。
重力定数というのは、ニュートンの万有引力の法則にでてくる定数で、どれだけ物体同士が引き寄せ合うかを表す定数なのだが…それが10の89乗倍ときた。1のあとに0が89個続くのだ。相当引き寄せあっているに違いない。実際、素粒子は全てブラックホールになるらしいし。

このように、だいたい察せると思うが、SCP-2360-JPは宇宙移動三大基礎法則を無視している
よって、特別な装備ナシに手順/SCP-2360-JPを実行してしまうと、ほぼ確実に死に至る

財団ならきっと準備して手順/SCP-2360-JPを行っているだろうが…財団が収容される前に手順/SCP-2360-JPを実行してしまった一般人は…

ちなみに特別収容プロトコルは
  • 全世界の、手順/SCP-2360-JPに関する記録はウソを混ぜたものに置き換えられるよ。
  • 全世界のSCP-2360-JPには、手順/SCP-2360-JPが実行されそうになった時に自動でカゴが止まるような仕組みが取り込まれるよ。
  • もし、不具合で止まらず、手順/SCP-2360-JPが実行されてしまった場合には、カゴを取り外して収容コンテナに収容してね。
  • その場合の実行者は行方不明として扱ってね。
となっている。まあ、妥当なプロトコルといえよう。財団は冷酷なのだ。


…ということで、流石に無いとは思うが、みなさんも「エレベーターで異世界に行ける」なんて情報に流されないようにしよう。もし実行してしまえば、その先に待っているものは…




追記・修正はエレベーターの中でお願いします。









































エレベーターは場所を繋ぐ。

1階から2階へ、2階から別宇宙へ。












最初にも書いたが、上記の報告書は2009年に書かれた旧版だ。当然情報は古い。よって、ここからは報告書の最新版を見ていき、変わったところを紹介していこうかと思う。

なんてったって、最新版の報告書は2040年のものだ。新しい情報が山のようにある。
では、改めて。


SCP-2360-JPとは、怪異創作コミュニティサイト「SCP Foundation」に登場するオブジェクトの一つである。
オブジェクトクラスは堂々のThaumiel。文字通り「財団の切り札」といった感じのオブジェクトとなっている。

ちなみに、このオブジェクトは現在、財団エレベーター部門が管轄している。


SCP-2360-JP異常性の解明

なんと、SCP-2360-JPの原理が判明した。これには、先述の宇宙移動三大基礎法則を数学的に証明した理論である、 エリシャ・オーチス宇宙接続理論というものを使う。

まず、通常時のエレベーターの「入口」のポータルと「出口」のポータル。この2つをほぼ同じ場所に出現させるために、SCP-2360-JPは「カゴが今何階にあるか」「カゴが来ようとしているエレベーターホールは何階か」というデータを参考にすることが分かっている。

しかし、先述の手順は、文字通りの隠しコマンドだ。SCP-2360-JPにこのコマンドを入力してしまうと、数学で言う「解なし」に近いような状態が発生する。*3

で、このような解なし状態に陥ってしまったSCP-2360-JPは、「えーい!ポータルなんかどこに出してもいいや!!!」となってしまい、何も考えずに「入口」側のポータルを開いてしまう。
その結果、宇宙移動三大基礎法則をも無視する、なんでもアリの転移ポータルが開かれてしまった、というわけだ。

また、「入口」側のポータルと同様に、「出口」側のポータルにも影響がでる。どうも、物理的な変化に関する変数が0に収束するようになるらしい。
これはすなわち、物理的に変化することが無くなることを意味する。というわけで破壊耐性の説明もついてしまった。


Thaumiel指定へ

ここからは、SCP-2360-JPがThaumiel認定される一因となったであろう、とある博士の提言を見ていこう。
ただ、全て引用すると滅茶苦茶長い。当wiki換算すればこれだけで所要時間3分半だ。よって、この部分は適度に要約して箇条書きにすることにする。

  • 財団内部と一般社会では、「科学」の進歩度合いが全然違うよ。財団は超常技術で研究できるから当たり前だね。
  • でも、物理学に関してはあまり差が無いよ。
  • 物理って言うのは、宇宙の根源に迫るような学問だけど、一般社会も財団も、研究材料は同じ1つの宇宙であって、手掛かりがあまり無いからだよ。
  • じゃあ宇宙移動しよう!といっても宇宙移動三大基礎法則があるからあまり意味ないよ。*4
  • でも、SCP-2360-JPはその法則を完全に無視できるよ。
  • しかも、別宇宙へのポータルが開いている間は、SCP-2360-JPには破壊耐性ができるよ。高エネルギー宇宙に繋がって地球が火の海に!なんてことはないよ。
  • これで、宇宙移動三大基礎法則を無視する欠点を補いつつ、長所はそのまま持ってくる、超都合のいい感じになるよ。
以上の理由により、我々の研究チームはSCP-2360-JPの本格的な利用を提案します。

…というわけだ。こうして財団は、長年の悲願だった外宇宙への意味ある探査を行うことが出来るようになった。

ちなみにだが、2009年の旧版では61個となっていたSCP-2360-JP-Mの探索数だが、31年経ってThaumiel指定がなされた今では15,067,898,156個のSCP-2360-JP-Mを探索したらしい。


…!?


エレベーター部門、設立。

さて、このようなエレベーターがもたらす多大な利益を研究・利用・発展するために、財団エレベーター部門が新設されることとなった。
以下からは、エレベーター部門が取り組んでいる研究・その成果を記載していく。

まずはエレベーターの定義の研究。どれがエレベーターで、どれがエレベーターじゃないのか。これが分かれば、エレベーターを安く量産することにも繋がるだろう。
そういうことで、いくつかエレベーターの条件が判明している。報告書では箇条書きになっているが、むりやり一文にすると、

人間を輸送することが目的の、動いてボタンがあって自由に行き先を変えられて、生きても死んでも無くエレベーターであって*5エスカレーターではなく、動く歩道でも電車でも車でも人間でもない、物理的に存在するもの

…が、エレベーターの定義らしい。ところどころ変な条件があるのは気のせいだろうか。

あとは、例の隠しコマンドにあった「○階」の定義の研究も行っている。
大まかに説明すると、地面や海抜に1番近いところが1階で、他に何も存在しない別宇宙ではすべて0階、といった感じになっている。
普通に別宇宙に行っただけでは「他に何も存在しない」なんて状態にはならない*6ので、きっとSCP-2360-JPを使ったのだろう。
そうなると、エレベーターを作るためにエレベーターを利用したことに…いや、これ以上掘り下げるのは止めておこう。


その他のエレベーター部門のお仕事はこちら。

  • エレベーターの小型化。現在は1ナノメートルもの小型化に成功している。想像してほしい、原子レベルまで小さいエレベーターを。
  • しかし、財団はこれに飽き足らず、なんと1ピコメートルのエレベーターを作っているらしい。そんな単位知らねぇよ!と思われるかもしれないが、これはナノメートルの1000分の1、1メートルの1兆分の1らしい。一体何で出来てんだ。
  • SCP-2360-JPの破壊耐性を利用した、防御壁・防御素材への活用
  • 緊急事態発生時の緊急避難先への活用。別宇宙に行くので、宇宙滅亡にまで対応できる。優秀!
  • 宇宙エレベーターの開発。確かに、これが普及すればエレベーター界隈(??)は大きく普及しそうだ。


エレベーター部門の発明品・利益

ここからは、エレベーター部門の発明品と、それらによって生まれた利益について紹介していく。

まずは発明品から。

MHfE細胞

fだけ小文字なのは誤字ではない。
これは、[編集済]を利用して作成された、あらゆる研究・分野との相互作用において人間であると判断される細胞だ。
ちなみに、「あらゆる研究・分野」というのには、物理・生物学・認識論はもちろん、法・超越論・社会学なんかも含まれている。MHfE細胞には人権があったりするのだろうか…

そして、このMHfE細胞、細胞なのだから滅茶苦茶小さい
しかも、先述の異常性によって、SCP-2360-JPからも人間と判断される

手順/SCP-2360-JPを行うためには、まず前提条件として人間が乗っていないとダメなのだが、先述した通り、SCP-2360-JP-Mは超危険だ。なるべくDクラス職員は消費したくないし、なによりかさばる。よって、代わりにこの細胞にSCP-2360-JP-Mに行ってもらう、というわけだ。

M8000多元宇宙探索ユニット

…厨二心をくすぐるようなネーミングだが、お察しの通り、こいつの正体は超小型エレベーターだ。
手順/SCP-2360-JPを行うものなのだから当然12階まであるのだが、全長わずか30cm*7重さも2kgと軽めとなっている。
どうも、エレベーターを動かす「基部」と、SCP-2360-JP-Mを探索するためのAIがある「探査部」という2つのパーツがあるらしい。

ちなみに使い方も超簡単!箱の中に前述のMHfE細胞と探査部を入れるだけ!あとは自動でSCP-2360-JP-Mに接続してくれる。探査部による探索もわずか30秒で終わるらしく、かなり効率が良い。

しかも、転移先の宇宙がどれだけ厳しいモノであろうと、周囲の現実値を下げて現実改変を行うことで探査部も絶対壊れないようになっている。どれだけ優秀なんだ一体。

この機械は量産され、2030年から運用開始されてから現在は3,250,000基も運用されているらしい。
…先ほど出てきたSCP-2360-JP-Mの異常な探索数は間違いなくコイツのせいだろう。

多元宇宙探査用r-534現実維持スーツ

こちらは、簡単に言うとパワードスーツだ。
SCP-2360-JP-Mにおいて、AIでの探索が難しい場合などに、人間が直々にSCP-2360-JP-Mに行き、機械を手動で動かすために開発された。
このスーツは、いろいろな宇宙の環境から、着用者を守ってくれる。

しくみ自体は小型エレベーターと同じ、現実改変によるものだが、周囲の現実性を下げてしまうと、着用者自体が現実改変能力者になってしまう。
AIは煩悩とか持たないので良いが、むやみに人間に現実改変能力を与えてはいけない。
そういうわけで、このスーツは、スーツ自体の現実性を上げることで現実改変を行っている。



さて、ここからはエレベーター部門の功績を見ていこう。

Keterクラスオブジェクトの収容

収容が困難であり、人類を滅亡させる可能性が高いもの…すなわちApollyonに匹敵するようなSCPオブジェクトを、SCP-2360-JP-Mに収容・隔離することが承認され、現在も行われている。

もちろん、異常性が別宇宙にまで及んでしまうようなものは無理だが、それでも相当な利益だ。財団の明日は明るかった

素粒子物理学部門、宇宙物理学部門

SCP-2360-JP利用のメインのメリットである宇宙開発。やはり、別宇宙からとることが出来るデータは我々の想像以上に重要なものらしく、現在までにさまざまな利益が上がっている。

具体的には「ダークエネルギーの正体についての重大な発見」「初期の宇宙の観測」「誕生直後の超高エネルギー状態の別宇宙の観測」
そしてなにより「大統一理論の完成」だ。

どれも、一般の天文学者にとっては喉から手が出るほど欲しい功績だろう。
ちなみに、大統一理論についてはSCP-1905-JPにて紹介されている。気になる方は見てみることをお勧めする。
ちなみにこの設定はSCP-1905-JPに矛盾するだろうが、財団にカノンは存在しないことを忘れてはいけない。矛盾した設定があってもいいのだ。

多元宇宙部門

別宇宙からのデータで、宇宙間接続ポータルの研究が大幅に進んだ。この研究が進めば、緊急避難手段として別宇宙に逃げられる日が来るかもしれない。
また、少し上の方に出てきた、宇宙移動三大基礎法則を数学的に説明した「エリシャ・オーチス宇宙接続理論」も、この研究の成果である。
そして、これを応用することで、宇宙生成のプロセス・生成の背後にあるものの研究も大幅に進めることが出来た。


…こうして見ると、世界平和にとっても物理学にとってもSCP-2360-JP様様だ。財団の明日は眩しく照らされていた!


いやはや、エレベーターが発明されてから2276年。発明したアルキメデスも、23世紀後にエレベーターが宇宙開発の、それも一番重要な要素になるだなんて予想だにしなかっただろう。いや予想していたら超怖いが。

…しつこいだろうが、SCP-2360-JPとはエレベーターだ。おそらく、みんなが良く使っているであろう。
社会の裏では、こんなエレベーターが世界平和を推し進め、物理学者が何年も追い求めてきたものを明らかにしているのだ。
これを知ってしまえば、もう感謝ナシにエレベーターに乗ることは出来ない。


もう一つの”隠しコマンド”

さて、時はすこし昔に戻って2031年のこと。アメリカで奇妙な事件が発生した。

2031/11/4 13:14 にアメリカ合衆国████州のビル内部において、財団保有重力波観測式監視カメラが局所的なクラスⅧ空間収斂および最大1.3m2の事象の地平面を観測した。発生から2.1秒後に異常現象は終了した。しかしながら、現象発生時ビル内に居た████ ██氏が行方不明になったこと以外に、その空間的異常から想定されるような被害は発生していなかった。

…大半の方は何を言っているのか分からないと思うが、要するにビル内部で発生した時空間異常だ。
幸いにも、この現象は2.1秒という爆速で終了。まあ財団にとってはこういう系の超常現象くらい慣れたものなので、当時は「よくある異常現象だよね~研究する必要すらないね~ってか出来ないよね〜」くらいのノリだった。

しかしその後、ポータルに関する理論の発展によりSCP-2360-JPの「入口」側のポータルに干渉する手段があることが判明。そしてこれを受け、よくよく調べてみると、この異常現象の中心点にはエレベーターが存在していたことがわかった。


どういうことかって?こちらも解説図がある。こちらをご覧いただこう。
 

今まで語ってきた『エレベーターから異世界に行く』隠しコマンドを実行した時とは真逆のことが起きているのがおわかりいただけるだろうか。旧版報告書の解説図とも合わせて見てみると良いだろう。

要するに、手順/SCP-2360-JPとは逆に「入口」側のポータルが別宇宙に接続してしまった、ということ。言い換えるならば『エレベーターホールから異世界に行く』ということが起きたのである。

この、「エレベーターの入口から異世界に行く方法」は挙動的には、今まで財団が把握していたSCP-2360-JPの異常性とはとなる存在である。まあ、左手があるならば右手もあって当然だろう、ということだ。

しかしこの現象、はっきり言ってヤバい。
なぜか。SCP-2360-JPが都合良かった理由を思い出してみて欲しい。「いろいろとメチャクチャな宇宙に行けるにもかかわらず、エレベーターの破壊耐性により、何が起こっても被害ゼロになる」だっただろう。
しかし、こちらの場合は破壊耐性が付かない。いや、100歩ゆずって耐性がついたとしても、1つでも窓や外への扉が開いていた時点で終わりだ。
もし、この状態で例えば高エネルギーの宇宙なんかと繋がったら……その高エネルギーが一気に地球にやってきて、地球はまるごと火の海となってしまうだろう。もしくは大量の放射線でも同様だ。

ではなぜ2031年の異常現象でこのような悲劇が起きなかったのか。
どうも、ポータルが開いたときに偶然エレベーターホールにいたらしい████ ██という人が、別宇宙の圧倒的な環境差によって即座にブラックホール化
しかし、物理定数の偶然により、そのブラックホールがそのとき接続先していた宇宙にビッククランチを引き起こし、速やかにポータルが強制的に遮断された。これがあの異常現象の正体だ。

…要するに偶然によって世界は守られたのだ。しかし、ウサギが切り株に突進しないように、偶然というのは2度あるものでは無い。
よって財団は、この、「別宇宙をこの宇宙のエレベーターホール側のポータルに接続する隠しコマンド」を「手順/SCP-2360-JP」と命名。同時に、いままで「手順/SCP-2360-JP」とされていたものは「手順/SCP-2360-JP」と改名された。


さて、財団は世界滅亡のリスクをできる限り避けるため、なんとしてでも手順/SCP-2360-JP-βの発生を阻止しなくてはならないのだが、流石に全世界のエレベーターを撤去するのは骨が折れる。
よって、対策はSCP-2360-JP-βの解明に焦点があてられている。これが解明できれば、手順/SCP-2360-JP-βが行われそうになった時にエレベーターを緊急停止させるようなプログラムを作るだけで良いからだ。ちなみに、SCP-2360-JPの特別収容プロトコルにも同じようなことが書いてあり、手順/SCP-2360-JP-βを解明するために、数式処理アノマリーや、クラスA占術技能保持者…すなわち神格や全知全能者と交信できる人間の利用が許可された。


…ところが、計画は難航。
なぜか。手順/SCP-2360-JP-αと-βでは、情報量に対称性が無いのだ。

挙動的には、手順/SCP-2360-JP-αと-βはになるような存在だ。
しかし、エリシャ・オーチス宇宙接続理論において、手順/SCP-2360-JP-αを構成している情報量は2.7GB*8
対して、手順/SCP-2360-JP-βの情報量は7.8×10^34YB
うん、デカすぎて訳分からないと思う。第一、「YB」なんて単位も見たことない方もいるのではないか。
補足しておくと、これは「ヨタバイト」と読み、GB(ギガバイト)の次の次の次の次の次にあたる単位だ。

つまり、手順/SCP-2360-JP-βの情報量は、手順/SCP-2360-JP-αの情報量の3極倍ということになる。極って何だ?という方は「大きい単位 極」と調べてみて欲しい。

…いかにこの情報がデカいかおわかりいただけただろうか。こうなると、もはや神格や全知全能者と交信ができるクラスA占術技能保持者でも無理だ。

しかし、数式処理アノマリーはなんとか計算ができた。しかし大量の解が出てきた
この大量の解の中で、この宇宙における手順/SCP-2360-JP-βを表しているのは僅か。

しかし、選択肢自体は絞られた。あとはそれを全て試してポータルが出てくるまで実験を重ねればいいだけだ!やはり人類の平和は守られた!

……いやいや、冷静に考えて欲しい。本当にその実験でポータルが出ちゃったら多分即地球滅亡だ。そんな危険な実験、できるわけないじゃないか!
というわけで、手順/SCP-2360-JP-βの研究は現在膠着状態となってしまっている。


余談

最初の方は身近にひそむ怪奇という感じだったSCP-2360-JP。しかし、たった数十年のうちに最強SF Thaumiel兵器に進化してしまったのだ。
この作品は2022年1月に投稿されてから大きく好評を博し、2022年1月に投稿されたSCPの中で一番高評価な作品となった。

いやはや「エレベーターが世界を救う」という発想、SCP-2360-JP作者様には脱帽である。しかも、これが作者さんの初投稿作品だというのだから驚きだ。

ちなみに、エレベーターを最初に開発したのは言わずと知れたアルキメデスさん。発見したのは紀元前236年とされており、アイテム番号はそこから取ったのだとか。


関連作品


Tale-JP「EKクラス-エレベーター世界終焉シナリオ」


仕方がないのでエレベーター側に現れるはずだったポータルは適当に座標を決め、
その座標位置に出現することにした。


SCP-2360-JP著者であるR-suika氏のTale。
とある30階建てビル、何も異常はない日常生活にて、偶然にも手順/SCP-2360-JP-βが行われてしまった世界を描く。
接続先の宇宙は7次元空間。物理法則の違う宇宙同士が接続したことによる宇宙滅亡の描写が、とても細かく、科学的かつ文学的に表現されている。SCP-2360-JPが気に入ったならば是非とも読んでおきたいところだ。


SCP-001-JP 或る西瓜の提言 - 焚書坑儒計画


新しい探索方法は従来の
「SCP-2360-JPの宇宙ランダム接続を応用した多元宇宙探索方法」
を基本としつつ、
確率工学技術を利用することで
「ランダムに接続された宇宙がすでに探索済みの宇宙である可能性」
を排除することに成功しました。


同様にR-suika氏の作品で、なんとエレベーター部門が活躍する

この世界において、エレベーター部門は「MESP」というこの世界に存在する全ての宇宙を調べつくすという計画を実行しており、これが「カルツァ-クライン現実子理論」というものの発展に大きく貢献した。

また、全ての宇宙に行けると思われていたSCP-2360-JPに行ける宇宙の制限があることも判明する。

SCP-2360-JP同様、かなり理論チックなものとなっているためSCP-2360-JPが気に入った方は読んでみてはいかがだろうか。


追記・修正は手順/SCP-2360-JP-βを実行してからお願いします。


この項目が面白かったなら……\ポチッと/

+ タグ編集
  • タグ:
  • SCP Foundation
  • エレベーター部門
  • SCP財団
  • SCP-JP
  • 日本支部
  • 宇宙
  • 大統一理論
  • Thaumiel
  • 物理学
  • エレベーター
  • R-suika
  • 財団内部部門

このサイトはreCAPTCHAによって保護されており、Googleの プライバシーポリシー利用規約 が適用されます。

最終更新:2023年07月17日 23:07

*1 簡単に言うと、無意識的に正夢を見ることが出来てしまう人間。

*2 元記事に記載されていないため、あくまで推測である。

*3 正確に言うと、「問題が成り立たない」。分数の分母に0を入れたような状態である。

*4 本当はここに密室のジレンマの話があったが、言っていることは同じようなものなので全て割愛

*5 この条件の意味は調査中

*6 宇宙移動三大基礎法則があるので

*7 単純計算で1階層は2.5cm、およそ1/100の模型となる

*8 FHDの動画5分程度