Filter+

Filter+ (フィルター・プラス)


Filter+ (フィルター・プラス) は、Filterの拡張版であり、標準のフィルター機能に加え、音作りやサウンドデザインをさらに強化するための追加機能を備えたFilterデバイスです。


概要

主な特徴
多彩なフィルタータイプ
  • Filter+は複数のフィルタータイプ(ローパス、ハイパス、バンドパスなど)を搭載し、幅広い音作りが可能です
ドライブ/サチュレーション
  • フィルター通過後の信号に対してドライブやサチュレーション(歪み)を加えることができ、アナログライクな温かみやキャラクターを付与できます
ステレオ操作
  • ステレオイメージの調整や、左右チャンネルごとに異なるフィルター設定を適用することが可能です
  • これにより、立体的なサウンドや広がりのある音像を作り出せます
エンベロープフォロワー
  • 入力信号の音量変化に応じてフィルターの動作を自動制御できるエンベロープフォロワー機能を搭載
  • ダイナミックなフィルタリングが可能です
モジュレーション対応
  • Bitwig独自のModulation Systemに完全対応しており、LFOやステップシーケンサー、ランダムモジュレーターなど、様々なモジュレーションソースでFilter+のパラメータを動的にコントロールできます
柔軟なルーティング
  • デバイスチェーン内での配置や他エフェクトとの組み合わせが容易で、クリエイティブなサウンドデザインに適しています
活用例
  • シンセやドラム、ボーカルなど、あらゆる素材に対してフィルタリング+αの加工が可能
  • モジュレーションを活用することで、リズミカルなフィルター効果や複雑な動きのあるサウンドを作成
  • サチュレーションやドライブ機能で、単なるフィルター以上の音色変化を実現
Bitwigならではのポイント
  • Filter+はBitwigのモジュレーション環境と親和性が高く、他のデバイスやサードパーティプラグインとも柔軟に連携できます
  • CLAPフォーマットやGRIDとの連携により、さらに高度な音作りや拡張も可能です

機能

ウェーブシェイパースロット

ウェーブシェイパーの様々なモデルを指定します。
ONE KNOBカテゴリ
これらのシェイパーは単一の主要パラメータで動作するように設計されており、直感的な操作が可能です。
シェイパー 概要 詳細 パラメータ 説明
Chebyshev
(チェビシェフ)
非線形ハーモニックシェイパー 入力信号にチェビシェフ多項式を適用し、
特定の倍音を強調します
Order 3.0設定で1オクターブ+5度上の倍音を生成
(値が大きいほど高次倍音を生成)
-DC 直流成分を除去し、不要な低周波ノイズを削除
Distortion
(ディストーション)
穏やかな歪み生成 ソフトクリッピング方式でアナログ調の温かみを追加 Drive 0~24dBの範囲で入力ゲインを制御
AA アンチエイリアシングで高周波のデジタルノイズを低減
Hard Clip
(ハードクリップ)
デジタルクリッピング 厳密な振幅制限で aggressive なサウンドを生成 Drive クリップ前の入力増幅量
(過剰設定で波形の矩形化を促進)
Quantizer
(クオンタイザー)
ビットクラッシャー 信号解像度を段階的に削減。
ローファイ効果や8bit風サウンドの作成
Step Size 0.0(フルレゾリューション)~1.0(8段階量子化)
Wavefolder
(ウェーブフォルダー)
波形折り返し処理 入力信号をミラーリングして高周波成分を追加。
(振幅が閾値を超えると波形を反転折り返す)
Drive 折り返し前の信号増幅量
(値が大きいほど複雑な倍音構造)
共通パラメータとしては以下のものがあります。
AA
  • 44.1kHz以上の周波数成分をフィルタリング(デフォルト推奨)
ウェーブシェイパーオン
  • エフェクトのバイパス切り替え
信号フロー
  • フィルタ処理後にウェーブシェイピングが適用される

これらのシェイパーは、Filter+のフィルタ(低域通過/高域通過など)と組み合わせることで、複雑な周波数特性の制御が可能です。
特にChebyshev (チェビシェフ) と Wavefolder (ウェーブフォルダー) の組み合わせは、メタリックな質感のシンセ音色作成に効果的です。
PARAMETRICカテゴリ
これらのシェイパーは高度な波形整形が可能で、クリエイティブなサウンドデザインに活用できます。
シェイパー 概要 詳細 パラメータ 説明
Diode
(ダイオード)
非対称クリッピング回路 アナログ回路のバイアス特性を再現。
動作例:+0.5 Biasで上半波形を飽和させ、
3kHzカットオフで高域を丸める
Bias 信号のDCオフセットを調整
(正値で上半分、負値で下半分の波形を強調)
Low-pass
Cutoff
Frequency
3dB減衰点の周波数を設定(20Hz~20kHz)
Rectifier
(整流器)
非対称波形整形 正負の振幅を独立制御 Positive Scaling 0~200%で正側波形の増幅/減衰
Negative Scaling 0~200%で負側波形の増幅/減衰。
Negativeを0%に設定して半波整流効果を生成
Saturator
(サチュレーター)
多段階歪み処理 複合的な飽和特性を実現 Drive 入力ゲイン(0~24dB)
Normalize 出力を±1.0にクリッピング(過飽和防止)
Low-pass Cutoff 飽和後の高域成分フィルタリング(1kHz~20kHz)
フレーバー フィルタ傾斜の選択
(G=緩やか6dB/oct、R=急峻12dB/oct)
Transfer
(トランスファー)
カスタム波形変換。
自由な波形マッピング
を実装
BWCURVEファイル対応の
フリーハンドドロー可能な
セグメントウェーブシェイパーです
マルチセグメント
トランスファー
ファンクション
クリックで編集。
ウェーブシェーピングの現在の
トランスファーファンクションを描きます
± (バイポーラ) 有効にすると入力範囲を-1~+1に正規化
📂(カーブブラウザ) クリックするとカーブブラウザから
他のシェイプを試すことができます
Drive ゲインの適用量です
共通機能としては以下のものがあります。
AA(Anti-aliasing)
  • ナイキスト周波数以上の成分を除去(デフォルト推奨)
ウェーブシェイパーオン
  • エフェクトのバイパス切り替え
信号チェーン
  • フィルタ処理の前段に位置(入力→シェイパー→フィルタ)

応用テクニック
  1. DiodeのBias+SaturatorのDriveを連動させて段階的歪みを生成
  2. Rectifierで非対称波形を作成後、Transferでさらに波形変形
  3. Saturatorのポストローパスをモジュレーションで動的フィルタリング
  4. TransferのカーブをLFOで自動変形させてリズミックな効果を付加

これらのパラメータは、フィルタのカットオフ周波数と共振特性と組み合わせることで、有機的なアナログサウンドからデジタルアーティファクトまで幅広い質感を創造できます。
特にTransferシェイパーのカスタムカーブは、従来のウェーブシェイピングでは実現できないユニークな倍音構造を構築可能です。
CHARACTERカテゴリ
これらのシェイパーはユニークな波形変形特性を持ち、クリエイティブなサウンドデザインが可能です。
シェイパー 概要 詳細 パラメータ 説明
Push
(プッシュ)
ソフトクリッパー 滑らかな飽和特性でアナログ調の歪みを生成。
ドラムの瞬発力強化やシンセベースの丸み追加
Drive 0~24dBの入力ゲイン制御
(低設定で温かみ、高設定でアグレッシブなクリップ)
Heat
(ヒート)
S字クリッピング
(シグモイド曲線)
中間帯域を強調する歪み特性。
リードシンセの歯切れ良さ向上、
ディストーションギターの輪郭強調
Drive ソフトクリップ(低値)から
ハードクリップ(高値)へ連続変化
Soar
(ソアー)
ソフトウェーブフォルディング 低振幅領域を増幅。
パッドの質感立体化、グリッチ効果の下地作成
Drive 波形折り返しの強度
(低値で微細な倍音、高値でメタリックな質感)
Howl
(ハウル)
ダブルS字フォルディング 信号の特定部分を強調。
リズミックなグリッチ生成、
アンビエントテクスチャの不規則化
Drive 0.5~3.0でフォルディングポイントを制御
Shred
(シュレッド)
非線形アーティファクト生成 デジタル特有の歪みを創造。
8bit風エフェクト、インダストリアルな
リズムパターン作成
Drive 1.0~5.0で量子化ノイズと波形断片化を制御
共通パラメータとしては以下のものがあります。
AA(Anti-aliasing)
  • ナイキスト周波数以上の高周波ノイズを除去(44.1kHz以上で有効)
ウェーブシェイパーオン
  • エフェクトのバイパス切り替え(A/B比較に便利)
信号フロー
  • フィルタ処理の前段に位置(入力→シェイパー→フィルタ)

以下は、シェイパーとフィルターの実践的な組み合わせの例です。
シェイパー フィルター 効果
Push ローパスフィルタ ヴィンテージシンセベースの再現
Heat バンドパスフィルタ ロックボーカルの輪郭強調
Soar フォルマントフィルタ ボーカルフォーマントの金属化
Howl コムフィルタ グリッチホップ向けリズム加工
Shred ハイパスフィルタ チップチューン風エフェクト

これらのシェイパーは、Filter+のフィルタ特性(共振・カットオフ周波数)と連動させることで、有機的かつ複雑な周波数特性を構築できます。
特にDriveパラメータのモジュレーションが、ダイナミックなサウンド変形を実現します。

フィルタースロット

カテゴリ フィルタースロット名 説明
STRUCTURAL Low-pass LD 可変スロープ(フィルターの減衰率を複数から選択可能)と
ノンリニア(非線形)オプションを備えたラダーフィルター
Sallen-Key 16種類のフィルターモードを備えた多機能なフィルターモジュール
SVF 高解像度なマルチモードフィルタ
Comb 入力信号に遅延を加えた信号を加算・減算することで、
周期的なピークやノッチを持つ独特の周波数特性(櫛形)を作り出します
INSPIRED Low-pass MG Moogスタイルのローパスフィルター。
クラシックなMoog回路のサウンドキャラクターとドライブ(歪み)特性を備えています
XP Oberheimに触発された15種類のフィルターモードのマルチモードフィルター
Vowels 様々な母音モデル、ピッチ、周波数オフセットを備えたモーフィング・フォルマントフィルター
CHARACTER Fizz 「ネスト(入れ子)型フィルター回路」で、スパークル感やシマー(フェイザー的な揺らぎ)、
バンプ感(強調されたピーク)など、独特のキャラクターを持つフィルター
Rasp 穏やかな変化から強烈な効果まで幅広く演出でき、鼻にかかったような音から
喉の奥に響くような音、さらには悲鳴や囁きのようなサウンドまで作り出せるフィルター
Ripple ハイパーレゾナンスを特徴とする現代的なキャラクターフィルターです。
フィードバックによる演奏的な変化や、サブハーモニクス、
倍音成分の強調といった多彩な音響効果を生み出します
Low-pass LD

Low-pass LDは、可変スロープ(フィルターの減衰率を複数から選択可能)とノンリニア(非線形)オプションを備えたラダーフィルターです。
ラダーフィルターは、特有のサチュレーションやドライブ感を持ち、アナログ的なキャラクターが特徴です。
電源ボタン(バイパス)
フィルターのオン・オフを切り替えます。
オフ時はバイパス(原音がそのまま出力)されます。
Drive
フィルター入力段に適用されるゲイン(入力信号の増幅)です。
Driveを上げることで、フィルター内部でのサチュレーション(歪み)やクリッピングが発生しやすくなり、アナログライクなドライブ感を加えられます。
Cutoff Frequency(カットオフ周波数)
フィルターが3dB減衰する周波数を指定します。ここより高い周波数が減衰されます。
Resonance(レゾナンス)
カットオフ周波数付近の信号を強調するパラメータで、フィードバック量を調整します。高くすると自己発振に近づきます。
スロープ
フィルターの減衰率(鋭さ)を「6」「12」「18」「24」dB/octから選択できます。
数値が大きいほど急峻なカットになります。
リニアリティ(Linearity)
レゾナンスの適用方法を「対称(Symmetric)」または「非対称(Asymmetric)」から選択します。
これにより、レゾナンスのかかり方やフィルターのキャラクターが変化します。
レゾナンスリミット(Resonance Limit)
レゾナンスがどのレベルでクリッピングやサチュレーションを起こすか(自己発振のしやすさ)を調整できます。


Sallen-Key

Sallen-Keyフィルターは、16種類のフィルターモードを備えた多機能なフィルターモジュールです。
電源ボタン
フィルターをバイパスする機能で、無効時は信号が素通りします。
Drive
入力ゲインを調整可能(フィルター前処理)
Resonance Limit
  • 右クリックメニューからアクセス可能な「Qリミット」機能
Cutoff/Center Frequency
  • 3dB減衰が発生する周波数を設定(ローパス/ハイパスの場合)
  • バンドパス/ノッチフィルターでは中心周波数を制御
Resonance
  • フィードバック量で自己発振可能
  • 「Resonance Limit」パラメーターでクリッピング開始点を調整可能(右クリックメニューからアクセス)
Filter Mode
16種類の構成オプション:
  • Low-pass (6/12/18/24/36/48dB/oct)
  • High-pass (6/12/18/24/36/48dB/oct)
  • Band-pass (6/12/18/24dB/oct)
  • Band-reject (ノッチフィルター)
非線形特性
  • 「Nonlinear」オプションでアナログ回路の特性を再現
  • 共振時のソフトクリッピングを追加可能

SVF

SVF(State Variable Filter)は、高解像度なマルチモードフィルターとして設計されています。
電源ボタン
フィルターをバイパスする機能で、無効時は信号が素通りします
Drive
  • フィルター入力前のゲイン調整(信号の歪み特性を制御)
  • 入力信号をブーストして非線形特性を強調可能
Resonance Limit
  • 右クリックメニューからアクセス可能な「Qリミット」機能
  • レゾナンスが飽和し始める閾値を設定(アナログ回路のソフトクリッピングを再現)
Cutoff/Center Frequency
  • 3dB減衰点の周波数を設定(ローパス/ハイパスモード時)
  • バンドパス/ノッチモードでは中心周波数を制御
Resonance
  • フィードバック量で鋭いピークを形成(自己発振可能)
  • 高設定でピンギング効果を発生(打楽器音の生成に有用)
Filter Mode
6種類の基本モードと斜率オプション:
  • Low-pass (12dB/oct)
  • High-pass (12dB/oct)
  • Band-pass (6dB/oct)
  • Notch (深いノッチ特性)
  • 追加で2/4極ハイパスモードを選択可能
補足機能
  • ステレオスプレッドで左右チャンネルの周波数偏移を制御
  • ウェットゲイン調整でフィルター効果の混合比率を変更
  • キーボードトラッキングで音高連動フィルタリング可能
  • オーディオレートモジュレーションに対応(LFO/エンベロープ制御)

Comb

Combフィルターは、入力信号に遅延を加えた信号を加算・減算することで、周期的なピークやノッチを持つ独特の周波数特性(櫛形)を作り出します。
この特性により、物理モデリングや特殊効果、金属的な響きの付加などに最適です。
電源ボタン
フィルターをバイパスする機能で、無効時は信号が素通りします
Drive
入力ゲインを調整可能(フィルター前処理)
Resonance Limit
右クリックメニューからアクセス可能な「Qリミット」機能
Cutoff/Center Frequency
基本周期(またはピーク/ノッチの間隔)を決定する周波数を指定します。
Combフィルターの場合、通常のローパス/ハイパスのような「3dB減衰点」ではなく、「共鳴(ピーク)やノッチ(谷)が現れる中心周波数」を設定します。
Damping Frequency
フィードバック信号にかかるローパスフィルターのカットオフ周波数です。
値が低いほど高域の減衰が強くなり、減衰感(ダンピング)が強まります。
+ / − (フィードバック極性)
「+」で通常のフィードバック、「−」で逆相(ネガティブ)フィードバックとなり、サウンドキャラクターが大きく変化します。
負の値ではノッチの位置や音の響きが異なります。
Feedback
Feedbackはフィルターの出力をどれだけ入力に戻すかを決め、値を上げると共鳴感や金属的な響きが強くなります。
値が高すぎると発振やクリッピングの危険もあるため注意が必要です。

Low-pass MG

「Low-pass MG」はMoogスタイルのローパスフィルターで、クラシックなMoog回路のサウンドキャラクターとドライブ(歪み)特性を備えています。
電源ボタン
フィルターをバイパスする機能で、無効時は信号が素通りします
Drive
入力ゲインを調整可能(フィルター前処理)。
入力信号に歪み(サチュレーション)を加えるMoogらしいキャラクターを付与します。
Resonance Limit
右クリックメニューからアクセス可能な「Qリミット」機能。
Inspectorパネルからも設定可能で、フィルターのレゾナンス(Q値)が過度に高くなりすぎるのを防ぎます。
Cutoff Frequency
フィルターの減衰が始まる基準点(-3dBポイント)を指定し、ここを中心に音がローパス処理されます。
Resonance
フィルター内に適用されるフィードバック量を指定します。
カットオフ周波数付近のピークの鋭さ(Q値)を調整し、値を上げると自己発振に近い音色変化も可能です。
補足
  • Low-pass MGはステレオ対応で、左右独立したカットオフ変調やキートラッキングも可能です
  • 「Resonance Limit(Qリミット)」は、フィルターのサチュレーションやクリッピングを防ぐための上限設定です
  • Driveパラメータは、単なるゲイン調整ではなく、Moog特有の倍音や歪みを付加する設計です

XP

15種類のフィルターモードのOberheimに触発されたマルチモードフィルターです。
電源ボタン
フィルターをバイパスする機能で、無効時は信号が素通りします
Drive
入力信号のゲインや歪み成分を調整します。
フィルター前段で信号レベルを上げることで、フィルターのキャラクターやサチュレーションが変化します。
Cutoff Frequency
選択したフィルターモードに応じて、ローパスなら-3dB減衰点、ハイパスやバンドパスなら中心周波数や分岐点を設定します。
Resonance
フィルター内に適用されるフィードバック量を指定します。
カットオフ周波数付近のピークの鋭さ(Q値)を調整し、値を上げると自己発振に近い音色変化も可能です。
Filter Mode
以下の15種類からフィルターモードを選択できます。各モードはフィルターの傾き(スロープ)や特性が異なります。
  • Bypass(バイパス): フィルター無効
  • Low-pass(ローパス): 1〜4ポール(6〜24dB/oct)
  • High-pass(ハイパス): 1〜4ポール(6〜24dB/oct)
  • Band-pass(バンドパス): 2, 4ポール(12, 24dB/oct)
  • Peak(ピーク): レゾナンスでゲインが変化
  • Notch(ノッチ): 指定周波数で急峻にカット
  • HP 2P + LP 1P(ハイパス2ポール+ローパス1ポール): 直列構成
  • HP 1P + LP 2P: 直列構成
  • HP 1P + LP 3P: 直列構成

Vowels

「Vowels」は、様々な母音モデル、ピッチ、周波数オフセットを備えたモーフィング・フォルマントフィルターです。
電源ボタン
フィルターをバイパスする機能で、無効時は信号が素通りします。
Drive
入力信号のゲインや歪み成分を調整します。
Resonance Limit
右クリックメニューからアクセス可能な「Qリミット」機能。
Inspectorパネルからも設定可能で、フィルターのレゾナンス(Q値)が過度に高くなりすぎるのを防ぎます。
Vowel Blend
母音間のブレンド度合いを調整します。
  • 「-100%」「0.00%」「100%」では、常に単一母音の母音スロット番号の位置(1番目, 3番目, 5番目)が発音されます。
  • 「-50%」「50%」では、2番目, 4番目の位置が聞こえます。
  • 「- (None)」に設定されている場合は、隣接する母音のブレンド(スムーズなモーフィング)になります。
Vowel Position 1〜5
このポジションの母音サウンドセットを指定します。
Vowelsサウンドスロットの説明
Cutoff Pitch Offset
ピッチベースのフィルターバンクデチューンです。
Resonance
フィルター内に適用されるフィードバック量です。
Topology
フィルター回路を指定します。
各モードは、母音のキャラクターや明瞭度・音色の明るさに影響します。
  • Cascade: シリアル接続のローパスフィルター。テキスト・トゥ・スピーチ的な伝統的フォルマントサウンド向き。
  • LP/BP: ローパスとバンドパスを並列処理。よりシンセ的なキャラクター。
  • LP/BP/HP: ローパス、バンドパス、ハイパスを並列処理。高域成分がより強調される。
Profile
母音データセット。
  • Women 1: 複数女性の平均値(古いデータセット)
  • Women 2: 複数女性の平均値(新しいデータセット)
  • Female: 単一女性のデータ
  • Men 1: 複数男性の平均値(古いデータセット)
  • Men 2: 複数男性の平均値(新しいデータセット)
  • Male: 単一男性のデータ
  • Kids: 複数子供の平均値
「古い/新しい」は、フォルマントデータ収集時期やサンプリング手法の違いを示すものです。  
実際の母音の周波数特性が異なるため、Profileを切り替えることで母音の質感や明瞭度が変化します。


Fizz

Fizzは「ネスト(入れ子)型フィルター回路」で、スパークル感やシマー(フェイザー的な揺らぎ)、バンプ感(強調されたピーク)など、独特のキャラクターを持つフィルターです。
特徴として「2つの独立したカットオフ周波数」と「内部フィードバック回路」を持ち、設定次第でボーカル的な響きやきらびやかな効果も得られます。
電源ボタン
フィルターをバイパスする機能で、無効時は信号が素通りします。
Drive
入力信号のゲインや歪み成分を調整します。
Main Cutoff Frequency
「外部フィルター」という表現は曖昧です。Fizzは「ステレオ・レゾナント・ローパスフィルター」を基盤としており、このパラメータは主に全体のカットオフ周波数を調整します。
「3dBのアッテネートが発生する周波数」は一般的なカットオフの定義ですが、Fizzではこの周波数を中心に独特のレゾナンスやバンプが生じます。
Color
フィルターのキャラクターやピークの位置・強調具合を変化させるコントロールです。
Feedback Gain
フィルター内に適用されるフィードバック量です。
Feedback Cutoff Frequency
このパラメータは「内部フィードバック回路のカットオフ周波数」を調整し、フィードバックの質感やピークの位置に影響します。
「3dBのアッテネートが発生する」という表現は一般的ですが、Fizzの場合はフィードバック回路のキャラクターを決定する重要なパラメータです。
φ Alternate Color
「選択したフィルターキャラクターのバリエーション(別の音色)」を切り替えるために使われます。
「Character Variation」とも呼ばれ、フィルターの音色や挙動を変化させます。

Rasp

Raspは、カットオフ周辺に明るさ(ブライトネス)と複数のレゾナンスノード(共鳴ピーク)を追加するキャラクターフィルターです。
穏やかな変化から強烈な効果まで幅広く演出でき、鼻にかかったような音から喉の奥に響くような音、さらには悲鳴や囁きのようなサウンドまで作り出せます。
電源ボタン
フィルターをバイパスする機能で、オフ時は信号が素通りします。
Drive
入力信号のゲインを調整し、歪み成分を加えます。
サウンドのキャラクターやアタック感を強調できます。
Resonance Limit
右クリックメニューまたはInspectorパネルから設定でき、フィルターのレゾナンス(Q値)が過度に高くなりすぎるのを防ぎます。
Bitwig 5.1以降「Resonance Limit」または「Q Limit」と表記されています。
Cutoff/Center Frequency
メインのカットオフ周波数を調整します。一般的な「3dBアッテネートが発生する周波数」と同義ですが、Raspではこの周波数を中心に独特のレゾナンスやバンプが加わります。
Raspはステレオ・レゾナント・フィルターで、カットオフ周波数は全体の音色変化の中心となります。
Resonance
フィルターのフィードバック量を調整し、レゾナンスピークの強調や抑制を行います。
Brightness
追加されるレゾナンスノードの強さや位置を調整します。
Brightness Modeの設定によって挙動が変化し、単なるピーク量だけでなく、どのような周波数帯にピークが現れるかも変化します。
Filter Type
  • Bypass: フィルターオフ
  • Low-pass: 低域を通す
  • Band-pass: 中域を通す
Brightness Mode
  • Shift: メインカットオフを基準に、1つのピークを穏やかに強調(サブトル、部分的にインハーモニック)
  • Double: ShiftとGravityの中間的な動作。両者の特性を組み合わせたバランス型
  • Gravity: ピークがカットオフ周辺に強く引き寄せられ、より劇的な変化や「引っ張り」感が出る

Ripple

Rippleは、ハイパーレゾナンスを特徴とする現代的なキャラクターフィルターです。
フィードバックによる演奏的な変化や、サブハーモニクス、倍音成分の強調といった多彩な音響効果を生み出します。3つの「Nature」モードによって、信号の倍音やフィードバックの特性が大きく変化します。
電源ボタン
フィルターをバイパスする機能で、オフ時は信号が素通りします。
Drive
入力信号のゲインを調整し、歪み成分を加えます。
サウンドのキャラクターやアタック感を強調できます。
Cutoff/Center Frequency
メインのカットオフ周波数を調整します。一般的な「3dBアッテネートが発生する周波数」と同義です。
Resonance
フィルターのフィードバック量を調整し、レゾナンスピークの強調や抑制を行います。
Nature
Rippleの「Nature」は、フィルターの動作モードを切り替えます。
  • Earth: メインカットオフ付近を穏やかに強調、落ち着いた倍音感
  • Wind: フィードバックが鋭く、アシッド的なサウンドや「吹き抜ける」ような効果
  • Fire: 広範囲にわたるフィードバックと動き、劇的な変化や派手な倍音
Feedback Cutoff Frequency
フィードバックループ内のカットオフ周波数を調整します。
これにより、フィードバックがどの周波数帯で強調されるかを決定できます。通常のレゾナンスとは異なり、ユーザーがフィードバックの周波数帯を直接コントロールできます。
Feedback Gain
Ripple独自のパラメータ。バイポーラ(正負両方向)で調整でき、正方向でフィードバックを強め、負方向でサブハーモニクスや特殊な倍音を生成します。
負方向ではサブベースやメロディックな低域が生まれやすくなります。
Tweak Feedback / Tweak Feedforward
フィルター回路内の特定ポイントの挙動を変更するトグルスイッチ。
  • Tweak Feedback: フィードバックポイントの動作を微調整し、レゾナンスを抑制または拡張
  • Tweak Feedforward: フィードフォワードポイントの動作を微調整し、レゾナンスや倍音の広がりを変化
Low Quality
Inspectorパネルまたは右クリックメニューから切り替え可能。
フィルターのチューニング精度を下げてCPU負荷を軽減します。

フィルターモジュレーションセクション

一般

Pre FX (Pre FX Chain)
Gain
Post FX (Post FX Chain)
Mix

補足

Vowelsの母音サウンドスロットの説明
以下は、Vowel Positionで選択できる母音を「役割やカテゴリごと」に分類した一覧です。
主に舌の高さ(高・中・低)、舌の位置(前・中・後)、口の丸め(非円唇・円唇)、明瞭母音/曖昧母音(シュワなど)、特殊なブレンド・英語外の音などを基準に整理しています。
母音 舌の高さ 舌の位置 丸め 例・特徴
i, ɪ, e, ɛ, æ 高~中~低 非円唇 イ・エ・ア系
y, ʏ, ø, œ 高~中 円唇 丸みのあるイ・エ系
ɘ, ə, ɜ, ɞ, ʌ, ɐ 非円唇/曖昧 シュワ・曖昧母音
u, ʉ, ɨ, ɯ, ɵ 円唇/非円唇 ウ・オ系
o, ɔ, ɑ, ɒ, a 中~低 円唇/非円唇 深いオ・ア系
Œ, ɣ 特殊 - - 英語外・特殊
1. 前舌・高母音(明るく高いイ・エ系)
  • i:「see」や「eat」のイの音。高く明るい母音(非円唇)
  • ɪ:「sit」や「hit」のイ。iよりもやや短く曖昧(非円唇)
  • e:「say」や「rain」のエ。明るくはっきりした音(非円唇)
  • ɛ:「get」や「rent」のエ。やや開いた音(非円唇)
  • æ:「cat」や「hat」のa。広く開いた音(非円唇)
2. 前舌・円唇母音(明るいが丸みのある音)
  • y:w音が加わった丸みのある「we」のような音(円唇)
  • ʏ:中間的な「oo」。やや丸みのある「ooze」のような音(円唇)
  • ø:閉じた-lを伴う「ool」のような音(円唇)
  • œ:丸みを帯びた-l。「ole」のような音(円唇)
3. 中舌・中間母音(曖昧・シュワ系)
  • ɘ:やや閉じた「eh」。曖昧母音に近い
  • ə:「run」や「ton」のa。英語のシュワ(曖昧母音)
  • ɜ:やや閉じた「ah」。英語のr音に近い曖昧母音
  • ɞ:やや閉じた「aw」。曖昧で奥行きのある音
  • ʌ:「fun」や「come」のa。やや開いた曖昧母音
  • ɐ:微妙なr音を伴う「are」のような音
4. 後舌・高母音(深く丸いウ・オ系)
  • u:「pool」や「cool」のu。深く丸い母音(円唇)
  • ʉ:ゆっくりとした「oo」。「ooh!」(驚き)のような音(円唇)
  • ɨ:強調された「oo」。「eww」(嫌悪の表現)のような音(円唇)
  • ɯ:「hook」や「book」のu。日本語の「ウ」に近い(非円唇)
  • ɵ:「foot」や「would」のu。やや曖昧で丸みがある(円唇)
5. 後舌・中~低母音(深いオ・ア系)
  • o:「coat」や「bold」の最初の音。丸く深い母音(円唇)
  • ɔ:「more」や「floor」のo。深く丸い音(円唇)
  • ɑ:「far」や「star」のa。深く開いた母音(非円唇)
  • ɒ:「want」や「job」のo。やや奥行きのある開いた音(円唇)
  • a:「hi」や「fight」の最初のa。明るく開いた母音(非円唇)
6. 特殊・英語外・ブレンド系
  • Œ:開いた-lを伴う「all」のような音(円唇)
  • ɣ:やや閉じた「uh」。曖昧母音(英語外・特殊)
  • Profileによるブレンド:上記以外の母音間も、Vowel Blendで連続的にモーフィング可能
補足
  • 丸め(円唇/非円唇)は母音の音色に大きく影響します
  • 曖昧母音(シュワ)は英語の弱母音や中間母音で多用されます
  • 特殊母音や英語外の音は、サウンドデザインやエフェクト的な用途にも活用できます

これらの母音サウンドは、Vowelフィルターのスロットに割り当てて、シンセサイザーやエフェクトで人間の声のような音色変化やキャラクター付けを行うために使われます。
各母音は、実際の英語発音や音声学記号(IPA)を基にしており、音作りやボコーダー、ボーカルエフェクトなどで活用されます。

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最終更新:2025年05月17日 00:30