FM-4

FM-4 (エフエムフォー)


FM-4 (エフエムフォー) は、4オシレーター仕様のFMシンセサイザーの Synthデバイスです。
レシオとオフセットを使用してオシレーター周波数(ピッチ)を決定し、セルフモジュレーション機能や、ローパスフィルターを備えたノイ ズジェネレーター、モジュレーションマトリックス機能を備えています。


オシレーター・セクション


FM-4デバイスのオシレーター・セクションは、4つのオシレータを使用したFM合成特有の柔軟性と複雑さを活かしたサウンドデザインが可能です。
特にレシオ設定やModスケール値による精密なコントロールがプロフェッショナルな音楽制作や実験的なサウンドデザインにおいて大きな役割を果たします。
オシレーターの有効・無効
各オシレーター(1〜4)は独立して有効化または無効化できます。
  • 無効化されたオシレーターは、音声出力だけでなくモジュレーションマトリクス内でのモジュレーションソースとしても機能しなくなります
  • これにより、不要なオシレーターを無効化してCPU負荷を軽減したり、特定のモジュレーションルーティングを簡素化することが可能です
オシレーター・レシオ

オシレーターの周波数は「整数部」と「小数部」で設定され、入力ノート(MIDIピッチ)に対する周波数比を指定します。
整数部
  • 基本的な倍音比(例: 1:1、2:1など)を設定します。整数倍音はFM合成で調和的な音色を生成するために重要です
小数部
  • 周波数比を微調整し、不協和音や複雑な倍音構造を作成できます
  • 例えば、"1.5" の設定では "3:2 (3÷2 = 1.5)" の比率が得られ、調和的な「完全5度(※)」の関係が生まれます (※平均律では近似)

Hz (オシレーター周波数)
「オシレーター周波数」パラメーターは、ノート入力とは独立して各オシレーターの周波数をオフセットする機能です。
  • 単位はHzで指定され、整数比から外れた微妙なデチューン効果や特殊な倍音構造を作成する際に使用されます
  • この設定は特に複雑なFM合成パッチで効果的です
Mod (オシレーター・モジュレーション・スケール)
「Mod」コントロールは、モジュレーションマトリクス内でそのオシレーターが他のオシレーターに与える影響力(スケール)を調整します。
  • この値を下げると、そのオシレーターが他のオシレーターに与えるモジュレーション量が減少します
  • 音声出力には影響せず、純粋にモジュレーション信号としての強度を制御します

ノイズ・セクション

N (ノイズジェネレーターの有効・無効)
"N" をクリックすると、ノイズの有効・無効が切り替えられます。
  • ノイズジェネレーターは独立した音源として機能するだけでなく、他のオシレーターへのモジュレーションソースとしても使用可能です
  • ノイズをモジュレーションに使用する場合、音声信号としては聞こえない設定にすることもできます
ノイズ・カットオフ
ノイズジェネレーターには12dB/octのローパスフィルターが搭載されており、「カットオフ」ノブでフィルターの周波数を調整できます。
  • この設定により、高周波成分を削除してノイズの音色を柔らかくすることが可能です
  • フィルタリングされたノイズは、モジュレーションや音響効果においてより制御された結果を得るために役立ちます
Reso (ノイズ・レゾナンス)
ノイズ・ジェネレーターの12dB/octのローパスフィルターのレゾナンスを指定します。
  • レゾナンスはローパスフィルターのピークを強調し、フィルター周波数付近で音色を際立たせます
  • 高いレゾナンス値では、ノイズの音色が鋭くなるため、特定のモジュレーション効果や音響デザインに適しています
Drive (ノイズ・ドライブ)
「Drive」ノブはポストフィルター段階で信号を最大+48dBまで増幅します。
  • ノイズ・ドライブによってノイズの音量や質感が変化し、より攻撃的なサウンドやクリッピング効果を加えることができます
Mod (ノイズ・モジュレーション・スケール)
このノイズ・ジェネレーターから発するモジュレーションのスケール値 (強度) を指定します。
  • 他のオシレーターへのモジュレーション量を制御し、複雑なFM合成パッチを作成する際に重要な役割を果たします

モジュレーション・マトリクス

モジュレーション・マトリクスは、横軸がモジュレーションソースとなり、縦軸のオシレーター(1〜4) とノイズジェネレーター (N) にモジュレーションを適用します。

例えば上記画像であれば、"オシレーター1 (赤)" の値で、オシレーター1に "43"、オシレーター2に "35" のゲイン量でFM合成を行います。
オシレーターは自分自身にモジュレーションを適用する「自己フィードバック」が可能です。
例えば上記画像では、オシレーター1が "43" のゲイン量で自己フィードバックを行っています。

アンプ・エンベロープ

AEG (アンプ・エンベロープ・ジェネレーター)
アンプ・エンベロープをモジュレーターに割り当てたい場合、ここをクリックして割り当てを行います。

例えばFilterのローパスフィルターのカットオフ周波数に割り当てる、といった使い方です。
A (AEG・アタック)
ノートオン時に立ち上がり時間を指定します。
D (AEG・ディケイ)
アタック後の減衰時間を指定します。
S (AEG・サスティン)
ディケイ後の持続時間を指定します。
R (AEG・リリース)
ノートオフ時の減衰時間を指定します。

ミキサー


ミキサーは、オシレーター1〜4、ノイズの出力レベルを指定します。

アウトプット

Note FX (Note FX Chain)
Note FXを FM-4 デバイスよりも前にチェーンとして追加できます。
FX (FX Chain)
エフェクトチェーン。FM-4 デバイス出力信号を処理するエフェクトを指定します。
Pitch (ピッチ)
デバイスのピッチオフセットを指定します。
Glide (ポルタメント)
ノート入力ごとの直前ピッチからのポルタメントタイムを指定します。
Gain (ゲイン)
デバイス出力に適用するゲイン量を指定します。
Pan (パン)
ステレオパンポジションを指定します。
Out (出力レベル)
出力レベルを指定します。

活用例

オシレーターとモジュレーション・マトリクスの活用例

1. 倍音生成とレシオ設定
FM合成では、キャリア(変調される側)とモジュレーター(変調する側)の周波数比が倍音構造を決定します。
  • 調和的なサウンド: レシオを整数比(例: 1:1, 2:1)に設定
  • 不協和的なサウンド: レシオに小数値(例: 1.33, 2.75)を含める
2. デチューン効果
  • 周波数オフセットを使用して微妙なデチューン効果を加えることで、サウンドに厚みや動きを与えます
  • 特に複数のオシレーターを使用した際に有効です
3. 自己モジュレーション(フィードバック)
  • オシレーター自身をモジュレータとして使用することで、荒々しいサウンドやノイズ的なテクスチャを生成できます
  • これにはModスケール値とレシオ設定が重要な役割を果たします
注意点とベストプラクティス
  • FM合成は操作が直感的ではない場合がありますが、レシオやModスケール値を少しずつ調整しながら実験すると理解が深まります
  • モジュレーションマトリクスとの連携によって非常に複雑なサウンド設計が可能になるため、各パラメーターの影響範囲を把握することが重要です

ノイズ・セクションの活用例

1. モジュレーションソースとしての活用
  • ノイズジェネレーターは他のオシレーター(1〜4)の周波数変調に使用でき、ランダム性や荒々しい質感を加えることができます
  • 例えば、オシレーター1に対してノイズモジュレーションを適用すると、不規則な音響効果やテクスチャが生成されます
2. フィルタリングとドライブによる音色設計
  • カットオフとレゾナンス設定でノイズの周波数帯域を絞り込み、ドライブでその存在感を強調できます
  • これにより、特定の音響デザインや背景効果に適したサウンドが得られます
3. 自己フィードバックとの組み合わせ
  • ノイズジェネレーターは、オシレーターと同様に自己フィードバック(自身へのモジュレーション)が可能です
  • これによってさらに複雑なテクスチャやグリッチ効果が得られます

FM-4 での音作りを学ぶ方法

Patch from scratch with Bitwig FM-4 synth ( Bell, Bass, Keys, Pad )

ベース、ベル、キー、パッドなど、FM-4を使った音色作りをゼロから学べる実践的な動画。
プロジェクトファイルやプリセットがダウンロード可能で、実際に試しながら学べます。

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最終更新:2025年05月15日 07:26