アルストル大陸の海岸に広がる工業都市、神聖機械帝国。
世界一開発が進んでいる国で世界一の軍事力も持っている国だ。
-防衛チーム第03小隊-
「よし、快調快調、いつでも出撃可能!」
新品同様のMR(メタルレイダー)の点検をしている青年、名前はガンマ・フラング、このMRのパイロットである。
「やっと許可された専用機体だものねー、これからは念入りに整備しないとね」
その隣で同じ機種の点検をしている女性は同僚のエレン・ロイドである。
「そうだね、これからはこいつが僕らの武器となるんだからね」
大人しそうに見えるこの青年はクリフ・カールトン、同じく同僚である。
「しっかしなぁ、おめぇら皆この機体にするなんてな・・・他のチームから笑われるぜ?」
頭を抱えている40ぐらいのガッシリした男性、トレバー・ハンソン、このチームの隊長である。
トレバーが頭を抱える理由、それは彼らが1世代前の機体を選択したからだ。
「なに言ってるんですか、隊長があんなに乗り回してたらこれ以外選択肢がなくなりますって」
わらけた様子でガンマは言った。
彼らが選択したMRはEI社(エステルインザーギ社)のEi-05-ネアウォルフ、非常に互換性が高い機体で用途により様々なカスタムが施される。
しかし、カスタムの幅が広すぎてうまく性能を引き出せない事が多い。
それによりベントラー社が開発した凡庸型MRのVt-03-マーヴェリックとすぐに世代交代となってしまった。
マーヴェリックは用途に合わせてフレームセットを換装できるのだ。
フレームセットを換装するだけですぐにカスタムが完了する事から、MRのカスタムに慣れてないパイロットからの人気が高いのだ。
「だからってよう・・・」
「隊長、私たちは癖が強いって隊長が言ったんじゃないですか、だからこうしてカスタマイズの幅が広いこの機体を選んだのです」
「はぁ・・・もう好きにしろ、最適カスタムのデータを取るからバーチャルトレーニングルームに来い」
「はーいっ!」
バーチャルトレーニングルーム、コクピットと同じ形をした機材、擬似戦闘シュミレーション、要するにゲームセンターに並んでいるようなものだ。
「すごい、カスタムの幅が広いとはいえこんなにも選択肢があるなんて・・・」
「えーっと、どれがどれだ・・・あーっも、わっかんねぇ!」
「ガンマはちゃんと勉強してないからねぇー」
「だーからマーヴェリックにしとけっつったんだ!性能面は右下にゲージで表示される!それを参考にして適当に組めばいい!」
隊長の呆れと怒りの混ざった声が部屋に響く。
「えっと、武器はやっぱり派手になぁ・・・お、日本刀かー、面白そうだな!」
「出来るだけ射程が長い・・・いや、これは銃身が長すぎる・・・」
「ブーストの早さも早ければいいってものじゃないのよね・・・あ、これかわいい!」
早くも三人の機体は個性的な外見となっていった。
その様子を別のモニターで見ている研究員も、あまりの偏り具合に首をかしげる。
「あの・・・トレバー隊長、これ大丈夫なんですか?すこし癖が強すぎませんかね」
「いや、いい、このままで続行だ」
研究員はカスタムされた機体データを打ち込む。
するとモニターに三人がカスタムした機体がよりはっきりと表示された。
ガンマの機体は片手に日本刀を持ち、足と腕の装甲が大幅に強化されている。
足もローラーブースター内臓タイプに換装され、スラスターも強力なものになっている。
どう考えても接近することしか能がない機体だ。
クリフの機体は様々な射撃武器を扱えるように手の関節を人間と同レベルに仕立ててある。
又、アームには魔素式グレネード、肩には魔素式レーザーと残弾を気にしなくて良い設計となっている。
背面には折りたたみ式のレールガンが2丁括り付けられている。
バイザーも熱源感知特化で射撃の事しか考えられてないようである。
エレンの機体は頭部に二本の耳のようなアンテナがたてられ、アームには捕獲用の電撃鞭が内臓されている。
クリフと同じで手の関節は繊細にできている。
気になるのは背後にある二本の尾っぽ、何を意味するのかは担当の研究員にもわからない。
足は先が尖ったものにされて基本的に浮いて戦うタイプのようだ。
特に加えられた物はないようなので、手持ちのビームやレーザー兵器を惜しみなく使えるだろう。
「よし、お前達!さっそくだがそこにマーヴェリックを出現させた!」
三人の機体の前に1機のマーヴェリックが現れる。
AI操作の練習用データだ。
「AIのレベルは低めに設定してある、まずは慣らしにこいつを破壊せよ」
「よしきた!俺が一番、おわぁ!」
ガンマの機体が足を後ろにけっぽり勢いよく顔面から地面にダイブした。
「馬鹿者!お前の機体はローラーだ!ローラーを固定するかモーターを起動させて進むんだ!」
「いてて・・・衝撃まで再現しなくてもいいだろーよこの装置!」
「なにやってんだか・・・次、僕がいきます」
クリフは呆れた様子でガンマを見てから、前方のマーヴェリックに集中する。
「邸レベルのAIだが流石マーヴェリック、動きが機敏だ」
まるで翻弄するかの如く、ジグザグ走行をするマーヴェリック。
だが、クリフは冷静に狙いを定め、レーザーで撃ち抜いた。
「流石だクリフ、冷静だな」
「いえ、訓練の賜物です」
「それじゃあ次、エラン」
「はーい」
エランの前に配置されたマーヴェリックが動き始める。
「邸レベルAIだって、なめられた物ね」
エランの機体は機敏に動き、あっというまに電撃鞭でマーヴェリックを捕らえてしまった。
「つっかまーえた・・・っきゃ!」
マーヴェリックを捕獲したエランの機体に別のマーヴェリックからの攻撃が入った。
「ちょっと!あれガンマを狙ってるマーヴェリックじゃないの!?」
「ん?おい、どういうことだ」
「申し訳ございません、どうやら途中で操作を間違えてAIレベルが変更されてしまったようです」
「ふむ・・・わかった、このまま続行しよう」
「ちょっと、何言ってるのよ!」
「隊長!このマーヴェリックは多分最高レベルです!動きが人間離れしてます!」
マーヴェリックは非常に素早く動き、的確に二人を攻撃する。
「邸レベル用のハンドガンでもこう的確にやられちゃあもたないわよ!」
「だめだ!ナイフ攻撃がくる!」
クリフの機体に切り掛かったマーヴェリック、だがその攻撃は横から入った一太刀で止められた。
「おい、何無視してんだよ、すっころんだ俺はアウトオブ眼中ってか?」
マーヴェリックはささっと後退しナイフを構えた。
「なーるほど、弾切れしやがったんだなテメェ、舐められたお返しだ!ぶっ叩き切ってやる!」
マーヴェリックが凄まじい速さで動き出す。
しかし、ガンマの機体はそれ以上の速度で踏み込み、一撃でマーヴェリックを仕留めた。
マーヴェリックは構えた姿勢のまま真っ二つになり地面に転がった。
「もー、不良なんだから」
「相変わらず熱くなった君はおっかないな」
「ちょっとまてよ、ほめるとかねーのかよ」
「なら俺からほめよう、ガンマ、よくやった」
まるで何事も無かったかのように会話する4人、研究員は目を白黒させていた。
「あぁ、ガンマの事か、あいつはもともと反射神経がいいんだよ」
「それでも普通じゃありえないですよこんなの」
「あいつはな、度胸試しってな、ロケット花火を素手で打ち返すって遊びを昔からやってたんだ」
「それは・・・・・・馬鹿ですね?」
「おおよ、大馬鹿だ」
「聞こえてんぞ隊長!」
トレバーは少し考えてから、口元を歪め、マイクを手にとって言った。
「よし、今日はラーメンをおごってやる」
「やったぁ」
「こってりはやだなぁ」
「なんだ、さっきの謝罪か?」
「そのかわりだ」
三人の前にマーヴェリックが8機ほど現れる。
「AIレベル5のこいつらを一度で相手して全員倒せ」
三人とも隊長のほうを見た。
「これは命令だ」
「ちょ、なにいってんの!?」
「うわぁー痛そうだなぁ」
「上等だコラ全部ぶった斬ってから隊長のサイフがカラになるまで食い尽くしてやる!」
「健闘を祈る」
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「ちくしょー」
ガンマはラーメンを啜りながら呻く。
「いいじゃないか、結局ラーメンは食べられたんだ」
「そうよ、初めてだったんだしこれからよ」
ガンマ達は一人一人バラバラとなって戦い、結局全員で5機までしか倒せず全滅してしまった。
「お前らは一人一人の癖が強すぎるからもっとチームワークを磨くんだ。 それがお前らの強くなる一番の道だ」
「「「はーい・・・」」」
三人はこの店の一番安いラーメンを啜り、今日の事を反省する。
第一話 完
あとがき
クロミとチェロキーはほのぼの(?)系
でもってこっちはSFですです。
場所は未来の神聖機械帝国。
マシンパレスはもうちょっと先の話です。
では、本番はまだまだなのでこれからに期待してくださいまし。
by蜂
最終更新:2011年03月16日 21:43