Terminusの歴史の最終章の導入は私の告白から始めねばならないだろう。発見したTerminusの神秘や真実と考える全てを書き記したわけではないからだ。私は良からぬ推測を記述したと気づいたら、その部分は破棄する。だがTerminusという「キャンバス」には惑わすような事物があまた存在する。とはいえ、そのような良からぬ推測が当たっていることもあるわけだが。同様に一見すると破棄すべき記述も重要な事実が隠されていることがあるので、慎重に読み進め、看破するのだ。
─ The Keeper
無常の時代
混沌の時代は単純にDeicide Warの終結と共に終わりを迎えたと一般的に考えられているが、そうではない。Revenantの脅威はついに打破されて消え失せたが、Terminusの広範囲は廃墟と化した。町、文化、国、さらには地形すらも流血の中一掃され、ItteroやGintoが不可逆の変貌を遂げたように残存する多くは取返しのつかぬ程変わってしまった。これはいわば神々の戦の置き土産で、元に戻ることは決してない。
死者をくるむ間に合わせの包帯の中から勝利の産声を上げたTerminusは、傷だらけのからだを見渡すと、彼女に住まう人々が自身の身体と同じく深く傷ついているのが分かった。その傷は労わり癒されるべきものだったが、その多くはまともな手当てを受けていなかった。
悲しくも、無常の時代はKa'Druhorrでの「太陽たちの勝利」から五か月後、聖なる六種族の使節団がVesuの島に集まった際始まった。というより実際に集まったのは四種族のみだった。戦争の最中結ばれた盟約は新たな日を迎えると破られたわけだが、Vesu島で判明した状況がそれを決定的なものにした。
霧の島には五つしか拠点が存在しておらず、旗印は四本しかなかった。エルフ、ヒューマン、ドワーフ、アーカイの拠点は健在だったが、オーガに関しては拠点はあったものの旗印が取り除かれていた。ダーク・ミアの拠点は初めから存在していなかったかのように消え去っていた。両者の状況は絶望の時にあっても連帯感や信頼感は一切育まれなかったことを示していた。聖なる六種族はもはや神聖とは言い難く、ゆえに若きヒューマンの王Avendyrは以下の言葉を残した。「この時代は、何が待ち受けていようと、無常に違いない。」
その年は486IH、混沌の時代が終わった。
ここからは時を前に進めなければならない。というのも、この時代Terminusの舞台に三人の役者が加わったからだ。620~622年の間にHirythのハーフリング、D'shothのスカー、Stormonaのノームが次々と到着した。この中で三番目に到来した種族が「衝突の時代」で最も異様だと言っておくべきだろう。このような種族は私は見たことも聞いたこともない。それぞれが今ある場所に産み落とされたのは神の御慈悲と言うべきか。Reignfall大陸にハーフリングが上陸していたり、Whitethawの雪原にスカーが到来していたとすれば多くの血が流れていたことだろう。ノームは…おそらくどこにいたとしても気にも留めず生きているだろう。
とはいえ、スカーは到着後即座に戦争を始めたと思われる。そして再び内戦も。スカーは森林地帯に上陸し、この地帯はKhäganとして知られる人々が住んでいた。(KhäganはKhäga砂漠のみなし子と呼ばれる種族の末裔であり、568年この種族から分化した人々であり、砂漠に定住しているのは彼らではなく「Khäga砂漠のみなし子」たちである)
スカーの攻撃は凄惨極まるものだと考えられていて、スカーの他種族への文化的影響について示唆をもたらした。スカーはKhäganの水源を汚染し、大部分を奴隷化した。衝突を避けたKhäganは逃げ延びたが、追撃を始める間もなく同士討ちを始めた。それがスカーである。
ハーフリングはWild's Endに上手く根を下ろし、海岸や草原に生える木々と広く共生し
息を呑むような独特な都市を造り上げた。彼らは至るところで活動しており、私も一人近しい友人がいるが、彼らがどのような人々か語るのはここまでにしておく。彼らの人となりは実際に相対して知るべきであって、本の知識から読み取るべきではないからだ。
ノームは…ノームはノームだと言っておこう。ノームに関することは殆ど何も分かっていないというのに、ノームは250年以上も定住していると書くことには違和感を覚える。彼らに関する秘密は地下金庫にも収まる程あるが、分かっている事実は瓶一本に収まる程しかない。五十年間ノームのSkyholdの空中都市は聖地のように閉ざされてきて、Khazasの呼びかけにも耳を貸さず、氷雪のドラゴンTel-Nharssisの訪問でさえ意を介さなかった。しかしアーカイの辛抱強い呼びかけもあって、ついに対話を始めることができた。
ようやくその扉──というより橋というべきだが──は開かれた。私はいつかノームの見識を必要とする時期が訪れると考える。だが現在ノームはあえて特異性を装っているように思われる。
ここで一旦Vesu島やAvendyrの話に戻した方が良いだろう。民族の未来像に関する王の信念はこの孤島でまとまったと言われている。
かの王ほどその民族やTerminus全体の運命を左右した人物は他にはいない。Vesu島に訪れる前から、Ka'Druhorrの一件に繋がる指揮官としての才覚は数多の戦場において発揮され、同時代の人々の尊敬を多く集めた。
今日の絶頂期と比べると、RevenantがHavensongやFaerthaleを攻撃した際、ヒューマンはKingsreachの丘陵地帯にはまだ足を踏み入れておらず、この二つの都市は最も激しい攻撃に晒されていた。戦争が終結した頃にはその廃墟の瓦礫はヒューマンの神々の一柱によって持ち去られ、崖から投棄された。人々は故郷を失った勝利者で、心に刻まれた思い出を除けば、その歴史を象徴する物を何一つ持っていなかった。
それでも、Bethrale海北部の沿岸にThronefastが建設されると、人々は臆することなく再び立ち上がり、他の種族の追随を許さぬ栄華を極めた。
数日のうちに、Avendyrは将来の交易相手と消極的だが有益な同盟を関係を結ぶため一帯に騎兵を派遣、更には再建を支援する軍隊や技術者の派遣を約束した。この関係は当時まだ再建を始めたばかりの国々にとって非常に重要なものとなり、この同盟関係は今日まで続くものとなっている。
だが彼が下した最初の命令は、海に沈んだHavensongの瓦礫からアーチを二基建てることだった。一つは死を、もう一つは生を象徴しており、Thronefastの人々と友人になるには、少なくとも形の上だけでも彼らが経験してきた過去を分かち合う必要があると言われている。(だが実のところ、ヒューマンが経験した苦難を何も知らずにこの「通過儀礼」を通っては死の苦痛や生みの苦しみを味わったと語る者が多くいると明かさねばならない)
この設計思想でAvendyrは自国民への未来像を明確にし、壮大な都市はそこに住まう人々に活気を与え、また訪れる人々の尊敬を集めると強く考えた。
Thronefastは商業、資産、安定性で栄華を極め、他の種族全てがその天幕をくぐれるような巨大な支柱として君臨し続けている。525年にAvendyrが死去すると、大陸をまたいで多くの人々がその死に哀悼を捧げた。
Deicide Warの後、すぐさま恵みと悲嘆の二つの空虚が訪れた。ひとつはWarWizardsたちの勇退である。これはしばしば忘れられがちだが、認めるべき事実である。
特にその後に続く世代は彼らがもたらした秩序に対して多大な恩義があることを考えると、その名にあやかるのは無遠慮な行為であるが、諸種族は名誉ある「Terminusの太陽たち」を讃え、その名前は広く使われることとなってしまった。
恩寵と言えるのは、WarWizardsの誰一人としてその無敵の力を支配の為に行使しなかったことで、決して禁じられていたわけではないことを我々は知っている。もし五人の内一人でも動けば数か月ではないにせよ、崩壊した国々を全て数年の内に支配することができただろう。
また、もし同盟関係が結成されれば不均衡は更に悪化、再び大陸間の戦争が勃発し世界に大変化が訪れただろうが、その場合Terminusが回復することは叶わなかったであろう。
しばらくの間WarWizardsの復活を求める声が後を絶たなかったが、誰一人として見つかることはなかった。この為彼らを騙る者が多く現れ、これは未だに尽きることがない。数年ごとに狂った魔術師が現れては自分は太陽の深淵から遣わされたのだのと馬鹿げたことを主張する。ただこの話が単なる些細な与太話で本当に良かったとは思うが。
本物の五人が死去したという文献は見当たらなかったということには言及しておくべきだろう。おそらく彼らは健在だが、単に我々の近くにいないだけだと思われる。
ここで二組の破壊的な勢力へ話を移そう。Revenantの健在とthe Union of Shadowの勃興である。Revenantに関しては、これを完全に根絶しうる勢力は存在していなかった。仮に六種族が団結を維持していたとしてもそれを越えた連合勢力を組まねばならなかっただろう。事実、他の外部の勢力はもとより、六種族のどの国も戦争を仕掛けることはできなかった。この不完全な攻撃でRevenantは滅亡せず瓦解し、主勢力はHulthrr山やBaaka'rrnへと撤退し、その他はKa'druhorrやその他の地へ留まった。
Avendyr王であれば、その影響力と国力をもってすればその後十年の内に戦を先導することができたかもしれないが、結局そのような作戦は実行されなかった。(ただ計画の検討がなされたとする証拠は存在している)再び危難が降りかかってくる可能性はあるが、幸いまだ訪れていない。
The Union of ShadowはRevenantとは全く別個の脅威である。その奇異な起源は最低でもthe Zealots of Rhaまで辿ることができるが、彼らは幽閉されし高位の定命Rhazikの狂信者の集団で、世界各地で災厄を振りまいている。極秘の要塞あるいは別名「Vaults」(地下空間)を本拠地とし、Rhazikを幽閉した魔術を悪用しているというが、このことに関しては殆ど分かっていないと認めておく。
彼らは何らかの方法を用いて政府高官、将軍、ハイプリーストや定命に影響を与えている。どのような力をもって操っているのかは全く把握できていない。
この一団に対して実際に対策が講じられようとすると、その前にその狙い自体を逸らしているのだろうと考えられている。また、重大な情報が協力者から得られんとしても、その者は正気を失うとまではいかないまでも、恐怖に苛まれ怯んでしまうのだ。
私はこれまでTerminusの歴史を要点を絞って書き綴ってきたが、Deicide Warがもたらしたもう一つの空虚、悲嘆の方に関して語ってからこれを締めくくりたいと思う。
これまでにCelestial Boundary(天の境界)やその影響について触れてきたが、我々はこの境界が破壊の主により悪用され、女神Ginaviの慈悲深い献身により守られてきた変遷を目撃してきた。
またCelestial Boundaryに関して、その境界の存在にも関わらずミアの女神Syronaiはミアの人々を救ったという陳述(しかしながらこれは悲劇的な犠牲を経た)や、WarWizardsはそれぞれの種族の神々によって創造されたという可能性が根強く残っている。(これには崇高な協力が必要となっただろうが、私にはどうにも受け入れがたい考えだ)
このようにして、どのような強大な存在が不滅の存在と定命の存在の間にこのような境界を設置したとしても、神々の戦争が終結した後はこの境界はより一層強化されたということが分かった。
なぜならば、Terminusの人々はこれまでは神々の存在を囁き声として感じることができたが、今やそのような声はしばしば単なるそよ風に過ぎないと気づかされたからだ。
予知夢は単なる夢に過ぎず、予感はしばしば単なる妄想に過ぎなかった。これはつまり我々の周りには霊的な領域はもはや存在しないということだろうか?もちろん違う。だが我々は信仰心を持つ生き物であり、親を奪われた子の如く信仰を否定されている。
誰もがこれまで裏付けされていた先見性を失ったこの無常の時代の先に待ち受けているものは何であろうか。
TerminusはSeminaが語ったように、戦争により引き裂かれ廃墟と化したまま変わることができないのだろうか。あるいはSeminaが切望したように、その傷を癒し、一つの広大な世界としてまとまるのだろうか。
私は数多の予言書を読んできた。(あまり褒められた趣味ではないが)また、「預言者」からその話を聞いてきた。(その中で最も信頼できるとされる者たちは心の均衡を失っていたが)さらには苦々しくも占い師の話も聞いてきた。(きわめて不衛生で忌避すべき連中である)
その全てに共通しているのは、皆「親」を必要としていることである。
以上をもって、Ithosbrun Hjilen暦 987年にこの本を読者に捧げる。我々は無力で、出来ることといえばせいぜい見えざる手に縋りつくことくらいである。
最終更新:2026年06月14日 18:02