インスマス

インスマス


インスマス(Innsmouth)は、H.P.ラヴクラフトが1936年に発表した小説『インスマスを覆う影(The Shadow Over Innsmouth)』に登場する架空の港町で、クトゥルフ神話の重要な舞台の一つです。
この町は、アメリカ合衆国マサチューセッツ州エセックス郡に位置し、マニューゼット川の河口にあります。


概要

インスマスの特徴
地理と雰囲気
  • インスマスは周囲を湿地帯に囲まれた寂れた漁村で、鉄道が廃止されバスのみがアクセス手段となっています
  • 町全体は陰鬱な雰囲気に包まれ、異常な磯臭さや「インスマス面」と呼ばれる住民特有の容貌が特徴です
歴史
  • かつては貿易で繁栄しましたが、19世紀初頭から衰退
  • 1838年頃、地元の船長オーベッド・マーシュがポリネシアの部族から学んだ儀式を通じて「深きものども」と契約を結び、町を再興させました
  • しかし、この契約は異形の存在との交配や不気味な宗教「ダゴン秘密教団」の広まりをもたらし、町はさらに荒廃しました
深きものどもとインスマス
  • インスマスは、「深きものども(Deep Ones)」と呼ばれる半人半魚の生物が暗躍する場所として知られています
  • 彼らはクトゥルフやその眷属であるダゴンとヒュドラを崇拝し、人間と交配することで混血種を生み出します
  • この混血種は成長と共に外見が変化し「インスマス面」と呼ばれる特徴的な容貌を持つようになります
深きものどもの特徴
  • 海底都市イハ=ントレイなどに住み、海中で生活
  • 人間と同程度の知能を持ち、宗教的儀式や社会構造を形成
  • 混血個体は初め人間として生まれますが、加齢やストレスで深きものへと変態していく

物語『インスマスを覆う影』
この小説では主人公が偶然インスマスを訪れ、不気味な住民やダゴン秘密教団の存在に触れる中で、自身が「深きものども」との混血である事実を知ります。当初は嫌悪感を抱くものの、最終的にはその運命を受け入れるという展開が描かれています。この物語は、人種や異質性への恐怖と魅力というテーマを扱い、ラヴクラフト作品の中でも特に象徴的です。
関連事件
1927年、『インスマスを覆う影』の主人公の通報によってアメリカ政府が動き、大規模な捜査と住民拘束が行われました。この際、多くの建物が破壊され、「悪魔の岩礁」への魚雷攻撃も実施されました。この事件以降、インスマスはゴーストタウン化しました。

インスマスはクトゥルフ神話における恐怖と禁忌の象徴的な舞台です。不気味な宗教や異形との交配というテーマが描かれ、人間社会への異質性や未知への恐怖感を強烈に表現しています。その背景にはラヴクラフト独自の哲学や時代背景が反映されており、多くの後続作品にも影響を与えています。

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最終更新:2024年12月28日 09:20