グライフの紋章 エピソード2
#01
ダグラス・ハウッドを責任者として、『禁忌の地』での魔獣掃討作戦に出立した5個小隊を見送って二日。
バロカセクバのロココ設計所の社員宿舎、グライフリッターの隊員達に割り当てられた一室で、ワイラー・イアンホープはぼぉっと窓の外を眺めていた。
テーブルの上には飲み掛けのコーヒーと機兵の整備記録、手には煙草、ソファーに深々と沈み込み、物思いに耽る。
バロカセクバのロココ設計所の社員宿舎、グライフリッターの隊員達に割り当てられた一室で、ワイラー・イアンホープはぼぉっと窓の外を眺めていた。
テーブルの上には飲み掛けのコーヒーと機兵の整備記録、手には煙草、ソファーに深々と沈み込み、物思いに耽る。
そういえば、こんな曇り空の日だったな……
*
「第7師団第2機兵大隊所属ワイラー・イアンホープ中尉、貴官を除隊処分とする。」
たった今、無職になった。
「除隊(クビ)ですかい……」
「なんだ、不服か?
それならば中央司令部に文書で一週間以内に抗議しろ。」
それならば中央司令部に文書で一週間以内に抗議しろ。」
「いえいえ、不服だなんて滅相もない。
てっきり軍法会議にかけられるとばかり……」
てっきり軍法会議にかけられるとばかり……」
ワイラーは一週間前、上官とゴタゴタした挙句に暴力事件を起こしてしまい、さっきまで営倉に放り込まれていたのだ。
「まぁ、確かに、上官以下二名に暴力を振るったのはいただけないな。
だが、オルドジフ少佐にも大いに問題があった。結果として、喧嘩両成敗で奴は降格と異動だ。
貴官は依願退職扱いとなる。」
だが、オルドジフ少佐にも大いに問題があった。結果として、喧嘩両成敗で奴は降格と異動だ。
貴官は依願退職扱いとなる。」
「これは…大佐殿、寛大な処置に感謝致します。」
ワイラーは大袈裟に敬礼する。
大佐殿はフン、と鼻を鳴らして手元の書類を眺めている。
大佐殿はフン、と鼻を鳴らして手元の書類を眺めている。
「ところで、これからどうする。
仕事の当てはあるのか?」
仕事の当てはあるのか?」
「そうですねぇ、クビになったばかりですし。
これから考えると致します。」
これから考えると致します。」
すると大佐殿はワイラーを見遣ると書類を投げて寄越した。
「ならば傭兵になる気は無いか?
貴官の力量は遊ばせておくには勿体ない。
今なら就職先を斡旋してやらん事もないぞ?」
貴官の力量は遊ばせておくには勿体ない。
今なら就職先を斡旋してやらん事もないぞ?」
「おやおや、随分と買って下さってますな。」
「貴官の為では無いぞ。長い目で見て同盟軍の為だ。」
ワイラーは少し逡巡する。
そして……
そして……
「判りました、せっかくのご厚意です。
ありがたく話に乗らせて頂くとしましょう。」
ありがたく話に乗らせて頂くとしましょう。」
「ふん、話は決まりだな。
書類に目を通してサインしろ。」
書類に目を通してサインしろ。」
そう言うと、大佐殿は室内通信機に手を伸ばし、
「私だ。お客を通してくれ。」
手短に指示を出した。
その後すぐに扉が開き、そのお客が入って来た。
その後すぐに扉が開き、そのお客が入って来た。
入って来たのはとても大柄の、一見、熊かと見まごうような毛深い大男………いや、熊の獣牙族の大男だった。
「ヨォ、初めまして。俺はラブレス・ドットーラだ。
傭兵部隊『グライフリッター』の12代目隊長をやってる。」
傭兵部隊『グライフリッター』の12代目隊長をやってる。」
「初めまして、ワイラー・イアンホープです。
お世話になります。」
お世話になります。」
ワイラーは癖で敬礼をしたが、ラブレスはひらひらと手を振った。
「なるほど、了解です。」
「物分かりが良いのは結構な事だ。期待しているぞ。」
そう言って、ラブレスは大佐殿に軽く目配せすると部屋を後にした。
「書けたか?」
「はい、これで良いですか?」
大佐殿は書類にサインが書かれている事を確認した。
「ふん、それを持って傭兵協会へ行って来い。
話は通っているからな。」
話は通っているからな。」
「それって、ハナから傭兵にする気って事じゃないですか。」
「無論だ。言っただろう、貴官の力量は遊ばせるには惜しい、とな。」
ワイラーは肩をすくめ、書類を再び受け取る。
「それではワイラー・イアンホープ、只今を持ちまして、傭兵へ転向させて頂きます。」