「機装兵 バーバル・ヴォルン」
[ショートストーリー]
彼は報告に帰ろうと、機体を歩きださせる。
いや、そうしようとした。副官ケイスの声が響くまでは。
いや、そうしようとした。副官ケイスの声が響くまでは。
『団長!!前へ飛んでください!!』
「!!」
「!!」
その声に、ゾーンダイクは反射的に機体を前方へ飛び出させる。
一瞬遅かった。
しかし遅過ぎはしなかった。
背後から衝撃と金属の裂ける音が響く。
機体の背中が、わずかに裂けた。
一瞬遅かった。
しかし遅過ぎはしなかった。
背後から衝撃と金属の裂ける音が響く。
機体の背中が、わずかに裂けた。
『ロナン、何をする!!』
『届かなかった、か。ケイスだったか、貴様が余計な声を上げなければ、な。』
『お、女!?ロナンはどうした!!』
『届かなかった、か。ケイスだったか、貴様が余計な声を上げなければ、な。』
『お、女!?ロナンはどうした!!』
『ロナンとか言うのは、わたしの腹の上で死んだよ。この機体の起動呪とか、洗い浚い喋った上でな。』
『く、この淫売め!いったい……。』
『ふん、貴様などどうでもいい。
ゾーンダイク!!ゾーンダイク・バラスト!!もはや勝ち目はないだろうが、最後まで、最期まで足掻かせてもらうぞ!覚悟!
わたしはリリエ・ハンヌ!わたしの婚約者、リーベル・ハルトマンの仇!』
『く、この淫売め!いったい……。』
『ふん、貴様などどうでもいい。
ゾーンダイク!!ゾーンダイク・バラスト!!もはや勝ち目はないだろうが、最後まで、最期まで足掻かせてもらうぞ!覚悟!
わたしはリリエ・ハンヌ!わたしの婚約者、リーベル・ハルトマンの仇!』
リーベル・ハルトマンの事を、ゾーンダイクは覚えている。
理想に燃えた、と言えば格好良いのだが、要は暑苦しい奴だった。
そして、今日の冒険者どもの様に、グゥルバァルド傭兵騎士団が魔族の群れを潰すための囮となって死んでくれた。
本人には、そんな気は無かっただろうが。
理想に燃えた、と言えば格好良いのだが、要は暑苦しい奴だった。
そして、今日の冒険者どもの様に、グゥルバァルド傭兵騎士団が魔族の群れを潰すための囮となって死んでくれた。
本人には、そんな気は無かっただろうが。
それだけではない。
ゾーンダイクは自分たちがそうやって自分たちの都合で殺したり、見殺しにした人間の数や名前を、1人残らず覚えている。
今日の犠牲者、デリク、ハーマン、カササギ・ニワシ、ロタ・リン……。
奴らの事だって覚えている。
顔、声、奴らが語った事、全てだ。
ゾーンダイクは自分たちがそうやって自分たちの都合で殺したり、見殺しにした人間の数や名前を、1人残らず覚えている。
今日の犠牲者、デリク、ハーマン、カササギ・ニワシ、ロタ・リン……。
奴らの事だって覚えている。
顔、声、奴らが語った事、全てだ。
そしてゾーンダイクは応える。
「リーベル・ハルトマン?知らんな。いや、覚えていないな。貴様の様な奴は、たくさん……本当に数多く居るのでな。覚えきれぬよ。正直わからん。」
『覚えていなくても構わん。行くぞ!』
『ま、待て!』
「まあいい、ケイス。わしの機体の背中に傷を負わせた褒美よ。それとも何か?わしが負けるとでも?」
『覚えていなくても構わん。行くぞ!』
『ま、待て!』
「まあいい、ケイス。わしの機体の背中に傷を負わせた褒美よ。それとも何か?わしが負けるとでも?」
言葉に込めた怒気が伝わったのだろう。
ケイスは押し黙る。
そしてゾーンダイクは、相手の機体に向き直った。
ケイスは押し黙る。
そしてゾーンダイクは、相手の機体に向き直った。
「……行くぞ!」
『応ともよ!』
『応ともよ!』
婚約者の仇を取るために身体まで売ったリリエ・ハンヌとか言う女の操縦は、見事なものであった。
あったのだが……それでもグゥルバァルド傭兵騎士団の平均には届いていない。
ましてやその中でも随一の技量を誇るゾーンダイクの、相手になるわけが無いのだ。
あったのだが……それでもグゥルバァルド傭兵騎士団の平均には届いていない。
ましてやその中でも随一の技量を誇るゾーンダイクの、相手になるわけが無いのだ。
結局のところ、もうすぐ彼女も婚約者のところへ旅立つであろう。
ゾーンダイクの背に、1本の藁を載せて。
いつの日か、ラクダの背骨を最後の1本の藁が折る日が来るかもしれない。
ゾーンダイクはその日まで、1本、2本と藁を増やしつつ背負い続ける。
ゾーンダイクの背に、1本の藁を載せて。
いつの日か、ラクダの背骨を最後の1本の藁が折る日が来るかもしれない。
ゾーンダイクはその日まで、1本、2本と藁を増やしつつ背負い続ける。
すべては我が子にも等しいケイスのために。
[解説]
バーバル・ヴォルンはクメール王国に落ちのびたゼスキア王国の残党軍(ゼスキア解放戦線)が370年代に開発した機装兵クゥシャン・ヴォルンの改造機です。
ヴォルン種の特徴である羽根飾りをつけ、三日月型の盾を持ちます。
主武器は大鎌で、腰の後ろには半月刀を装備しています。
また拳銃型魔導砲を4丁腰から吊るし、交換しながら使います。
度重なる戦闘で機体は何度もの改修を受け、クゥシャン・ヴォルンの姿はほぼとどめていません。
ヴォルン種の特徴である羽根飾りをつけ、三日月型の盾を持ちます。
主武器は大鎌で、腰の後ろには半月刀を装備しています。
また拳銃型魔導砲を4丁腰から吊るし、交換しながら使います。
度重なる戦闘で機体は何度もの改修を受け、クゥシャン・ヴォルンの姿はほぼとどめていません。