「機装兵 オッキオ・ガロウド」

[ショートストーリー]
「く……。味方はまだか……。」
彼は焦る。彼の乗る機体……オッキオ・ガロウドは、ゲア・ガロウドをベースにした機体だ。彼自身、対ゼスキア王国戦においてはゲア・ガロウドを駆り、優秀な戦績を残している。新型機であるオッキオ・ガロウドを預けられたのも、その功績あっての事だ。
……しかし彼は当初、その新型機がこんな代物だとは、思いもしなかったのである。
……しかし彼は当初、その新型機がこんな代物だとは、思いもしなかったのである。
「く……。何が『君はわが軍全体の「目」となるのだ!』だ……。動きが鈍い……。機体バランスも劣悪……。しまった!!」
彼がふと目を遣った、エーテル・ロケーター専用の補助映像盤画像が異様に乱れていた。これは乱戦状態とさえ言えるほど近場に、敵装兵の集団が近寄った事を意味している。もっとよく補助映像盤を注視していれば、この様な事態に陥る前に敵機が近寄って来るのが判ったはずであった。
これは操手である彼が、エーテル・ロケーターの運用に慣れていないのが最大の原因であろう。この321年時点では、いかに帝国とは言えど、そこまで早期警戒管制機の運用に慣れている操手は存在し得なかった。彼は機体を隠れさせた木立から、必死に機体の頭を突き出して周囲の様子を窺う。しかし時すでに遅し。1機のオーラ・グラムに率いられたシャハナン・ローゾの一団が、木立を取り囲んでいる。そして敵隊長機は、拡声器を使って声を張り上げた。
これは操手である彼が、エーテル・ロケーターの運用に慣れていないのが最大の原因であろう。この321年時点では、いかに帝国とは言えど、そこまで早期警戒管制機の運用に慣れている操手は存在し得なかった。彼は機体を隠れさせた木立から、必死に機体の頭を突き出して周囲の様子を窺う。しかし時すでに遅し。1機のオーラ・グラムに率いられたシャハナン・ローゾの一団が、木立を取り囲んでいる。そして敵隊長機は、拡声器を使って声を張り上げた。
『隠れていても無駄だ。出て来て降伏せよ。』
「……断る!」
「……断る!」
彼は木立からオッキオ・ガロウドを歩み出させると、機体の手に持たせた長槍状のアンテナを、ケーブルを切断して投棄。そして後ろ腰に唯一装備されていた鎚矛を引き抜かせる。後のオッキオ・ガロウドには装備されていないのだが、最初期型である彼の機体には万が一のための白兵戦用装備が、オマケの様に取り付けられていたのだ。そして彼は、のろのろとした動きの機体に鞭打って、敵隊長機に殴りかかる。
……彼の奮闘は、実らなかった。彼、ゲイルズ・フォン・バルシュミーデは帝国貴族らしく戦い、帝国貴族らしく死んだ。彼のオッキオ・ガロウドは大破したものの、肝心のエーテル・ロケーターとそのアンテナはほぼ無傷で聖王国の手に落ちる事になる。だが今は聖華暦321年。この時点では聖王国も早期警戒管制機の重要性には気付いていない。彼の機体は通常の鹵獲機として扱われ、大破していたため研究材料にもならないと、前線に近い基地の倉庫に放り込まれっぱなしになったのである。帝国にとっては幸い、聖王国にとっては不幸な事に。
数年後この機体は、聖王国が早期警戒管制機の重要性に気付いた際に再び思い出され、聖王国後方へと送られる事になる。そしてそれを掴んだ帝国の諜報部隊が奪還、もしくは破壊のために動く事になるのだが、それはまた別の話である。
数年後この機体は、聖王国が早期警戒管制機の重要性に気付いた際に再び思い出され、聖王国後方へと送られる事になる。そしてそれを掴んだ帝国の諜報部隊が奪還、もしくは破壊のために動く事になるのだが、それはまた別の話である。
[解説]
聖華暦320年頃に開発された、史上初めてフェッセンデル式エーテル・ロケーター型のエーテル索敵機を搭載した、早期警戒管制機。
集団戦闘を念頭において開発されたゲア・ガロウドをベースとしており、派生機にあたる機体。
集団戦闘を念頭において開発されたゲア・ガロウドをベースとしており、派生機にあたる機体。
魔法波の送受信機として機能する大型の手持ち式モノポールアンテナや解析装置などを搭載しているため、ゲア・ガロウドと比較して戦闘能力は著しく劣り、燃費も悪化している。
だがそれと引き換えに、前線でのフェッセンデル式エーテル・ロケーターの使用を実現している。
だがそれと引き換えに、前線でのフェッセンデル式エーテル・ロケーターの使用を実現している。
第二次聖帝戦争において始めて投入され、聖王国、そして帝国自身にも早期警戒管制機という存在の戦略的な価値を見せつけることになった。
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