概要

カオスギアの戦いとは、アルファ1739年9月に、アルビス国とバーン国の間で起きた戦いである。
両国だけではなく、それぞれの援軍を加えて、合計六ヶ国に及ぶ大部隊が一つの戦いに関わった文字通りの決戦であった。


戦闘に至るまでの背景


三国同盟三国連合、それは決して一枚岩の存在ではなかった。
同盟の一角を担いながら、アルビス国とも密かに接触するフェングランド国、連合の一角でありながら、リヴォル帝国に人質を送り逆らう意志なしの立場を明確にしたアディス国。
それぞれの立場と駆け引きを胸に秘めながら、両陣営は後に「決着」の代名詞となる戦場、カオスギアへ向かって進み始めていた。

リアリッピ争奪、バーン国の後継問題、三国同盟三国連合、全ての細い糸は、カオスギア平原という目的地に向かって、一本の太い糸に紡がれ様としていた。

アルビス国は、実戦を知らない政治家が、第5次リアリッピの戦いで勝利したことから、それまで防衛側だった立場を挽回するべく、楽観的にバーン国へ攻撃を仕掛けることを決意、議会にて出兵案が承認され出陣が決定された。

早速三麗将を中心に軍議が行われ、アルビス国軍は北のフェングランドへ進軍すると見せかけ、バーン国が援軍を出陣させたのを確認したらすぐに転進し、バーン国の拠点を落とすという作戦を執った。
その際、リヴォル帝国を牽制するため、三国連合アディス国、シーフィールド国に動くことを要求したが、アディス国はこの時既に第三王子リフィティを人質としてリヴォル帝国に送りこの要請を黙殺した。
だが、サヌア傭兵団の一員であるロリスザードが、母国ヴァーグリア国の軍勢を援軍として呼び寄せた。

バーン国陣営にいながら、アルビス国とひそかに接触し、「中立」を取り付けているフェングランド国議長コスティは、今回の出陣がアルビス国の擬態と理解しつつも、アルビス国との密約は正式な約束を交わしているわけではないあくまでも「口約束」である為、警戒は怠らなかった。
そのフェングランド国から同盟国として援軍要請を受けたバーン国では、大臣達が今回の出陣はそれほど危険な出陣ではないと判断し、戦意高揚のため、リルルを総指揮官に担ぎ上げた。
大臣と意見の対立する事の多いサザンクロスは本国への残留が命じられ、同じく援軍要請を受けたリヴォル帝国は、シーフィールド国との戦いもあった為、四方将グスタルイズ、そして工作部隊としてラスコップを派遣した。


カオスギア平原までの道のり


こうして、三国対三国の大決戦がはじまるが、この時ヴァーグリア国が参戦したのは、当時傭兵をしていたロリスザードアルビス国に加担していたからという、個人的な理由からきた行動であり、アルビス国すら想定していなかった文字通り「想定外」の出来事であった。
だが、自分達の三国同盟に対抗するべく結ばれた三国連合を、アルビス国、シーフィールド国、ヴァーグリア国だと思い込み、吹けば飛ぶ様なアディス国の存在を完全に忘れていたことが、後にリヴォル帝国最大の失敗となる。

もともとは、リルルに箔を付けるために出陣したバーン国軍だが、聞いていたより遥かに多いアルビス国軍と、同じく聞いていたより遥かに少ないフェングランド国軍に疑念を持ち始める。
また、首都においては、最初から今回の出陣にどこか懐疑的だったサザンクロスは、軍律違反を承知の上で独断で出陣した。

前線の状況を知ったバーン国軍は、所詮は他国同士の戦いと、急激に進軍速度を落とした、これが皮肉にも、なるべくバーン国軍をフェングランド領土に向かわせて、アルビス国軍が手薄なバーン国に不意打ちを仕掛けるという作戦を不可能にさせてしまう。
こういった一連のアルビス国軍の不可解な動きから、今回の出陣は最初から本命がバーン国領土だと判明し、六ヶ国の軍勢は次々と進路を変え、両軍が激突するであろうカオスギア平原へと向かった。

カオスギア、そこは広大な平原が広がる土地であり、神話の物語では、神々が二つの勢力に別れて戦った時、その最後の決戦となった土地として伝えられている。
伝説としてだけではなく、現実の世界においても東西南北に街道へとつながり、何をするにおいても決して切り離せない拠点であり、バーン国の物資、人員を行き来させる生命線とも言えた。

フェングランド方面に向かっていたリルルコスティは北から、同じフェングランド方面でも、アルビス国は東から、本土から到着したサザンクロス率いるバーン国主力部隊とリヴォル帝国援軍は西から、そして突如参戦したヴァーグリア国軍は南から、四方からこの土地へと到着し、全軍ほぼ同時に布陣を終えた。

アルビス国のバーン国強襲策は、策として見破られることはなかった、だが自らの身を可愛く思ったフェングランド国と、それに不審に思って進軍を止めたバーン国軍の意図しない連携により、結果的には破られることとなった。
そのため、最初からカオスギアの地で決戦をする予定ではなかったが、一度動き出した決戦への坂道は、既に途中で立ち止まることができないほど加速をつけ、彼らの運命を飲み込もうとしていた。


両軍の戦力

攻撃側 守備側

アルビス国軍
軍勢
バーン国軍
総兵力105000 兵力 総兵力91000
カルディナ 総指揮 リルル
エリシア 軍師
主要参戦者

カルディナ

ラギ

エリシア

ルティエ

レイス

リルル

サザンクロス

ライウン

ハカン

グノー

リオン

レクシア

サヌア

レイア

ダイルーガ

ディルギオフ

ガミラン

ヴィル
攻撃側 守備側

ヴァーグリア国軍
軍勢
リヴォル帝国軍
総兵力7000 兵力 総兵力8000
ロリスザード 総指揮 グスタル
マルタナ 軍師 イズ
主要参戦者

ロリスザード

シーナ

マルタナ

シーバズル

ザーク

グスタル

イズ

ラスコップ

アルス
攻撃側 守備側
軍勢
フェングランド国軍
兵力 総兵力13000
総指揮 コスティ
軍師
主要参戦者

コスティ


戦闘経緯


決戦がはじまると、西路から到着したサザンクロス部隊は、まずは北のリルル本隊を守る為、戦いの中心地を自分達の方に向けさせるべく一気に前進する。
これに呼応して各国の第一陣は動くものの、この決戦が双方共に「当初の予定とまったく違う」形で開戦したことおもあり、下手に自分から手を出せず序盤は両軍共に動きは鈍かった。
その中で異彩を放っていたのは、そういった国の思惑と全く関係のない世界にいるサヌアガミランの対決からはじまった中央戦線であった。


北部戦線では、フェングランド国軍のコスティが、「同格である筈のバーン国から命令を受けた」と言いサボタージュを決意、ただ、フェングランド国は元々アルビス国と内通していた為、これは予定内の行動であった。
こうなると、動かないフェングランド国軍は、バーン国北部部隊にとっては、役に立たないだけではなく邪魔な存在となるが、外から見ただけならリルル本隊を重層に守る構えにも見えた為、サザンクロスは安心して中央戦線に全力を注いだ。


サザンクロス率いるバーン国軍が激戦に突入すると、これに続いてリヴォル帝国の援軍が一気に中央戦線に投入され、決戦は本格的に動き出す。
ルティエ部隊は一旦後退して敵軍を誘い込む陣形を敷き、援軍のヴァーグリア国軍がリヴォル帝国軍と真正面から戦う。

アルビス国軍の基本戦術は、正面の敵を誘い出してワイバーンの陣形で包み込む為、戦いながらバーン国軍を翼を広げた陣形の中心に誘い込む。
しかし、それは至難の業であり、誘い込んでいるのか本当に圧されているのかわからない激戦が続く。
この混戦を見逃さず、ライウンディルギオフが一気に前進、邪魔をするのならコスティ部隊を踏み潰し勢いで突撃を仕掛けた為、これにあわてたコスティは急ぎバーン国軍の後方へ移動する。


だが、自分達の後方へ移動してきた事に、グノーは、フェングランド国が裏切るのではないかと疑い、決戦には参戦せずフェングランド国軍を監視した。
元々グノーは、自分の手を汚さずに手柄をあげることに執着する男であった為、本陣を守るという口実のもと、彼もまたサボタージュをはじめたのである。

中央戦線では、翼を砕く為に一気に参戦してきたバーン国軍を食い止めるべく、アルビス国本陣が前進を決意、戦いは激化し、部隊が秒単位で動いた為、目的地にたどり着けない伝令が続出、戦場は混乱し各自の臨機応変さが要求された。
皮肉な事に、このときの各部隊の動きは驚くほど洗練され、互いに「相手だけが連携が取れていて、自分たちだけが指揮系統が崩壊している」と誤解するほどであった。


そんな状況の中、かろうじて敵軍を包み込む陣形を作り出すことに成功したアルビス国軍だったが、バーン国軍の猛攻は凄まじく、いつ包囲網が崩れてもおかしくないほど各戦線で徐々に押し込まれていく。
包囲殲滅が先か、包囲網突破が先か、この戦局をサザンクロスは、「坂道の頂上におかれた石がどちらに向かって転がってくるのかわからない状態」と称した。


北戦線では、猛将レクシアディルギオフの突撃を食い止め、更に本隊の攻撃参加によりディルギオフを討ち取る。
今回の作戦の根底となるワイバーンの陣形を作るには、レクシア部隊が、ライウンディルギオフの二人を同時に相手しながら守りきるというのが必須条件であった。
この難題を見事にこなした猛将ではあったが、限界まで疲弊した為、後続部隊と交代するべく一旦後退する。
しかし、そのわずかな瞬間を見逃さずライウンが一気に突撃、レクシアは戦死するが、ライウン部隊もこの突撃によって崩壊、結果的にレクシアバーン国最強クラスの将軍二人を道連れとした。

一時は包囲陣形を完成させたアルビス国軍だが、その後も混戦が続き、互いに連携した戦いは不可能となり、各部隊の奮戦に任せるのみとなっていた。
サヌア傭兵団を率いていたルティエ部隊も、開戦からの連戦に疲弊の限界が到達して一時後退、夜明けと共にはじまった戦いも既に夕闇があたりを包もうとしていた。
しかし、ライウンディルギオフを同時に失った北部戦線は、アルビス国軍の攻撃を防ぎきれなくなり崩壊、それを合図に各地でバーン国軍の攻撃は限界点に達して、守備に徹していたアルビス国軍の猛反撃を受け半壊、リルルが陣取る本陣に敵軍が殺到する前に、サザンクロスは全軍撤退を具申した。



戦いの結末

バーン国軍は撤退を開始、フェングランド国軍のコスティは、この混乱の中北路へ向かえば、アルビス国軍に攻撃されると判断(彼のサボタージュはあくまでもカルディナとの個人的な密約による独自の判断であり、アルビス国軍が承知の行動ではなかった為)リヴォル帝国軍の後をついて西路を目指した。
アルビス国軍も既に疲弊の限界まできていた為、撤退を進言する意見もあったが、リアリッピの戦いから続くこの因縁に明確な決着をつけるためあえて追撃戦を決意、戦いはそのままガリアの戦いへとなだれ込む。

ただし、ヴァーグリア国軍は、義理は十分に果たしたとこの追撃戦には参戦していない、これは戦略や戦術以前に、竜技七将軍の個人的な性格の問題(逃げる相手の背中は斬らない)という理念に基づくものだが、あくまでも「他国の戦い」だからこそ行えた行動である。


関連項目





最終更新:2024年07月06日 05:47