iPod

登録日:2025/07/18 Sat(土) 20:27:13
更新日:2025/07/27 Sun 15:32:34
所要時間:約 11 分をポケットに





これがiPod


実は私のポケットにあります


この優れたポケットサイズの小さな機械に1000曲も入れられるのです




2001年初代iPod発表会にて/スティーブ・ジョブズ


iPodとは、Appleが開発・販売していたデジタルオーディオプレーヤー。
2001年10月23日に初代が登場し、1.8インチハードディスクを搭載したコンパクトな筐体にMP3形式の音楽を保存・再生することができた。
当初はMac専用だったが、Windows対応モデルも登場し、急速に普及した。

当時、MP3プレイヤーは低容量・操作性に難があり、主に“ギーク向け”の周辺機器だった。iPodはこれを「万人が使える主力商品」に押し上げ、音楽ライフスタイルを根本から再定義した。


【概要】

初代発表当時、iPodは「Macではない革新的なデジタル機器」として紹介され、音楽を中心に扱うデバイスとしてAppleの「デジタルライフプラットフォーム」戦略に組み込まれた。その核となるソフトウェアとして登場したのが「iTunes」であり、2001年11月3日にはiTunes 2.0が公開され、Mac OS 9/Xと連携可能となった。

この戦略の背景には、AppleのCEOスティーブ・ジョブズによる「Macを我々のデジタルライフの中心に据える」という構想があった。2001年1月のMacworldにてそのビジョンが発表され、コンピュータがカメラ・映像・DVD・音楽機器の中核を担うという考え方が示された。
音楽が生活に根付いたものであり、かつ当時の市場にリーダーが不在だったことから、Appleは音楽プレーヤー分野への参入を決定。Jon Rubinsteinを中心にTony Fadell、Michael Dhuey、Jonathan Iveらによる開発チームが編成された。ハードウェア設計にはPortalPlayer社のリファレンス基板が活用され、Apple側はAAC再生、独自のユーザーインターフェース、筐体デザインの設計を担当した。

外観のデザインは1958年のBraun T3ラジオに着想を得ており、ホイール型UIはBang & OlufsenのBeoCom 6000電話機から引用。
スティーブ・ジョブズの完璧主義は有名で、設計段階で試作品を水槽に沈めて「まだ余分な空間がある」と指摘したという逸話も残っている。

操作の象徴ともいえるスクロールホイールは、Appleのマーケティング担当副社長フィル・シラーによって提案されたアイデアであり、後のiPodシリーズ全体に採用される基本操作となった。

【命名】

製品名「iPod」は、AppleがマーケティングコピーライターのVinnie Chiecoを含むチームに依頼した結果生まれた。Chiecoは『2001年宇宙の旅』に登場する「EVAポッド」とMacとの関係を重ね、「Macが宇宙船、iPodがその探査ポッド」というイメージから命名したとされる。

「iPod」の商標は2000年に米国ニュージャージー州のJoseph N. Grassoにより出願されていたが、Appleが2005年にその権利を正式に取得。
また、ドイツ語圏では、iPodの読み方がエッグスタンド*1「Ei-Pott(アイ・ポット)」に似ていることから一部で言葉遊び的に使われていた。
これに関連し、ドイツの生活雑貨企業Koziol社(エルバッハ)によってエッグスタンド「eiPOTT」が2009年に商品化、
Appleはkoziol(コツィオール)を「eiPOTT」というエッグスタンドの名称が「iPod」と混同される恐れがあるとして訴訟。
2010年8月、ハンブルク高等裁判所は名称「eiPOTT」に混同の可能性があると判断し、Appleの主張を認めた。
Koziol社はこの製品を「POTT」と改名し、販売を継続。
koziolによれば、Appleは家庭用品やキッチン用容器を含む商標保護を主張し、一度は製造自体の停止を、次には販売の差し止めを求めたという。

【iPodの歴史】

2001年10月、AppleはiPodを「1,000曲をポケットに」と宣言し発表。
Appleはその後、「iPod mini」「iPod shuffle」「iPod touch」など複数のモデルを展開し、再生機能や保存容量、形状などに違いを持たせ、そのいずれもがApple独自のデザイン性と操作性を兼ね備え、多くのファンを獲得した。「iPod mini」は唯一、ハードディスク(Microdrive)を採用したモデルであり、「iPod classic」と並び容量重視の製品だった。その他のモデルはフラッシュメモリを使用していた。

後に「iPod classic」とされる初期の機種の特徴はFireWire経由で楽曲を転送するハードディスク内蔵型プレイヤーだった。MDやCDとは異なり、デジタルデータとして音楽を持ち運び、いつでもどこでも聴けるという新しいスタイルを提示した。
当時のMP3プレイヤーのほとんどが容量数十MBで煩雑な操作が必要だった中、iPodは大容量HDDと直感的なUI(スクロールホイール)を搭載。PCとの連携にはiTunesが使われ、連携による楽曲管理と自動同期(オートシンク)機能で、CDの取り込み、プレイリスト作成、同期が簡単にできる仕組みを持っていた。

操作性・デザイン・容量に関して肯定的な意見が多く、初期のネガティブ意見は主にWindowsユーザーからのMac専用やMusicMatchの使いづらさに集中していた。
2002年、Windows対応モデル発売。Windows版初期にはMusicMatchが使われていたが評価が低く、2003年のiTunes for Windows提供で評価が急上昇。

2003年にはiTunes Music Storeがスタート。1曲99セントの価格でDRM付きの音楽ファイルを販売し、違法ダウンロードが蔓延していた音楽業界をデジタル化へと誘導した。CD不要、プレイヤー+ストア+管理アプリを統合したApple独自のエコシステムは、業界に衝撃を与えた。
iTunes Music Storeは開始から1週間で100万曲、1年で7000万曲、2年で3億曲を販売。2005年には累計5億曲を突破し、Appleはアメリカ最大の音楽配信企業となった。
こうした功績によりAppleは“音楽を解放した企業”としても語られている。

2005年には「iPod nano」が登場し、miniを置き換える形でシリーズの中でもコンパクト性とカラー展開に優れた位置づけを得た。また、「iPod touch」はスマートフォン機能を除いた「iPhone」として位置付けられ、音楽再生に加えて、App Storeからアプリを利用できるなど、多機能化が図られた。

2005年、Pod関連技術に関して複数の特許侵害訴訟が発生。
Advanced Audio Devicesが、音楽ジュークボックス特許に違反していると主張。
Pat-rights(香港)は、FairPlay DRMが発明家Ho Keung Tseの特許を侵害していると訴訟。
Creative Technologyは、「Zen Patent(選曲UI技術)」の権利取得後、Appleを訴える。
2006年8月24日:AppleとCreativeは和解。AppleがCreativeに対して1億ドルのライセンス料を支払い、Creativeは「Made for iPod」アクセサリ製造へ参入。
2006年から2007年にかけて、Burstは、Apple製品が「time compressed representation having an associated burst time period(対応するバースト時間を伴う時間圧縮表現)」を使っており、自社の特許権を侵害していると主張。
Appleは、Burstの主張する技術内容が「ごく一般的な技術の使用結果として自然に生まれる概念」であり、独自性や特許性がないと主張。
Appleは以下の特許を挙げ、どちらの特許もこの「高速転送技術」自体を請求項に含めていないことから、「両発明者ですらこの概念には特許性がないと判断していた」とし、Burstの主張は成立しないと結論づけた。
  • ケーン・クレイマーの特許(1982年出願):圧縮された音楽を保存し、再生速度の100倍で転送できるポータブル音楽プレーヤーを記載。
  • AT&T特許(1987年出願):圧縮された音声メッセージを企業間で高速転送する留守番電話システムを記載。
これに関連してAppleは2008年に、1979年にデジタルオーディオプレーヤーの原型を構想していたケーン・クレイマーの技術的功績を公式に認定している。

2007年1月にはiPhoneが発表され、その後のApple製品開発に大きな影響を与えた。同年9月にはiPod touch、第3世代のnano、iPod classic(第6世代)が同時に発表され、新機能としてCover Flowが採用された。2008年から2009年にかけては、shuffleやnanoの色展開や機能強化、touchのメモリ容量拡張、Nike+iPod連携などが進み、さらなる市場拡大が図られた。

iPodシリーズはその名称を維持しながら、容量の増加、機能の強化、価格調整などのアップデートを繰り返し、デジタルオーディオプレーヤー市場の性能向上に対応していった。2008年にはtouchでゲームや動画機能が強化され、第6世代nanoにはカメラやFMラジオ機能が追加されるなど、多様なユーザー層に向けた製品開発が続けられた。

iPodの普及にあわせて、Appleはデータ転送用のソフトウェア「iTunes」や、音楽や動画などのコンテンツ販売を行う「iTunes Store」を提供し、iPod/iPhoneの利便性を大きく高めた。また、Appleは著名アーティストと連携した限定モデル(U2 Editionなど)も展開した。

2010年8月の時点で、iPodは全モデルを通じて2億7500万台以上を販売し、世界で最も売れたデジタルオーディオプレーヤーとなった。これにより、充電器やスピーカー、カバーなどサードパーティ製のアクセサリーが急増し、いわゆる「iPodエコシステム」が形成された。
iPodシリーズには多数の偽物や類似品も出回ったが、Apple製品としてのブランド力は非常に高かった。
中でも「iPod classic」は、ハードディスクを搭載した元祖iPodとして長年にわたり親しまれ、最大160GBという大容量で膨大な音楽ライブラリを持ち運ぶことが可能だった。スクロールホイールから進化したクリックホイールや動画再生機能など、シリーズの核となる革新を積み重ね、2014年まで販売され続けた。
2022年5月10日、AppleはiPodシリーズの製造終了を発表。21年間の歴史に幕を下ろし、累計販売台数は約4億5000万台にのぼる。

【世代ごとの主な特徴(iPod classic)】

◆第1世代(2001年)

  • 容量:5GB → 10GB(2002年3月に追加)
  • 接続方式:FireWire専用(Mac OS 9/Mac OS Xに対応)
  • 操作系:機械式スクロールホイール+物理ボタン
  • 特徴:初代iPod。背面は鏡面仕上げ。Dock非搭載。FireWireケーブル付属。

◆第2世代(2002年)

  • 容量:10GB / 20GB
  • 接続方式:FireWire(Windows版はMusicMatch Jukeboxで同期)
  • 操作系:静電容量式タッチホイール+物理ボタン
  • 特徴:MacとWindowsで仕様分離。薄型化。外観は初代とほぼ同じ。

◆第3世代(2003年)

  • 容量:15GB / 30GB → 後に20GB / 40GBなど
  • 接続方式:Dockコネクタ搭載。USB 2.0(同期)/FireWire(充電)対応
  • 操作系:タッチホイール+タッチボタン(ボタンは上部に移動)
  • 特徴:Mac/Windows共通モデル。Dock導入で周辺機器との連携強化。

◆第4世代(2004年)

  • 容量:20GB / 40GB
  • 操作系:クリックホイール採用(iPod miniと共通設計)
  • 特徴:バッテリー持続時間が最大12時間に向上。USB 2.0で充電可能。メニュー操作改善。On-The-Goプレイリストの編集可能。

◆iPod photo(2004年後半~2005年6月)

  • 容量:30GB / 40GB / 60GB(40GBモデルは後に30GBへ改訂)
  • 接続方式:Dockコネクタ(AV出力対応)
  • 特徴:220×176ピクセルカラー液晶。JPEGなどをiTunes経由で同期。TV出力可能。2005年6月に通常のiPodへ統合。-
  • 再生時間:音楽最大15時間、スライドショー最大5時間
  • 備考:筐体は厚く重量増。2005年6月28日に生産終了→全モデルにカラー液晶を標準化。

◆第5世代(iPod with video)(2005年~2006年)

  • 容量:30GB / 60GB → 80GB(2006年9月に追加)
  • 操作系:クリックホイール
  • 特徴:動画再生機能を初搭載(MPEG-4/H.264)。2.5インチカラー液晶。薄型化(11~14mm)。U2モデルは一時販売終了→再販。ブラックモデル初登場。
  • 機能:スクリーンロック、世界時計、ストップウォッチ
  • ソフトウェア(1.2~1.3):明るさ調整、ゲーム対応、gapless再生、検索機能追加

◆第6世代(iPod classic)(2007年~2014年) 2007年9月5日「The Beat Goes On」イベントで登場

  • 容量:80GB / 120GB / 160GB
  • 接続方式:Dockコネクタ(USB 2.0)
  • 操作系:クリックホイール
  • 特徴:Cover Flow表示対応。インターフェース刷新:左メニュー+右プレビュー表示。金属筐体(アルミ+ステンレス)、Geniusプレイリスト対応。最大再生時間40時間(音楽)。2009年以降は160GBモデルのみ販売。
  • 色展開:シルバー/スペースグレイ-

特徴的な進化ポイント
  • 操作方式:スクロールホイール → タッチホイール → クリックホイール
  • 接続端子:FireWire → Dockコネクタ → USB 2.0(充電対応)
  • 液晶画面:モノクロ → カラー → 動画対応(2.5インチ以上)
  • 容量の変遷:5GB(初代) → 最大160GB(第6世代)
  • デザイン:プラスチック筐体 → アルミ+ステンレス筐体へ進化

◆その他の種類

iPod mini

2004年登場。小型で軽量、カラー展開が豊富。初の小型HDD搭載型。

iPod nano

2005年以降登場。フラッシュメモリ搭載、薄型軽量でカラーディスプレイ付き。世代ごとに形状が大きく変化。
詳細はiPod nanoシリーズへ。

iPod shuffle

ディスプレイ非搭載、シャッフル再生専用モデル。2005年〜2017年まで販売。セレンディピティ体験に特化した設計。

iPod touch

2007年以降発売。iOS搭載でアプリも使えるマルチメディアデバイス。音楽以外にもゲームやSNSの使用が可能で「通信機能がないiPhone」とも言われた。

【全体としての主な特徴】

クリックホイールによる直感操作、オートシンクによる管理の簡易化、プレイリストとシャッフル再生によりアルバムという枠組みを解体。音楽を「所有する」「聴きたい順に並べる」といった体験が「大量に持ち運び偶然出会う」ものへと変化した。音楽ファンにとって、自分だけのパーソナルラジオとなった。

◆ハードウェア

1.8インチHDDを小型筐体に搭載した初代モデル以降、フラッシュメモリやタッチスクリーンなど技術進化に合わせてアップグレード。特定世代のClassicは音質でも高く評価された。後期には改造愛好家によるmicroSD化やBluetooth対応なども見られる。

◆アプリケーション

iTunesとの連携で楽曲管理を一元化。Rip(取り込み)、Mix(編集)、Burn(CD化)のコンセプトを提示。iTunes Music Storeで楽曲購入がシームレスに可能になり、CDを介さず音楽を楽しめるスタイルを確立。

【それまでのプレイヤーとの主な違い】

  • MD/CDは物理メディアが必要でサイズも大きかった。
    • MDに至っては容量の関係で音源を圧縮するため音質面でも不利*2
  • それまでのMP3プレイヤーはUIが捻くれて取っつきにくかったり、過剰なまでの著作権保護による制約が多かった
  • iPodはすべての楽曲を一括保存・持ち運び可能にし、選曲の自由を提供。
  • クリックホイールなど直感的なインターフェースにより再生体験を刷新。
  • 先々の再生を計画しなければならなかった旧型に対し、シャッフル再生で“音楽との偶然の出会い”を実現。

【音楽の聴き方への影響】

かつて音楽はCD・MDを所有するものだったが、iPodの登場によって“デジタルデータとしての音楽”という価値観が定着し、アルバムという単位が解体されることになった。
iPodは「音楽を所有する」から「音楽体験を楽しむ」へという構造的変化を起こした。
シャッフル機能を活用した偶然の出会い(セレンディピティ)が評価され、自分好みの音楽空間を手元に構築できるようになった。プレイリスト文化や“飛ばし聴き”スタイルを普及させたのもiPodの功績である。
海外の音楽フェスやクラブシーンでは「シャッフル世代」という言葉も登場し、iPodは感性そのものの代名詞となった。
このため、「iPodはアルバムという文化を殺した」と評されることもあるが、同時に“自分だけの音楽体験”を可能にしたデバイスとしてポジティブに語られる面も大きい。

【文化的影響】

単色の背景に人物が黒、iPodとイヤホンが白のシルエットのCMビジュアルも話題を集め、
白いイヤホンはファッションアイコンとなり、街中でもiPodユーザーをすぐに識別できた。
若者の音楽生活に変革をもたらし、ミュージシャンやクリエイターからも高く評価された。音楽ライフスタイルの象徴として、グラミー賞を受賞した逸話もある。

◆Appleの転換点

  • iPodはAppleが「音楽関連事業の会社」として再定義される契機でもあり、ハード+ソフト+サービス(iTunes+iTunes Music Store)の統合エコシステムが爆発的ヒットにつながった。
  • 2001年〜2007年にかけてAppleの利益率と売上は急成長。音楽プレイヤー市場では最大80%以上のシェアを獲得。
  • 他社(Sonyなど)が物理メディアや独自規格に固執する中、Appleは“音楽の自由”を提供して市場を独占。
  • iPodはIDEO式デザイン思考の成功事例ともされ、Appleが顧客体験に焦点を当てた代表的プロダクト。
  • 「1000 songs in your pocket」「Goodbye MD」などキャッチコピーは、機能ではなく“価値”を訴求していた。
  • 実際の録音時間や編集の手間が数時間かかるMD文化から、プレイリストをドラッグ&ドロップで瞬時に作れるiPod文化へと移行したのは“時空の制御”とも言える体験設計だった。

【衰退期】

かつては「音楽と空間をコントロールする感覚」「音楽を解放したデバイス」として評価されたが、iPhoneの登場とストリーミングサービスの普及により「音楽を所有する」スタイルは衰退。
「Mighty」や「Spotify対応プレイヤー」など後継ガジェットは現れるも、“象徴”として語られるのみとなったiPodは
iPhone・Apple Watch・HomePodなど通信やストリーミングを前提とした次世代機に役割を譲ることとなった。

【販売終了】

「iPod classic」は、2014年9月9日にApple公式サイトから姿を消し、公式に販売終了となった。これにより、物理ホイールを搭載したハードディスク型iPodシリーズは終焉を迎えた。

2017年にはnano/shuffleが静かに撤退、2022年5月、最後のモデル「iPod touch(第7世代)」販売終了と共にシリーズ終了。
音楽との関係性が「保存・所有」から「アクセス・ストリーミング」へと移行した今、iPodの役割はその歴史に吸収された。
とはいえ、シャッフル、プレイリスト、携帯性といったiPodの思想は、現在のApple Music、iPhone、Apple Watchなどに受け継がれており、
単体プレイヤーとしての役目が終わった一方で、その功績は「音楽の民主化」として音楽文化の礎と評される。

【iPodの役目は終わったのか】

こうしてiPodの生涯は終わりを告げたかに思われたが、ネット通信絡みの余計な機能が無く大容量、かつホイールによる手軽な操作体系を好む層は未だ多く、また他社製のオーディオプレーヤーではiTunesのライブラリを直接流用できない(出来ても操作が面倒)事によるDAP難民も少なくなく、有志により比較的改造しやすいiPod Classicの独自カスタムが流行しはじめる。主に…

  • 内蔵HDDをmicroSDやSSDに換装
    • これによりHDDのネックである重量や振動への弱さを改善しアクセス速度も向上、さらなる大容量も実現。

  • 大容量バッテリーに換装
    • 純正バッテリーのおよそ5倍の3000mAhのバッテリーも入るので、圧倒的な再生時間を実現可能に。

  • 独自OSの導入
    • 主に『RockBox』が使われる。これにより公式では対応していないFlac形式やハイレゾ音源を再生したりバッテリー残量が数値で表示されたり、他社製のオーディオプレーヤーのようにD&Dで手軽に楽器管理が出来るようになったり。

  • 外見のカスタム
    • 様々なカラーの外装も次々つくられ、自分だけのiPod Classicを作れる。中にはスケルトン仕様のものも。

  • Bluetooth対応、USB-C化
    • 極限まで突き詰めた変態はここまでする。


iPodを持ち歩いて撮影した“iPod旅写真”を共有するウェブ文化も登場。
一部ユーザーは非圧縮音源(WAV)で取り込むなど、音質面でも愛着を持ち続けていた。
2022年には「1,600GB改造男」「2022年向けiPodを作る」などの話題が登場し注目された。
最近ではメルカリや各業者が比較的安価にカスタムiPodを販売しはじめており、一般消費者にとっての敷居も低くなっている。
ただし非公式の改造品のため動作の保証はなく、不具合が出ても当然公式は対応してくれないのでそこは覚悟しよう。


余談だが、万能細胞の一つ「iPS細胞」の「i」というつづりはiPodが由来で、
iPodのように世間に広まってほしいという願いが込められている。





iPodユーザーもしくはApple音楽製品に思い入れのある方、追記・修正お願いします。

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最終更新:2025年07月27日 15:32

*1 ゆで卵(料理)を食べる際に、スプーンと殻を置く卵用容器。卵立て

*2 MD末期にはSONYからWAV形式でインポート出来る大容量MD規格『Hi-MD』が登場したが既に界隈はiPod全盛期で殆ど見向きもされず短期間で終売してしまった