Mac/macOS

登録日:2024/02/09 Fri 09:00:00
更新日:2025/06/02 Mon 10:08:59
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Mac(マック)はAppleが開発しているパソコンのブランドの名称。
本来の名はMacintosh(マッキントッシュ)。意味はりんごの品種「旭」の英語名から。生みの親の一人ジェフ・ラスキン氏が好きだったのが命名の理由。
Macは元々Macintoshの略称として生まれた呼び名。後に公式化し現在ではそちらの方がよく使われる。
macOSはそのMacで使われるApple製のOS。
OS単体では頑なに配布されておらず、Macintosh系列のデバイスを購入する形でしか入手できないので、
端末、OS両方についてこの項目でまとめて解説する。


macOSについて

元々はMacintoshにインストールされたOS+ドライバ等をひっくるめたSystemとしてスタート。
その後Mac互換機の登場によりOSに独立した名前Mac OSが与えられる。
そしてバージョン10.0の際に大刷新……というより技術的には一部互換性こそあるがUNIXベースの別物になり、Mac OS X(テン)と改名。
その後OS Xを経て、旧Mac OSとの互換性が完全に消えた後2016年にiOS等に合わせる形でmacOSになる。これに伴いバージョン9までの旧Mac OSはClassic Mac OSと呼ばれるようになった。

Macが登場するまでのPCはテキストによるコマンドで操作するCUI(キャラクターユーザーインターフェース)と呼ばれる方式が主流であったが、それゆえに知識の無い人には扱いづらい問題があった。
そこでAppleは簡単に扱えるPCを目指してGUI(グラフィックユーザーインターフェース)のみでシステムを構成。メニューバーやアイコンと言う概念は前例があったが、大まかにはほぼこれで定着したと言ってもいい。
現在のAppleにも引き継がれているフォントへのこだわりも、快適なGUIを目指すべく始まった物。
スティーブ・ジョブズが大学に無断で潜り込んで授業を受けていた時、そこで開かれていたフォントの授業に感化されたのがきっかけなんだとか。

これを一挙に採用したMacは従来の製品よりも簡単にPCが扱えることから好評を博した。
特にイラスト、書籍の分野において、WYSIWYG、つまり「書類が紙に印刷されるものと同じようにパソコンにも表示する」機能に対応していたことからそれまでは特殊な機械を使い、経験がないとできなかった掲示物や画像付きの書籍の制作が容易となったことから、現在では当たり前のDTPの普及にも大きく貢献した。このため、後述のようにデザイン・イラストレーター業界の古参勢には現在もMac愛好者が多い。

そして他社もAppleに追従していく形でPC市場が過熱化していくことになった。Windowsも当初はMacとほぼ同じことがより安価でできることが普及の要因となっている。

近年はMac OS XからmacOSと名を変え、UIをiOS/iPad OSに寄せてきている。そちらに使い慣れている人はWindowsよりも慣れやすいだろう。
同様にほぼ毎年無料で大型アップデートされるようになっているが、その代わりある程度古くなった機種は容赦なくOSのアップデートが打ち切られてしまう。
一応、OSアップデートが終了したMacでも数年間はセキュリティアップデートのみ実施してくれるが。
無理やりアップデートする方法もあるが、あくまで非公式なので自己責任で。

Windowsとの主な違い

  • Linuxと同じUNIXなのでMS-DOSを採用するWindowsとはコマンドが異なる。
  • マウス操作は伝統的に1ボタンのみで可能になっている。純正マウスも中身はともかく見た目は1ボタンデザイン。
    • 今は右クリック操作もごまんと用意されているが、大抵はControl+クリックやトラックパッドのマルチタップといった代替方法が用意されている。
  • 最大化・縮小化・終了のボタンがWindowsと反対側の左上に置かれている。
  • 近年の機種はSSDを交換する等してOSが入っていない状態の場合、インターネットに繋がっていればOSを直接再インストールできる
  • ウィンドウの左右への配置などがマウス単体で出来ない*1
  • キーボードの配列が異なる(Windows向けのキーボードは一応使える)。
    • Back Spaceがdeleteの名前になってて、挙動が微妙に異なる(DeleteとFn+Deleteで同様の使い分けは可能)。
    • ショートカットで使うキーの種類が異なる。Control、Command、Optionの3つ。
      CommandはCtrl+◯に相当しショートカットキーでよく使う。Controlは右クリック相当の操作をする際に使う、OptionはAltに相当し特殊な設定画面で使われることも。

アプリケーション

Macの最初の顧客がグラフィックデザイナーだったことから、現在でもCGクリエイターの支持が厚いとされるOS。
プロ創作系のアプリケーションはWindowsに負けないくらい充実している。

そして、OS Xになってからは中身がUNIX系OSになったのでWindowsよりもLinuxに近いのも特徴。コマンドも共通の物を使用するのでIT技術者にも人気が高くなった。
iPod/iPhone/iPad/Apple Watch向けのアプリ開発はmacOSの特権である。加えてUnix&Java系であるAndroid向けアプリの開発ツールも出回っているのでモバイルOS系アプリ開発に関してはWindowsやLinuxより優位なのもある。

只、利用人口が少ないから需要が少ない物に関しては劣りがち。ゲーム対応も近年は強化されている*2ものの、依然としてSteamなど多くのメイン機種たるWindowsとの差は非常に大きい。
その影響のうえにアプリ開発環境が得てして安くなかった&有料アプリ配信プラットフォームが早期に整備されていることから、Windowsよりも無料で使えるソフトは少ない傾向にある。

ブラウザ経由で行う作業に関しては問題無い。Javaのみならず近年は大手のアプリ/ゲームエンジンなどの共通ベースの浸透や、Webベースなどのクロスプラットフォームアプリの流行など、環境の互換性を保つ存在がそれなりの数現れている。

パソコンとしてのMacについて

ハードウェア

現在使われているCPU「Apple Sillicon」はスマートフォンと同様のARMアーキテクチャを採用しており性能の割に低消費電力なのが特徴。これによりノートPC型はiPadと同じ位の電池持ちを実現した。
互換性が増したことでiOS向けのアプリも作動させられる。PCなのでマルチタスクへの適正が優れているのがMacで使うにあたっての長所。
以前使われていたintel CPU搭載機は(世代が違うため当然だが)単純な性能ではApple Sillicon機に比べると劣るものの、Windows等の他OSも入れられ汎用性が高いことから現在でも一定の人気がある。

しかし購入後改修の許容度は皆無に等しく、現在の機種はメモリやSSDを気軽に交換できる機種が無い。これはデスクトップ機でも同様。
グラフィックボードもApple Silliconになってからは搭載しておらず、intel時代は可能だったeGPUには2024年現在未対応。

端子類もWindows機と比べると少ない。一番売れ筋のMacBook AirだとUSB Type-C2本と充電用のMagSafe端子のみとかなり割り切った仕様となっている。
ProでもType-Cが4つが基本だったが流石に不便との声が多かったのか、2021年からHDMI出力とSDカードスロットが復活した。据え置きのデスクトップ機はHDMIに加えてUSB-A端子も残されている。
その一方で最新の技術を早めに取り入れることが多く、逆に古いもの・不要とみなしたものの切り捨ては大胆に思い切って行うことが多い。
前者の例だとWi-FiやBluetooth、USB Type-Cの実装は競合他社と比べても早く、後者の例だと内蔵光学ドライブが挙げられる。
スペースに制約のあるMacBook系はもちろんだがデスクトップ系のMacでも内蔵光学ドライブの廃止はかなり早く、どうしても必要ならば別売りの外付けドライブを使うスタンスで対応した。

種類

MacBook

ノートパソコン。タッチパネルは非搭載。
ファンレスで軽量のMacBook Airと、やや重いがファン付でディスプレイが高駆動なMacBook Proの2種類が存在する。かつてはAirの廉価版としてMacBook(無印)も存在した。
かつてはPowerBookおよびiBookとして販売されていたが、intel CPUに移行するに伴い、PowerBookはMacBook Pro、iBookはMacBook(無印)に改称・移行した。

Retinaディスプレイを搭載しておりノートPCとしては高解像度で、WQHD+解像度をいち早く搭載したことでも知られる。昔はバックライトを使用した光るリンゴが特徴だった。
ファンがあるProの方が高負荷な作業にも耐えるので業務向けだが、殆どの用途はAirでも十分可能。
ただし、M2までのApple Sillicon機だと外部モニターは1枚、M3以降でも2枚までしか出力できないなど、性能の限界はある。

一時期はProのみファンクションキーの代わりにTouch Barと呼ばれる細長いタッチパネルが存在していた。
Appleとしてはファンクションキーで使われることが多い音量調節や画面の輝度調整をタッチパネルで直感的に操作できるようにし、同時に汎用性を強化するのが狙いだったようだ。
が、物理式のファンクションキーを置き換えての実装(従来の機能自体は使えるが)だったので業務向けのProを買う顧客からはショートカットが使いにくくなると不評だった。
万が一ミニディスプレイに不具合が起きたら使えなくなってしまうのも理由。
Airより普及率の低いProのみしか搭載されていない機能なのでTouch Bar向けのアプリ開発も進まない悪循環も生まれたため、元の物理式(Airと同じ)に回帰することになった。

Mac mini

macが入ったミニデスクトップPC。現在のエントリー機。
サイズが非常に小さく、リュックやマイバッグにも余裕ですっぽり入る。
かといって性能不足かというとそんなことはなく、ごく普通のツール的使い方程度だけなら不足を感じることはない。
エントリー機なのでお値段も後述のiMacに比べて安いが、それでも9万円弱はかかるので注意。

しかし、マウスやキーボードはおろかディスプレイすら無い「銀の箱」としか形容しようがない作りをしているため、実際のデスクトップPC同様、自分でマウス(トラックパッド)、キーボード、ディスプレイを用意する必要がある。
逆に言えば職場や自宅のディスプレイをそのまま使える上場所も取らないので、人によってはiMacよりもこちらの方が扱いやすいという声も。
東京の狭いオフィスや飲食店なんかだと、時計よろしく壁に取り付けてあることもある。
電池を搭載していない点も逆に劣化を気にしなくてよいと評価し、あえてMacBookを選ばず出先でもこちらを使う人もいる。

iMac

ディスプレイ搭載型デスクトップPC。上記のminiのディスプレイ有り版。現在はミドル~やや上級クラス。
初代はPC背面を中心に水色のクリアパーツがふんだんに使われたエントリー機で子供のおもちゃのようなデザインだった。
当時無機質だったデスクトップPC業界に一石を投じ、AppleもiMacの売上で業績の回復に成功した。
このスケルトンデザインは当時大流行しニンテンドウ64セガサターンゲームボーイたまごっち等にも採用されている。
比較的な明るめの塗装・筐体なのが特徴で色の種類も多い。その後は銀系のメタリックな見た目になったが、Apple Sillicon移行後はポップな見た目に回帰している。
ちなみにApple製品に多い頭文字が「i」から始まる製品も本系列が初。

Mac Studio

業務向けのデスクトップ機。
仕様としては「性能を強化したMac mini」。なので周辺機器が別途必要なのもminiと同様。
見た目は「縦の厚みが増えたMac mini」といったところだが、CPUで全部やりくりしていたMac miniと違いGPUを新たに搭載、さらにRAMは32GB〜192GBのうち好きな量を選択可と、処理能力面でかなりの強化を貰っている。
用途としては、そのGPU性能を活かしたVRゲームや、「Studio」の名の通り画像処理、動画編集といった「スタジオ」としての役目をお任せすることになろう。

Mac Pro

上述のMac Studioを大幅に強化したハイエンドモデル。見た目はAT互換機のタワー型そのものであることが多い。
当然のように本体はデカく、弁当箱サイズ止まりだったStudioに比べて据え置きタワーPCらしい「縦長のデカい箱」そのものな見た目。更にこのモデルだけPCI Expressカードの拡張スロット付き。
ここ最近の筐体はネタに走っているかのようになにかとミーム化しがちで先代はゴミ箱、現行はおろし金のような換気フィルタは一時期ネタにされ、後には本当にこれをモチーフにしたおろし金が作らたりもした。

さて、素の性能はというと2024年モデルでCPUが24コア、RAMが64GB~192GB、GPUに至っては60コア~76コアで、どう使えばこの高すぎる性能をmacOSといっしょに使い切れるのかと言わんばかりの圧倒的スペック。
要は、業務用のワークステーションである。大規模な計算処理やスタジオでの映画撮影、企業システムの社内サーバーをやらせるようなモデルで、一般の個人が必要とするようなシロモノではない。4Kゲーム?VR?生ぬるいわ!
お値段も100万円超という目が飛び出るような金額なので、もし一般人が買おうとしたら宝の持ち腐れを心配されること必至である。
というかこれだけの超ハイエンドパソコンを個人所有で有効活用できる使い方を知っている諸兄がいるならばここに追記してほしいくらいである。

余談

標準ストレージの名称はMacintosh HD。マッキントッシュのハードディスクと言う意味。
現在では全ての機種がSSDになったものの、最初期からの名残で残っている。

起動音は「デーン」。音源や音程の変更はあるものの30年以上変わっていない。

intel Mac時代は公式だとCPUの詳細は公開されていなかったが、Windowsで起動すると普通に型番が表示される。

「マッキントーク」という自動音声システムを古くから導入しており、「喋るパソコン」の先駆者でもあった。
アニヲタ的なところでは、ディズニー映画「WALL-E」のキャラ「オート」の声優をこのマッキントークが担当している。
日本語版は普通に声優であるが。

前述の通り、macOSはMacブランドのコンピューターにしか搭載されていないため、両者が混同されて評論される場合も多い。
「MacとWindowsの比較」としてMacコンピューターとWindowsを搭載したコンピューターが比較される場合があるが、特にWindowsを搭載したコンピューターはメーカーも何もかもがピンからキリまでありまくる(要はiOS端末とAndroid端末的な)ため、物理的なデバイスの単純比較は一部*3を除いて困難であると言わざるを得ない。



追記、編集はマカーの方にお願いします。

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最終更新:2025年06月02日 10:08

*1 サードパーティー製だがWindowsに近い動作を実現させるアプリは配布されている

*2 「iOS系の市場と共通化して選択肢を増やす」「Windowsアプリを動かすエミュレーターを搭載する」方針を取っている。

*3 CPUのアーキテクチャなど、OSの動作環境に強く影響を与える要素など。XP以前のWindows搭載コンピューターのカラーマネジメントについても、ディスプレイではなくOSに起因していたため例外。