登録日:2010/08/10 Tue 17:15:29
更新日:2024/11/25 Mon 23:21:43
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All lands in play
are destroyed.
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ハルマゲドンは
マジック:ザ・ギャザリングの黎明期を代表する白のレア。
最初期からしばらく存在していたカードだが、最後に収録されたのは基本セット第6版。
テキスト
ハルマゲドン/Armageddon (3)(白)
ソーサリー
すべての土地を破壊する。
概要
通称
「ゲドン」。
神の怒りと並ぶ
白が誇るリセットボタンの代表格。
カードゲームには
「テキストが短いカードは強い」という俗説があるが、これはそれの最たる見本。
たった4マナで全ての土地をふっ飛ばす全体ランデス効果は、今ならば間違いなくオーバースペックな逸品。
戦術を定義するカードであり、同じく戦術の根幹を定義できる《神の怒り》と《十字軍》をくわえた3枚を
「白の三大レア」とも呼んだ時期もある。
土地を互いに全て失う、というのは一見五分に思える。
だがこちらが有利な戦況を作り上げた状態でこのカードが通れば、土地がリセットされるため相手は身動きが取れなくなるのでリードを保つ事ができる。
たとえば《
セラの天使》(4/4 飛行、警戒)が戦場に出ている状態でこのカードが通った場合には「セラの天使を除去するための手段が手札にあったとしても、それを唱えるためのマナがない」ということが平然と起こりうるのだ。
土地は1ターンに1枚しか出せない。当時の除去は白の《剣を鍬に》以外はどれも2マナ以上、あるいは赤(当時の除去火力の基本は2~3点)や緑(クリーチャー破壊さえ持っていない)に至っては1枚で除去するための手段自体が存在しない。
そしてたいていのデッキは、後半になると無駄牌になる土地の枚数をできる限り絞って戦う。そのため一度ゲドンで腰を折られると、体制を立て直す前に決着がつくこともしばしばある。
そのためハルマゲドンは速攻系のウィニーと非常に相性がよく、
白ウィニーには
必須とも言われていた。ビートダウンにおける「反撃を封じる攻めのカード」として活用されたのだ。
特に有名なデッキがアーニーゲドンだろう。強力なクリーチャーだが代わりに相手に森渡りを与えてしまう
アーナム・ジンのデメリットをハルマゲドンを使用する事で軽減し、メリットを強化している見事な構成である。
さらにクリーチャーデッキのみならず、ハルマゲドンは
コントロールデッキにもよく採用されていた。
土地を破壊して相手の行動を制限する。自身は「
モックス・ダイヤモンド」などマナアーティファクトを並べてマナを確保、
ゲームを有利に進めるという具合だ。
また相手の行動にマナを課して制限する類のカードとも好相性でよくセットで用いられた。「プロパガンダ」など良い例であり、当時は「プロパゲドン」と呼ばれ、オーバースペックだった青の打ち消し呪文とともに対戦相手を徹底的に縛り上げた。
ゲドンリセット後に《The Tabernacle at Pendrell Vale》あたりを置いてやれば、対戦相手はクリーチャーの維持・展開さえできなくなる。
このギミックをエンチャントの《ペンドレルの霧》というカードで代用してスタンダードの範囲で実現させたプロパゲドン亜種も存在した。対戦相手は土地を出すタイミングさえないため、ゲドン後にペンドレルが残っていると対戦相手の次のアップキープに自動的にクリーチャーが維持できなくなって全滅。自分は《モックス・ダイヤモンド》あたりでクリーチャーを維持してしまえばいい。
現在でも《三なる宝球》などを出しておくと対戦相手の動きを徹底的に縛り上げられるため、白系のスタックスデッキに入ることがある。
こういった《ハルマゲドン》を詰めのカードとして効果的に用いるデッキのことを「○○ゲドン」と呼びならわしてきた。
《アーナム・ジン》や《セラの天使》をフィニッシャーに据えたビートダウンデッキは「アーニー・ゲドン」「セラマゲドン」、
《プロパガンダ》と組んだ青白コントロールデッキは「プロパゲドン」といった具合。
このように優秀なカードであるハルマゲドンだが、環境に与える影響は極めて大きい。
たとえば当時マジックでは「4マナ以上のカードは重い」、というのが通説だった。
理由はいくつかあるが、その大きな理由のひとつがハルマゲドンだった。
相手にハルマゲドンをプレイされた後に立て直す事を考えると、4マナ以上のカードはどうしても使いづらくなってしまうからだ。
さらにハルマゲドンが4マナであるため、ハルマゲドンをプレイされる前に出せるカードを優先せざるを得ない。つまり、マナコストが同数かそれ以下か、もしくはマナコストを踏み倒せるカードである。
そして「対策カードを握れるデッキであれば」という条件付きではあるが、プレイングを気を付けていれば案外怖い相手
というわけでもない。たとえば互いの盤面が土地以外更地の状態で、対戦相手の手札が3枚、自分の手札が2枚の状態で使っても、おそらく対戦相手の方が先にリカバリーをしてしまう。
また、自分がフィニッシャーを立てている状態で詰めのゲドンを打つのに合わせてバウンスなどを打たれてもやはり動きが止まってしまう。
あくまでも「相手の反撃の芽を完全に摘み取るためのカード」「自分が優位を築けると分かっている状態で、勝利を確実にするためのカード」であることを忘れてはならない。
雑に撃った《ハルマゲドン》はむしろ自分の首を絞めてしまうのだ。
そのためハルマゲドンは強力ではあるが万能ではなく、ゲドンデッキを組むに値する相方が少ない時もあったので必ずトーナメントシーンに登場するわけではなかった。
しかし弱点があるとはいえ、相方に恵まれていない環境でさえ無視できるほど弱いカードでもない。環境は常にこのカードを視野に入れて動かざるを得なかった。
結局、ハルマゲドンは「マジックのゲーム性に極めて大きな圧力を与えている」しているとして、基本セット第6版を最後にスタンダードから姿を消した。
このカードのスタン落ちが決定した第7版当時は、「マスクス~インベイジョン」を経て日本のMTG人口が大きく増えた頃。このスタン落ちの時の衝撃は非常に大きく、ゲドンというひとつのアーキタイプをゲームから抹消することになってしまう。ルールが現在の「スタック式」になって日も浅かったこともあって「マジック滅亡論」なんてトンチキなもんを本気で唱える人もいたほどである。
ゲドンとはかなり毛色が違うが、《復讐のアジャニ》(奥義がゲドンのプレインズウォーカー)がトーナメントでぶいぶい言わせていた頃は「この奥義を使った後もプレインズウォーカーが残る」という性質が強力であり、青白コントロールにアジャニの為だけに赤をタッチすることもあったほど。
プレインズウォーカーの奥義という、使うまでに時間のかかるものでさえ強力だったのだ。たった4マナのソーサリーでこんなことができてしまうカードがどれだけ強力かは推して知るべし。
アジャニの場合はゲドン以外の仕事ができるカードだからというのも強い理由だったため単純な比較はできないのだが、「○○ゲドン」ルートから勝ちを拾いに行けるのは本当に強力だった。
ハルマゲドンが失われて久しい現在、マジックはかなり様変わりした。
まずランデス自体が赤の役割になり、《激憤明神》《爆裂+破綻》のように赤の役割に変化した。そしてそういうカード自体がなかなか印刷されなくなってしまう。
それどころかパーマネントに影響する呪文には「土地でない」という文章が決まり文句のようについてまわるようになり、全体リセット系のカードでさえ土地を巻き添えにすることも少なくなってきた。つまりランデス戦術自体が成り立たなくなってきたのだ。
土地自体を戦略の大きな主眼に据えた「12post」「ウルザトロン」「《迷路の終わり》コントロール」「《死者の原野》」「ロータスコントロール」といったデッキも登場し、そういったデッキがメタの一角を占めることも珍しくなくなってきた。ゲドン時代には考えられないことである。
さらに5~7マナのカードもトーナメントシーンで姿をよく見せるようになり、さらに除去のバランスがとられた現在では「3~6マナ域のパワーカードを次々と叩きつけていく」というデッキも珍しくなくなってきた。これらのデッキはゲドンがあれば絶対に大成することはなかっただろう。
逆にこういうゲームが当然という世代、つまり○○ゲドンデッキを知らない世代がレガシーで遊ぶと、時折このゲドン戦略をかまされて黎明期のMTGの理不尽さを味わうことになる。
このように黎明期のMTGを定義する最たるカードのひとつだが、与える圧が大きすぎるため最近ではほとんど黙殺されている。もしかしたらモダンホライゾンあたりで登場するかもしれないが、スタンダードの範囲内では《スランの崩落》のような極めて強い制限のついたカードが関の山だろう。
最近のMTGしか知らないと想像もつかないだろうが、はっきり言ってしまうと理不尽感が凄まじい。「MTGは多様性ののゲームである」というお題目を掲げたゲームにおいて、モダンイリーガル時代に再録から脱落し、亜種自体がほとんど印刷されていない(亜種が最後に印刷されたのが2018年)というのは、つまりそういうことである。
そもそも単体ランデスさえ徹底的に弱体化されてしまった現代のMTGでは、ハルマゲドンの復活はほぼ絶望と言える。
ぶっちゃけていうと、ゲドンやランデスの戦略というのは「対戦相手を事故らせて自分だけ事故らず一方的に殴ること」なので相手をしている時の不快感が半端なく、新規プレイヤーの囲い込みの際に大きな障害になってしまうのだ。
なお、ゲドンとはまったく異なる趣のデッキではあるが、「対戦相手の土地をすべて機能不全にし、何もさせないまま自分はフィニッシャーを用意して殴る」という趣のデッキには《マイコシンスの格子》を使ったデッキ【マイコマーチ】【マイコカーン】などが存在する。
前者はミラディン・ブロック時代のスタンダードに存在したデッキで、《機械の行進》と《マイコシンスの格子》を並べると、ルールの相互作用によってすべての土地が「0/0のアーティファクト・クリーチャー」になるので墓地に落ちてしまい、後に土地も出せなくなる。そして《マイコシンスの格子》自体が6/6のクリーチャーとしてライフを詰めに行く。
後者はモダン以下の環境に存在したデッキで、《マイコシンスの格子》で対戦相手の土地がアーティファクト化した状態で《大いなる創造者、カーン》の常在型能力と組み合わせると、対戦相手の土地はマナ能力すら起動できなくなってしまう。
どちらもプレイヤーにはあまり好かれたデッキではなく、特にモダンでは《マイコシンスの格子》が禁止される原因にもなってしまった。
つまり、本当にそういうデッキなのである。
関連カード
Terra Eternal / 永遠の土 (2)(白)
エンチャント
すべての土地は破壊不能を持つ。
「ワールドウェイク」では全ての土地が破壊されなくなるという、ハルマゲドンとは真逆のカード《永遠の土》が登場した。しかもレアで。
当然だが当時はゲドンはおろか《石の雨》さえスタン落ちして、ランデスという戦略自体が成り立たなくなっていた時期。しかも自分の土地が、ではなく「すべての土地が」なので自分がゲドンを使う際のお守りにさえできない始末。その上2枚目以降が完全に腐る。
誰もが「誰得。」と呟いたのは言うまでもない。しかも同パックのレアには神ジェイスという当時の覇権カードが入っており、引いた人の精神的なダメージをますます深めてくれた。構築はおろかリミテッドでも使い物にならないハズレ枠として恐れられた。
後に《石鍛冶の神秘家》を筆頭に様々なカードが化けていくことになるワールドウェイクだが、残念ながらこのカードが化けることはないだろう。
一応モダンのあるデッキのサイドボードに採用されたことがあり非常に大きな話題を呼んだが、これは入れていた本人が「あるカードが入らなかった代用品であり全然強くない」というかなりしょっぱい理由と使用感を告白しているというあんまりなオチまでついてしまった。
そしてこのカード、MTGで唯一「ルールが定義できないカード」として有名な《Equinox》の調整版でもある。まるで役に立たないくせに変な(そしてあんまり面白くない)逸話がやたら多いという、クソカードオタク的には面白い1枚。
Wind Zendikon / 風のゼンディコン (青)
エンチャント — オーラ(Aura)
エンチャント(土地)
エンチャントされている土地は、飛行を持つ青の2/2のエレメンタル(Elemental)・クリーチャーである。それは土地でもある。
エンチャントされている土地が死亡したとき、そのカードをオーナーの手札に戻す。
当時のスタンダードの範囲内で真面目な運用方法を考えると、自分の土地をクリーチャー化して破壊不能のアタッカーにしてしまうというもの。
自分の土地だけ破壊不能がつくため《審判の日》などで一方的に相手のクリーチャーだけ更地にできる上、ゼンディコンのテキストによってマイナス修整などにも耐性がつくという寸法だ。
しかし肝心の白のゼンディコンは防衛持ちなのでアタッカーにできない。つまり
ファンデッキとしてさえたいへん弱かったのである。
そんなわけで、どなたかこのカードの利用法を見つけてあげてください。
Fall of the Thran / スランの崩落 (5)(白)
エンチャント — 英雄譚(Saga)
(この英雄譚(Saga)が出た際とあなたのドロー・ステップの後に、伝承(lore)カウンターを1個加える。IIIの後に、生け贄に捧げる。)
I ― 土地をすべて破壊する。
II,III ― 各プレイヤーはそれぞれ、自分の墓地から土地カード2枚を戦場に戻す。
ドミナリアではハルマゲドンの効果を発揮する英雄譚エンチャント「スランの崩落/Fall of the Thran」が登場した。土地のみリセットなら2008年10月の《復讐のアジャニ》以来実に9年半ぶり。
しかし6マナと非常に重く、2,3ターン目には2枚ずつ土地が返ってくる。ランプデッキが相手ならともかく、ハルマゲドンほど強力なリセットボタンとはならなかった。
なんとかゲドンとして使おうと、スランの崩落をブリンクなどで再利用しようというデッキも考案されたが、大成することはまったくなかった。
6マナと重いことに加え、対戦相手にも4マナまでリカバリーされてしまうことから、このカードを軸に据えてもデッキの軸がまったく定まらないのが難点。2~3章の余計なテキストさえなければ……と多くのプレイヤーを歯噛みさせた。まさに「テキストが短いカードは強い」を地で行くカードだったのだ。
…余談だがこのカード、初心者向けセットであるポータル・セカンドエイジの構築済みデッキ「戒厳令(白ウィニーデッキ)」に入っていた。
初心者向けカードセットでトーナメントでは使用不可能なポータルシリーズのカードでも同じ名前であれば使用可能だったためである。もちろん、効果も全く同じである。
また、ポータルシリーズはカード総数が少ない割に「神の怒り」等の強力なソーサリーも入っていたのでソーサリー目当てでパックを購入するプレイヤーもいたとか。
ポータル三国志ではハルマゲドンという響きが三国志の雰囲気にまったくそぐわないこともあり、《戦の惨害》という同効果を持つ別名カードとして収録された(同型再販)。
そのためポータルが使用可能な環境においては、《ハルマゲドン》を1つのデッキに8枚まで入れられた。しかしレガシーにおいてはせいぜいゲドンデッキがカード名を散らす目的も兼ねて2枚程度採用するにとどまった。確かに強いことは間違いないが、打つタイミングを間違えると大して優位を築けないというリスクもある。そのため7枚も8枚も入れるようなカードではないのだ。
そして《伝国の玉璽》《帝国の徴募兵》のせいで目立たなかったが、めちゃくちゃ高額かつ品薄だったのである。そしてそれらのカードが再録されていく中、「Fallout統率者デッキ」で再録されるまで最後の高額カードとして君臨し続けた。
「ああ、項目は見るかげもない!これはこのwikiで追記・修正して過ごす暇人の週末なのか……?」
- マナ基盤の強いデッキ以外は撃たれただけで再起不能になる。特に逆転の一手を握ってる時に土地吹っ飛ばされたら絶望しかない -- 名無しさん (2014-05-12 13:38:02)
- 逆にこれ撃たれても平気なデッキって土地単ぐらいしかないんじゃない? -- 名無しさん (2014-05-17 02:57:43)
- こんなカードが「初心者向け」構築済みデッキに入っていたとか当時は凄かったよな… -- 名無しさん (2016-01-03 14:46:19)
- コロコロのmtg特集で青対策でこのカードが紹介されてたけど、デュエルマスターズの漫画では対抗呪文で消されてて子供心に「それ消されてんじゃん」って突っ込んだ記憶があるわw -- 名無しさん (2016-07-23 16:47:23)
- 名前がかっこよすぎる。 -- 名無しさん (2024-07-08 10:14:17)
- 蛇足に蛇足を徹底したような書き込みだな -- 名無しさん (2024-11-25 23:21:43)
最終更新:2024年11月25日 23:21