ポータル三国志

登録日:2021/12/05 Sun 23:46:00
更新日:2024/04/21 Sun 16:35:39
所要時間:約 6 分で読めます




ポータル三国志とは、世界初のTCG『Magic the Gathering』の入門向けカードセット「ポータル」シリーズの1つである。1999年発売。

概要

ポータルシリーズの3作目で、最後のセット。前2作の「ポータル」「ポータル・セカンドエイジ」が(当時の)従来のMtGの世界観を踏襲した洋風ファンタジーなのに対し、ポータル三国志は名前の通り三国志が元ネタとなっている。既存の物語をそのままMtG化したのは、初の基本セットでないブースターパックである「アラビアンナイト」とこれのみである。
舞台となっているのは多元宇宙の次元ではなく、なんと現実の三国時代の中国。「アラビアンナイト」のカードが次元「ラバイア」の出来事であると明かされたため、現実世界を舞台にしているのはこのセットのみである…
と思われていたが、「ラバイア値*1」に関する質問で、「ポータル三国志の次元のラバイア値はいくつですか?」という質問に対しマローが次元であることを否定していないため、現在はラバイア同様三国時代の中国に限りなく近い次元である、という扱いのようだ*2
ちなみにポータル三国志次元(仮)のラバイア値は、たいていの人が予想できるだろうがラバイア同様「10」(もっとも可能性が低い)。

そうした世界観の違いからか既存カードの同型再販や亜種、調整版が多い。
たとえばMtGでお馴染みの「飛行」能力にかわって「馬術」が登場。「馬術を持つクリーチャーは、馬術を持たないクリーチャーにブロックされない。」というもの。さすがに三国武将が空を飛び始めたらそれはもう世界観が違ってきてしまうわけで、要するにフレーバーだけ変えた飛行である。
しかし、「飛行=馬術」ではないため、飛行持ちクリーチャーでも馬術持ちをブロックできず、その逆もしかりである。そのため、馬術持ちクリーチャーをまず見ないエターナル環境やモミール・ベーシックでは、事実上アンブロッカブル(ブロックされない)ともいえる。

各勢力は色によって分けられており、は「蜀」、は「呉」、は「魏」が割り振られている。また、は洛陽や黄巾賊関連など、南蛮勢や動物などのカードが割り振られている。
販売方法としては、ブースターパックに加え、2人対戦用のスターターセットと蜀呉魏それぞれをテーマにした構築済みデッキが発売された。

発売された当時は「ポータルはあくまでポータルというゲームでありMtGではない」という姿勢だったため、エターナル環境で使うことはできなかった。
しかしエターナル環境でポータルのカードが解禁されると、無二の有用性を持つポータル産のカードは大高騰を起こすようになる。特にポータル三国志にはその系統のカードが妙に多かった。

極端な品薄ゆえに値段が高止まりになっているカードも多く、《伝国の玉璽》《戦の惨害》《荊州占拠》などは今でも3万円以上の高額カード。
再録で値崩れを起こしたものには《巧みな軍略》《三顧の礼》《横揺れの地震》などが存在するが、いずれも再録されるまでは1万円の大台に達するような高額カードだった。
さて、ポータル三国志のカードは再録された場合、英語名のイメージに合うようなアレンジが加えられていることが多い*3。しかし三国武将が再録される場合は、かつてのイラストのままなので「90年代のMtGの雰囲気を漂わせた実際の三国武将*4」風のイラストのカードがエルフだドラゴンだ吸血鬼だといったコッテコテのファンタジー連中の横に並んでいて非常にシュールである。


三国志武将のカード

ここからは、三国志に登場した名だたる武将のカードの一部を紹介する。なお、能力はオラクル*5に準拠しており、ポータル用に一部呼称変更されてる部分もあるため、以下はカードに書かれたものと異なることもあることを留意されたし。

武将のカードはいずれも「伝説のクリーチャー*6」である。当時のレジェンドルールは「戦場にすでに出ている場合、コントローラーを問わず2枚目以降を戦場に出すと後から出てきた方が墓地に送られる」という完全な先出し有利ルールだった。確かに張飛が2人もいたら主に部下にとってとんでもない話であり、そういった雰囲気を合わせるためのルールである。
現在はプレイヤーごとに1体となっているので、各戦場に1人ずつ董卓がいるなんてことができるようになった。いやー乱世乱世。

蜀主 劉備/Liu Bei, Lord of Shu (3)(白)(白)
伝説のクリーチャー — 人間(Human) 兵士(Soldier)
馬術
あなたが、名前が《列聖の武将 関羽/Gan Yu, Sainted Warrior》であるパーマネントか、名前が《猛将 張飛/Zhang Fei, Fierce Warrior》であるパーマネントをコントロールしているかぎり、蜀主 劉備は+2/+2の修整を受ける。
2/4

三国志(三国志演義)における主役級、劉備のカード。5マナ2/4馬術と、ポータル三国志環境としても低いカードパワーだが、「桃園の契り」を交わした関羽や張飛がいれば、4/6と高スタッツになる。ポータル三国志環境での話だが。
MtGでは珍しい名称指定カードで、実際に印刷されたものは「関羽か張飛、あるいはその両方が場に出ている限り、劉備は+2/+2の修整を受ける。」という実用性よりわかりやすさを重視したテキストである。ポータル環境でも強いカードとは言えないが、「周りの人間は強いが彼自身は大したことがない」という劉備らしさをよく表現できていると評判。

列聖の武将 関羽/Guan Yu, Sainted Warrior (3)(白)(白)
伝説のクリーチャー — 人間(Human) 兵士(Soldier) 戦士(Warrior)
馬術
列聖の武将 関羽が戦場からあなたの墓地に置かれるとき、あなたはそれをあなたのライブラリーに戻した上で切り直してもよい。
3/5

関羽のカード。《憤怒の天使/Angel of Fury》というカードに似た能力を持ち、飛行が馬術に変わり、伝説になって並べられなくなった分1コスト減っている。ポータル三国志環境では高いタフネス5を持っているのも特徴。

猛将 張飛/Zhang Fei, Fierce Warrior (4)(白)(白)
伝説のクリーチャー — 人間(Human) 兵士(Soldier) 戦士(Warrior)
警戒、馬術
4/4
猪武者のイメージが強い張飛のカード。警戒、飛行にあたる馬術、4/4とあからさまにポータル三国志版《セラの天使/Serra Angel》。
しかし、セラ天と比べて制限のある伝説のクリーチャーなのに、なぜかコストが1高い。
当時は開発部にとって《セラの天使》はオーバーパワーなカードという評価だったようで、この辺が影響したのかもしれない。現在では「伝説のクリーチャーは並べられないというデメリットがあるため、持たないカードより強力になっている」のだが、当時は先出し完全有利のルールだったので強すぎるカードが伝説だとそのカードを先に出して方が勝ててしまう。こういった当時の開発事情が関係しているのだろう。

桃園の契り/Peach Garden Oath (白)
ソーサリー
あなたがコントロールするクリーチャー1体につき、あなたは2点のライフを得る。

武将のカードではないが、劉備、関羽、張飛と来たため紹介。クリーチャーを並べるほどライフが回復できるカード。
MtG(というか多くのTCG)ではライフ・アドバンテージが軽視されるが、クリーチャーが複数体並んでいればたった1マナで8点や10点ものライフが得られる。さすがに相手も笑えないだろう。まあ、《生存+存命/Alive+Well》のような上位互換がある時点で、ポータル三国志環境でもなきゃ使われることはないと思うが…

伏竜 孔明/Kongming, "Sleeping Dragon" (2)(白)(白)
伝説のクリーチャー — 人間(Human) アドバイザー(Advisor)
あなたがコントロールする他のクリーチャーは+1/+1の修整を受ける。
2/2

かの孔明のカード。様々な計略を自軍のパワーアップという形で表現している。ポータル三国志環境には全体強化が少ないので、そういう意味で重用することとなるだろう。

呉主 孫権/Sun Quan, Lord of Wu (4)(青)(青)
伝説のクリーチャー — 人間(Human) 兵士(Soldier)
あなたがコントロールするクリーチャーは馬術を持つ。
4/4

呉の君主である孫権のカード。自軍のクリーチャーに馬術を与える。ポータル三国志環境でも強力だが、エターナルでは実質「あなたがコントロールするクリーチャーはブロックされない」という状態になる。6マナは重すぎて使われることはないが。
モミール・ベーシックではこちらのクリーチャーが全部アンブロッカブルになるようなもので、出れば一気に有利になる。

呉の大都督 周瑜/Zhou Yu, Chief Commander (5)(青)(青)
伝説のクリーチャー — 人間(Human) 兵士(Soldier)
呉の大都督 周瑜は防御プレイヤーが島(Island)をコントロールしていないかぎり、攻撃できない。
8/8

孫呉に仕えた武将周瑜のカード。当時の青の大型クリーチャーらしく攻撃制限のペナルティ能力を有している。
普通のMtGならリバイアサンや海蛇が当てはめられるポジションだが、三国志にそんな怪獣は出てこないので代わりに呉の船団が務めることになった。
その結果、登場から20年以上経った現在でも素のスタッツは多元宇宙最強の人間である*7

孫夫人/Lady Sun (1)(青)(青)
伝説のクリーチャー — 人間(Human) アドバイザー(Advisor)
(T):クリーチャー1体を対象とする。孫夫人とそれを、オーナーの手札に戻す。あなたのターンの間で、攻撃クリーチャーが指定される前にのみ起動できる。
1/1

劉備の結婚相手として知られる孫夫人(孫尚香)のカード。《沿岸の魔術師/Coastal Wizard》のアレンジで、伝説になった分1コスト軽い。相手の切り札やブロッカーを手札に送り、時間稼ぎや攻撃のサポートを行える。
ちなみに、タップ能力には「攻撃クリーチャーが指定される前のみ」という妙な制限があるが、これはポータルのルールである「戦闘後のメインステップがない」を疑似的に再現した結果。他の起動型能力持ちや、一部の戦闘絡みのカードもこのタイミング指定を持っていることが多い。

魏公 曹操/Cao Cao, Lord of Wei (3)(黒)(黒)
伝説のクリーチャー — 人間(Human) 兵士(Soldier)
(T):対戦相手1人を対象とする。そのプレイヤーはカードを2枚捨てる。あなたのターンの間で、攻撃クリーチャーが指定される前にのみ起動できる。
3/3

魏の君主である曹操のカード。タップだけで2枚の手札破壊が可能、というテキスト自体はかなり強いカード。
しかしそもそも5マナ圏まで来たら手札がほぼ枯れているので手札破壊がそんなに強くなく、タップ能力という遅さも気になる。

隻眼の将軍 夏侯惇/Xiahou Dun, the One-Eyed (2)(黒)(黒)
伝説のクリーチャー — 人間(Human) 兵士(Soldier)
馬術(このクリーチャーは、馬術を持たないクリーチャーによってはブロックされない。)
隻眼の将軍 夏侯惇を生け贄に捧げる:あなたの墓地にある黒のカード1枚を対象とし、それをあなたの手札に戻す。あなたのターンの間で、攻撃クリーチャーが指定される前にのみ起動できる。
3/2

曹操の側近で、黒のカードを手札に戻す。
クリーチャーなのでサーチや再利用がしやすく、タップ能力ではないので即座に使える回収カードということで統率者戦での需要が高く、コンボパーツを手札に戻したり無限ループの片棒を担いだりと大活躍。
再録されていないことから値段も高額で、現在のMtGでもっとも強い三国志武将かもしれない。

暴君 董卓/Dong Zhou, the Tyrant (4)(赤)
伝説のクリーチャー — 人間(Human) 兵士(Soldier)
暴君 董卓が戦場に出たとき、対戦相手1人がコントロールするクリーチャー1体を対象とする。それはそのプレイヤーに、自身のパワーに等しい点数のダメージを与える。
3/3

暴虐の限りを尽くしたといわれる董卓のカードで、部下をそそのかし、上司を裏切らせるというフレーバーからか、出た時にクリーチャー一体分の火力を飛ばせる。本来ならコントロール奪取の方がイメージに近いが、初心者向けのポータル三国志ではコントロールの奪取は難しいと判断されたのだろう。
出た時に仕事をするが、それ以降はバニラ同然で、史実では馬術の達人といわれながら、馬術すら持ってない。

武芸の達人 呂布/Lu Bu, Master-at-Arms (5)(赤)
伝説のクリーチャー — 人間(Human) 兵士(Soldier) 戦士(Warrior)
速攻、馬術(このクリーチャーは、馬術を持たないクリーチャーによってはブロックされない。)
4/3

三国志最強と呼ばれる呂布のカード。速攻と馬術を持ち合わせたシンプルな中堅クリーチャー…なのだが、呂布なのにカード性能はだいぶ控えめ。

籠絡の美女 貂蝉/Diaochan, Artful Beauty (3)(赤)
伝説のクリーチャー — 人間(Human) アドバイザー(Advisor)
(T):あなたが選んだクリーチャー1体を対象とし、それを破壊する。その後対戦相手1人が選んだクリーチャー1体を対象とし、それを破壊する。あなたのターンの間で、攻撃クリーチャーが指定される前にのみ起動できる。
1/1

貂蝉のカードで、タップだけで任意のクリーチャーを破壊できるが、その代わり相手もクリーチャー1体を破壊できる。他の切り札がない限り、大抵彼女が選ばれるため、能力が発動できるのは1回きりなことも多い。
…というのは1対1の話。破壊するクリーチャーを選ぶ対戦相手は、自分が選んだクリーチャーのコントローラーでなくてもいいため、多人数戦では相手と結託し、他の相手のクリーチャー2体を打ち取れる。このおかげか、統率者戦用カードセットに収録されたことも。

南蛮王 孟獲/Meng Huo, Barbarian King (3)(緑)(緑)
伝説のクリーチャー — 人間(Human) バーバリアン(Barbarian) 兵士(Soldier)
あなたがコントロールする他のすべての緑のクリーチャーは+1/+1の修整を受ける。
4/4

孟獲のカード。緑のクリーチャーに対する全体強化を持つため、クリーチャーを並べることが得意な緑のデッキとは相性が良い。

烈女 祝融夫人/Lady Zhurong, Warrior Queen (4)(緑)
伝説のクリーチャー — 人間(Human) 兵士(Soldier) 戦士(Warrior)
馬術(このクリーチャーは、馬術を持たないクリーチャーによってはブロックされない。)
4/3

孟獲の妻である祝融のカード。単なる馬術持ちの準バニラで、そこまで強力ではないように思えるが、実は緑で唯一の馬術持ち。緑は飛行だけでなく馬術も苦手な色のようだ。
そのため、ポータル三国志環境で緑のデッキを組むならお世話になる女傑。いまさらそんな人はほぼいないと思うが。

その他の有名カード

ポータル三国志のカードは、エターナルで使えるようになってから日の目を浴びるようになったカードも多い。セット自体の希少性もあり、かなり高騰しているカードもある*8

忠臣/Loyal Retainers (2)(白)
クリーチャー — 人間(Human) アドバイザー(Advisor)
忠臣を生け贄に捧げる:あなたの墓地にある伝説のクリーチャー・カード1枚を対象とし、それを戦場に戻す。あなたのターンの間で、攻撃クリーチャーが指定される前にのみ起動できる。
1/1

生け贄だけで伝説のクリーチャーを戦場に戻すことが出来る。ポータル三国志環境でも十分強力だが、やはり輝くのはエターナル環境。
能動的な墓地肥やし手段も豊富で、忠臣の能力もタップ能力ではないので召喚酔いの影響も受けず、インスタント・タイミングで使える能力なのでわずか3ターンで、本来なら非常に難しい《引き裂かれし永劫、エムラクール》のリアニメイトも現実的である。追加ターンこそ得られないものの、15/15飛行滅殺6で相手は死ぬ。
伝説のエルドラージは初の「誘発型能力によるリアニメイト封じを行う実用的なカード」だったため、これによってレガシー需要が生じてしまう。ポータル三国志が《帝国の徴募兵》(後述)以外も突然化ける眠れる鉱脈であることが知られるようになった。
フレイバー的には「身を挺して死から救う忠臣」なのだが、昔から宇宙しいたけだのヤヤ・バラードだのとんでもないもんばっか救っている。

荊州占拠/Capture of Jingzhou (3)(青)(青)
ソーサリー
あなたは、このターンに続いて追加の1ターンを行う。

追加ターンを得られる。《時間操作/Temporal Manipulation》の同型再販で、対象を取らなくなった《時間のねじれ/Time Warp》。ハイランダーではこれらのカードを合わせて実質3枚入れられるという事になる。統率者戦の流行とともに大高騰を起こした。しかも「荊州」という実在の地名が入ってしまっているため、再録がかなり難しいようである。
マンガ『デュエル・マスターズ』がまだMtGを扱っていたころ、切札勝舞が三国とのポータル三国志限定戦で「第三の切り札」として使用したことでも有名*9
《戦の惨害》とともに高額カードの最後の砦とされていたが、2023年の「統率者マスターズ」の再録カードとして発表された。値段の高止まりもようやく収まりそうである。

伝国の玉璽/Imperial Seal (黒)
ソーサリー
あなたのライブラリーからカードを1枚探し、その後ライブラリーを切り直し、そのカードを一番上に置く。あなたは2点のライフを失う。

かの《吸血の教示者/Vampiric Tutor》をソーサリーにしたカードで、ポータル三国志のトップレア。カード性能に加え、ポータル三国志のカードゆえに希少価値も高いため大高騰している。
元となった吸血の教示者と異なりソーサリーなので下位互換だが、それでもレガシーで禁止カードヴィンテージで制限カードになってしまっている。荊州占拠と同様に「2枚目の吸血の教示者・3枚目の悪魔の教示者」として使える統率者戦での需要が主。
ダブルマスターズ2022で再録されるまで23年もかかった。イラストは密書を封印している「薔薇の封蝋(Seal)」であり、フレーバーテキストにはマルチェッサ女王の言葉が書いてあるのでフィオーラのカード。
しかしイラスト自体はイクサラン用に納品したものであり、薔薇も「薄暮薔薇」の二つ名を持つエレンダのことを指していたと考えられている。何にせよ玉璽は23年、イラストは6年越しに使用されるという非常に数奇な運命をたどったカードであり、ダブルマスターズ2022のスポイラーの中では非常に話題になった再録カードだった。
しかし日本語訳された「伝国の玉璽」というカード名とは雰囲気がまったく合っておらず、プレイヤーたちが「これが翻訳の難しいところなんですよ!」「少しは元ネタの三国志に配慮したイラストにするべきだろう」などとお気持ち表明しまくるという素朴な風景が見られた。
こういったこともあり、現在もポータル三国志版の元祖玉璽しか使いたくないという層の需要が強い。今後も元祖版は値段が高いままだと予想される。

帝国の徴募兵/Imperial Recruiter (2)(赤)
クリーチャー — 人間(Human) アドバイザー(Advisor)
帝国の徴募兵が戦場に出たとき、あなたのライブラリーからパワーが2以下のクリーチャー・カードを1枚探し、それを公開し、あなたの手札に加え、その後ライブラリーを切り直す。
1/1

パワー2以下のクリーチャーなら何でもサーチできるクリーチャー。
パワー2以下限定と一見使いにくそうなクリーチャーしかサーチできなさそうに見えるが、低パワーでもフィニッシャーや凶悪なコンボパーツになりうるクリーチャーは山ほどいるので実際には非常に万能なサーチとして機能する。単純にウィニーの多いデッキで状況に合わせたシステムクリーチャーをサーチしてくる使い方も有効で、白ウィニーにこれのためにタッチ赤というデッキも存在していた。
こちらは上述の伝国の玉璽より使えるフォーマットも使われる枚数も多いため、最盛期にはアンコモンにも関わらず玉璽並かそれ以上に高騰していた。あまりにも高額だったせいで、このカードを複数枚積むことが前提となるコンボデッキは「勝率が高いのに実際の遭遇率は低かった」なんて話もある。こいつが高すぎる上に、金があっても実物が品薄すぎて手が届かないのだ。
何度か再録されたので今は多少値は落ち着いているがそれでも高額なことに変わりはない。

黄道の龍/Zodiac Dragon (7)(赤)(赤)
クリーチャー — ドラゴン(Dragon)
黄道の龍が戦場からあなたの墓地に置かれたとき、あなたはそれをあなたの手札に戻してもよい。
8/8

黄道の十二支サイクル*10の辰。三国時代の中国には龍が実在した!?他のカードが現実に即したようなカードばかりなのに対し、このカードだけ完全に伝説の生き物。
他の十二支*11は土地渡りを持っているのだがこれだけは墓地から回収できる能力を持っている。
現在のオラクルでは何の変哲もないクリーチャーだが、これはエラッタ後の話で、カードには黄道の龍があなたの墓地に置かれた場合、あなたはそれをあなたの手札に戻してもよい。と「戦場から」の1文が抜けている。つまり手札からカードを捨てても即座に手札に戻るという滅茶苦茶な効果が書いてある。
手札コストの概念が完全にぶっ壊れるため、例えば《サイカトグ/Psychatog》は無限にパワーとタフネスが上昇する。
ぶっちゃけこのテキスト不備ネタとフレーバーテキスト以外さっぱり話題にならないレベルで実績のないカードだが、なぜかものすごく値段が高い。供給量が足りないことに加えてドラゴン需要でもあるのだろうか。
一応ポータル三国志内では手札を捨てるコストを持つカードは無かったのでエラッタ前の文章でも悪用はできなかったが、手札破壊が実質通らないのは強い。

戦士の誓言/Warrior's Oath(赤)(赤)
ソーサリー
このターンに続いて追加の1ターンを行う。そのターンの終了ステップの開始時に、あなたはゲームに敗北する。
《最後の賭け/Final Fortune》のソーサリー版で、《最後のチャンス/Last Chance》の同型再販。ターンを追加するが、コスト2と非常に軽い代わりに、そのターンに勝てないと敗北する。
インスタントである最後の賭けの下位互換だが、荊州占拠同様、ハイランダーのルールで活躍する。
こちらも統率者戦需要でとんでもない高額カードになってしまったが、ダブルマスターズ2022で「カルドハイムの蛮族戦士の誓いの言葉」として再録された。玉璽と異なりあまり違和感のないカード名である。

的盧馬/Riding the Dilu Horse (2)(緑)
ソーサリー
クリーチャー1体を対象とする。それは+2/+2の修整を受けるとともに馬術を得る。(それは、馬術を持たないクリーチャーによってはブロックされない。この効果は永続する。)

修整と馬術を与えるカード。ポータル環境だとただそれだけで、要は「飛行が苦手な緑のための飛行対策」みたいな枠のカードである。
……なのだが、これがポータルの外だと話が変わってくる。このカードは「ポータルにはエンチャントや修整カウンターが存在しない」という都合に合わせたせいで「修整と能力付与が永続する」という特殊な性質を持っている。つまり早い話がエンチャント対策では対処できないオーラ
しかも他の馬術持ち・馬術付与カードはエターナル環境ではまず戦える性能ではないので、このカードは「任意の対象をサイズアップ+アンブロッカブル化できるカード」として、特に呪禁オーラが成立したころに注目が集まった。
《聖トラフトの霊》あたりにこれを使うと本体のブロックすらできない8点クロックという恐ろしい性能になるため、値段が一気に高騰した。こんなもんだからMtG界隈では一時期
問.三国志で一番強い武将は誰ですか?
答.的盧馬
という、三国志を知っている人ならいくつもツッコミを入れたくなるようなジョークが流行った*12
そのせいでこのカード自体は一切デメリットを持ってないにもかかわらず、これを使ったクリーチャーはまっさきに除去の対象になるという、「乗った者を死なせる凶馬」というある種の原作再現をしてしまっていた。
普通は呪禁など除去耐性持ちを乗せるのでそこまで問題にはならないが、回避能力欲しさに入れてたらタルモが落馬したなんて話もあった。


余談

このセットはMtGのアジア販路を開こうと、アジア圏で人気のある「三国志(三国志演義)」をモチーフに作られたセットである。
とはいっても、日本でさえ孔明以外ろくに知らない人が多いことからも察しがつくように、本国アメリカはもちろんフランスだのスペインだのといった別の国では知名度が皆無である。
そのため日本や中国では比較的入手がしやすかったが、それ以外の国ではそもそも入手することすらできないカードが多かった。しかも実在の中国の内乱をもとにしているせいで再録も非常に難しい始末。

さらに三国志ファンからの評価も必ずしも高いとは言えない。あんまりぶっ壊れたスタッツや複雑なテキストを出すわけにもいかないため、三国志演義の強烈なキャラをうまく表現できていないという評価は当時から多かった。この辺は不毛な言い争いになるのだが、要は「弱い呂布なんて誰が望むんだよ」みたいな話。水鏡先生や徐庶、それと阿斗のような人気のある登場人物がカード化していないなどの不満もある。

こういった問題もあって実在するものをモチーフにしたセットはその後積極的に作られなくなっており、作られるにしても「イコリア:巨獣の棲処」のゴジラ・シリーズカードや「イニストラード:真夜中の狩り」のドラキュラ・カードのように「既存カードの絵違い版」という路線が取られている。
ただ実在するものをモチーフにすること自体を一切やめたというわけではなく、MtG風のエッセンスを加えて世の中に出すようになった。分かりやすいのがギリシャ神話をモチーフにした「テーロス」、大航海時代をモチーフにした「イクサラン」、北欧神話モチーフの「カルドハイム」あたり。
要は昔のギリシャじゃなくてテーロスっていうオリジナル世界だし、ゼウスじゃなくてヘリオッドっていうオリキャラなんで強かったり弱かったり一般的なイメージと違ってたりしても許してね、みたいな理由がつけられて動かしやすい上に、政治的に問題のある部分をうまく避けることができる。


また、中国向けとして発売された製品は「幻境奇谭(Global Series: Jiang Yanggu & Mu Yanling)」という形で再び実現した。山海経をモチーフにした次元でムー・ヤンリンとジアン・ヤングーのほのぼのとしたおねショタストーリーが展開されている。


世界的に……というか三国志の本家中国でさえ全く売れなかったセットだが、後述する通りメディアでも取り上げられていた事もあってか日本での売上は中々良かったようで、当時はポータル三国志限定戦の大会等も開かれていたらしい。
そのためか現在中古市場で出回っているこのセットのカードは大半が日本語版との事。

コロコロコミックで連載されていた漫画『デュエル・マスターズ』では、MtGを取り上げていた時期に、本セットを使用したデッキを使うキャラクター「速攻の三国(みくに)」が登場していた。
このデュエルは挑戦してきた勝舞に対して「ポータル三国志」限定戦の条件を課し、カードセットを渡して「一時間やるからデッキを完成させろ」と親切だが無茶な形式を宣告。当時のコイツのド外道ぶりを見てすっかり頭に血が昇っていた勝舞がポータル三国志の心得が無いにもかかわらず「こんな初心者向けのセット5分で充分だ!!」と要らんことを言ってしまったために、召喚酔いという基本的なルールすら忘れて一度は完敗を喫し逃げ帰るという強烈な展開が描かれた。そして「雨の日にデュエルすると負けてしまう」というジンクスができた。
尚、リベンジの際に勝舞が使ったデッキはガチガチに速攻をメタった青単コントロールだったのも一部では有名。

ただし、同作が後にアニメ化された際にはMtGでは無く同名TCGをモチーフにした内容に差し替えられたのだが、彼のデッキ内容も例によって三国志とは無関係の赤速攻デッキに変更されてしまった。
なお、他社のTCGにおいては三国志モチーフのテーマが散見されるものの、当のデュエマでは残念ながら全く登場していない。もし三国志モチーフのテーマがデュエマで登場したのなら、三国も救われるのだが…
一応中華モチーフのカードは登場したため中華っぽいデッキなら組めるがいずれも水文明なので三国のイメージとは合わないのが難点か。
アニオリで中華っぽいデッキを使う卑怯者策略家の「孔明」なるそのまんまなキャラが登場したが。


もし仕損ずるようなときは、追記修正してごまかします。
――― 三国時代のアニヲタの一般的な誓いの言葉

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最終更新:2024年04月21日 16:35

*1 ストーム値の次元版で、本流のセットにて再度舞台になる可能性をあらわす指標。数字が大きいほど可能性が低くなり、例を挙げるとドミナリアやラヴニカが可能性が最も高い1、ラバイアが可能性が最も低い10。

*2 ただしどちらも積極的に再訪されている次元ではない。そもそもアラビアンナイトや三国志演技という「既存の知的財産」をそのまま使っている時点で、MTG的にはあまりよくないものという扱いのようである。

*3 たとえば《三顧の礼/Three Visits》は史実と関係なしの「3人の妖精が訪ねてくる」イラストになっている

*4 イラストを見れば分かるが、昔の歴史漫画にでも出てきそうな印象である。

*5 現行のカードのルールを記したもの。ルール変更や名称変更、エラッタなどがあった場合、そちらを参照する必要がある。

*6 当時はクリーチャータイプのレジェンド。

*7 Lvアップ持ちを含めると《卓絶の達人》Lv12以降の9/9、自身の能力でクリーチャーになれる物を含めると《正義の勇者ギデオン》の「★/★、★は現在の忠誠カウンター数(=理論値は無限)」が最大。

*8 ポータル系のカードはその希少価値から非常に高騰しているのだが、再録禁止カードには指定されていない。何かにつけて再録されるものや、いつか再録されるだろうと思われて10年ほど動きのないカードなど様々なものがある。

*9 ちなみに他の二枚は《知謀の将軍 陸遜/Lu Xun, Scholar General》と《疲労困憊/Exhaustion》

*10 フレーバーテキストとして三国志のあらすじが書いてある。

*11 犬(猟犬の改名前)、ニワトリ、豚など超レアなクリーチャータイプの者もいた。

*12 ジョークの解説も野暮だが、当時はまだ統率者戦が流行しておらず、武将たちもポータル環境に合わせた控えめな性能、他に採用実績のあるカードはいずれも固有名詞ではないという世相あってのものである

*13 Wrath自体にも「神罰」という意味があり、単なる「怒り」とはニュアンスが少し異なる。ただしこちらは「非常に強い怒り」を意味する言葉として普通に用いられているし、辞書によっては「神罰」という用法が載っていないこともある。

*14 たとえば基本セット2010では、アメリカで一般的な動物《灰色熊》から、《ルーン爪の熊》という魔法的な名前の同型再販に変更された話などがこれを裏付けている。