白/White(MtG)

登録日:2013/11/03 Sun 16:59:29
更新日:2024/01/04 Thu 21:50:16
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マジック:ザ・ギャザリングの項目へようこそ!


貴方は平和を愛しているか?

家族や友達、恋人だけではなく、知らない多くの人々の安全な生活を守りたいと思うだろうか。


──マジック:ザ・ギャザリングの、白の項目へようこそ。



白のイメージ

MtGのデザイナー達は、カラーパイという理念の下、
「色が設定上持つイメージと、その色がゲーム内で持つ機能との合致」
を鉄則としてカードをデザインしている。

マンガやアニメに例えれば、
「キャラ設定と、そのキャラの作品内での行動の合致」と言える。
かなり重要なポイントだということが分かってもらえるだろうか。

現在、MtGデザイナー達は白の性格をこう定義している。

「秩序なくして人は生きられない。社会を作り、神を崇め、みんな平等に平和に仲良く暮らしましょう。
 何? 法を犯した者が出た? 集団農場へ送りたまえ。国を狙っている勢力がある? 同士諸君、聖戦だ」

白は法に従い、生命を大切にするため、善や正義の色と思われやすいがそれは一面にすぎない。
秩序やそこから生まれる社会を尊ぶ白は、その社会に属さない者を容赦なく弾圧したり、
その社会に属する個人であっても必要とあれば全体のために容易く切り捨てる非情な面もある。
また融通のきかない法は時に社会を硬直させ自由を奪い、自らを法とする独裁者やファシズムの思想さえ生みだす。
無論、命を慈しみ調和を旨とする理想郷を作りだすこともあるのだが。

ダンジョンズ・アンド・ドラゴンズには、善悪の他にも「秩序(ロウ)・混沌(カオス)」というキャラ評価基準が存在する*1
秩序にして善なら「基本的には法を破るべきではない。法に従うことで善を成す。裁判官や警官」
秩序にして悪なら「秩序を利用して自分の利益を貪る。汚職政治家や『もうひとつの正義』を掲げる敵役」
混沌にして善なら「法律とは関係なしに自分の信念に従って他人を助ける。義賊や革命家」
混沌にして悪なら「周りは一切関係なく、自分にとって一番都合が良い行動をする。身勝手な悪役や自己中心的なクラスメイト」
といった形だが、この基準を用いれば白はあくまでも徹底して「秩序」の側であって善ではない
白の悪役にはこれまでも「自分の求める世界を作るために身勝手に動く」というものが多く、これに黒が入ると「相手の弱みを握って利益を貪る」という悪徳商人のようなキャラクターになる。典型的な例は「自分が最高神として崇められることに固執し、その障害となると判断した存在にはたとえ元味方であっても激昂して粛清しようとする」というヘリカスことヘリオッドがいる。
政府の圧政に抗う革命勢力を描いた「カラデシュ」では、悪役が白と青、革命家が赤だった。また、何気に理念が合致していた新ファイレクシアのトップは白の派閥である。つまり秩序は重んじるが、絶対善ではないというわけ。下のプッチ神父のたとえなんかは実に的を射ている。
ちなみにこの基準に則ると赤は必ず混沌になる。他のゲームのキャラ評価基準なんかにも使えるので、覚えておくと便利だ。


白の性格をゲーム内での特性に定義し直すと、以下のようになる。

1.「ルールを作り出す」
私は人類を救済するための最終防衛策として、デスティニープランの発動をここに宣言する。-ギルバート・デュランダル

2.「平等をもたらし、それを維持しようとする」
人は平等なり。婦人もまた平等な人間なり。-幸徳秋水

3.「平等を害する者を、事前に罰する」
ジャッジメントですの。-白井黒子

4.「互いに組織を構成する」
魔女をやっつける時も、みんなで協力して戦えば、ずっと安全なはずだよね。-鹿目まどか


さて、この辺で性格的に白のイメージが強い方々を挙げてみよう。

遥か彼方光の国から来た光の戦士。宇宙の平和を守るためウルトラ兄弟や宇宙警備隊、ウルティメイトフォースゼロを結成する。
またとある小説では人間が悪に傾いたら正義の名の下に戦うと発言したこともある。

体内に侵入した病原体やがん細胞に対処する免疫細胞が擬人化したキャラクター。
人体の平和を守るために他の免疫細胞と結束して戦う姿はまさに「白」。人体由来の逸脱者であるがん細胞に対しても攻撃を行うことも、規律を守るために自由を縛る白の哲学に合致する。
白血球という名前だし見た目も白いし。

  • クブルスリー
銀河英雄伝説の登場人物。
「私の権限は手順をまもらせるところにあるので、手順を破るところにはない」という台詞は
組織と秩序を重視する白の性格を端的に表している。

総ての人間に運命を等しく理解させ「覚悟」させるという地球規模のルールを作り上げようとした。
集団や規律、秩序を重んじる「白」的な人間が、時として周囲の人間に害を与えることもあるという例である。
実際彼は自分の幸せや名誉などはハタとも考えていないが、その思想は決して万人に評価されるものではない。

  • アイアンメイデン・ジャンヌ
「X-LAWS」のリーダーの聖・少・女。法律の神を持ち霊とし、天使の軍団である「X-LAWS」を配下に置く。
悪であるハオを打倒し、世界に平和をもたらそうとするが「X-LAWS」の考えは非常に独善的かつ彼女たちの中で完結しており、見方によっては彼女たちが悪とも取れる。

今日も元気にヒャッハってる知性のかけらもないヤツらがほとんどだが、「聖帝に従う」という規律の下に運営され、用途に沿う部隊化もされた「軍」を名乗る集団である以上、白である。
上司が上司だし構成員もアレなのでお仕事内容は一般的に見て邪悪そのものだが、彼らの規律ではその行いは正義なのだ。

色の機能

以上の性格付けから、白にはゲーム上では以下のような機能が与えられる。
()内は、その機能に対応する性格の番号。

  • 平地からマナを生み出す
  • ライフを得る(2)
  • ダメージを軽減する(2)
  • プロテクションや破壊不能を与える(2)
  • 墓地からクリーチャーや他のパーマネントを手札に加えたり、戦場に出す(1、2)
  • クリーチャーをタップしたり、戦闘から取り除く(1、3)、或いはアンタップを行う(4)
  • アーティファクトやエンチャントの扱いに長ける(1、2)
  • 低いマナ・コストで戦闘に役に立つ能力を持つクリーチャーを使役する(4)
  • アーティファクトやエンチャントを破壊する(3)
  • 攻撃かブロックに参加しているクリーチャーを破壊する(3)
  • すべてのクリーチャーを破壊する(2、3)
  • 自軍のクリーチャーを強化する(1、4)
  • 軽量クリーチャー・トークンの扱いに長ける(4)
  • ゲームの基本ルールを制限する(1)
  • プレインズウォーカーの支援をする(4)


代表的なデッキ

ライフの回復や相手の行動の妨害、小型クリーチャー、プレインズウォーカーの扱いを得意とするという点を活かし、以下のようなデッキが組まれる。

序盤からマナ・コストの軽いクリーチャーを高速展開し、全体強化能力を持つクリーチャーやエンチャントで後押しする白の基本デッキ。
昔と比べクリーチャー呪文の質が良くなっている反面、ハルマゲドンなどの相手の抵抗を防ぐ手段が弱体化しており最近のスタンダードでは目立った戦績を残せていない。
が、一方で全体除去によらない拘束手段を手に入れているため、昔のカードも使える下の環境では未だに現役。
他のカードゲームではいわゆる「メタビート」と呼ばれるものに似たデスタクが特に有名なものの一つ。
発展系として赤と組み合わせて火力呪文などのクリーチャー除去兼直接ダメージ源を追加したボロスウィニーなどがある。

  • コントロール
各種除去呪文を使って時間を稼ぎ、後半に大型クリーチャーで反撃する。ウィニー同様ハンドアドバンテージを獲得する手段が乏しいため、アーティファクトなどで弱点を補強できる場合を除いて単色で組まれることはまれ。

  • コンボデッキ
緑ほどではないが白にも魅力的なエンチャントが登場することがあり、それを軸にしたデッキが組まれることもある。また、墓地からクリーチャーやエンチャントなどを直接戦場に出すリアニメイトデッキも少数ながら存在する。

このように非常に多くの要素を備えてこそいるが、その一方で他の色と比べて堅実で突き抜けた要素が少ないため、正直人気があるとは言い難い。
また、白のカードは「事前妨害」ではなく「事後対応」のものが非常に多い。つまり相手にある程度の行動を許してしまうのである。
《神の怒り》は相手に展開を許してしまうし、《解呪》も相手がエンチャントやアーティファクトを出してから使うものである。
相手の行動を許さない打ち消しやハンデスを擁する青や黒に比べるとこの点が弱く、白単コントロールはもっさりした動きになりやすいので好かない人も多い。
さらに白は「あらゆることができるが平等を重んじる」色なので、アドバンテージを取るのがかなり難しい。
そのため実は、白は禁止カードが一番出にくい色でもある*2。青や緑のように「環境を完全にぶっ壊すレベルの便利カード」が出にくいのだ。
良くも悪くも昔から戦術があまり変化せず、主要なパーツが基本セットに常に入っているため、(ウィニーの全体強化エンチャント、コントロールの全体除去ソーサリーなど)一度パーツを揃えてしまえば長く遊べるという利点もあり、コアなファンも存在している。

他の色との関係

は秩序的で自制を行える白を理解する。
白も思慮深く大局を見据えて行動できる青を評価するが、卑劣な策略と私利的な行為は控えさせようとしている。
アゾリウス、オジュタイ

は全体の利益のために個の利益を制限する白を嫌う。
白は反倫理的に個の欲望で利益を独占しようとする黒を非難する。
オルゾフ

は法で自由を縛ろうとする白を憎む。
白は反社会的に感情のまま身勝手なことをする赤を拘束しようとする。ボロス

は自然と共存し仲間を守ろうとする白に好感を抱く。
白も生命を尊び自然に生きる緑を受け入れる。農耕が合わさった素朴な生活?それもまた良し。
ただし社会に背き本能的で野蛮な方向に行くのは規律で戒めねばとも考えている。
セレズニア、ドロモカ


代表的なカード

白の代名詞とも言える低マナのウィニークリーチャー。

  • 急報
集団戦に適した兵士を呼び出す為のカード。個々の力は弱くとも集まれば驚異になる。イラストはどう見ても人間だが、人間部族という概念が登場する前のカードなので人間扱いされない

  • 清浄の名誉、栄光の凱歌、無形の美徳、、十字軍
前述のクリーチャーたちを強化するエンチャント。白単の代表的なデッキ【白ウィニー】の必須パーツ。

通称「ラスゴ」、「ラス」。白の二面性の裏側を体現する文字通りのコントロールの守護神。転じて全体除去カードを「ラス」と呼称することもある。

平等とはなんと素晴らしきかなを象徴するカード。ただし何を持って平等かを選定するのはこのカードの使用者である。

  • 平和な心、剣を鋤に、忘却の輪
相手を殺さずに戦闘能力を奪ったり、一時期に戦場から追放するエンチャント。ほんわかふわふわ

  • 解呪
基本的なエンチャント・アーティファクト破壊の元祖。秩序を司る以上、ルールを作るも壊すも自由。
色の役割の変化に伴い、現在では緑版の《帰化》が基本であるが、こちらもたびたびスタンダードに戻ってくる。
なお、エンチャントは白、アーティファクトは緑の方が比較的破壊しやすい。と言ってもほとんど誤差レベルだが。

  • 中断、オアリムの詠唱、沈黙
相手の行動を制限するカード。これらは一時的なルールを作り上げるためインスタント。永続的になる場合エンチャントになるが、平等の色故に自分にも効果が及ぶ。

白を代表するプレインズウォーカー。お互い非常に強力でクリーチャー戦を優位に導く。

  • 謙虚
調整中すべてのクリーチャーを1/1のバニラに変えるという平等エンチャント。
秩序の白のくせにそれはもうひどい混沌を生み出し、MTGのルールを整備するきっかけとなった。

  • ヘリオッド
白の負の側面の体現である傲慢で自己中心的ななテーロスの神。
テーロス・ブロックのストーリー上の所業はドクズとしか言い様がなく*3、後にテーロス還魂記でその報いを受けた。
MtGでは《太陽の神、ヘリオッド》こそそうでもなかったが、《太陽冠のヘリオッド》がその能力から(半)無限バーンコンボを生んだため、パイオニアでのその相手の《歩行バリスタ》の禁止と合わせ、晴れてMtGでも「ヘリカス」と呼ばれる羽目になった。

  • 天上の鎧、きらきらするすべて
白の得意戦略「呪禁オーラ」を成立させるカード。動かし方は非常に簡単、強化オーラをたくさんつけてこの2種類のどちらかをつけてドーン!ね、簡単でしょう?
前者は「ラヴニカへの回帰」時代に呪禁オーラを、後者は「エルドレインの王権」時代にオーラデッキを成立させて環境内に存在感を発揮した。MTGというより昔の遊戯王に近い動きをする。
昔から単体強化オーラについては強い色であり、中には「自分につければ強化、相手につければ無力化」というすごい動きをする《魂の絆》なんてカードもあった。本当に何でもできる色だなお前。


余談

  • かつては《ハルマゲドン》《天秤》による大量ランデスやあまりにもコスパが良すぎる《剣を鍬に》などを有しており、平等というお題目でかなりやりたい放題する色だった。新しいことを積極的に試される色でもあったため、他の色からすると強弱云々よりも「ずるい」という評価になりがちだった。

  • 生物、除去ともにバランスよく揃っている白だが、単体除去では黒、大型のクリーチャーの質では緑、相手の行動の妨害では青、低マナ域での素早い動きは赤に劣るといった感じで、特定の分野では大抵二番手に落ち付きがち。ただ「大型の飛行」というニッチな分野では「天使」を持つが故に黒と並んで2強。禁止カードになるくらい派手な動きと無縁な分、非常に堅実な強さを求められる。
    そのためにある程度下駄をはかせてあげないと単なる器用貧乏になってしまう。それは白単コントロールが覇権を握ることが少ないのが何よりの証だろう。

  • 「何でもできる色」と揶揄されがちな白だが、上述した器用貧乏さの他にも、統率者戦の流行とともにドローができないという弱点が明らかになった。
    かつては赤の方が徹底的にドローを禁止されていた*4ために目立たなかっただけであり、その赤が「衝動的ドロー」を手に入れたことでドローが一番苦手な色となった。
    ただし、2021年辺りからは「1ターンに1枚に限られるが、継続的にドローできる」カードを増やす形で改善が図られている。

そんなわけで、実は意外とできないことも多い色。大ぶりな動きは得意だが、どんなゲームも小回りが重要視される以上それは必ずしも長所たりえない。他の色が考えるほど優秀というわけではないのだ。
しかしある白単愛好家曰く「できないことも愛せるようになるのが単色使いマスターの一歩だと思っていますわ」とのこと。
フレーバー的にはおそらく赤と並んで非常に分かりやすい色だが、ゲームの理念はすべての色の中で最も分かりづらい色であり、白の愛好家や白単使用者の間でも、白の評価というのは非常に揺れ動いている。
白使いに求められるのは勇気と判断力、そして周りに流されない強い 信念 なのである。


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最終更新:2024年01月04日 21:50

*1 現在も様々なゲームや心理テスト、性格診断などに用いられているが元々はD&D。性格によってボーナスが得られるが、他にもそのキャラクターを理解する助けになってくれる。実際には「中立」も存在するが、今は関係ないので省く。

*2 《天秤》はあくまでも黎明期の逸脱した例と見なすべきだろう

*3 そのためマジックを知る人間から”ヘリカス”という仇名までつけられたうえ、第3セットのニクスへの旅でのフレーバーテキストや未踏破の物語でのエンディングでも人々から嫌われ始めていることがうかがえる。

*4 他にもレガシーの白単コントロール【マイティクイン】には氷雪土地を用いたドローエンジンがあったり、白のカードにはキャントリップのついたものが多いが赤には実用的なものが一切なかったなど、なんとなく白にはドローができるようなイメージがついて回っていた。