ディンギル帝国(宇宙戦艦ヤマト)

登録日:2009/10/18 Sun 23:22:28
更新日:2025/10/27 Mon 22:31:04
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ディンギル帝国とは、宇宙戦艦ヤマトシリーズに登場する星間国家。
完結編における敵役である。



【概要】

地球から約3000光年離れたアンファ恒星系を本拠地とし、国家元首ルガール大神官大総統が治める。
首都はディンギル星(本星)にあるが、物語開始時の二重銀河の衝突により要塞都市ウルクが事実上の機能を持つ。
元首の役職からも宗教性の強い統治体制が窺える。
後継者は長男のルガール・ド・ザール(ルガール2世)。

帝国の国力や支配領域については不明。
天の川銀河系内にあるため、ガミラスボラー連邦の支配をどうやって逃れていたかも謎である。
設定上は他星に侵略の手を伸ばさない辺境の地域大国のような存在だと思われるので、抗争から距離を置いていたのは間違いないところ。
運良く侵略の手がまだ伸びてなかったとも考えられる。



【戦力】

ディンギル帝国の戦力を支えているのが、彼らの持つ高い科学技術である。
規模そのものは、ファンの間でヤマトシリーズ最強の敵と名高い白色彗星帝国と比べると極めて小さく、もはや象と蟻も同然であるが、二重銀河の衝突という極大の宇宙災害によって大国が絶望的な被害を受ける中、運よく免れ戦力的にも問題なかったであろう地球を一蹴してしまうほどの力は彼らの科学技術の賜物とみて間違いない。

その象徴たる兵器が不沈艦ヤマトを二発で撃沈したハイパー放射ミサイル
このミサイルは毒性による攻撃が地球人に特効だった事もあるが、それ以上に破壊力がすさまじく、しかも水雷戦隊と共に威力に対する配備数がとんでもない事になっており、保有戦力の少なさを補うには十分であった。
ワープ技術も進んでおり、巨大な水惑星「アクエリアス」を外部からビーム照射してワープさせるほど。

ちなみに、この高い技術力を持ちながら母星へのアクエリアス接近を防げなかったのは、二重銀河の衝突に伴い発生した次元断層から突然現れたため。
いかにディンギル帝国の技術でもアクエリアスほどの巨大な惑星をワープさせるには24時間のエネルギー放射が必要であり、それだけの時間がなかったのである。
もっともこうして一旦母星を失った所為か十分な兵站や補給がなくそれが後に命取りになるのだが……。



特徴的な点として、ディンギル帝国にはこれまでの敵役がこぞって持っていた巨大な兵装はほとんどみられない。
一応、都市衛星ウルクは全長約20kmと、大きさだけなら白色彗星帝国の本拠地をも遥かに超えるが、劇中で登場した大口径砲は可動式砲塔のニュートリノビーム砲のみ。
しかもこれはせいぜいがヤマトを包む程度の口径で、とてもではないが惑星を破壊できるような威力を持つとも考えにくい。
ほかの特徴的な兵器はニュートリノビーム防御幕や、ロボット馬に乗りやたら白兵戦を挑んだりする…さすが元地球人。
彼らは象徴的な巨大な力による威圧よりも実戦能力を重視、艦隊戦や小規模戦闘に特化しているのかもしれないし、もしくはハイパー放射ミサイルに代表される圧倒的な威力の兵器の存在により大砲を持つ必要がなかったのかもしれない。
ただ、その猛威を振るったハイパー放射ミサイルも頼りすぎたためか真田志郎が開発した「対ハイパー放射ミサイル艦首ビーム砲」によって無力化されてしまう事になる。


他に、弱点に挙げられるのが燃費。特に小型の艦艇は燃費の悪さが散見される。
水雷艇のハイパー放射ミサイルが撃ち切りで再装備必須とはいえ、それにしても補給基地として移動要塞を戦域内に繰り出し、そこで水雷艇はおろか水雷母艦のエネルギーまで補給して再出撃させるという行動は艦艇の稼働時間に難がある事の証明と言える。
なにしろ移動要塞の位置は、ヤマトが高性能とはいえ主砲(波動カートリッジ弾装填)の射程内
そんな艦艇の動力源エネルギーは、アクエリアスにエネルギー吸収プラントを建設し、アクエリアスの水から抽出している状態である。

考えてみると、地球侵攻時は既にアクエリアスによって母星が壊滅した後である。つまり改めて建設したことは間違いない。
これが必要に迫られての急場の措置なのか、ディンギルの昔からのエネルギー源だったのかは定かでない。







【ディンギル人】

1万年程前、地球に最初の文明を築いた「地球人」であった。そのため皮膚の色が灰緑色である以外は、肉体の組成は地球人と同一である。
「水惑星アクエリアス」の地球への回遊による大洪水によって滅亡寸前のところを、先住ディンギル人の円盤によって救出されディンギル星へ移住したが、やがて大恩ある先住ディンギル人を駆逐してディンギル帝国を築いた。
その経験からか「自分の幸せのためには何をしてもいい」「強さが正義であり、強者のみが生き残る権利がある」という一種の優生思想に凝り固まっていくようになった。
しかし小説版では遂にそれに耐え兼ねた民衆の武力革命が始まり、その最中にアクエリアスが直撃してしまった。

ただし大総統も息子2人を失った際には(直接手を下したのはルガールだが…)顔が強ばっており家族愛は有るらしい。
またかつての原ディンギル人もと崇めたり御先祖様を敬ったりと意外に信心深い。
もっとも、奪って滅ぼした側のくせに崇めていそうな所はしばしばツッコまれるのだが。
彼らは自分たちを神の加護を受けた者と自称しているため、奪われた当時の原ディンギル人は眼中になく、遥かな先祖のみを崇めていたのかもしれない……。


なお、水没から生き残ったディンギル人は男のみであるため、放っておいても滅亡必至である。
曰く「弱い女子供や老人など滅びて当然」とのこと。
…老人はいいとして女子供滅ぼしてどうするんだ大総統……。

これまでのヤマト世界の異星人は原点から違う種族であったが、ディンギル人は紛う事なく地球人類のルーツを持っている。
同族殺しの為に作られた戦艦を宇宙船に改造したヤマトが最終的に原点と同じ同族殺しの道を進み、同じ人類だった者達が最後の敵と言う考えてみると極めて救いのない種族である。


《主なディンギル人》


  • ルガール大神官大総統
役職からラスボスオーラが漂うディンギル帝国の指導者。
手をぬるぬる動かしながら息子にディンギルの教えを説く戦士にして、白兵戦で先陣を切り無双する人外。

  • ルガール・ド・ザール
二代目のボンボン。
冒頭で不意打ち一線、ヤマトを撃沈する大戦果をあげる。
決して無能ではないが、詰めが甘いのとヤマトがチートすぎたため最終的には敗走。
うずくまりながら父に許しを乞う通信シーンは爆笑必須。

  • ディンギルの少年
ヤマトに救助されたディンギル本星の生き残り。
割と重要キャラだが名前が無い。




【作中の活躍】


上述の通り、アクエリアス出現に際し首脳陣と軍は民間人を見捨てて星を脱出。移住先として先祖が住んでいた地球を手に入れるべくアクエリアスを人為的にワープさせることを計画する。

そしてアクエリアスが接近し地表は水没。この時偶然通りがかったヤマトが暴風雨の中コスモハウンドでの降下を強行し民間人の救助を試みたが着艦に失敗。古代と彼が抱えていた少年一人を残し、救助に参加したヤマトの乗員を含む全員がコスモハウンドと共に海に消えるという最悪の結果に終わってしまった。最終的に、星はその大部分を覆っていたナトリウムと水との反応で消滅してしまった。

ルガール・ド・ザール率いるディンギル帝国の太陽系制圧艦隊は手始めにヤマトを撃破し、地球艦隊の拡散波動砲の斉射を小ワープで回避、波動砲攻撃直後の空白時間の隙にハイパー放射ミサイルを斉射し全滅させた。

ただし母星を失い慢性的に補給不足な上に所有兵器も燃費が悪い為、ヤマトのショックカノンの射程圏内で空母を停泊させ燃料を補給するという愚を犯す。
コスモゼロの偵察により母艦の位置が露呈し、ヤマトのロングレンジ艦砲射撃を喰らい敗走、ルガール二世は都市衛星ウルクに帰還しようとするもニュートリノビーム防御膜に巻き込まれ戦死。

その後、戦艦ドリフトによりウルクに強行着陸したヤマトと白兵戦を繰り広げる。

ウルクがヤマトとの交戦により崩壊した後、ルガール大総統は残存艦隊を率いてヤマトに総攻撃をかけようとするが、ヤマトの危機に駆け付けたデスラー率いるガミラス艦隊に撃破され、旗艦を葬られる。
ルガール大総統の戦死でディンギル帝国軍は悲願の地球回帰ならず滅亡。

皮肉にもヤマト最後の敵は、ヤマト最初の敵によって葬られることとなったのであった。






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最終更新:2025年10月27日 22:31